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Jun 27, 2022
全1件 (1件中 1-1件目) 1 薄桜鬼 腐向け刑事パラレル二次創作小説:捜査一課の悪役令嬢
テーマ:二次創作小説(744)
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 この日、土方歳三は何度目かの溜息を吐いていた。 彼は思い出した、己が警察官である事を。 階級の中に囚われている屈辱を― (何で、こんな事になっちまったんだ・・) それは、捜査一課が二月前から追っていた強盗殺人事件の犯人を漸く逮捕し、その後事件解決を祝っての飲み会が警視庁内であり、歳三達はその二次会と称して近くのカラオケボックスで飲みなおしている最中であった。 そこは車椅子の人でも利用できるように通路はバリアフリー仕様に広く作られており、また某お笑い芸人の不倫騒動で話題となった多目的トイレも多く設置してあった。 歳三達はこんなご時世なのでフェイスシールドとマスクをつけた上で順番にマイクを握っては、好きな歌を歌っていた。 「土方さん、何歌うんだ?」 「最近の曲はよくわからねぇな・・」 「それは言えてるな!」 カラオケボックスに行くのは、高校の時以来だからもう20年くらい行って居ない事になる。 そのころは「歌本」と言われるタウンページ級の分厚い本の中から好きな曲と歌手名を索引ページで調べては、機械でその番号を入力していたのだが、今はタブレット端末一台で好きな歌手名や曲名、ドラマやアニメの主題歌の曲をすぐに検索できるので、かなり便利な世の中になったものである。 しかし、歳三は長年使っていたガラケーから漸く二年前にサービス終了と同時にスマートフォンへ買い換えたものの、未だに取り扱い説明書片手にその操作に戸惑っているほど、機械音痴だった。 「土方さん、どうしたんだ?」 「画面が、よく見えねぇ・・」 「あっれぇ、先輩もう老眼ですか~、ウケる~!」 慣れないタブレット端末の操作に歳三が四苦八苦していると、後輩刑事からの野次がすかさず飛んで来た。 端整な美貌を台無しにするほどの深い皺を眉間に刻んだ後、歳三は電光石火の動きである曲をそれに入力した。 それは、今Youtubeで話題の曲だった。 歳三は、日ごろ溜まっている鬱憤を吐き出すかのようにその曲の歌詞を替え歌にして熱唱した。 「先輩、凄い~!」 「ヒュ~!」 もうそろそろ二次会もお開きにしようかと思っていた時、急に廊下の方が騒がしくなった。 「あれ、何だ?」 「さぁな・・」 歳三達がそんな事を話している時、壁に取り付けられている電話がけたたましく鳴った。 「はい?」 『トシさ~ん、そこにいるんでしょぉぉ!』 受話器越しから聞こえて来たのは、自分よりも年下ではあるが、ノンキャリア組の自分にとっては雲の上の存在と等しきキャリア組の上司の声だった。 「あ、あの・・」 歳三が受話器片手に固まっていると、ドアが勢いよく開き、部屋に一人の男が入って来た。 「トシさぁ~ん!」 少し癖のある薄茶の髪を振り乱しながら、彼はそう叫んで歳三に抱きつくと、彼の腹に顔を埋めた。 「伊庭さん、ここに居ましたかぁ~って、うぁぁぁ~!」 慌てて彼の部下であろう男が続けて部屋に入って来たが、上司の痴態を目の当たりにした彼は顔を赤く染めて絶叫した。 「うほぉ~、トシさんの腹吸い、いぃ~!」 「あ、あのぅ・・永倉先輩、この方は・・」 「ああ、この人は伊庭八郎、俺達にとって雲の上の人・・まぁキャリア組の、すごく偉い人っつーか・・」 「公安警察の伊庭警視だよ。それで、あそこに居るのが伊庭さんにいつも振り回されている可哀想な部下の皆さん。」 「へ、へぇ・・でも、何で土方先輩が、そんな偉い方に絡まれているんですか?」 「う~ん、それはだな・・」 「伊庭さん、土方さんが困っているでしょうが!ほら、早く帰りますよ!」 「ひぃやぁだ~、トシさんのシックスパックの腹を一晩中堪能するまで帰らないんだ~!」 「すいません、伊庭さんもう五徹目なんです!早く戻って休みましょう、ね?」 「や~!」 まるで癇癪を起こした幼児のように歳三の腹に顔を埋めたままそこから離れようとしない伊庭の姿を、何処か醒めた目で彼の部下であり幼馴染の本山小太郎が見ていた。 歳三は、まるでエイの干物のような顔をしてこの地獄から何とか抜け出そうとしていた。 「伊庭さん、あんたも一曲歌ったらどうだ?」 「・・わかった。」 歳三の腹から漸く顔を離した伊庭は、タブレット端末にある曲を入力した。 「お、タ〇チか。」 「懐かしいなぁ・・」 そんな事を言いながら歳三達がカラオケ画面の前に立っている伊庭を見ていると、スピーカーから激しいヘヴィメタルなサウンドが響いて来た。 「うぉぉぉ~!」 そのサウンドと共に俯いていた伊庭が、まるで般若のような恐ろしい形相を浮かべて歌い出した。 (そっちか~い!) 「何か、イメージ違いますね・・もっとこう・・」 「うん、お前が言いたい事はわかるさ・・」 公安警察に所属してはいるが、その爽やかで穏やかなイメージ故に「公安の貴公子」、「警察庁の王子」という二つ名を持ち、広報のポスターにたびたび登場しているのだが、そのイメージとは全く真逆の顔を八郎は歳三達の前で見せていた。 五日も寝ていない所為なのか、彼の翡翠の瞳を、歌舞伎役者もかくやという程の深い隈が縁取られ、まるでこの世の恨みを力の限り歌に任せてシャウトするその顔に、歳三達はドン引きしていた。 曲の合間に「フフッー」と合いの手を入れる部下達も、何とか上司の機嫌を取ろうと忖度して無理に疲労が溜まり切った顔に笑顔を浮かべ、タンバリンを叩いていた。 それはまるで、悪夢のような光景だった。 「すいません、本当に・・伊庭さん、帰りますよ。」 「トシさ~ん、トイレでチョメチョメしてぇ~!」 「馬鹿言ってないで帰りますよ!」 上司のわがままに切れた本山は、彼の首筋に手刀を一発見舞わせると、そのまま彼を引き摺って部屋から出て行った。 「もう俺達も帰ろうぜ?」 「あぁ、そうだな・・」 そのまま歳三達は解散したが、それで終わりではなかった。 翌日、歳三が警視庁に出勤すると、遠くから数人分の慌しい足音が聞こえて来た。 (何だ?) 「居たぞ~!」 「土方警部、確保~!」 「なんだてめぇら!」 突然自分の前に現れた屈強なスーツ姿の男達に歳三は戸惑っていたが、彼らが自分を拘束しようとしたので、歳三はとっさに元警察官の祖父譲りの合気道と柔道を駆使して男達を薙ぎ倒し、その場から逃走した。 「はぁ、はぁ、見つけましたよ・・」 「お願いします、公安に・・来て下さい・・」 「一体何だってんだよぉ!」 「伊庭さんが・・伊庭さんが、土方警部に会いたいと言って暴れているんです!もうこれ以上我々が抑えるのは限界です!」 そう言った彼らの顔は皆絶望に塗れていた。 「早く、トシさんを、呼んで来て、呼んで来て!」 「もうちょっと待って下さいね、今呼んでいますからねぇ。」 公安警察、即ち警察庁のオフィスに入った歳三が見たものは、何処から引っ張り出してきたのかわからない乗馬型マシンに跨って泣き喚く伊庭と、それを宥める本山の姿があった。 「伊庭さん、トシさん来ましたよ~」 「伊庭さん、あんたもう帰れよ。」 「うん帰るよ。トシさんとセックスしたら。」 は? この男は今職場で何を言っているのだ。 「おい、何言ってやがる・・」 「だって一週間もしてないも~ん!トシさんとセックスしたくて堪らない~!」 「ちょ、声がデカイ!」 「トシさんの○○の中に僕の○○を○○して○○しないと気が済まない~!」 「いい加減にしろ~!」 歳三は伊庭を黙らせるため、彼に強烈な右ストレートを放った。 「伊庭さんは仮眠室に運んでおきますから、土方さんは戻って頂いて結構です。」 「あぁ、わかった・・」 その後、警視庁・警察庁全体に歳三と伊庭の関係は知れ渡り、歳三は何故か「捜査一課の悪役令嬢」、「警視庁の姫」という二つ名を持つ羽目になってしまった。 「トシさん、今週末暇?」 「ああ。それがどうした?」 「指輪選びに行こう!」 ![]() にほんブログ村
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Apr 30, 2022 08:10:33 PM
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