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JEWEL

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完結済小説:碧き炎(ほむら)を抱いて

2013.08.10
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幕末から現代へと戻って来て、数ヶ月が経った。

双葉がどんなに幕末で体験した出来事を話しても、医師は、“事故によるショックで、記憶障害が起きてるだけだ”の一点張りで、誰も信じてくれなかった。

だが確かに、彼女は幕末で生き、故郷を守る為に戦った。
それを、ただの夢として終わらせたくはなかった。

「双葉、お前ぇにいい知らせがあんだ。」
「母ちゃん、そんなに嬉しそうな顔して、なじょしたんだ?」
「実はなぁ、会津に戻れることになったんだ!」
「会津に!?」
「父ちゃんが昔居た会社の上司さんがいろんな所に掛け合って来て、父ちゃんの再就職先が決まったんだ。」
「やっと、会津に帰れんだな。」
「長かったなぁ・・」
良子と抱き合いながら、双葉は嬉しさの余り涙を流した。
「帰って来たな、やっと・・」
「東京も良かったけんじょ、やっぱり会津が一番だ。」
「んだなし。」
磐梯山を眺めながら、双葉と良子は漸く故郷へと戻ってきたという喜びを噛み締めていた。
「荷物、片付けんぞ。」
「わがった。」
引っ越し会社のロゴマークが入った段ボール箱を双葉が下ろそうとした時、彼女はバランスを崩して転倒しそうになった。
そこへ、近くを自転車で通りかかった一人の高校生が咄嗟に彼女の身体を支えた。

「さすけねぇか?」
「さすけねぇ。ありがとなし。」

双葉は自分を助けてくれた高校生に礼を言おうと彼の顔を見ると、そこには幕末の京で共に過ごしたゆきが居た。
「ゆき様・・?」
「まさか・・双葉様なのがし?」
「わだすのこと、覚えてくれてたのか?」
「双葉様は、わだすにとって一番の親友だ!忘れる筈がねぇ!」

高校生―雪は、そう叫ぶと双葉を抱き締めた。

「あれから、どうなったんだ?」
「会津は敗れて、副長は函館で死んだ。だけんじょ、もう会津は逆賊とは呼ばれてねぇ。」
「よがった・・」
ゆきと猪苗代湖の湖畔を歩きながら、双葉はそう言って溜息を吐いた。
「まるで、ゆき様と過ごした日々の事が、夢みてぇだ・・だけんじょ、わだすには夢じゃねぇ。」
「それはわだすも同じだ。こうして双葉様に再び会えたことは、嬉しい。」
「また、会えんべ?」
「当たり前だ。会津に居る限り、わだすは居なくならねぇよ!」
「よがった。」

双葉はゆきに微笑むと、彼にあるものを見せた。
それはまだ新選組が幸せだった頃―西本願寺前で撮った集合写真だった。

「やっぱり夢じゃねぇ・・これを見ると、いつでもみんなに会えんな。」
「んだなし。メール、送ってくなんしょ。まだ使い方がわからねぇ。」
「わがった。」

―完―

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Last updated  2013.08.10 21:31:52
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鳥羽・伏見、甲府、宇都宮を経て、新選組や会津藩をはじめとする旧幕府軍は北へと敗走を続けた。

「わだすらが、逆賊な筈がねぇ!会津は、帝の為に尽くしてきたべ!」
「そうだ、御所に発砲したのは、長州の奴らだ!あいつらこそ、逆賊でねぇか!」
怒りをあらわにしながら、ゆきと双葉は逆賊扱いされることに納得がいかなかった。
会津藩は、これまで帝の為に身を尽くしてきた。
それなのに―
「新政府軍に、会津は渡さねぇ!」
「渡すわけにはいかねぇ!」
だが、白河、二本松の戦いで、旧幕府軍は新政府軍の前に敗れ去った。
敵軍は徐々に、会津へと進軍していった。
「殿、橋をけっして渡らせてはなりませぬ!」
「ああ・・」
会津の守りである十六橋も破られ、新政府軍は若松城下へと迫って来た。
滝沢本陣で新選組は、白虎隊士中二番隊と合流した。
「京でのご活躍の事、聞いておりやす。」
少年達は目を輝かせながら、そう言って歳三達に群がった。
「皆、新選組の皆様を困らせてはなんねぇ。」
篠田儀三郎がそう言って仲間を窘め、彼らとともに別室へと向かった。
翌日、白虎隊士中二番隊は滝沢本陣から出陣し、戸ノ口原へと向かった。
冷たい雨が彼らを襲い、食糧は既につきかけていた。
「俺が食糧を取りに行ってくるから、ここで待ってろ。」
指揮官である藩士の言葉を信じ、彼の帰りを待っていた篠田達であったが、一向に彼は戻ってこなかった。
「なじょしたんだべ?」
「あそこに人影が!」
「敵だ、敵襲だ!」
隊士の一人がそう叫んだのと同時に、銃弾が空気を切り裂いた。
すぐさま彼らはヤゲール銃で敵軍と応戦したものの、スペンサー銃を持った新政府軍の前に敗れ、彼らは戸ノ口原から撤退し、飯盛山を目指した。
若松城下では敵の侵入を告げる半鐘が鳴り響き、藩士の家族達は城を目指した。
だが彼らが到着した頃には城門は堅く閉ざされ、城下に取り残された藩士の家族達は自刃した。

家老・西郷頼母の一族21人も、自害して果てた。

そして飯盛山へと辿り着いた白虎隊士中二番隊は、燃え盛る城下を見て絶望に駆られ、自刃した。

「双葉様、危ねぇ!」

敵と応戦しているさなか、ゆきの声で我に返った双葉は、敵の砲弾が自分に向かって飛んでくるのを見た。

紅蓮の炎と黒煙に包まれ、双葉は意識を失った。

「双葉・・双葉、聞こえっか?」
「父・・ちゃん・・?」

再び双葉が目を開けると、そこは会津の戦場ではなく、病室のベッドの上だった。

「よがったぁ、ずっとあのまま意識が戻らねぇのかと思ったぁ~!」

良子はそう言うと、双葉の胸に顔を埋めて泣き崩れた。

「わだす・・なじょしてここに?」

まるで狐につままれたようだった。

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Last updated  2013.08.10 21:16:55
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1867年10月14日、15代将軍・徳川慶喜は、政権を明治天皇へと奏上した。
つまり、今まで徳川家が握っていた江戸幕府の政権を、天皇へと戻したのである。

この出来事は、“大政奉還”と呼ばれた。

「上様が天子様に政権をお返しになられただと!?」
「それじゃぁ、俺達はどうなるんだ!」
「落ち着け、まだ新選組がなくなったわけじゃねぇ!」
大政奉還により自分達の立場が悪くなる、終いには新選組がなくなってしまうのではないかという不安に駆られた隊士達は、そう口々に言いながら近藤や歳三に詰め寄った。
「上様が政権を天子様にお返しになったからといって、天子様が今すぐにこの国を治めるわけがねぇ。」
「そうだな・・」
「だが、伊東がどう動くのか・・」

双葉は、ふと平助の身を案じた。

(藤堂先生、どうしていんだべか・・)

「副長、只今戻りました。」
「斎藤か。」
「副長、なじょして斎藤先生がこちらに?」
「実はな、こいつは間諜として伊東の元に潜入させたのさ。連絡役の隊士も潜入させたうえで、伊東の動きがこちらにもわかるようにさせたんだ。」
「歳・・」
「斎藤、伊東は何を企んでいやがる?」
「実は、伊東は近藤局長の暗殺を企てているようなのです。」
「何だと!?」
その場に一瞬、緊張が走った。
「歳、どうする?」
「どうするも何も、伊東の奴をこのままのさばらせておける訳がねぇだろ?」
「じゃぁ・・」
「奴を始末する。」

1867年11月15日、近江屋。

「今夜は冷えるのう。」
「まぁたくしゃみかえ、龍馬さん?京に居るから、寒さに強いと思うとった。」
「わしゃぁ南国の生まれじゃき、こん寒さは苦手じゃぁ。」
坂本龍馬と中岡慎太郎がそう言いながら部屋で寛いでいると、階下で人が争う音と、派手な物音がした。
「ほえるな!」
「坂本龍馬、覚悟!」
二階へと駆けあがって来た襲撃者に応戦しようと龍馬は拳銃を構え発砲したが、生憎弾切れだった。
彼は舌打ちして刀の鯉口を切ろうとしたが、その前に敵の刃が彼の脳髄に食い込んだ。
「慎太郎・・」
「龍馬・・龍馬・・」
血の海と化した部屋の中で、慎太郎は畳の上を這いながら龍馬の元へと向かった。

「わしゃぁ、脳をやられたぜよ・・」

坂本龍馬と中岡慎太郎は、何者かによって近江屋で襲撃され、暗殺された。

大政奉還という偉業を成し遂げた男は、33年という短い生涯を終えた。

その数日後―1867年11月18日。

油小路に於いて、伊東甲子太郎は新選組の大石鍬次郎らによって暗殺され、その遺体は路上に放置された。

「先生、どうしてこんな・・」
「許さぬ、新選組!」

伊東の遺体を引き取りに御陵衛士達が油小路にやって来るのを待ち構えていた新選組の隊士達が路地から飛び出ると、辺りは男達の怒号と激しい剣戟の音に包まれた。
「平助、逃げろ!」
「新八つぁん・・」
次々と目の前で仲間が倒れて行く中、藤堂平助は隊士の一人に斬られ、息絶えた。
「平助・・」
「ごめんね・・俺が・・」

平助は最期にそう言って微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。

坂本龍馬暗殺、油小路事件という二つの事件を挟んで、慶応3年は幕を閉じ、新年を迎えることとなった。

1868年1月3日、鳥羽・伏見に於いて戊辰戦争が勃発。

「放て、撃てぇ~!」
「くそ、このままじゃ皆殺しにされちまう!」

最新鋭の武器を用いる約五千名の新政府軍を前に、数で勝っている筈の約一万五千名の旧幕府軍は、惨敗を喫した。
銃弾を浴びて倒れているのは、会津藩兵だけだった。

「錦の御旗をあげっとか~!」

炎の中で、官軍を示す錦の御旗が揚がった。
この瞬間、会津藩は、「逆賊」となった。

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Last updated  2013.08.10 20:59:42
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「突然驚かしてすまんのう、わしゃ坂本龍馬いうもんじゃき。」
「坂本・・」

双葉は龍馬の名を聞いて顔を強張らせた。

坂本龍馬といえば、薩長同盟を締結させた厄介な男―新選組にとっては敵同然の存在である。
「刀を納めや。わしゃおまんと争う気はないき。」
「黙れ!」
「ちぃっと人の話を聞いてくれんかのう?」
「断る。」
何を言っても無駄だと思ったのか、龍馬は大袈裟な溜息を吐くと、そそくさとその場から逃げ出した。
「待て!」
慌てて彼を追い掛けようとした双葉だったが、雑踏の中へと消えていく龍馬を完全に見失った。
「クソ!」
「どうしたの、そんな大声で悪態ついて?」
頭上から声が降って来たので、双葉が俯いていた顔を上げると、そこには秀哉が立っていた。
「さっき、坂本龍馬に会ったんだけんじょ・・取り逃がしてしまった・・」
「そう、それは残念だったね。それよりも、どうしてこんな所に居るの?」
「黒谷へ、書類を届けに・・」
「そう、だったら丁度いいや。僕が黒谷まで送ってあげる。」
「おい北原、話が違うじゃないか。」

秀哉の隣に立っていた眼鏡を掛けた男は、そう言って彼を睨んだ。

「俺達は祇園へ葛きりを食べようとしているんじゃないのか?」
「それはまた今度。だから、機嫌を直してくださいよ。」
「ふん・・」

秀哉から双葉へと視線を移した河内は、恨めしそうに彼女を睨んだ。

「ごめんね吉田君、この人甘い物が大好きでね。前から食べたいと思っていた鍵善の葛きりが食べられるって、前から楽しみにしてたんだよ。河内さん、子どもに八つ当たりしないでくださいね?」
「うるさい、わかってる!」
「わかったのなら、一緒に黒谷に戻りましょうよ。どうせ一人で祇園に行っても、迷子になるんですから・・」

河内は口をへの字に曲げると、秀哉達の元へと走って来た。

「あの・・何か悪い事を・・」
「気にしなくていいから、あの人のことは。それよりも、途中で寄り道してもいいかな?」
「構いませんが・・何処へ?」
「まぁ、ついてきてよ。」

数分後、双葉の前には嬉しそうに葛きりを頬張る河内の姿があった。

「いつも鬼って呼ばれてるほど仕事に厳しい人が、こうも甘い物ひとつでこんなに変わっちゃうとはね・・」

秀哉は恋人を見ながら、そう言ってクスクスと笑った。

「どうしたの?遠慮しないで君も食べなよ?」
「は、はぁ・・」

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Last updated  2013.08.10 13:33:42
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「はじめ、そんな所に居たんだ!」
「平助。」

斎藤が縁側で中庭を眺めていると、向こうから足音が聞こえて来たかと思うと、藤堂平助が彼の隣に腰を下ろした。

「聞いたか?茨木達の・・」
「ああ。伊東さんは怒りの余り失神してしまった。」
「そんなにショックだったんだ、伊東さん。まぁ、無理もないよね。茨木って子の事、結構可愛がってたから・・」
「平助、お前は今回命拾いしたな。」
「え、それどういう意味?」
「言葉通りだ。もしお前が茨木達と同じような事をしていたら、切腹は免れなかったぞ。」
「でも、俺は自分の意志で伊東さんについていくって決めたんだ。」
「ああ。だが、いったんここへ入れば、もう二度と新選組の元には・・土方さん達の元には戻れないぞ?」
「・・そんな事くらい、わかってるよ。俺だって、伊東さんに誘われた時どうしようか迷ったさ・・でも、このままだと山南さんが一方的に新選組に愛想を尽かして脱走したってことになるだろう?そんなの嫌なんだよ、俺・・」
「平助・・」

斎藤は平助を見ると、彼は何処か苦しそうな顔をしていた。

切腹した山南と、平助は同門で、実の兄のように山南を慕っていた平助は、彼が江戸の道場から多摩の試衛館という何の変哲もない田舎道場の食客となった際、彼を追い掛けて天然理心流の食客となったのだった。
「あそこで土方さん達に会っていなかったら、俺の人生、どう変わってたんだろうな・・」
「さぁな。俺は、己の決めた事を一度も後悔する事はなかった。“もしあの時こうしていればよかった”という思いを一度だけ抱いたとしても、もう遅い。平助、お前はここに居る事を選んだのだから、土方さん達のことはもう忘れろ。」
「え・・」

平助が驚いて斎藤を見ると、彼は冷酷な表情を浮かべていた。

「土方さん達と、お前はもはや敵同士だ。もう二度と、土方さん達とは会えないと思え。」

何処か冷たく突き放すかのような口調で斎藤はそう言うと、平助を縁側に残して立ち去った。

「伊東さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫なものか!茨木達は奴に・・近藤勇に殺されたようなものだ!」

額に氷嚢を当てられた伊東はそう叫ぶと、また頭痛が襲ってきたので思わず顔をしかめた。

「一体どうしてくれよう・・この恨みを、返してやらないと・・」
「はやまってはいけませんよ、伊東さん。」
「わかっている、わかってはいるが・・」

伊東は、この一件以来、徐々に近藤への憎悪を募らせていった。

「では、行って参りやす。」
「気をつけてな!」

副長命令で、双葉は黒谷へと書類を届けることとなり、西本願寺の屯所から出た。

彼女が洛中を歩いていると、突然誰かに背後から肩を叩かれた。

「何奴!」
「わしゃ怪しい者やないき、刀を納めてくれぇ!」

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Last updated  2013.08.10 13:16:53
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「一大事、一大事にござる!」
「何があったのですか?」
「あの四人が・・奥の部屋で・・」
歳三が血相を変えて奥の部屋へと向かうのを見た双葉達は、慌てて彼の後を追った。
「副長、一体何が・・」
「見るんじゃねぇ!」
双葉が部屋へと入ろうとした時、襖越しから歳三の怒声が響いた。
思わず恐怖で身を竦めた彼女であったが、臆することなく部屋の中へと入っていった。
するとそこには、血の海が広がり、その中には茨木達四人が脇差を腹に突き立てたまま息絶えていた。
「そんな・・なじょして・・」
「おい、誰かそいつを外へ摘み出せ!」
「吉田君、来なさい!」
「だけんじょ・・」
「双葉様、後のことはわたしに任せてくなんしょ。沖田先生、双葉様のことをお願い致しやす!」
息絶えた四人の方へと向かおうとする双葉を、総司は羽交い締めにして無理矢理部屋から摘み出すと、そのまま彼女を連れて屯所へと戻った。
「沖田先生、なじょして茨木様達は・・」
「彼らが自害した理由は僕にもわからない。けれど、このまま生き恥を晒すよりも、潔く死んだ方が伊東さんの為になると、彼らは思ったんだろうね・・」

そう言った総司は俯いていたので、彼がどんな表情をしているのかはわからなかったが、その身体は怒りに震えていた。

自害した茨木達四人の遺体を西本願寺まで運んだ歳三達は手厚く彼らを葬った後、不動村にある屯所へと引っ越した。
「葬式の後に引っ越しだなんて・・少し不謹慎過ぎねぇか?」
「そんな事言っても、元々引っ越す日は今日と決まってたんだ。今更変更なんて出来る訳ねぇだろ?」
「だけんじょ・・」
「双葉様、今は荷物を纏めねぇと。色々と考えるのは後だなし。」
ゆきにそう諭され、双葉はそそくさと自分の荷物を纏めた。
「今度の屯所は広いな・・」
「まぁ、お西さんに引っ越しにかかる金とこの土地を寄越せと言ったからな。今まで間借りしてきたが、ここは違う。砲術所もあるし、各隊士に個室も与えられるぞ。」
「格別な措置だな。やっぱり幕臣となった甲斐があったよ。」
「ああ。」

引っ越ししたその日の昼、土方達は全隊士に祝い酒を振る舞った。

「皆、これからも幕府の為に尽力を尽くすぞ!」
「おう!」

祝宴の中で、双葉は溜息を吐きながら縁側に座っていた。

「斎藤先生は、なじょして伊東先生の元へ・・」
「あの方のことだ、色々と考えがあってのことだべ。それよりも双葉様、いつまでも浮かない顔をしていては駄目だ。」
「んだな・・」

一方伊東は、茨木達四人が自害したとの報せを受け、憤怒の余り気絶した。

「許さぬ・・」

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Last updated  2013.08.10 12:57:50
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「我々は孝明天皇の御陵を守る衛士として、今後活動しようと思っているんだよ。」
「ほう?それはつまり、新選組から脱隊すると?」
「然り。しかし脱隊という言い方は悪いな。離隊と言ってくれたまえ。」
「脱隊だろうが離隊だろうが、やるこたぁ同じだろうが?あんたがそうしたいんなら好きにしろ、俺は止めねぇ。」

孝明天皇が急逝して年が明けた1867年3月10日、伊東は新選組との思想の違いから、新選組を離隊することになった。
いつかはこうなるかと思っていた歳三だったが、伊東が新選組を去ると宣言した時、これから彼の顔を見ないと思うとせいせいした。
「土方さん、本当に止めないんですか?」
「止めるも何も、伊東が決めたことだ。俺にはどうしようもねぇだろ?」
「僕は伊東のことを言っているんじゃないんです、平助の事を言っているんです!」
「平助のこと?」
「伊東さんに感化されて、平助が変な真似をしないかどうか心配なんですよ、僕。」

歳三が総司を見ると、彼にしては珍しく真剣な表情を浮かべていた。

総司と平助は、年が近いからか、江戸の試衛館に居た頃からいつも一緒だった。
まるで、仲の良い年子の兄弟のようだった。

「なぁに、あいつは一時的に熱にのぼせているだけさ。少し頭を冷やせば、こっちに帰って来る。」
「そうでしょうか?あいつ、一度こうと決めたらそれを反故にしないからなぁ。心配で堪りませんよ。」

総司はそう言うと、平助の身を案じて深い溜息を吐いた。

伊東一派の離隊とともに、隊内では伊東一派が所属する御陵衛士への参加を希望する隊士達10人が許可なく新選組を脱走し、伊東達が居る高台寺へと駆け込む事件が起きた。
「お願いです先生、僕達も先生とともに・・」
「ここを開けてください、先生!」
「残念だけれど、それは出来ないよ。君達は早く西本願寺へと戻りなさい。」
「先生・・」
意気消沈し、屯所へと戻った彼らだったが、そこでも拒絶され、行き場を失った彼らが向かった先は会津藩本陣がある黒谷だった。
「どうするんですか、土方さん?確か御陵衛士と新選組、双方の隊士の行き来を禁じている筈でしょう?それなのにどうして・・」
「うるせぇ、黙れ!」

(クソッ、まさかこんなことになるとは思わなかったぜ・・)

黒谷へと歳三達と向かう中、双葉は何だか嫌な予感がしてならなかった。

「何だか、おっかねぇことが起きるかもしんねぇ。」
「おっかねぇこと?」
「おいそこ、くっちゃべってねぇで早く来い!」

会津藩本陣で脱走した隊士達と会った土方達は、彼らの脱走を不問に付すが、この事を外部に一切漏らさぬようにという条件を提示した。

「副長、我らは向こうで話をして参ります。」

そう言ったのは、脱走した隊士の一人、茨木司だった。
彼は中村五郎とともに別室へと向かったが、なかなか戻って来なかった。

「なじょしたんだべ・・」
「随分遅ぇな・・」

ゆきと双葉が不審に思っていると、突然会津藩士の一人が慌てた様子で部屋に入って来た。

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Last updated  2013.08.10 12:45:23
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2013.08.09

1866年12月24日。

約4年の任期を終え、京都守護職の任を解かれた松平容保は、家臣たちを率いて会津へと帰ることとなった。
「今まで誠を尽くしてくれてありがとう。そなたには感謝することしかあらへんな。」
「いいえ・・主上(おかみ)あってこその京でございます。」
孝明天皇と謁見した容保は、そう言って彼に平伏した。
「そなたが会津へと帰ることは、酷く寂しいが・・そなたを引き留める理由は何処にもあらへんな。」
孝明天皇は、そう言って笑った。
「殿様が会津に戻られるとは・・寂しくなるな。」
「そうだね。」
登はスマホを取り出すと、暫く何かを考え込んだ後、秀哉の耳元に何かを囁いた。
「大丈夫かなぁ?」
「お願いしてみたら、いけるんじゃないの?」
数分後、スマホを向ける登を前に、容保達は緊張した面持ちでカメラを見つめていた。
「皆さん、そんなに固くならないでください!」
「そんなこと言われても・・」
「なぁ・・」
「魂は吸い取られませんから、大丈夫ですって!」

その一言で安心したのか、彼らは笑顔を浮かべた。

「よく撮れてるね。」
「うん。」

撮影した写真を見ながら、登は嬉しそうに笑った。

一方、新選組隊内では、伊東が本格的に動き出そうとしていた。

「伊東さん、本気なのですか!?」
「僕はいつだって本気さ、内海。まさかこの期に及んで僕を止めようとしているのかい?」
「いいえ。」
「君にはまだまだやることが沢山あるからね。」
伊東は不敵な笑みを内海に浮かべて笑った。
「やっと帰れんだな。」
「んだな・・」
「長かったな・・」
上洛してから4年余りの歳月が過ぎ、遂に帰国できると知った藩士達は家族の顔をそれぞれ思い浮かべながら帰国の日を待ちわびていた。
しかし―
「殿、一大事にごぜぇます!」
「どうした、修理?」
「帝が・・ご崩御されました!」
「帝が・・」

1866年12月25日、孝明天皇崩御。

帝の崩御により、松平容保達の帰国は急遽中止となった。

「なじょして、帝が・・」
「信じらんねぇ・・」
「会津は、どうなるんだべ・・」

藩士達は、会津の行く末を案じていた。

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Last updated  2013.08.09 20:33:48
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「何じゃ、あの伊東ちゅう者は、怪しい奴じゃのう。」

龍馬はボリボリと尻を掻きながら、そう言って桂を見た。

「あの人は必ずや我々の力になってくれると、僕は信じているよ。」
「そうかえ。わしゃ、あいつのことがどうも好かんぜよ。」
龍馬はそう言うと、欠伸をした。
「副長、斎藤です。」
「どうだった?」
「どうやら伊東は、土佐の坂本龍馬という男と会ったようです。」
「坂本龍馬といやぁ、確か薩長同盟に一役買ったって奴か?何者なんだ、そいつはぁ?」
「それが、土佐の脱藩浪士という情報しかわかりません。」
「そうか・・監察方に暫くその坂本って奴の身辺を探れと命じておくか。それよりも、お前は本当に行くのか?」
「ええ・・」
この頃、伊東は近藤達と一線を画し、新選組を脱隊し新しい組織を作ろうとしているという情報を歳三は得ていた。
そのメンバーの中に、平助と斎藤、そして永倉の名があった。
「あの永倉が、伊東派に与するたぁ・・やっぱり、山南さんの事が原因なんだろうか?」
「それはわかりません。以前から、永倉さんは新選組の在り方に疑問を持っているようでした。」
「まぁ、俺が説得して引き留めたのはいいが・・どうなることやら。」

問題が山積みで、歳三は思わず溜息を吐いた。

「伊東のことは任せたぞ、斎藤。」
「承知しました。」

斎藤はそう言うと、歳三に頭を下げた。

「聞いたか?伊東先生が新選組から脱隊するそうだ!」
「そんな・・伊東先生は一体何を考えておられるのだろう?」
「さぁ・・」
伊東の脱隊について隊内に不穏な空気が流れる中、ゆきと双葉は伊東に呼び出され、彼の部屋へと向かった。
「伊東先生、入ります。」
「よく来てくれたね、吉田君・・松崎君も。」
「あの、わたし達に何の用でございますか?」
「隊内でわたしが新選組から脱隊し、新たな組織を作ろうという噂は二人とも聞いているね?」
「ええ・・それが何か?」
「その組織に、君達も加えようと思うんだが・・どうだろうか?」
「それは、お断りさせてください。わだすは、会津の為に戦っておりやすから・・」
「そうか、それは残念だ。松崎君、君はどうだい?」
「わだすも、お断りさせていただきやす。」
「まぁ、すぐには答えは出ないだろう。半月ほど時間をあげるから、ゆっくりと考えてくれたまえ。」
「では、失礼致します・・」

伊東の視線を背後で感じながら、ゆきと双葉は彼の部屋から辞した。

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Last updated  2013.08.09 20:11:24
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徳川家茂が死去し、第15代将軍として一橋慶喜が就任する事になった。

「上様、おめでとうござりまする。」
「かたじけないな、容保。」
慶喜は、そういうと上座で自分に頭を垂れている容保を見た。
「そなたは、帝からのご信頼が厚いときく。これから、わたしの為に働いてくれよ?」
「ははっ!」
二条城を辞した容保の近くに控えていた修理が浮かない顔をしていることに気づいた彼は、修理にこう尋ねた。
「上様について、何か思うところがあるのか、修理?」
「いえ・・上様は、殿のご帰国をどう考えていらっしゃるのか・・」
「国許に帰国するのは、まだ先じゃ。これからは上様と主上をお守りせねばならぬ。」
「そうですね・・」

そう言いながらも、修理は一抹の不安を抱いていた。

「龍馬さん、あなたが今考えている事は何です?」
「実はのう・・これからも将軍一人が政権を握っとると、桂さんの言うようにこん国が滅びしてしまうがじゃ。そうならんよう、帝に政権を返した方がええと・・」
「即ち、大政奉還を将軍に要求すると?」
「そうじゃ。けんど、今将軍にそう言うても、あん一橋はわしの言うことを聞かんじゃろう。」
「ならば、武力で思い知らせたほうがいい。」
「それはいかん。戦は民を疲弊させるがじゃ。2年前の戦で京が焼け野原になったこと、もう忘れたがかえ?」
痛いところを龍馬に突かれ、桂は黙り込んだ。
「あの戦で、我ら長州は賊軍とされた。どれもこれも、全ては会津の所為だ!」
「逆恨みもいいところぜよ、桂さん。」
「よく呑気に構えていられるな、龍馬さん。会津が雇った新選組は、池田屋で君の同志達を殺したじゃないか?彼らが憎くないのか?」
「そんなことをいつも思うた時点で、疲れるだけぜよ。わしゃ、無益な争いは好かん。」

龍馬はそう言ってあくびをすると、鼻くそをほじくった。

「桂さん、お客様です。」
「誰だい?」
「新選組の、伊東様です。」
「そうか、通してくれ。」

桂は部屋に入ってきた伊東を笑顔で出迎えた。

「まさか、敵同士である薩摩と長州が手を結ぶとは、思いもよらなかったよ。」
「薩長同盟を締結させたのは、わたしや西郷さんの力だけではありません。そこにいる坂本龍馬が、わたし達に同盟を締結する決意をさせてくれたんです。」
「ほう・・」
伊東の視線が、桂から龍馬へと移った。
「わしゃぁ、何にもしとらんき。ただ、二人に協力しただけじゃぁ。」
「ご謙遜を。君の事は色々と噂に聞いているよ。」
「伊東さん、と言うたかえ?おまん新選組の者やちゅうに、桂さんと会うてるのはどういてじゃ?」
「彼とは気が合うのだよ。それに、同じ志を持った仲間でもある。」
「それじゃぁおまんも、幕府を倒すべきやと?」
「・・どうやら、あなたには嘘は通用しないようだね。」

伊東はフッと唇を歪ませて笑うと、龍馬を見た。

「僕が考える理想の国家は、天子様がこの日の本を治めること。その目的を果たす為には、上様は邪魔な存在でしかないんだよ。」

彼の大胆な告白に、龍馬は驚愕の余り目を丸くした。

「こりゃぁ、いかんぜよ。伊東さん、新選組の者がそんな事を言うてはいかん。」
「僕は敵に本性を簡単には見せないよ。まぁ、一人だけ僕の本性に気づいた者がいるけれどね・・」

伊東はそう言うと、閉じていた扇子を開いた。

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Last updated  2013.08.09 14:24:17
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