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JEWEL

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連載小説:蒼の騎士 紫紺の姫君

May 14, 2020
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「エリウス、アウルの姫の様子はどうだ?」
「変わりない。だが、あの男が何者なのかが気になる。」
「あの男について調べてみるか。」
エリウス達はそんな話をした後、森の中へと消えていった。
同じ頃、ルチアはアレクサンドリアウ母の病の事を告げようかどうか迷っていた。
「ルチア様、王妃様がお呼びです。」
「わかったわ。」
ルチアがリリアの部屋に入ると、そこにはユリシスとミハイル、そしれレオンの姿があった。
「お母様!」
「ルチア、わたくしはもう永くはないわ・・だから、今貴女に伝えたい事があるの。」
「何、お母様?」
「・・自分が為すべき事を為さい。後悔しないように、選択を間違ってはいけないわ。」
「はい、お母様・・」
「肉体が滅んでも、魂は貴女と共にあるわ・・」

リリアはそう言うと、ルチアの髪を優しく梳いた。

「レオン、ルチアの事を頼むわね・・」
「はい、王妃様・・」
「あなたには、ルチアを頼めるわ・・」

リリアはそう言うと、静かに目を閉じた。

「お母様!?」
「リリア、しっかりしろ!」
「王妃様!」

リリアは最愛の夫と子供達に見守られながら、静かに息を引き取った。

「お母様、お母様ぁ!」

母の棺に取りすがって泣く弟の姿を、ルチアは遠くから眺めていた。

「ルチア様・・」
「アンダルス、来てくれたのね。ガブリエルも。」
「この度は、お悔やみ申し上げます。」
「ありがとう。」

葬儀には、エステア王国夫妻が参列した。

「ルチア、余り気を落とさないでね。」
「ありがとうございます、伯母様。」
「アレクサンドリアとあなたの結婚だけれど、一年延期した方が良いわね。」
「えぇ・・」
「今はゆっくりと休みなさい。」
「わかりました、伯母様。」

こうして、ルチアとアレクサンドリアの結婚は一年延期する事となり、アレクサンドリアは両親と妹と共にエステア王国へと戻って行った。

「今度会う時は、結婚式ですね。」
「えぇ・・」
「ルチア様、早く王宮の中へ入りましょう。」
「わかったわ。」

アンダルスがルチアの肩を抱いて王宮の中へと入ると、黒雲に覆われた空の隙間から激しい雨が降り出した。

「俺はルチア様についているから、ガブリエルは先に帰って。」
「わかった。」

土砂降りの雨の中、ガブリエルが馬車でホテルへと戻ろうとした時、黒衣の男が馬車の前に立ち塞がった。

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Last updated  May 15, 2020 08:15:29 PM
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アンダルスは、何度目かの溜息を吐いた後、針箱から刺繍糸を取り出した。

「どうなさったのです、アンダルス様?溜息など吐かれて・・」
「いや;あ、何だかルチア様とアレクサンドリア様がさぁ、余り上手くいってないような気がするんだよねぇ。」
「どうしてそうお思いになるのです?」
「昨夜の夜会で、アレクサンドリア様はルチア様が辛そうなお顔をしているのに、それに気づこうともしない。」
「あの方は、今まで甘やかされて育って来ましたから、人の気持ちが慮る心などお持ちではないでしょう。」
「ミランダ、貴女って時々毒を吐くんだね。」
「わたくしだって言いたい事は言いますわ。」
ミランダはそう言うと、刺繍を続けた。
「何だかねぇ、あの方は本当、周りを苛立たせる天才だよ。妹のマリア様とは大違い。」
「いくら同じ母親の腹から生まれた兄妹といっても、価値観や性格は全く違うものですわ。わたくしにも二つ違いの兄が居ますけれど、兄は自由奔放な性格で、度々放浪癖がある所為でわたくし達家族を困らせてばかりいましたわ。」
「へぇ、そうなの・・お兄さんの名前は、何というの?」
「ミカエルですわ。兄は作家として大成功を収めましたから、彼の放浪癖が作品の肥やしとなったと思えばいいですわ。」
「ミカエル・・もしかしてあの、冒険小説家のミカエルが、ミランダのお兄さんなの!?」
「えぇ。兄の事をご存じですの?」
「知っているも何も、お師匠様と彼の作品をよく読んでいたよ。恥ずかしい話、お師匠様と会うまでほとんど読み書きができなかったんだ。だからミカエルの作品で読み書きを学んだよ。」
「まぁ、その話を兄が聞いたら喜びますわ。兄は貧困層の子供達への学習支援を行っているんです。」
「へぇ、そうなの。」
「あぁそうだ、今週末に読書会を兄の家で行うんです。よろしければ、アンダルス様も参加なさいませんか?」
「いいの!?」
「兄にはアンダルス様が兄の作品のファンだと伝えておくわ。」
「ありがとう、ミランダ!」
「アンダルスお嬢様、ガブリエル様がいらっしゃいました。
「わかった、すぐ行く!」
「慌てん坊ですね、全く。」
ミランダは部屋から出て行くアンダルスの背中を見送りながら苦笑した。
「ガブリエル、少し痩せた?」
「まぁな。それよりもアンダルス、王妃様の事は本当なのか?」
「うん、王妃様が肺病を患っておられるのは本当だよ。」
「ルチア様は、お辛いだろうな。」
「そうだと思うよ。それなのにあいつったら・・」
「あいつ?」
「アレクサンドリア様だよ。何だかこの結婚、上手くいかなそうな気がする。」
「それはわたしもそう思っている。」
「ねぇ、ホテル暮らしはどうなの!?」
「快適だが、独りは寂しいな。」
「じゃぁ俺が毎晩一緒に寝てやろうか?」
「冗談でもそんな事を言うな、はしたないぞ。」
「あはは、ごめんごめん・・」
「お二人共、紅茶とクッキーをどうぞ。」
「ミランダ、ありがとう。」

ガブリエルと談笑しているアンダルスの姿を、遠くの木の上からエリウスが見ていた。

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Last updated  May 14, 2020 12:00:07 AM
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May 7, 2020
「ルチア様、わたくしの話を聞いていらっしゃいますか?」
「ごめんなさい、少し考え事をしていて聞いていなかったわ。」
「まぁ、結婚の準備でお疲れなのでしょう。」
「えぇ・・」

王妃が肺病に罹っている事は、ルチアと侍医だけが知っていた。

“誰にもこの事は言わないで。ルチア、あなたの結婚式が終わるまで、わたくしは笑顔で居たいのよ。”

リリアからそう言われたルチアは、アレクサンドリアとの結婚式を終えるまで彼女の病気を周囲に黙っている事にした。

「ルチア様とアレクサンドリア様の結婚式、どんなものになるのか楽しみですわね。」
「ドレスは、一流の職人が仕立ててくれるから、試着するのが今から楽しみだわ。」
「ルチア様、アレクサンドリア様がいらっしゃいました。」
「まぁ、アレクサンドリア様が?」
「一体何の用なのかしら?」」
「さぁ・・」

女官達が色めき立っていると、部屋にアレクサンドリアが入って来た。

「突然使いも寄越さずにこちらに来てしまって済まないね。」
「あら、そんなに気を遣わないで下さいな。もうすぐ夫婦になるのですから。」
「まぁ、お熱い事。」
「えぇ、確かに。」
「わたくしに、何か用かしら?」
「君に、これを贈りたくてね。」

アレクサンドリアはそう言うと、侍従に目配せした。


「まぁ、何て美しい・・」
「素晴らしいわ!」

アレクサンドリアがルチアに贈ったものは、美しいアメジストの首飾りだった。

「どうだい、気に入ってくれたかい?」
「えぇ・・とても素敵だわ。」
「それは良かった。今夜の夜会に、その首飾りをつけてくれると嬉しいな。」
「わかったわ・・」

母が肺病に苦しんでいるというのに、ルチアは夜会に出席したくはなかったが、アレクサンドリアの顔を立てる為、彼から贈られたアメジストの首飾りをつけ、夜会に出席した。

「ルチア様。」
「アンダルス、身体の方は大丈夫なの?」
「はい。ルチア様、王妃様の事は聞きました。わたしには王妃様の病状が回復される事を祈るしか出来ません・・」
「そうしてくれるだけでも充分よ。アンダルス、今夜は来てくれてありがとう。」
「ルチア様・・」

ルチアとアンダルスがそんな話をしていると、そこへ侍従を引き連れたアレクサンドリアがやって来た。

「首飾り、つれてくれたんですね。」

彼はそう言った後、屈託のない笑みを浮かべた。

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Last updated  May 7, 2020 12:20:05 AM
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―どうした、わたしが恐ろしいのか?

そう言って自分と同じ真紅の瞳を持つ女を、アンダルスは美しいと思った。

「あなたは、誰なのですか?」
『わたしはエステル、エルシャー族の聖女だ。』
「聖女?」
『わたしは太古の昔から、この国を守ってきた。しかし、わたしの力は今、消えつつある・・』
「あなたの力?」
『力を貸してくれ、アウルの姫よ。』

女―聖女・エステルは、そう言うとアンダルスに抱きついた。

「アンダルス、アンダルスどこだ!」
「ガブリエル、どうしてここに?」
「無事か、ガブリエル?」
「うん・・」

アンダルスが辺りを見渡すと、神殿の中にはエルシャー族の男達の姿も、聖女の姿もなかった。

「薄気味の悪い場所だな・・早く出よう。」
「う、うん・・」

ガブリエルと共に、アンダルスはエルシャー族の神殿を後にした。

―わたしは、いつもそなたを見ているぞ。

生温い風に乗って、聖女の声が聞こえたような気がした。

「・・そう、森でアウルの民と会ったのね?」
「はい、お母様。わたくし、この国の歴史について何も知らない事ばかりだわ。」
「わたくしもお父様も、この国がどうやって築かれたのか、この国の神話がどう生まれたのかを知らないの。だから、調べ物をするには王立図書館へ行きなさい。そこへ行けば、あなたが探している答えが見つかる筈よ。」
「ありがとう、お母様。」
「ルチア、あなただけはどうか幸せに・・」
そう言ってルチアに微笑んだ後、リリアは激しく咳込んだ。

「お母様、しっかりなさって!」
「王妃様!」
「誰か、侍医を呼んで、早く!」

血の気を失ったリリアの顔は、口端に垂れた血の赤さが妙に鮮やかに見えた。

「お母様は‥大丈夫なの?」
「大変申し上げにくい事なのですが、王妃様は肺病を患っております。」
「肺病に・・それは、治るのよね?」
「現在は食事療法と投薬治療で様子を見ようと思います。」
「そう・・」

最愛の母が肺病に罹っているという受け入れ難い現実に直面したルチアは、その夜は一睡も出来なかった。

(わたしはこれから、どうすればいいの?)

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Last updated  May 7, 2020 12:00:18 AM
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May 4, 2020
「ここは?」
「我らエルシャー族が儀式の間として使っていた神聖なる場所だ。」

松明を持っていた男はそう言うと、“儀式の間”へと入った。
そこはガランとしていて、不気味な静けさに包まれていた。

(何だここ、気持ち悪い・・)

「さぁ、こっちだ。」
「ねぇ、儀式って何をするの?」
「知りたいか?」
「知りたいね。どうしてあんたらが俺をここへ連れて来たのか、あんたやアムル達が何故俺の事を“姫”と呼ぶのか・・全てを知りたいんだ。」
「そうか。ならば、まずは我らエルシャー族が何故アウルの民と対立する事になったのかを話そう。」

黒衣の男―エリウスは、アンダルスに向かって静かに自分達一族の歴史を語り始めた。

太古の昔、アウルの民とエルシャー族は仲良く暮らしていた。

森の民・アウルは、森で獲れた獣の肉を、海の民・エルシャー族が獲った新鮮な魚介類と交換した。
そんな日々を送っていた両者の間に溝が生まれたのは、ある出来事がきっかけだった。

それは、年に一度行われる祭りに起きた。

アウルの民とエルシャー族は、その祭りに供物として捧げる一族の姫をそれぞれ美しく着飾らせるのが習わしだったのだが、その年の祭りに出たのはエルシャー族の姫だけだった。

「アウルの姫はどこへ消えた?」
「それが・・」

アウルの長老は、祭りに出る筈のアウルの姫が、エルシャー族の若者と心中した事を話すと、エルシャー族の長老は激怒した。

「我らの未来を奪ったアウルなど、根絶やしにしてしまえ!」
「我らの女神を奪ったエルシャー族など皆殺しにしてしまえ!」

その日から、二つの民族同士は血を血で洗う凄惨な争いが起きた。

「話はわかった。じゃぁ、この神殿で行われる“儀式”って・・」
「お前の命を、我らの神に捧げるのだ。」

エリウスはそう言うと、供物台の上に無理矢理アンダルスを寝かせた。

「やめろ、離せ!」
「覚悟を決めてここへ来たのではなかったのか、アウルの姫よ?」

口元に酷薄な笑みを浮かべたエリウスは、贄の儀式に使う短剣をアンダルスに向けて振り下ろそうとした。

―おやめなさい。

その時、神殿に玲瓏な声が響いたかと思うと、アンダルス達の前に白銀の髪をなびかせた女が現れた。

「おぉ、聖女様!」

女の姿を見たエリウス達は、彼女に向かって恭しく頭を垂れた。

―そなたが、アウルの姫か。

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Last updated  May 4, 2020 03:30:04 AM
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「大変だアムル、あいつらが来た!」
「あいつらって?」
「我々の不倶戴天の敵です。」
「不倶戴天の敵って・・」
「エルシャー族さ。あいつら、あたいらの土地を勝手に奪っていくんだ。」
「アンダルス、どうした?」

ガブリエルが厨房へと戻ると、そこには見知らぬ男達の姿があった。

「アンダルス、彼らは?」
「わたし達はアウルの民です。嵐を避ける為に、こちらへ一夜の宿をお貸し頂けないかと思いまして・・」
「そうでしたか。では、ルチア様にご挨拶なさって下さい。こちらの狩猟小屋の主はわたし達ではないので。」
「では、そう致します。ルチア様はどちらに?」
「案内致します。」

ガブリエルとアンダルスと共にルチア達の居る居間にアムル達が入ると、そこではルチア達が謎の黒衣の男達と睨み合っていた。

「何なの、あなた達!?」
「ここにアウルの姫が居るだろう?今すぐ我らにアウルの姫を差し出せ!」
「何の事なのか、全然わからないわ!」
「ルチア様に手を出すな、クズ野郎!」

黒衣の男とルチアとの間に、腕に入れ墨を彫ったアウルの女・アムリカが割って入った。

「何だ、貴様は!?」
「あんた達はお呼びじゃないよ、帰れ!」
「今すぐアウルの姫を差し出せ!そうしたらこから去ってやる!」
「そのアウルの姫とは何だ!?」
「とぼけても無駄だ!」

しびれを切らした黒衣の男は、そう叫ぶと腰に帯びていた長剣を鞘から抜いた。

ルチアの周りに居た貴婦人達が悲鳴を上げた。

「あんた達が探している“アウルの姫”っていうのは俺だろ?だったら俺だけをここから連れて行け。他の人には手を出すな。」

そう言ったアンダルスは、黒衣の男をにらんだ。

「他の者とは違って、そなたは話がわかるようで助かったぞ、アウルの姫よ。」

黒衣の男はそう言うと、口端を上げて笑った。

「アンダルスをどこへ連れて行く気だ!?」
「貴様には関係のない事だ。」

ガブリエルが黒衣の男をにらみつけていると、男は長剣の刃先を彼に向けた。

「ガブリエル、俺は大丈夫。すぐに帰ってくるから。」
「アンダルス・・」
「行くぞ。」

両脇を黒衣の男に固められたアンダルスは、狩猟小屋を彼らと共に出て、嵐の森の中を歩き始めた。

「俺をどこへ連れて行くつもり?」
「それは、行けばわかる。」
「妙な真似はするなよ?」
「あぁ、わかっているよ。」

やがてアンダルス達は森を抜け、ツタに覆われた白亜の神殿の中へと入った。

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Last updated  May 4, 2020 03:00:05 AM
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Apr 20, 2020
「降って来たわね。」
「えぇ、そうね。酷くならない内に狩りを切り上げましょう。」

雨が降りしきる中、ルチア達は森の中を馬で駆けていった。

だが、狩りの効果は散々なものとなった。

「もう切り上げましょう。」
「そうですね。」

ルチアは角笛で狩りの終了を告げるよう係に命じたが、彼は突然暴れ出した馬を押さえるに必死でそれどころではなかった。

「どう、どう!」
「一体どうしたの?」
「わかりません、急に暴れ出してしまったので・・」
「ルチア様、向こうに休める場所があります!」
「そこで休みましょう。」

一行は、森の向こうにある狩猟小屋へと向かった。

「ここなら当分、雨風をしのげそうね。」
「はい、ルチア様。」

ルチア達は、嵐が過ぎ去るまで狩猟小屋に避難する事になった。

「何か食べられる物を持って来ます。」
「わたしも行こう。」
「二人とも、気をつけてね。」

ルチアはそう言って厨房へと向かうアンダルスとガブリエルを見送った後、窓の外を見た。

嵐は、まだ止みそうになかった。

一方、森の中では嵐を避ける為、木の洞穴に避難している民族衣装の男達は、向こうから“魔物”がやって来る気配を察知した。

「どうしたの?」
「何か良くないものが来る。」
「わたしに任せて!」

男の隣に居た腕に入れ墨を彫った女が、背負っていた矢筒から一本矢を抜き、弓を引き絞った後それを“魔物”に向けて放った。

「当たったわ!今の内に逃げましょう!」
「あぁ・・」

男達は洞穴から出ると、“魔物”から逃れるように、ルチア達が居る狩猟小屋へと向かった。
その厨房では、アンダルスとガブリエルが運良く食糧庫の中に保存されていた、腐っていない食べ物を見つけて歓声を上げた。

「早くルチア様にこの事を知らせないと!」
「君はここに居ろ。わたしがルチア様に伝えて来る。」
「わかった。」

ガブリエルがルチア達が居る居間へと向かったのを見送ったアンダルスは、外から誰かが扉を激しく叩く音がしたので、火掻き棒を掴んで彼は恐る恐る勝手口の扉を開けた。

「やっと会えた、姫様。」
「あなた達、どうしてここに?」
「アムリカ、ここなら安全だ!」

女の背後から厨房に入って来たのは、あの民族衣装の男だった。

「ねぇ、あなた達は何者なの?」
「わたし達は森と共に生きる、アウルの民です。」
「アウルの民?」
「エルムントから、あなた様のお話を良く聞いておりました。」
「お師匠様を知っているの?」
「知っているも何も、エルムントは我ら民族の末裔です。彼は音楽の女神と森の精に愛された逸材でした。自己紹介が遅れました、わたしはアムルと申します。」
「アムル、何故僕を“姫様”と?」
「それは・・」

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Last updated  Apr 25, 2020 09:13:00 AM
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Apr 16, 2020
「お母様、お目覚めになられたのね?」
「ルチア、わたくしはどうして寝室に?」
「急に倒れられたから、びっくりしたわ。」

ルチアはそう言ってリリアの手を握った。

「侍医は貧血を起こしていると言っていたわ。」
「そう・・ルチア、一番大事な時期なのに心配をかけてしまってごめんなさいね。」
「謝らないで、お母様。」
「ルチア、アレクサンドリア様と幸せにおなりなさい。」
「はい、お母様・・」

アレクサンドリアとは本当は結婚したくないが、母を安心させたくてルチアは嘘を吐いた。

彼は傲慢で、ルチアとは全く違った価値観を持っている。
政略結婚とはいえ、ルチアはアレクサンドリアの元へ嫁ぐ日の事を考えると憂鬱な気持ちになった。

そんな中、週末を迎えたルチアは、予定通りに狐狩りを開催した。

「良かったわ、いいお天気で。」
「最高の狩り日和ね。」

貴族達がそんな事を言いながら馬で移動していると、そこへガブリエルとアンダルスがやって来た。

―見て、ガブリエル様よ・・
―相変わらずお美しいわね。
―お隣の方は、あのアンダルス様ね。
―お二人共、お似合いのカップルではない事?
―でも、ねぇ・・

アンダルスは、自分達の噂話に興じている貴族達を冷めた目で見ていた。

「どうした?」
「いや・・暇人はどこにでも居るんだね。」
「そうだな。」

アンダルスは、ガブリエルと共に狩りが行われる場所へと向かった。
そこには既に、ルチアとマリアの姿があった。
だが、アレクサンドリアの姿はなかった。

「本日は狩りにお招き頂き、ありがとうございます、ルチア様。」
「アンダルス、忙しいのにわざわざ狩りに来て下さってありがとう。」
「アレクサンドリア様のお姿がどこにも見当たりませんね?」
「あぁ、お兄様ならお風邪を召されてしまって狩りには参加できないとおっしゃっていたわ。」
「まぁ、それは残念ね。」

ルチアはそう言っていたが、その顔が何処か嬉しそうにアンダルスは見えた。

「さてと、そろそろ皆さんが集まって来た所だし、始めましょうか?」
「えぇ。」

ルチアは侍従に目配せすると、彼は狩りの開始を告げる角笛を吹き鳴らした。

「アンダルス、わたしから離れるなよ。」
「わかった。」

狩りが始まる前は晴れていたが、角笛の音が森の中に響き渡った頃には、次第に空は黒雲に覆われていった。

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Last updated  Apr 25, 2020 09:12:37 AM
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Apr 2, 2020
「あなたは、誰?」
「今まであなた様の事を探しておりました。」
民族衣装の男は、そう言うとアンダルスの前に跪いた。
「今こそ、あなた様のお力が必要なのです。どうか、我らと共に・・」
「お嬢様!」

突然眩い光がアンダルスを照らしたかと思うと、彼の前にビュリュリー伯爵家の使用人達が現れた。
どうやら、居なくなったアンダルスを探しに来たらしい。

「どうなさったのです、こんな夜中に・・」
「ごめん、ちょっとこの人が・・」

 アンダルスがそう言って自分の隣に立っていた筈の男の方を見ると、そこには誰も居なかった。

「お嬢様、お屋敷に戻りますよ。」
「う、うん・・」

(何だったんだろう、さっきの・・)

アンダルスは森で見た光景を勝手に夢だと思い込み、そのまま朝まで眠った。

「嫌な天気ねぇ・・」
「本当に。週末の狩りは大丈夫なのかしら?」
「さぁね・・」

悪天候が続く中、宮廷貴族達が今週末に開催される予定の狐狩りの事を心配しながら話していると、そこへ供の女官を連れたルチアがやって来た。

「あら皆さん、何をお話ししていらっしゃるの?」
「ルチア様。」
「このところ悪天候ばかり続くものですから、週末に予定されていた狐狩りが中止されるのかと、皆さん心配されているようでして・・」
「まぁ、それならば大丈夫ですわ。」
「そ、そうですか・・」
「では皆さん、ご機嫌よう。」
ルチアがそう言って貴族達の元を去ると、案の定彼らの囁き声が聞こえて来た。
「ルチア様とアレクサンドリア様、余り仲がよろしくないそうよ。」
「それはそうでしょう。ルチア様とアレクサンドリア様の性格は正反対ですもの。」
「いくら政略結婚とはいえ、相手が悪すぎるのでは?」

(みんな、暇なのね。)

あんな連中をいちいち相手にしていたらキリがないし、時間の無駄だ。

「ルチア様、こちらにおられましたか。王妃様がお呼びです。」
「わかりました。」

ルチアが女官と共に王妃の執務室に向かうと、部屋の中から母が誰かと言い争うような声が聞こえた。

「お母様、ルチアです。」
「入りなさい。」
「では王妃様、わたしはこれで失礼致します。」

ルチアが母の執務室に入る時、見知らぬ将校と擦れ違った。

リリアは、何処か蒼褪めた顔をした。

「お母様、どうかなさったの?」
「何でもないわ。少し疲れているだけよ。」
「お部屋でお休みにならないと・・」
「えぇ、そうね・・」

リリアがそう言って椅子から立ち上がろうとした時、急に彼女はめまいに襲われ、その場に倒れた。

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Last updated  Apr 2, 2020 12:00:12 AM
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Mar 31, 2020
「ねぇ、本当に実家に戻らなくてもいいの?」
「あぁ、暫くホテル暮らしになる。」
「そう。食事はちゃんと摂ってよね。」
「わかった・」

ガブリエルとホテルの前で別れたアンダルスは、そのまま馬車で帰宅した。

「お帰りなさい、アンダルス。浮かない顔をしているわね?」
「えぇ・・」

アンダルスは、ビュリュリー伯爵夫人に、ローゼンフェルト家の舞踏会で起こった事を話した。

「まぁ、そんな事が・・」
「何だか、俺がガブリエルとお母さんの仲を引き裂いたような気がするんだ。」
「実の親子といえども、価値観が違うものよ。だから、親が良かれと思ってやっていた事が、子供に逆効果になっている事もある。色々と大変なのよ。」
「俺は、どうすればいい?」
「何もしなくていいわ。こういう問題は、赤の他人が入るとややこしくなるものよ。」
「そう・・」
「今夜は遅いし、もう部屋で休みなさい。」
「わかりました、お休みなさい、伯母様。」
アンダルスはそう言ってビュリュリー伯爵夫人に一礼した後、そのまま自分の部屋へと戻った。
鏡台の前に座り、結い上げていた髪をアンダルスが解いていると、レディースメイドのアデリアが部屋に入って来た。
「お帰りなさいませ、お嬢様。舞踏会はどうでしたか?」
「楽しかったよ。」
「それはようございました。」
アデリアによってコルセットの紐を緩めて貰ったアンダルスは、ドレスを脱いで夜着姿となり、寝台の中に寝転がった。
「まぁお嬢様、行儀が悪いですよ。」
「いいじゃん、誰も見ていないし。」
「今夜はお疲れになられた事でしょうから、大目に見て差し上げます。」

アデリアはそう言って溜息を吐くと、部屋から出て行った。
アンダルスが奇妙な音に気づいて目を覚ましたのは、夜中の2時頃だった。

(なんだ、あれ?)

アンダルスが自室から出て奇妙な音が聞こえて来る中庭へと向かうと、自分の足元に柔らかな感触がして、彼を足元にランプを向けると、そこには白いハツカネズミの親子が居た。

「何だ、ネズミか・・」

アンダルスがそう言って安堵の表情を浮かべた後、角笛の音が森の方から聞こえた。

角笛の音色に導かれるように、アンダルスは森の中にある、“ある場所”へと足を踏み入れた。

そこは、遠乗りの際に雨宿りした洞窟の中だった。

「何だ、ここ?こんなに紫水晶(アメジスト)が沢山・・」
「それは我が一族に伝わる宝です。」

突然背後から声をかけられ、アンダルスが振り向くと、そこには民族衣装を着た男が立っていた。

「あなたは・・」
「お迎えに上がりました、我らの姫様。」

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Last updated  Mar 31, 2020 06:58:33 PM
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