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JEWEL

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完結済小説:金襴の蝶

2014.12.17
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※BGMとともにお楽しみください。


「結婚式、ですか?」
「ああ。お前が退院したらすぐに挙げようと思っているんだ。」
「でも、結婚式は来年の6月末に挙げる予定じゃぁ・・」
「お前が病気になって、俺は不安で堪らなかった。」
歳三はそう言うと、千尋の手を握った。
「いつお前が死ぬんじゃないかと思うと、辛くて堪らなかった。でもお前は、俺の元に帰って来てくれた。」
「歳三さん・・」
「俺の我が儘を一度くらい、聞いてくれてもいいだろう?」
「わかりました。でも歳三さん、結婚式はいつ挙げるんですか?」
「二週間後のクリスマスだ。それまでに、元気になれよ。」
「はい。」
琴子の肺を移植した千尋は、心配されていた臓器の拒絶反応や術後の後遺症はなかった。
「このままだと、明日退院できますよ。」
「そうですか。」
結婚式の日まであと数日を控えた日の朝、千尋は看護師からそんな言葉を聞いて思わず嬉しそうに笑った。
「どうしたの千尋ちゃん、そんなに嬉しそうな顔をして。」
「沖田先輩、お久しぶりです。」
「久しぶり。今までの事は、全部土方さんから聞いたよ。」
見舞いに来た総司は、そう言うとベッドの端に腰掛けた。
「さっき看護師さんから、明日には退院できるだろうって言われたんです。」
「へぇ、それは良かったね。結婚式は明後日挙げるんでしょう?」
「ええ。沖田先輩、ひとつ頼みがあるんですが、いいですか?」
「なに?」

千尋は総司の耳元で、何かを囁いた。

「わかった。」
「有難うございます、先輩。」

「土方さん、千尋の事を支えてくれて有難う。」
「そんな、お礼を言われるほどのことはしていません。」

荻野家のリビングで、歳三はそう言うと育子を見た。

「あの子のことを、宜しくお願いしますね。」
「こちらこそ、これから宜しくお願いします、お義父さん、お義母さん。」

2014年12月25日―クリスマス。

横浜市内にあるカトリック教会で、千尋と歳三は永遠の愛を誓い合った。
純白のウェディングドレスを纏った千尋は、まるで天から舞い降りた天使のようだった。

「千尋、これから宜しくな。」
「はい。」

誓いのキスを交わした二人が教会の外に出ると、白い雪が二人の未来を祝福するかのように降っていた。

『幸せにおなりなさい。』

ふと聞き覚えがある誰かの声が背後で聞こえ、千尋は振り返ったが、そこには誰も居なかった。

「千尋、どうした?」
「いいえ、何でもありません。」

そう言って再び千尋が礼拝堂の方を見ると、あの湖で会った女性が彼に笑顔を浮かべながら手を振っていた。

(彼と幸せになります。助けていただいて、有難うございました。)

―完―

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Last updated  2014.12.18 16:52:37
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千尋は、暗い森の中に居た。

何処を歩いていても、動物や人の気配さえ感じられない場所を、千尋は何度もぐるぐるとまわっていた。

(ここは、何処?歳三さんや、母さんたちは何処なの?)

千尋がそんなことを思いながら森の中を歩いていると、森の合間から青く輝く湖が見えてきた。

その湖を見たとき、何処か懐かしい気持ちに千尋は襲われた。

『来たのね。』

湖の奥から女の声が聞こえ、千尋が湖の方を振り向くと、そこには青いドレスを纏った一人の女が立っていた。

(あなたは、誰?)

『わたしはこの世とあの世の境の案内人です。あなたは今、この世とあの世の境目に居るのです。』

女はそう言うと、船着き場に繋がれている船を指した。

『この船に乗れば、あなたは天国に行けます。ですが、あなたはまだ天国には行けません。』

(何故ですか?)

『あなたの帰りを、待っている者がいるから。』

女はそう言うと、千尋の手を握った。
その時遠くで、誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。

『あの声が聞こえるでしょう?あなたは、もうここに居てはいけないわ。』

千尋は女に向かって頭を下げると、湖から去り、再び森の中へと入っていった。
暗い森の中を再び彼が歩いていると、徐々に闇が消えてゆくのがわかった。
闇の代わりに、太陽に照らされた緑の木々の美しさが千尋の目を奪った。

森を抜けると、青い湖に映し出された白亜の城があった。

『やっと戻って来たな。』

自分の肩を叩いた“誰か”を振り返ろうとしたとき、千尋は現実の世界に戻ってきた。

「千尋、俺がわかるか?」
「歳三・・さん?」

病室で意識を取り戻した千尋は、自分の手を握っている歳三が泣いていることに気づいた。

「良かった、俺達のところに戻って来たんだな。」

歳三はそう言うと、千尋を抱き締めた。

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Last updated  2014.12.18 15:21:38
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「千尋君を救えるのは、臓器移植しかありません。」
「では、わたし達が千尋に肺を移植します!」
「申し訳ありませんが、千尋君の肺の型と、ご両親の肺の型は一致しませんでした。」
「そんな・・」
千尋の養母・育子はハンカチを口元に押し当てて泣いた。
「わたし達は、あの子が死ぬのを待つしかないのですか?」
「まだ希望はあります。」
千尋の主治医はそう言って彼の養父母を励ましたが、彼らは自分達の息子が死んでしまうという残酷な現実を突きつけられ、途方に暮れていた。
「土方さん、お久しぶりね。」
「お久しぶりです、荻野さん。」
病院内にあるレストランで、歳三と真紀は荻野夫妻と半年ぶりに会った。
「千尋が助かる方法は、臓器移植しかありませんと、さっき主治医の先生から言われました。」
「そうですか。」
「わたし、これからどうすればいいのかわかりません・・あの子がわたし達の前からいなくなるなんて思ってもみなかったから・・」
育子の言葉を、真紀は黙って聞いていた。
「俺が、あいつに肺を移植したら、あいつが助かるのに・・」
「それは駄目だ。」
「どうしてですか?」
「千尋はお前にスケートをして欲しいと思っている筈だ。お前があいつの為に滑ったあのフリープログラムでの演技に込められた想いは、あいつにちゃんと届いていた。」
歳三はそう言うと、震えている真紀の手を握った。
「千尋は必ず、俺達の元に帰って来る。」
「はい・・」
「少しお腹空いちゃったから、何か頼みましょう。」
「そうですね。」
四人が昼食を取っていると、彼らが座っているテーブルへ琴子の母親がやって来た。
「歳三君、お久しぶりね。」
「お義母さん、どうしてこんな所に?」
「琴子が、事故に遭ってこの病院に運ばれたの。でも、あの子は助からなかった・・」
「お悔やみを申し上げます。」
「有難う。これを、あなたに渡そうと思って・・」
琴子の母親は、そう言うと歳三にある物を手渡した。
それは、臓器提供カードだった。
「もし自分に何かあったら、あなたに渡して欲しいとあの子は言っていたの。」
「そうですか・・」
「歳三君、あの子はあなたや美砂ちゃんに酷いことをしてきたけれど、あの子のことを許してやって。わたしは、あなたにそれだけを伝えに来たの。」

琴子の母親は歳三達に頭を下げると、レストランから出て行った。

「荻野さん、千尋君の移植手術をこれから行うことになりました。」
「先生、それは一体どういうことなのですか?」
「先ほど、千尋君の肺の型と一致するドナーが見つかりました。これで、千尋君は助かりますよ。」
「先生、有難うございます!」

千尋の肺移植手術は成功した。
だが、千尋は未だに意識を取り戻さなかった。

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Last updated  2014.12.17 21:05:25
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「千尋、どうしたんだ!?」
「申し訳ありませんが、面会謝絶です。」
歳三が千尋の病室に入ろうとすると、彼は看護師に止められた。
「一体千尋に何があったんですか?」
「急に容態が急変して、危険な状態です。」
「そんな・・」
病室で倒れた千尋は、そのまま集中治療室へと移された。
(千尋、一体何があったんだ?)
歳三はガラス越しに全身を管で繋がれた千尋を見ながら、必死に泣くのを堪えていた。
「先生・・」
背後で懐かしい声がして歳三が振り向くと、そこにはスペインから帰国した真紀の姿があった。
「真紀、いつ帰って来たんだ?」
「昨夜です。千尋は?」
「あいつは危険な状態だ。」
「そんな・・」
真紀は千尋の姿を見て涙を流した。
「真紀、大会での演技を観たよ。お前は、千尋を励ますためにあの曲で滑ってくれたんだな。」
「ええ。あの曲は、千尋との思い出の曲ですから。」
「そうか。」
「先生、千尋は助かりますか?」
「それは、千尋の生命力次第だ。」

(千尋、戻ってこい・・俺達の元に。)

「経過は順調ですよ。」
「先生、性別は判りますか?」
「ええ。男の子ですよ。」

都内の産婦人科で健診を受けた琴子は、胎児の性別が男とわかり、安堵の表情を浮かべた。
一度目の結婚は失敗に終わったが、今度の結婚は失敗したくない。
「男の子でよかったな、琴子。」
「ええ。きっとお義父様も赤ちゃんの性別を聞いてお喜びになると思うわ。」
「きっと喜んでくれるさ。」
他愛のない夫婦の会話を琴子と交わしながら、彼女の再婚相手・健吾は自宅近くにある見通しの悪いカーブを曲がろうとしていた。
その時、一台のトラックが信号を無視して琴子たちが乗っていた車に突っ込んできた。
事故を起こしたトラックの運転手は無傷だったが、彼がぶつかった琴子達の車は電信柱にたたきつけられ、炎上した。

「交差点で交通事故発生、乗用車に乗っていた30代の夫婦が心肺停止状態です!」

瀕死の重傷を負った琴子達は、千尋が入院している病院に搬送されたが、琴子の夫は死亡し、琴子は脳死状態になった。

「先生、娘は・・」
「残念ですが、娘さんはもう意識を取り戻すことはないでしょう。」

琴子の家族は、琴子の生命装置を外してくれるよう医師に頼んだ。

一方、千尋は未だに生死の境をさまよっていた。

「このままだと、息子さんの意識は一生戻らないかもしれません。」
「先生、息子を・・千尋を助けてください、お願いします!」

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Last updated  2014.12.17 16:18:15
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2014.12.15

翌朝、歳三が寒さに震えながらカーテンを開けると、窓の外は一面雪で覆われていた。

「おはようございます、歳三坊ちゃま。」
「おはよう、宮田さん。今日は寒いな。」
「ええ。こんなに大雪が降ったのは初めてですね。」
「ああ。」

空から降る雪を眺めながら、歳三は千尋の事を想っていた。

「おはよう、近藤さん。」
「おはよう、トシ。最近顔色が悪いようだが、何かあったのか?」
「それは後で話す。」
「そうか・・」

千尋は病室の窓から降り積もった雪を見ながら、歳三が来るのを待っていた。
死への恐怖に怯えながら、千尋の心の支えは毎日歳三の顔を見ることだった。
彼の逞しい腕の中に居れば、死への恐怖や不安などが吹き飛んでしまう。

(歳三さん、早く来ないかな・・)

入院してから千尋は、左手の薬指に嵌めている婚約指輪を無意識に撫でていた。
今日も千尋が婚約指輪を撫でながら窓の外を見ていると、病室に誰かが入って来る気配がした。

「歳三さん、遅かったですね。」
「お久しぶりね、千尋さん。」

千尋の前に立っていたのは歳三ではなく、琴子と見知らぬ男だった。

「琴子さん、どうして・・」
「お義父様から、あなたの事を聞いたのよ。あなた、難病に罹ってもう長くないんですってねぇ?」

琴子の悪意に満ちた、鋭い棘が千尋の胸を深く突き刺した。

「そちらの方は?」
「この人はわたしの今の夫よ。ねえ千尋さん、トシと別れてくださらない?」
「あなたと歳三さんはもう赤の他人同士の筈でしょう?それなのにどうしてわたし達のことを干渉するのですか?」
「“歳三さん”ですって?あなたいつから、トシのことをそんな風に呼ぶようになったの?」

険しい表情を浮かべながら、琴子は千尋に詰め寄った。

「琴子、やめろ。」
「あなた・・」

銀縁眼鏡を掛けた男が、千尋を殴ろうとしていた琴子の手を掴んだ。

「驚かせてしまって申し訳ないね、千尋さん。彼女は今妊娠中だから、余り彼女を刺激しないでくれないか?」
「それはこちらの台詞です。用がないのなら帰ってください。」
「わかったよ。琴子、行こう。」

二人が病室から出て行った後、千尋は苦しそうに胸を押さえて床に崩れ落ちた。

(少し遅くなっちまったな・・千尋、怒っているかな?)

歳三が千尋の病室に向かおうとしたとき、彼は医師や看護師が何やら慌ただしい様子で千尋の病室に入っていくのを見た。

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Last updated  2014.12.16 21:53:40
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リンクに曲が流れ、真紀は無心になって弟への想いを氷上で表現した。

歳三から千尋が肺高血圧症という難病に罹っていることをメールで知らされ、大会を放り出して弟の傍に居てやりたいと思った。
だがアンドレの言葉を受け、自分にとって最高の演技を弟に見せることが自分に今出来る事なのだと真紀は気づいた。
だから今回のフリープログラムでの演技は、ジャンプの回数は少なくして、ステップと表現力で勝負しようと思ったのだった。

彼の演技は、世界中を魅了した。

『マキ、完璧な演技だったぞ!』
『有難うございます、コーチ。』
『得点が出ました、240.4!自己最高記録を更新しました宮下真紀選手、グランプリファイナルシリーズ2連覇達成です!』

画面に表示された得点を見た真紀は、今まで堪えていた涙を流し、アンドレの肩にもたれかかった。

『宮下選手、感動の余り言葉が出てこないようです。』
『今までの彼の躍動感溢れる滑りとは違いましたね。』

病室で歳三とともにテレビを観ていた千尋は、真紀が自分の事を想って滑ってくれていたことに気づいた。

「千尋、お前は一人じゃねぇ。」
「はい・・」
「なぁ、結婚式のことなんだが・・少し早めに挙げねぇか?」
「そんなこと、出来るんですか?」
「それはやってみねぇとわからねぇだろう。」

歳三はそう言って笑ったが、結婚式を挙げる来年の6月末まで、千尋が生きているのかどうかさえわからず、歳三は常に千尋を失うのではないかという不安に襲われていた。

「千尋、俺はもう帰るが・・一人で大丈夫か?」
「大丈夫です。」
「明日、また来るからな。」
「お気をつけて。」
「ああ。」

歳三が病室から出て行くまで千尋は笑顔を浮かべていたが、彼の姿が見えなくなった途端、押し殺した声で泣いた。
本当は不安で堪らないのに、歳三の前では無理に笑顔を作り、彼を心配させないようにしている。

それが、とてつもなく辛い。

ひとしきり泣いた後、千尋は左手の薬指に嵌めている指輪を見た。

(歳三さん・・)

歳三はいつも自分の事を考えて、守ってくれている。
このままだと、自分が歳三の負担になってしまうのではないか―そう思うと、辛くて堪らない。

(誰か、助けて!)

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Last updated  2014.12.16 10:51:40
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「千尋様が、そんなご病気に・・」
「助かる方法は、生体肺移植が確実なものらしいが、それでも完治には時間がかかるらしい。」
歳三はそう言うと、ベッドの端に腰を掛けた。
「俺はまだ、どう千尋の病気の事を受け止めていいのかわからねぇんだ。」
「歳三坊ちゃま・・」
「千尋を失いたくないんだ・・」
宮田はそっと、うなだれる歳三の肩を優しく抱いた。
「宮田さん、トシは?」
「歳三坊ちゃまはお部屋でお休みになられました。」
「そう・・」
「琴子さま、あなたはもうこの家にはお越しにならないでください。」
「それ、どういう意味?」
「お言葉通りです。あなたはもう土方家の人間ではありません。美砂お嬢様とも二度と会わないでくださいませ。」
「使用人の癖に、わたしに逆らう気!?」
「お言葉ですが琴子さま、わたくしは一度もあなたにお仕えしたことなどございません。」

宮田から侮辱され、怒りで顔を赤く染めた琴子はそのまま土方家から出て行った。

上海の大会で優勝した真紀は、スペインの大会に向けて練習に励んでいた。
そんな時、歳三から双子の弟・千尋の病を知らせるメールが届いた。

『コーチ、お願いがあります。』
『どうした?』
『日本に帰りたいんです。弟の事が心配で・・』

真紀がアンドレに歳三から届いたメールを見せると、アンドレは首を横に振った。

『マキ、弟さんのことが心配なのはわかる。だが今の君に出来ることは、最高の演技を弟さんに見せる事じゃないのか?』
『それは、そうですが・・』
『君には世界中にファンが居るが、君の中で最も大切なファンは誰だ?』
『弟です。』
『マキ、君は弟さんの為に頑張るんだ、いいな?』
『はい。』
『じゃぁ、音楽を流して一回通しで滑ってみよう。』

スケートリンクにAIの「Story」が流れ、真紀は曲に合わせて氷上を優雅に滑った。

『演技は完璧だ。ただ、ジャンプをするときの助走が少し足りない。』
『わかりました。』
『大会まで時間がないからといって、無理はするなよ。』

千尋に最高の演技を見せる為に、真紀は大会に向けてトレーニングを積んだ。

スペイン・バルセロナで行われたグランプリファイナルのショートプログラムで真紀は1位に輝いた。
そしてフリープログラムが行われる13日の夜、病室のテレビの前で千尋と歳三は真紀の出番を待っていた。

「次だぞ。」

歳三がそう言ってテレビを観ると、画面には宝石を鏤(ちりば)めた衣装を纏った真紀がリンク上に現れた。
リンクに「Story」が流れ、千尋は昔真紀とカラオケに行った時のことを思い出した。

(この曲、確か二人でカラオケに行ったとき真紀が歌っていた曲だ・・)

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Last updated  2015.11.20 21:47:25
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2014.12.13

やがて手術室のランプが消え、中から担架に載せられた千尋が出てきた。

「千尋、しっかりしろ!」
「荻野千尋さんのご家族ですね?」
「婚約者です。先生、千尋は一体どうして・・」
「詳しいお話は診察室で致しますので、こちらへどうぞ。」
歳三達は診察室で、千尋が肺高血圧症に罹っていることを知った。
「千尋は助かるのですか?」
「それはわかりません。一番効果的な治療法は、生体肺移植しかありませんが、それには千尋さんの身体に大きな負担がかかります。」
「そんな・・」

病院から出た歳三達は、近くにあるファミリーレストランで昼食を取った。

「トシ、これからどうするつもりなの?」
「千尋が助かる方法があるのなら、それに賭けてみようと思う。」
「あなたがそう言うのならいいけれど、生体肺移植手術は簡単じゃないのよ?」
「わかっているさ、そんなことは・・」

歳三はそう言って溜息を吐くと、コーヒーを一口飲んだ。

「姉貴、今日は有難う。」
「家に帰ったらゆっくり休みなさい。」
「わかった。」

ファミリーレストランの前で信子達と別れた歳三は、車に乗り込んでも暫くエンジンを掛けずに千尋の事を考えていた。
千尋は倒れた日の朝、いつものように華道教室に行った。
それなのに、何故こんなことになったのだろうか。
車のクラクションで我に返った歳三は、エンジンを掛けてファミリーレストランの駐車場から大通りへと出た。
「お帰りなさいませ、歳三坊ちゃま。」
「誰か来ているのか?」
「ええ。琴子さまが来ております。」
「そうか・・」
千尋のことを冷静に受け止められないまま、歳三は琴子と客間で会った。
「久しぶりね、トシ。」
「お前今更俺に何の用で会いに来た?」
「美砂のことで話に来たの。わたし、近々再婚することになったの。」
「へぇ・・相手はさぞや俺よりも金を持っている男なんだろうな?」
歳三は琴子が着ている高級ブランドデザインのワンピースを見ながらそんな嫌味を彼女に言うと、彼女は少し苛立った様子で爪を弄り始めた。
「ええ、まぁね。」
「それで、再婚するから美砂を寄越せって言うのか?俺が親権をお前に譲る訳がないだろう?」
「違うの。わたし、新しい彼との子を妊娠しているの。だから、美砂とはもう会わないことにしたの。」
「簡単に自分が腹を痛めた子を捨てられるんだな、お前は。どうせ新しい男と上手くいかなかったらまたその子を捨てるんだろう?」
「どうしてそんな酷いこと言うの?わたし、あなたに祝福して貰いたくて来ているのに・・」
「俺は今、忙しいんだ。お前に構っている暇なんてないんだよ。」

今にも泣き出しそうな顔をしている琴子を客間に残した歳三は、そのまま二階の部屋に入った。

「歳三坊ちゃま、千尋様は?」
「あいつは今、病院だ。」

歳三は宮田に、千尋の病気の事を話した。

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Last updated  2014.12.14 22:59:24
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クリスマスムードが街中に溢れている12月初旬、歳三と千尋は結婚式場であるホテルのチャペルを見学しに来ていた。

「ようこそいらっしゃいました、土方様。」

歳三と千尋がウェディングサロンに入ると、店員が笑顔で二人の方に近づいてきた。

「ドレスの試着をしたいのですけれど・・」
「どうぞ、こちらへ。」
店員とともにドレスルームへと向かった千尋は、様々なデザインのドレスを見て目を丸くした。
「ご希望のドレスをお選びください。」
「はい。」
千尋がドレスルームでドレスを選んでいる頃、歳三はウェディングサロンの応接室で結婚式のプランを立てていた。
「お色直しは、どうされますか?」
「やっぱり、紋付袴と白無垢でお願いします。」
「かしこまりました。」
「何だか、色々と準備する事があって大変だなぁ。」
「わたくしどもが全力でサポートさせていただきます。」
ウェディングプランナーとの打ち合わせを終えた歳三は、ドレスルームへと向かった。
「どうですか?」
「綺麗だな。」
プリンセススタイルのドレスを纏った千尋は、まるで天から舞い降りた天使のようだった。
「このドレスでいいです。」
「そうか。なぁ千尋、お色直しはどうする?」
「白無垢がいいです。」

その日は結婚式と披露宴の衣装を決めたり、プランを決めたりと歳三と千尋は何かと忙しかった。

「少し疲れたな。」
「ええ・・」
歳三とウェディングサロンから出た千尋は、突然めまいに襲われた。
「大丈夫か?」
「少し疲れが溜まってしまっているだけです。」
「そうか。」
この日から千尋が感じ始めていためまいや倦怠感を、彼は単なる風邪だと思い込んで病院にもいかずに放置していた。
「千尋様、少し休まれた方がよろしいのではありませんか?」
「大丈夫です。」
学校が冬期休暇に入り、寒さが厳しくなりつつある12月中旬のある日のことだった。
その日、千尋はいつものように華道教室で稽古を受けていた。

「先生、来年も宜しくお願いいたします。」
「千尋さん、良いお年を。」

稽古の後、千尋が華道の先生に向かって挨拶して退室しようとしたとき、彼は突然呼吸困難に陥った。

「千尋さん、どうしました?」
「息が出来ない・・」
「誰か、救急車を呼んで!」

歳三は千尋が華道教室で倒れたことを聞き、彼が運ばれた病院に向かった。

「千尋は!?」
「トシ、わたし達にもわからないの。」
「どうしてこんなことが・・」

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Last updated  2014.12.13 22:34:44
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2014.12.10

「あいつは、俺と同じ大学い通っていた久田真奈美っていうんだ。真奈美の家は資産家でな、父親が俺の親父と大学時代の同期だった。俺が真奈美と知り合ったのは、同じ剣道部の近藤さんに強引に誘われた合同コンパだった。」
「そんなことがあったんですか・・」
「ああ。真奈美は俺のことを一目で気に入ってなぁ、手作り弁当を剣道部に差し入れたり、俺と同じ講義を取ったりして、色々と俺の気をひこうとしていたが、俺には琴子が居た。」
「そうでしたか・・それで、真奈美さんは?」
「あいつは、琴子を殺そうとしてあいつが住んでいたアパートの部屋に行って、警察沙汰になった。」
歳三はそう言うと、溜息を吐いた。
「それから、あいつは大学を自主退学して、実家に帰った。俺は大学を卒業した。」
「真奈美さんはどうして、今になって歳三さんの前に現れたんでしょうか?」
「さぁな。姉貴の話だと、あいつは子供を連れていたんだろう?」
「ええ。ちゃんと歳三さんに認知して貰うって彼女、言っていました。」
「そうか・・」
歳三が再び溜息を吐くと、彼の上着の内ポケットに入れていたスマートフォンがけたたましく鳴った。
「もしもし?ああ、わかった、すぐ行く。」
「誰からですか?」
「大学時代のダチからだ。真奈美の奴、俺に会わせろと警察で暴れたらしい。」
「そんな・・」
「千尋、俺と一緒に来てくれるか?」
「はい。」

数分後、都内にあるホテルのラウンジで、千尋は歳三と共に彼の大学時代の友人である佐野と会った。

「トシ、久しぶりだな。この子は?」
「俺のフィアンセだ。それよりも佐野、真奈美が警察で暴れたって、本当なのか?」
「ああ。彼女は暫く塀の中に居るようだ。子供は、あいつの母親が引き取るってさ。」
「その子供だが、そいつは本当に俺の子供なのか?」
「その可能性は低いと思うぞ。DNA鑑定したら、すぐにわかると思う。」
「そうか、有難う。」
「トシ、困ったことがあったら俺に頼んできてもいいぞ。弁護士として、力になってやる。」
佐野はそう言って歳三の肩を叩くと、ホテルから去っていった。
「さてと、用も済んだことだし、指輪でも見に行こうか?」
「はい。」
ホテル内にある宝飾店で、歳三と千尋は婚約指輪を選んだ。
「この指輪が可愛いですね。」
「そうだな。お前、指のサイズは?」
「7号です。」
「そうか。すいません、これお幾らですか?」
「これは300万円となっております。ですが、今は特別ご奉仕品ですので、ペアで120万円になります。」
「120万か・・高いなぁ。まぁ、冬のボーナスがあれば大丈夫か。すいません、これをお願いします。」
「かしこまりました。」
「先生、こんな高価な指輪、本当に貰ってもいいんですか?」
「今更何言っていやがる、嬉しそうな顔して。」

左手薬指に嵌められたダイヤモンドの指輪を眺めながら、千尋はそう言って嬉しそうな顔で歳三を見た。

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Last updated  2014.12.12 14:11:29
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完結済小説:紅き月の標

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完結済小説:黒衣の貴婦人

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