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JEWEL

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連載小説:蒼き炎(ほむら)

2019年12月06日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。




クリスティーネとフィリスが王妃の首飾りを見つけた事など知らず、アンジェリーナは娼館で情報収集に精を出していた。

「シオン、あんたに客だよ。:
「わかったよ、マダム。」

アンジェリーナが娼館の奥にある特別室に入ると、そこには近衛隊長・ジリスが居た。

「珍しいね、あなたがこのような所においでになられるなんて。」
「少しお前に伝えたい事があって来たのだ。」
「伝えたい事?」
「急な事で悪いが、わたしは近衛隊長を辞する事になった。」
「何だって?では、後任は誰が?」
「フィリスだ。」
アンジェリーナの脳裏に、あの聡明な青年の顔が浮かんだ。
「そう。」
「それと、お前宛に舞踏会の招待状が来た。」
「ありがとう。」
ジリスから招待状を受け取ったアンジェリーナは、その送り主の顔を知っていたので安心した。
「今お前が娼館に潜伏している事は誰も知らんだろう。そこでだ、数日後に行われる陛下の生誕祭にお前も来て欲しい。」
「わかった。」

(今、わたしを邪魔する者は居ない。仕掛けるなら、この時期しかない。)

数日後、運命の日が来た。

「陛下、ご生誕おめでとうございます。」
「おめでとうございます。」
「ありがとう。」

正装姿のフェリペは、そう言うとクリスティーネの手を取った。

「準備は良いか?」
「はい、陛下。」

その日、街は一日中お祭り騒ぎだった。

通りには露店が立ち並び、大道芸人達が互いの芸を市民達に披露し合っていた。
祭りが最高潮に達したのは、その日の夜の事だった。

「花火が始まるぞ!」
「押すなよ、時間はたっぷりあるんだ!」

花火が始まる数時間前、市民達は川岸に集っていた。
 同じ頃、クリスティーネとフェリペも花火を見に観覧船に乗り込んだ。

「陛下、もうすぐ花火が始まります。」

闇夜に、赤、青、緑、黄、紫と、鮮やかな花火が浮かんでは消えた。

「綺麗ですね・・」
「そなたの方が美しいぞ、クリスティーネ。」
「本当に、アンジェリーナは現れるのでしょうか?」
「現れるとも。」

観覧船で花火を見物した後、ある貴族が主催する舞踏会へと出席した。

「アンジェリーナ、良く来たな!」
「本日はお招き頂きありがとうございます、閣下。」
「花火がよく見えて嬉しいだろう?」
「えぇ・・」

他の娼婦達と共に舞踏会へとやって来たアンジェリーナは、大勢の貴族達に囲まれたレイノルスの姿を見つけて蒼褪めた。

「どうした?」
「いいえ、何でもありません。」

(どうして、あいつがここに?)

「陛下がいらっしゃったわ!」
「お隣にいらっしゃるのは、クリスティーネ様ではなくて?」
「あれは、確か王妃様の首飾り・・」

貴婦人達の言葉を聞いたアンジェリーナが大広間の入口の方を見ると、そこには正装姿のフェリペとクリスティーネの姿があった。
そして、クリスティーネの胸には、自分が身に着けていた筈の王妃の首飾りが輝いていた。
「皆、今宵余とクリスティーネの為に集ってくれて礼を言う。」
フェリペは貴族達に向かってそう言うと、自分の隣に立っているクリスティーネの手を握った。
「今宵皆に集って貰ったのは、クリスティーネについて大事な知らせがあるからだ。」
フェリペの言葉を聞いた後、クリスティーネは貴族達の前に立った。
「クリスティーネを、余は王位継承者として王宮に迎え入れる事にした。」

(どうして、あの小娘が・・)

アンジェリーナが驚愕の表情を浮かべながらクリスティーネの方を見ると、彼女はアンジェリーナの視線に気づいた。

クリスティーネの邪悪とも思えるかのような笑みが、花火に照らされて、彼女の蒼い瞳は、禍々しい光で満ちていた。

―第二部・完―

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最終更新日  2019年12月06日 00時00分18秒
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2019年12月05日



素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。



イグノー酒店は、カバリュスの遺体が発見された現場からすぐ近くにあった。

「すいません、誰か居ませんか?」
クリスティーネとフィリスが店の中に入ると、店の奥から男の悲鳴が聞こえた。
「どうしたのかしら?」
「見に行ってみましょう。」
「あぁ。」
二人が店の奥へと向かうと、そこには木箱の下敷きになっている男の姿があった。
「大丈夫ですか?」
「これが大丈夫だって言えるのかよ?」
フィリスは慌てて男を下敷きにしている木箱を退けた。
「助かったぜ。空の木箱だったから良かったものの、ワインなんか入っていたら擦り傷だけじゃ済まなかったな。」
「あなたが、ナイル=イグノーさん?」
「あぁ、そうだが・・あんたら記者かい?」
「いや、俺達は川であんたが見つけた遺体の知り合いでね。ちょっと話を聞きたくて来たんだよ。」
「そうかい。今コーヒーを切らしちまって、紅茶しか用意できねぇが、いいか?」
「構いませんわ。」

数分後、店主・ナイルによって二人は店のテーブル席でナイルと向き合って座った。

「あの遺体を見つけた時、俺は丁度店の裏口にやって来る猫に餌をやろうとして、運悪く見つけちまったって訳よ。」
「さっき、近所のお婆さんから、遺体は酷い状態だったとか・・」
「おうよ。その所為で俺は上からも下からも垂れ流しちまって、災難だったぜ。」

ナイルはそう言うと、ズボンのポケットから美しい首飾りを取り出した。

「これは遺体が握っていたから、警官隊が来るまでに俺がかっぱらって何処かへ売り飛ばそうとしたんだが、縁起が悪いったらありゃしねぇ。」
「その首飾り、わたくしに譲って頂けないかしら?」
「いいってことよ。お代は取らねぇよ。」
「ありがとう。」

ナイルの店から出たクリスティーネはフィリスと共に辻馬車に乗り込むと、ナイルから受け取った首飾りを見た。

「これは、王妃様の首飾りだわ!」
「何だって、本当か!?」

フィリスがそう言ってクリスティーネが持っている首飾りを覗き込むと、それは紛れもなくアンジェリーナに盗まれた首飾りだった。

「鎖の一部が少し切れているわね。」
「あぁ。もしこの首飾りをカバリュスが死に間際に引きちぎったとしたら、あいつを殺した犯人は一人しかいない。」

フィリスはそう言うと笑った。

「どうしたの?」
「アンジェリーナがとうとう尻尾を出したと思ってな。」
「そのアンジェリーナだけど、突然姿を眩ませたそうよ。一体何処に行ったのかしら?」
「さぁな。だが、俺達はアンジェリーナに反撃する機会が来た、というわけだ。」
「そうね。」

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最終更新日  2019年12月05日 00時00分17秒
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2019年12月04日



素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。

「姉上、カバリュスの遺体を娼館に置いてよかったのでしょうか?」
「マダムが上手く処理をしてくれるだろう。客と娼婦との間に起きた揉め事なんて、マダムにとっては当たり前の事だからね。」
「しかし・・」
「マックス、お前は何も知らなかった・・いいね?」
「はい。」
「邪魔者は一人消したから、これからわたしは家には帰らずにあそこへ戻るとしよう。」
「娼館へ、ですか?一体、何の為に?」
「あそこは、貴族御用達の店さ。表では話せないような事を、安心して話せる場所という訳だ。」
「わかりました。」
「そんな不安そうな顔をするのは、おやめ。時期が来たら、家に戻って来るよ。」

アンジェリーナは不安がる弟の頬を撫でると、邸の前で彼と別れた。

(さてと、これからが勝負だ。)

「あら、お帰りなさい。あのお客様の処理は上手くやったわよ。」
「ありがとう、マダム。これから世話になるよ。」
「こちらこそよろしくね・・まぁ、昔に戻ったようなもんだからね。」

マダムはそう言って笑うと、紫煙をくゆらせた。

翌朝、カバリュスが失踪した事は、瞬く間に宮廷内に広まった。

「カバリュス様が失踪されたなんて、信じられませんわ。」
「奥様が可哀想・・」
「あいつは女の噂が絶えなかったから、どうせ痴情の縺れが何かで殺されでもしたんだろう。」
「あいつなら有り得るよな。」

カバリュス失踪について、女達と男達の反応はそれぞれ違った。

「何だか、こんなに反応が分かれるなんて、少し驚いたわ。」
「だがどちらも共通しているのは下種の勘繰り、下品な好奇心さ。」
「それはそうでしょうね。何せ失踪した場所が場所だけに・・」

 フィリスとクリスティーネがそんな事を話しながら街を歩いていると、向こうの路地に何やら人だかりが出来ていた。

「何かしら?」
「行ってみよう。」

二人が野次馬を掻き分けながら歩いていると、丁度遺体を載せたと思われる担架を持った警官隊が彼らの前を通り過ぎた。

「何があったんですか?」
「昨夜失踪されたお貴族様が、川で見つかったんだと。」

近くを歩いていた老婆にクリスティーネがそう尋ねると、老婆は顔を顰(しか)めながら口と鼻を自分の顔と同じような皺だらけのハンカチで覆った。

「仏さんは、腸を魚に喰われていたようでね、見つけた奴は腰を抜かして小便を漏らしちまったんだと。」
「遺体を見つけた方の名前はわかりますか?」
「あぁ、わかるとも。イグノー酒店のナイルって奴さ。」
「ありがとうございます、お婆さん。」

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最終更新日  2019年12月04日 00時00分16秒
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2019年12月03日



素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。

「わたしに何のご用かしら?」
「そんな事、既にお前なら知っている筈だ。」
アンジェリーナを客間に通した途端、彼女はクリスティーネを壁際まで追い詰めた。
「王妃の日記帳を何処へやった?」
「そんな物、知りませんわ。」
「どうやらお前の所へ来たのは無駄足だったようだ。」
アンジェリーナはそう言って舌打ちすると、そのまま客間から外へと出て行った。
「お嬢様、大丈夫ですか!?」
アンジェリーナと入れ違いに客間へ入って来たスンヒは、そう言いながら慌てて主の元へと駆け寄って来た。
「ええ、大丈夫よ。スンヒ、アンジェリーナは王妃様の日記帳を狙っているわ。日記帳を何処か安全な場所へ移さないと。」
「そうですね、でもお嬢様、一体何処へ隠すのですか?」
「予め決めていた隠し場所があるのよ。ほら、“木を隠すなら森の中”と言うでしょう?」

そう言ったクリスティーネはいたずらっぽく笑った。

「姉上、お帰りなさいませ。」
「マックス、どうやらあの小娘は王妃様の日記帳を持っていないようだ。」
「これからどうなさるのですか、姉上?」
「それは今、考え中だ。」
「先程、カバリュス様がいらっしゃいました。今後の事を話し合いたいそうで・・」

弟の口からカバリュスの名を聞いた途端、アンジェリーナの頭にある事が閃いた。
彼とはかつて、王妃殺害計画を企てた事があった。

「姉上?」
「マックス、お前に手伝って貰いたい事がある・・」

カバリュスは、馴染みの娼館でアンジェリーナが来るのを待っていた。

「カバリュス様、お久しぶりですわね。」
「マダム、アンジェリーナはまだ来ないのか?」
「あら、待ち人ならこのドアの向こうにおりますわ。」

 娼館の女主人はそう言ってカバリュスをアンジェリーナが待つ部屋へと案内した。

「珍しいな、お前が娼婦の振りをして俺を待つとは。」
「さぁ、久しぶりに楽しもうか。」

アンジェリーナはそう言うと、カバリュスに抱き着いた。

「お前の身体は最高だ、アンジェリーナ!このまま天国へ行っちまいそうだ・・」
「お前が行くのは天国ではなく、地獄だよ。」
「な・・」

アンジェリーナの顔を見ようとしたカバリュスは、突然胸の激痛に襲われた。

「お前、さっきのワインに何を入れた?」
「カバリュス、お前は色々と知り過ぎた。」

アンジェリーナは、カバリュスが自分の上で苦しみながら死にゆく様を、何もせず黙って見ていた。

「姉上、マックスです。」
「お入り。」

アンジェリーナはカバリュスの遺体の上から退くと、ベッドの近くに置いてあったガウンを羽織った。

「カバリュス様は・・」
「マダムを呼んでおいで。客が腹上死したと伝えろ。」
「は、はい!」

アンジェリーナは少しずつ冷たくなりつつある男の屍に背を向けて、部屋から出た。

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最終更新日  2019年12月03日 00時00分20秒
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2019年12月02日



素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。

「ここが王家の宝物庫か。」
「ボサッと突っ立っていないで、さっさと目的の物を探すよ。」
「わかった。」

(この声は、アンジェリーナ・・)

「おい、ここに王妃の日記帳があると聞いたが、何処にもないぞ!」
「お前の目は節穴かい?もっと探すんだ!」
「おいお前達、そこで何をしている!」

アンジェリーナ達が立ち去るのを宝物庫の奥に隠れながらクリスティーネが彼らの様子を見ていると、丁度そこへ通りかかった警備兵が彼らを宝物庫から追い出した所だった。

「ここは王族しか出入りを許されぬ場所だ!」
「わかりました、では失礼致します。」

アンジェリーナがあっさりと引き下がるのを見た後、クリスティーネはアンジェリーナ達の姿が見えなくなった事を確認すると、宝物庫から出た。

「おい、貴様そこで何をしている!?」
「わたしは・・」
「その者は、余が特別に宝物庫の鍵を与えたのだ。」
「しかし、陛下・・」
「この者は余が信頼している友人だ。アンジェリーナのような泥棒とは違う。」
「申し訳ありませんでした!」

警備兵が去った後、フェリペはクリスティーネが胸に抱いている王妃の日記帳の存在に気づいた。

「それを見つけたか、クリスティーネ。」
「陛下、これはわたしが持っていてもいいのでしょうか?」
「いいに決まっておる。王妃もきっと、それを望んでおる筈だ。」
「姉上、王族の宝物庫に侵入したというのは本当ですか?」
「あぁ、本当さ。目的の物は盗めなかったけど。」
「何という事を・・」
「マックス、わたしは大いなる目標を達成するまで、決して何があっても諦めないよ。」
「大いなる目標、ですか?」
「あぁ、それはまだお前には教えないけどね。」
「姉上、あなたはこれからどうなさるのですか?」
「それはわたしだけが知っている。お前は何も知らなくてもいいよ。」
「姉上、わたしにもあなたのお手伝いをさせて下さい!たった二人のだけの、血を分けた姉弟ではありませんか!」

マクシミリアンがそう言ってアンジェリーナに詰め寄ると、アンジェリーナはふっと口元を歪めて笑った。

「お前がそう言うのなら、お前にも手伝って貰う。」

アンジェリーナの淡褐色の瞳が、妖しく光った。

一方、帰宅したクリスティーネは、自室で王妃の日記帳を開いて読み始めた。

日記帳には、思春期の少女特有の悩みや葛藤などが綴られていた。

「お嬢様、スンヒです。」
「どうしたの、スンヒ?」

自室から出て、スンヒと共に一階へと降りたクリスティーネは、玄関ホールにアンジェリーナの姿がある事に気づいた。

「少し、わたしとお話ししませんこと?」
「えぇ。」

(一体何を企んでいるの、アンジェリーナ?)

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最終更新日  2019年12月02日 00時00分20秒
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2019年11月29日



素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。

 一瞬、幻でも見ているのではないかとクリスティーネ達は思っていたが、今自分達の前に立っているのは紛れもなく王太后の幽霊そのものだった。

「王太后様、何かわたし達に伝えたい事があるのではないですか?」

クリスティーネがそう王太后に―王太后の幽霊に話しかけると、王太后は、静かにある場所を指した。
クリスティーネ達が、彼女が指し示した場所へと向かうと、そこは王家の宝物庫だった。

「ここに、何かがあるのですか?」

王太后は頷くと、煙のように消えていった。

「宝物庫の中に、王太后様がお伝えしたい物があるのかもしれないわね。」
「ですが、宝物庫の鍵は陛下しか持っていないのでは?」
「わたしが陛下に頼んでみるわ。もう戻りましょうか。」
「はい、お嬢様。」

帰宅したクリスティーネとスンヒは、宝物庫の存在が気になって一睡もできなかった。

「おはよう、クリスティーネ。酷い顔をしているわね。」
「えぇ、少し眠れなくて・・」
「夜更かしは身体に悪いわよ。」
「はい、お母様。」

朝食を食べた後、クリスティーネは宮廷に上がった。

「クリスティーネ、今日は早いね。」
「フィリス、おはよう。」
「クリスティーネ、王太后様の幽霊騒ぎを確めたんだってな?お前付きの侍女から聞いたぞ。」
「その事なんだけど・・」

クリスティーネはフィリスに、昨夜起きた出来事を話した。

「王家の宝物庫には、歴代の王族の私物や宝石類などが納められている。王太后様は、お前に何か伝えたいことがあるんだろうな。」
「わたしもそう思うわ。だから陛下に、宝物庫の鍵を開けて貰えるよう頼んでみるわ。」

クリスティーネはそう言うと、フェリペの私室へと向かった。

「クリスティーネ様、陛下がお待ちです。」

フェリペの私室に入ったクリスティーネは、フェリペが寝台から起き上がっている姿を久しぶりに見た。

「陛下、お身体の具合は大丈夫なのですか?」
「あぁ、侍医から貰った薬を止めたら体調がすっかり良くなった。」
「そうですか。陛下、本日は折り入って頼みたい事が・・」
「そなたの話は、フィリスから聞いておる。宝物庫の鍵はそなたに預けよう。」
「ありがとうございます。」

フェリペから宝物庫の鍵を受け取り、クリスティーネは宝物庫の中へと初めて足を踏み入れた。
そこには、歴代の王族が身に着けていたであろう煌びやかな宝石類などが納められていた。
その中に、赤い革表紙の日記帳が、本棚の中にポツンと置かれていた。
クリスティーネが日記帳を開くと、そこには数ページ分破られた箇所があった。

(もしかして、これが王妃様の日記帳なの?)

クリスティーネがそう思いながら日記帳を見ていると、入口の方から誰かの足音が聞こえてきた。

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最終更新日  2019年11月29日 00時00分16秒
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2019年11月28日



素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。

「お嬢様、本当にやるのですか?」
「やるに決まっているでしょう。スンヒ、あなたも一緒に来て頂戴。」
「はい・・」

王太后の幽霊騒ぎの真相を暴く為、クリスティーネとスンヒは幽霊が出没すると噂されている廊下で幽霊が出没するのを待っていた。

「なかなか現れないわね。」
「幽霊が決まった時間帯に出て来るとは限りませんよ、お嬢様。今夜はもう帰りましょう。」
「まだ少し、ここで待ちましょう。」
「わかりました。」

クリスティーネとスンヒが廊下で幽霊が出没するのを待ってから数時間が過ぎた頃、誰かが自分達の方へと近づいて来る気配がした。

「スンヒ、短剣は持って来たわね?」
「はい、お嬢様。」
「暫く向こうがこちらに近づいて来るまで、動いては駄目よ。」
「はい・・」

コツコツと、幽霊にしては規則的な足音が聞こえ、クリスティーネ達の前でそれは止まった。

「あなたはどなた?」
「それはこちらの台詞だ。お前達はこんな夜中に一体何をしている?」
「そういうあなたこそ、こんな所で何をしているのです?」
「それは答えたくない。」

男の態度に不審を抱いたクリスティーネとスンヒは、男が腰に提げている長剣に気づいた。

「あなたも、王太后様の幽霊を確かめに来たの?」
「幽霊?何の事だ?」
「あなたもてっきりご存知かと思いましたわ。宮廷で王太后様の幽霊が出没するという噂が・・」
「黙れ、そんなものは知らない!」

男は突然そう叫ぶと、長剣の鞘へと手を伸ばした。

男が抜刀する前に、スンヒがチマの裾を翻して彼の鳩尾に鋭い蹴りを放った。

男は悲鳴を上げ、床に転がった。

「大丈夫ですか、お嬢様?」
「えぇ。スンヒ、あなたどこでそんな技を覚えたの?」
「父様から教えられました。」
「そうなの。それよりもこの男に何でここに居たのかを聞かないとね。」
「ええ、お嬢様。」

スンヒとクリスティーネが気絶している男の手足を縛っていると、空気が少し淀んだような気がした。

「ねぇ、何か変じゃない?」
「少し、空気が淀んできました。」

その時、クリスティーネとスンヒの前に、口から血を流している王太后が現れた。

「王太后・・様?」

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最終更新日  2019年11月28日 00時00分26秒
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2019年11月27日



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王宮で幽霊騒ぎがあった事は、瞬く間に貴族達の間で広まった。

―何と不吉な・・この国が滅びる前兆なのかもしれませんな・・
―あぁ、恐ろしい・・

クリスティーネが宮廷に上がると、周りにいる貴族達は皆幽霊の正体について様々な憶測を話し合っていた。
王太后様がこの国の未来を憂いて黄泉の国から甦ったとか、王妃様の魂が王太后様の幽霊を王宮に呼び寄せたとか、皆下らないものばかりだった。

「フィリス、本当に王太后様の霊は現れたのかしら?」
「さぁな。それよりもクリスティーネ、朗報だ。陛下の侍医が、王立警察に緊急逮捕された。」
「それは良かったわ。」
「今、奴は王立警察庁の地下で拷問を受けている。奴が真相を吐くのは時間の問題だろうな。」
「えぇ。」

王立警察による拷問は厳しく、受けた者はその苦痛から逃れたいが為に一時間で自供するという。

「侍医が自供したとしても、アンジェリーナの尻尾を捕まえなければ意味がない。あいつが宮廷に張り巡らせた蜘蛛の巣を全て取り除くには、その元を倒すしかない。」
「長い戦いになりそうね。」
「あぁ。だが、俺は必ず正義は悪に勝つと思っている。」

そう言ったフィリスは、固く拳を握った。



「侍医が王立警察に捕まるとは・・こちらも詰めが甘かったね。」
「もし、あいつが全て話したら・・」
「安心おし、わたしがその前にあいつを消す。」
アンジェリーナはそう言うと、紫煙をくゆらせた。
「さてと、王立警察が侍医の拷問に忙しくしている間に、例の件を進めないとね。」
「既に準備は整っております、アンジェリーナ様。」
「助かるよ、ジュリア。」
アンジェリーナは秘書・ジュリアから“ある物”が入った箱を受け取った。
「それは一体・・」
「あなたが知る必要がないものですわ、ミジュ様。」

箱へと伸ばそうとするミジュを、アンジェリーナはそう言って制した。

「秘密主義なのですね、アンジェリーナ様は。」
「人は誰しも、大きな秘密を抱えているものですわ。」
「では、アンジェリーナ様にも、わたくしにも話せない秘密がおありですの?」
「ミジュ様、好奇心旺盛なのは結構ですけれど、いつかその好奇心があなた自身を殺す事になりますわよ。」

アンジェリーナは少しうんざりしたような口調でそう言うと、部屋から出て行った。

「全く、あの人と居ると頭が痛くて堪らない。」
「医者に診て貰った方が良いのでは?」
「どんなに薬を飲んでも心因性の頭痛には効かないよ。あの人は、時期が来たら始末する。ジュリア、お前もそのつもりでいるように。」
「はい、わかりました。」

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最終更新日  2019年11月27日 00時00分18秒
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2019年11月26日



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「まぁ、雨だわ。」
「お嬢様、早くお部屋の中へお入り下さい!」

 中庭で雨に濡れながら立っている主を見つめたメイド達は、慌てて彼女を屋敷の中へと連れ戻した。

「あら、別に濡れても構わないわ。だって、気持ちがいいのですもの。」
「お嬢様・・」

変わり者の主の言葉を聞いたメイド達は、一斉に溜息を吐いた。

「クリスティーナ、またメイド達を困らせているのか?」
「お父様、お帰りなさい!」

 少女はそう言うと、父親に抱きついた。

「お帰りなさいませ、旦那様。」

部屋の奥から、メイド長のテレーズがやって来た。

「テレーズ、クリスティーナの様子はどうだった?」
「特に何も変わった様子はございませんでした。」
「そうか・・」
「旦那様、アンジェリーナ様からお手紙が届きました。」
「ありがとう。テレーズ、後でわたしの部屋に来なさい。」
「はい。」

テレーズはそう言うと、そのまま厨房へと消えていった。

「メインの魚料理はもう出来てる?」
「はい、出来てます!」
「気を付けて運んで!」
「はい!」
テレーズ指揮の下、メイド達はテキパキと料理を大広間へと運んだ。
この日、少女の16歳の誕生日を祝うパーティーが開かれていた。
「クリスティーナはまだなのか?」
「旦那様、それが・・」
「お嬢様が・・」
「えぇい、そこをどけ!」

 グッテル伯爵はしびれを切らして娘の部屋の中へと入ると、そこには背中の長さまであった髪が肩先までの長さとなっていた。

「クリスティーナ、その髪は何だ!?」
「肩こりが最近酷くなったから、切ってしまったわね。」
「お前は・・何という事を・・」

伯爵は溜息を吐くと、眉間に皺を寄せた。

「お嬢様はこれから社交界入りしても大丈夫なのでしょうか?」
「それを聞くな、テレーズ・・」

早くに妻を先立たれ、グッテルス伯爵は残された一人娘・クリスティーナを溺愛していた。
その所為か、彼女は世間知らずで不思議な言動をするような少女に育ってしまった。

「今からでもお嬢様を寄宿学校へ入れた方が良いのでは?」
「一度あの子を寄宿学校へ入れたが、数日で退学処分となった。」
「まぁ・・」

伯爵の腕に抱かれながら、テレーズは彼の娘をどう始末しようか考えていた。

一方、王宮では、廊下で女官が悲鳴を上げながら警備兵に泣きついた。

彼女は、“亡くなった王太后様の霊を見た”と、その警備兵に訴えた。

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最終更新日  2019年11月26日 00時00分20秒
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2019年11月25日



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 フェリペが眠るのを確認したクリスティーネは、彼の私室前でミジュと会った。

「陛下はもうお休みになられましたの?」
「えぇ。」

ミジュは舞踏会の時と同じように、じっと澄み切った青い瞳でクリスティーネを見つめた。

「わたくしの顔に、何かついていますか?」
「いいえ。陛下は、クリスティーネ様は何処か王妃様に似ていらっしゃるとおっしゃって・・」
「わたくしが、王妃様に?」
「陛下はきっと、王妃様の事を今でも愛していらっしゃるのでしょうね。」
「一体、あなたは何を・・」
「ミジュ様、こちらにいらっしゃったのですね!」

ミジュの侍女の声に、クリスティーネの声は掻き消された。

「ではわたくしはこれで。」

(あの人は、何処か心が掴めない・・)

ミジュが去った後、クリスティーネは何処か寒気を感じた。

「クリスティーネ。」

不意に肩を叩かれ、クリスティーネが怯えながら振り向くと、そこにはフィリスが立っていた。

「フィリス・・」
「どうした、そんなに怖い顔をして?」
「えぇ、ちょっとね・・」
「少し静かな所で話さないか?」
「わかったわ。」

フィリスとクリスティーネは王宮から出て、人気のない王宮庭園の外れにある東屋へと向かった。

「さぁ、ここなら誰も居ない。話すんだ、クリスティーネ。」
「あのね・・」

クリスティーネがフィリスにミジュと交わした会話の事を話すと、彼の顔が少し曇った。

「あの女の言う事は気にしない方がいい。それよりも、噂は本当なのか?」
「陛下が毒を盛られている事?陛下の秘書のエリウス様は、軍医が怪しいとにらんで・・」
「いや、違う。俺が宮廷で聞いた噂は、お前の出生についての事だ。」
「わたしの出生について?」
「あぁ、何でも、お前が王妃様の隠し子だという噂が宮廷で流れている。」
「誰がそんな噂を流しているの?」
「さぁ、それはわからない。」
「何だか不穏な空気が宮廷に流れているようね。」
「クリスティーネ、アンジェリーナが動き出したようだ。」
「アンジェリーナが?」
「あいつは何を考えているのかわからない。」
「そうね。それよりも空が暗くなって来たから、王宮に戻りましょう。」
「あぁ。」
フィリスとクリスティーネが東屋から去った後、近くの木陰からアンジェリーナとミジュが現れた。
「あの二人、気になりますわね。」
「えぇ、そうでしょう。あの二人は必ず始末しないといけませんね。」
「では、わたくしも協力しますわ、アンジェリーナ様。」
「ミジュ様にそう言っていただけると頼もしいですわ。」

やがて、不気味な黒雲が王宮を覆った。

「嵐が来そうね・・」

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最終更新日  2019年11月25日 00時00分18秒
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