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JEWEL

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完結済小説:儚き世界の調べ~幼狐の末裔~

2013年07月08日
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国を二分する壮絶な内戦は、夥しい死者を出し、終結した。

「あれは・・」
「エリス様だ・・」

宮殿までの大通りをエリスが兵を率いて王都を凱旋していると、市民達が彼女達を歓迎した。

「エリス様、万歳!」

どこからかそんな声が聞こえたかと思うと、それはいつしか大通り中に広がっていった。

「エリス様、漸く帰ってきましたね。」
「あぁ・・」

エリスはそう言うと、瓦礫の山と化した神殿を見た。
戦いに勝っても、失われた命は二度と戻ってこない。
そう、彼らの犠牲の上にこの戦いの勝利があるのだ。
エリスはそっと目を閉じると、セシャンと子ども達の笑顔が脳裏に浮かんだ。
彼らはもう、自分の手が届かない場所へと逝ってしまった。
「エリス様、どうされました?」
「いや、なんでもない。」
エリスは涙を拭いながら、宮殿へと入った。
そこは、内戦前と変わらぬ美しい内装が保たれていた。
「ここに戻ってきましたね。」
「ああ・・」
エリスはかつてシンが使っていた部屋へと入った。
そこには、生前シンが愛用していた調度品などがそのまま残されていた。

(ユリノ様、あなた様を手にかけてしまったわたしを、許して下さい・・)

親友であったシンを手にかけてしまった罪の意識を、エリスは未だに感じていた。

“エリス、もういいのよ。わたしはあなたを責めてはいないわ。”

どこからかシンの声が聞こえてきたので、エリスは慌てて彼女の姿を探したが、どこにもいなかった。

『お願い、わたしの代わりに、ね・・』

シンが自分に言い残した最期の言葉を、エリスは突然思い出した。
今感傷に浸っている暇などない。
内戦で傷ついたこの国を、自分が変えなくてはいけないのだ。

(ユリノ様、見ていてください。わたしが必ず、この国を変えてみせますから!)

エリスは俯いていた顔を上げると、部屋から出て行った。

「エリス様、そろそろお時間です。」
「わかった。」

内戦終結後から数ヶ月の歳月が経ち、正装姿のエリスはそう女官に向かって言うと、椅子から立ち上がった。
この日、エリスは女王としてアルディン帝国を治めることとなり、数時間前に戴冠式を終えたばかりだった。
エリスはドレスの裾を摘まんで部屋から出て行った。
「エリス様だ!」
「エリス様がお見えになったぞ!」

宮殿前広場に新女王誕生の瞬間を見届ける為に押し寄せた群衆は、エリスがバルコニーから姿を現したのを見て一斉に色めきたった。
「エリス様、万歳!」
「女王様、万歳!」
エリスは群衆に手を振りながら、彼らに微笑んだ。
彼女は女王として善政を敷き、独身を貫いたままその生涯を終えた。
エリス亡き後、女王の功績を讃(たた)え建立した碑には、こんな言葉が刻まれていた。

“タシャンの女王・エリス。民衆を優しき光で照らす暁の女神”


―完―

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最終更新日  2013年07月08日 22時32分00秒
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「エリス、嬉しいわ。こうしてあなたと戦えるなんて。」
「それは、わたしも同じです、ユリノ様。」

そう言ったエリスは、肩で息をしていた。
それは、シンも同じだった。

彼女達が着ている服は、ところどころ破れていた。

「あなたは、強くなったわね。ねぇエリス、初めて会った時のことを覚えてる?」

まるで歌うかのようにエリスに話しかけながら、シンはエリスの腕を剣で貫いた。

「あなたと宮廷で他愛のない話をしていた頃のことが、昔のことのように思います。」
「あら、そう。」
「そんな無駄話はもう終わりにして、本気で戦いましょうか?」
「ええ。」
シンはそう言って笑うと、エリスに刃を向けた。
「これで、終わりにしましょう。」
「ええ。」
シンとエリスは互いに睨み合うと、突進した。
エリスは、シンの胸に剣の切っ先が吸い込まれていくのを見た。
血飛沫とともに、シンが地面へと倒れたのは、その直後のことだった。
「ユリノ様!」
エリスが駆け寄ると、シンは血の海の中で喘いでいた。
「エリス、ごめんなさい・・あなたのこと、沢山傷つけてしまったわね。」
「いいえ。わたしはいつも・・」
エリスはシンの手を握って何か言おうとしたが、口から出てくるのは嗚咽ばかりだった。
「いいのよ、何も言わなくても。」
「わたしは・・」
「後のことは、お願いするわね。あなたの力で、この国を変えて・・」
「はい、必ず・・」
「お願い、わたしの代わりに、ね・・」
シンはそう言って目を閉じると、彼女の脳裏に、幼き頃故郷で母と弟とともに過ごした平和な日々が浮かんだ。

(母さん・・俺は、どこで間違ったってしまったんだろう。)

“シン・・”

どこかで、母の声が聞こえたような気がした。

“あなたは、もう苦しまなくてもいいのよ。”

(母さん・・)

シンは母が差し出した手を、しっかりと握った。

「ユリノ様、さようなら。」

エリスはそう言うと、見開いていたシンの目を、そっと閉ざした。

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最終更新日  2013年07月08日 12時02分00秒
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2013年07月06日
「エリス様、大変です!敵が、城内に・・」

兵士がその先をエリスに報告する前に、彼は敵の矢を受け絶命した。

「エリスが居たぞ!」
「殺せ!」

敵兵達は血に飢えた目でエリス達を睨みつけると、一斉に銃剣の刃先を彼女達に向けた。

「ひぃぃ!」
「誰か来てぇ!」

女官達が悲鳴を上げながら部屋から出て行こうとするのを目ざとく見つけた彼らは、躊躇いなく彼女達を刺し殺した。
「エリス、覚悟しろ!」
エリスは敵兵達を睨みつけると、彼らに刃を向け、間髪入れずに敵兵の一人の頚動脈を切り裂いた。
「クソ、やりやがったな!」
女だと侮っていた敵兵達は目の前で仲間を殺され、エリスに襲い掛かった。
エリスは必死に応戦したが、多勢に無勢で、彼女はあっという間に劣勢に立たされてしまった。
「女の癖に、俺達に逆らうからだ!」
兵士の一人がそう言って、エリスの頬を叩いた。
「この女、どうする?」
「ヤッちまおうぜ。」
男達が下卑た笑みを浮かべながらエリスを眺めていると、部屋に誰かが入ってくる気配がした。
「お前達、その女はわたしの獲物だ、手を出すな。」
「ユリシス様、しかし・・」
「同じ事を二度も言わせるな、殺されたいのか?」
ユリシスに睨まれた兵士達は、一目散にそこから逃げ出した。
「さてと、邪魔者は居なくなったところだし、これで目障りな君をゆっくりと殺すことが出来る。」
ユリシスがゾッとするような笑みを浮かべながらエリスに迫ろうとすると、彼の背後で銃声がした。
「ユリノ様、何故・・」
ユリシスは驚愕と絶望が綯い交ぜになった顔で拳銃を構えているシンを見た。
「わたくしは、あなたのことなど最初から信じていなかったわ。」
シンはそう言ってユリシスに微笑むと、二発目の銃弾を彼の額に撃ち込んだ。
「エリス、お久しぶりね。」
「ユリノ様・・」
「もう邪魔者は居なくなったから、あなたと漸く本気で戦えるわね。」

そう言ってエリスに微笑んだシンは、女神のように神々しい輝きを全身から放っていた。

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最終更新日  2013年07月06日 23時12分08秒
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「ユリシス様、その手はどうなさいました?」
「わからない。突然指輪が熱くなったんだ。」

ユリシスはそう言うと、焼け爛れた右手の薬指を見た。

「ユリノ様はどちらに?」
「それが・・何処にもお姿が見当たらないのです!」
「何だと・・」
「ユリシス様、大変です!ユリノ様のお部屋に置かれている首飾りと腕輪が・・」
ユリシスが兵士とともにシンの部屋へと入ると、そこには女官達が何やら慌てふためいた様子で首飾りと腕輪を手に部屋の中を行ったり来たりしていた。
「一体何があったんだい?」
「ユリシス様、これを見てくださいませ!」
女官の一人がユリシスの前へと一歩進み出ると、彼に首飾りを見せた。
「これは・・」
首飾りの主役である美しい紅玉(ルビー)が無残にも砕け散っていた。
「腕輪の方は?」
「こちらの紅玉も砕けてしまって・・」
「誰か、首飾りと腕輪に触った?」
「いいえ。わたくし達が来た時には、もうこんな状態でした。」
「そうか、君達はもうさがっていいよ。わたしがこの事をユリノ様に報告するから。」
「はい、ではわたくし達はこれで失礼致します。」

(リンの魂を封じ込めた至宝が砕けたということは、彼女の魂が消えたということか?)

一方、エリスは鏡台の引き出しにしまっていた紅玉の櫛を取り出すと、それは無残にも砕け散っていた。
「何ということでしょう、至宝が砕け散るだなんて・・」
「不吉の前兆だわ・・」
「滅多なことを言うものではありません!」
「ですが女官長様、この城がいつ敵の手に落ちるのかどうかさえわからないのですよ!」
「そうですわ、そんな時に至宝が砕けるだなんて、絶対に悪い事が・・」
「二人とも、落ち着け。まだそうだと決まった訳ではないだろう。」
エリスがそう言って騒いでいる女官達を窘めると、彼女達はバツの悪そうな顔をして俯いた。
「この城は全力でわたしが守る。だからお前達は何も心配することはない。」
「取り乱してしまって、申し訳ありませんでした。」
「いや、いいんだ。」

エリスがそう言って女官達に微笑んだ時、一人の兵士が慌てふためいた様子で部屋に入って来た。

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最終更新日  2013年07月06日 12時02分14秒
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2013年07月05日

ユリシスが放った銃弾を腹に受けたセシャンは、その場で片膝を地面について吐血した。

(くそ、こんなものただのかすり傷だ。)

そう思いながらセシャンが立ち上がろうとした時、頭上からユリシスの冷たい声がした。

「わたしが君に放った銃弾は、呪いがこめられているんだよ。」
「呪いだと・・」
「君が普通の銃弾を受けて死なないことくらい、わかっているからね。」
「貴様、殺してやる!」

セシャンが怒りに震えながら、ユリシスに突進してゆくと、彼は二発目の銃弾を放った。
「無様なものだね。このままわたしに嬲り殺しにされたいのか?」

「ふん、貴様に殺されるよりも、自ら死を選んだほうがマシだ!」
「敵に命乞いするよりも、誇りを持って死ぬ方を選ぶのか・・どこまでも憎らしい男だね、君は。」

ユリシスはそう言うと、セシャンを睨んだ。

「そんなおもちゃなんざ捨てて、かかって来い臆病者!」
セシャンがユリシスを挑発すると、彼は憎しみを込めて刃先に毒を塗った短剣でユリシスの頸動脈を切り裂いた。
大量の出血とともに、セシャンは地面に倒れた。
「これで、もう動けないね。」
そう言ってユリシスが薄ら笑いを浮かべながらセシャンに止めを刺そうとした時、彼が右手の薬指に嵌めていた紅玉の指輪が突然熱を発した。
「くそ!」

ユリシスは悪態をついて指輪を外すと、傷の手当てをする為にその場から立ち去った。

「ありがとう、感謝する。」

朦朧とした意識の中で、セシャンは自分を助けてくれた“誰か”に向かって感謝の言葉を述べると、そっと目を閉じた。

(これで・・終わりか。)

セシャンはうっすらと目を開けると、天に向かって手を伸ばした。

「エリス、俺の分まで生きろ・・」

セシャンはそう呟くと、安らかにその生涯を終えた。

「セシャン様が・・」
「お前は最期まで、自分の華を咲かせたんだな、命の華を・・」

エリスはそう呟くと、静かに涙を流した。

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最終更新日  2013年07月05日 21時22分03秒
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「敵を城の中に入れさせるな!」
「撃て、撃て!」

エリス達は敵の奇襲に対して必死に応戦していたが、圧倒的な敵の兵力の前に、味方の兵士達が次々と倒れていった。

「エリス様、ここは一旦退きましょう!」
「そうだな。」
「エリス、ここは俺に任せろ。」
「セシャン・・」
「そんな顔をするな、またすぐ会えるさ。」
「無事に帰ってきてくれよ、わたしの元に。」
「あぁ、わかってるさ。」
セシャンはそう言うと、エリスの唇を塞いだ。
「行ってくる。」
彼の姿が見えなくなるまで、エリスは彼の背中をいつまでも見つめていた。
それが、最愛の夫と交わした最後の会話だった。
「これじゃぁ、城が落ちるのも時間の問題だな。」
「ではセシャン様、どうすれば?」
「正面から攻める。」
「それは・・」
「危険過ぎると言いたいのか?敵の銃は余り当らないから、気にするな。」
「ですが・・」
「逃げたかったら、お前一人で逃げろ。」
セシャンはそう言って、怖気づく兵士を睨みつけた。
「よし今だ、行くぞ!」
セシャンはそう叫ぶと、敵陣の正面へと突っ込んでいった。
たちまちセシャンに向かって敵が放った銃弾が飛んできたが、彼はそれをものともせずに長剣で薙ぎ払った。
「な、なんなんだあいつは!?」
「化け物だ、化け物に違いない!」
まるで鬼神の如く自分達の元へと迫りつつあるセシャンを見て、敵兵達は恐怖で蒼褪めていた。
「何をしているんだい?」
「あの男、まるで化け物です!」
「銃弾を浴びせても平気な顔をしてこちらへと突っ込んで来るのです!」
「そう・・彼はわたしに任せて、君達はここから退却しなさい。」
「わかりました・・」
ユリシスは退却してゆく兵士達を見送ると、セシャンの前に姿を現した。
「お前は・・」
「本当に、君はわたしの邪魔をするのが好きだねぇ。」

ユリシスはそう言ってセシャンに笑うと、彼に銃口を向け、躊躇いなく引き金を引いた。

「どうかなさいましたか、エリス様?」
「いや、何でもない。」

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最終更新日  2013年07月05日 21時19分44秒
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2013年07月04日
シンが率いる帝国軍は城壁を破ろうとしたが、エリス達敵軍による攻撃の前に幾度も敗走を重ね、その事でシンの苛立ちが増すばかりだった。

「しぶといね、イシュノーの民は。」
「エリスが住民達を言い包めているに違いない。」
シンは少し苛立った様子でイシュノーの地図を見た。
「一体何を考えているんだい?」
「別に何も。」
「そう・・その様子だと、何かよからぬことを考えてるね。」
「まぁね。まだ教えないけどね。」
「秘密主義もいいところだね。」
「それがいい所だと、この前褒めてたじゃない?」
「ああ言えばこう言う・・まったく、いつになったら君は折れてくれるんだろうね?」
「言っとくけど、俺は頑固な性格だから、相手に対して一度も自分の意見を曲げたことがないんだ。」
「厄介な性格だね。それでよく宮廷で暮らせたもんだ。」
「宮廷では本性を隠していたからね。まぁ、貴族達の殆どが頭の中身がスカスカの馬鹿どもばかりだったから、簡単に騙せたけど。」

“清楚で可憐な貴婦人”のイメージから大きくかけ離れた言葉を放ったシンに対して、ユリシスは苦笑するしかなかった。

「エリス様、敵はしぶといですね。」
「ああ。ユリノ様は一度こうと決めたら、梃子でも動かない方だからね。」
「よくあの方をご存知なのですね?」
「ユリノ様は、ごく親しい方にしか本性を見せないお方だから、周囲はコロッと騙されてしまうのよ。まぁ、わたしも今になって思えば、彼女に騙されたのかな・・」
「エリス様・・」
「暫く一人にしてくれないか?今後の事で色々と考えたいことがある。」
「わかりました・・」
兵士が部屋から出て行くのを確認したエリスは、溜息を吐くと近くの椅子に腰を下ろした。

(これからユリノ様は、どんな手を使ってでもこの町を落とそうとするだろう・・こちらも、色々と対策を練らなくては・・)

「エリス様、おられますか!?」
「どうした、何かあったのか?」
「敵に、北の城壁が破られました!」
「何だと、それはいつのことだ!?」
「ほんの数分前の事です。エリス様、どう致しましょうか?」
「住民達を今すぐここへ集めろ!」
「承知!」

敵は、エリスが居る城のすぐ近くにまで迫って来ていた。

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最終更新日  2013年07月04日 22時27分16秒
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2013年07月03日

「狙え、撃て!」

エリスの号令により、兵士達は敵に向かって一斉に発砲した。

「エリス様、命中しました!」
「まだ油断してはなりません!二番隊、前へ!」
兵士達は再び銃を構え、敵に狙いを定めた。
「ユリノ様、城壁の北側へと向かった軍が、壊滅いたしました!」
「何てこと・・」

(エリス、わたくしを本気で殺そうとしているのね・・)

「ユリノ様、どうなさいますか?」
「次の軍を、北に向かわせなさい。何としてでも、この町を落とすのです!」

(いいでしょう、わたくしもあなたのことを本気で殺しに行きますから、首を洗って待っていなさい、エリス。)

シンはフッと笑うと、ユリシスを見た。

「わたしに何かご用かな?」
「この町を早く落とすには、どうしたらいい?」
「さぁ、それはわたしにはわからないね。ただひとついえるのは、戦いが長引けば長引くほど、双方共にダメージが大きくなるということさ。」
「すぐにこの町を落としてみせる。」
シンはそう言うと、決意を宿した瞳で窓からイシュノーの町を眺めた。
「今の内に食べておけ。腹が減ってはまともに敵とは戦えないからな!」
「はい!」
兵士達に食糧を配給しながら、エリスはまだ年端もゆかぬ彼らの横顔を見つめていた。
もし城壁が破られ、敵がこの町に攻めて来たら、彼らの家族はどうなってしまうのだろう。
エリスの脳裏に、燃え盛る神殿と惨殺された神官の遺体が地面に転がっている光景が甦った。
もう二度と、仲間が殺されるのを黙って見ているつもりはない。
この町を、必ず守ってみせる。

「エリス、どうした?」
「何でもない。それよりもセシャン、何の用だ?」
「お前、いい顔をしているな。」
「あぁ、もう迷いは捨てた。」
「それでこそ俺の妻だ。」

セシャンはそう言うと、エリスを抱き締めた。

空は晴れ渡り、町には穏やかな風が吹いていた。

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最終更新日  2013年07月03日 16時40分10秒
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2013年07月02日
その鐘の音が意味するもの―敵襲を知った村人達の顔が恐怖でひきつった。

「まさか・・」
「どういう事だ!?」
「こんな所に敵が攻めてくるなんて・・」
村人達は荷物を抱えながら広場へと集まった時、どこからか銃声が聞こえた。
「何、今のは!?」
「早く逃げろ!」
村人達が逃げ惑っていると、再び銃声が聞こえた。
「皆さんにはここで死んで貰います。」
「ユ、ユリノ様・・」
シンの登場に村人達は一斉に安堵の表情を浮かべたが、彼女のドレスに赤黒い染みがついていることに気づき、彼女から後ずさりした。
「まさか、ユリノ様・・」
「彼らはわたくしが殺しました。」
「わたし達は何もしておりません!」
「敵に協力したあなた方は、もうわたくしの味方ではありません。」
シンはそう言って村人達に微笑むと、拳銃を構えた。
「おやめ下さい、どうか・・」
「お黙りなさい。」
シンは兵士達に目配せすると、彼らは一斉に村人達に向かって発砲した。

「ここでの用は済みました、先を急ぎましょう。」
「はい、ユリノ様。」

(初めてお会いした時は、儚げな印象をお持ちの方だと思っていたが・・わたしのとんだ見当違いのようだ。)

ユリシスはイシュノーと向かう道すがら、馬に乗ったシンの横顔を見ながらそんな思いを抱いていた。
「どうした?」
「いえ・・あなたが冷酷な方だと漸く気づいたのです。」
「わたくしは、目手の為ならばこの手を血で汚すことなどに躊躇(ためら)いなど感じません。」
「イシュノーで何をなさるおつもりで?」
「完膚なきまでに敵を殲滅するだけのこと。ここで無駄話をしていては、遅れを取ります。」
「わかりました。」
シン達がイシュノーへと破竹の勢いで進軍する中、一足先にイシュノーへと到着していたエリス達は、守りを固めていた。
「いよいよですね、エリス様。」
「もうすぐ敵が攻めてくるから、気を引き締めて仕事に取りかかりなさい。」
「承知しました!」

エリスが物見台から城壁の外を眺めていると、真紅の旗を翻しながら敵軍がこちらへと進軍してくるのを見た彼女は、兵士達に向かって声を張り上げた。

「敵襲だ、全員配置につけ!」

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最終更新日  2013年07月03日 16時40分52秒
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2013年07月01日
「ユリノ様だ・・」
「どうしてこんな所にユリノ様が?」
「さぁ・・」

突然村に現れたシンを見て、村人達は動揺を隠せなかった。
そんな彼らに、シンは再び彼らに微笑むと、彼らにこう告げた。

「皆さん、間もなくここに敵が攻めて来ます。その前に、ここから安全な場所へと避難してください!」
「敵が攻めてくるだって?」
「本当なのか・・」
「嘘に決まっているだろう、そんなの・・」
自分の言葉を疑う村人達に対し、シンはこう続けた。
「わたくしが皆さんを安全な場所へと誘導致しますので、ついてきて下さい。」
シンがそう言って歩き出すと、彼女の後ろを村人達がついてきた。
「ユリノ様、本当に敵は攻めて来るんでしょうか?」
「ええ。アイロスが三日で陥落したことは、皆さんご存知でしょう?」
「ですがユリノ様、ここは寂れかけた農村です。アイロスのような大きな町ならともかく、敵がここを攻める理由がわかりません。」
「あなた方がそう思っていても、敵はそうは思っていませんよ・・たとえば、わたくしのように。」
シンはそう言うと、振り向きざまに一人の村人に向かって発砲した。
「な、何をなさいます!?」
「まだわからないの?敵が一体誰なのかを?」
シンはそう言うと、また一人の村人を拳銃で撃った。
「そんな、まさか・・」
「その、“まさか”です。」
シンは拳銃を構えたまま村人達に微笑むと、そのまま妊婦の額を撃ち抜いた。
その銃声を合図に、崖の陰に隠れていた兵士達が村人達の前に姿を現した。
「殺しなさい。」
「はい、ユリノ様!」
「ユリノ様、あなたはわたし達の味方ではなかったのですか?」
「わたくしは一度も、あなた達のことを味方だと思ったことはありません。」
恐怖と絶望に満ちた村人達の顔をシンは冷たく見下ろしながら、撃鉄を起こした。
「命令です、村人達を全て殺しなさい。一人たりとも逃がしてはなりません。」

悲鳴と怒号、そして銃声が裏山に響いた。

「なんだ、今のは?」
「もしかして、敵が攻めて来たのか?」
「まさか・・」

裏山での出来事を知らない村人達がそう話していた時、鐘の音が村中に鳴り響いた。

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最終更新日  2013年07月03日 16時44分12秒
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連載小説:二人の皇太子~アメジストとエメラルド~

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