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JEWEL

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火宵の月幕末パラレル 二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉

Jul 21, 2021
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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


「例の“計画”は進んでいるのか?」
「はい。」
「そうか。それで、新選組とあの“化物”とは、どういった関係が・・」
「それはまだ、わかりませぬ。」
「フン、役立たずめ。」
匡俊を睨みつけていた男は、そう言った後部屋から出て行った。
「旦那様、お茶を持ってきました。」
「入れ。」
「失礼致します。」
すっと襖を開けて中に入ったのは、土御門家から突然姿を消した雪之丞の双子の弟・蛍だった。
雪之丞は有匡が行方知れずとなった同時期に、姿を消したのだった。
「蛍、まだ雪之丞の行方はわからぬのか?」
「はい。」
「お前も何かと気苦労が多いな。」
「えぇ。」
「さ、気晴らしに一杯やれ。」
「ありがとうございます。」
匡俊から酒を受け取った蛍は、それを一気に飲み干した。
「はぁ、久しぶりに飲む酒は美味いです。」
「そうであろう。まぁ、お前に酒を馳走したのだから、今度は儂の頼みを聞いてくれないか?」
「えぇ、何でも。」
「そうか。お前は、兄とは違って賢いようだ。」
「お褒め頂き、光栄です。」
(狸爺めが。)
蛍は匡俊にしなだれかかりながらも、彼を心底軽蔑していた。
「それで?わたくしに頼みたい事とは何です?」
「新選組に、潜入して欲しい。」
「わかりました。」
こうして、蛍は匡俊の命を受け、新選組に潜入する事になった。
「へぇ、新選組に入隊希望ねぇ・・何だか、嬉しくないなぁ。」
「何でだよ、隊士の数が増えれば新選組の名が広まるんじゃ・・」
「馬鹿、ただでさえ狭い所が更に狭くなるだろうが。」
「あ~、そうだったぁ!」
「てめぇら、朝からうるせぇぞ!」
「ひ、土方さん!」
「こんな所で油を売っている暇があったら、稽古でもしやがれ!」
「ひぃぃ~!」
原田達は、そそくさと大広間から出て行った。
「ったく、あいつら気が緩み過ぎだ。」
「まぁトシ、そんなにカリカリするなって。」
「勝っちゃん・・」
「土方さん、こんな所に居たんですか。入隊希望者の面接、やってくださいよ。」
「わかったよ。」
歳三が大広間から出て入隊希望者が居る道場へと向かうと、そこには有匡と打ち合っている少年の姿があった。
「頼もう、頼もう!」
「何だ、こんな朝っぱらから、道場破りか?」
「そうみたいだな。」
道場で朝稽古をしていた有匡達は、屯所の方から甲高い少年の声がして、その手を止めた。
「わたしが見て参ります。」
有匡がそう言って道場から外へと出ると、屯所の前には雪之丞と瓜二つの顔をした少年が立っていた。
「お前は・・」
「お初にお目にかかります、有匡様。わたくしは雪之丞の双子の弟の、蛍と申します。」
「それで?叔父上の差し金でここへ来たのか?」
「えぇ。それに、単にここへ来たのは興味本位です。」
「興味本位、だと?」
「ですから・・」
「ここは、壬生狼の巣だ。お前のような子供が来るような所ではない、帰れ。」
「・・そうですか。では、わたくしの剣の腕をその目で確かめて頂きたい。」
蛍はそう言うと、有匡を見た。
「ほぉ?」
同じ顔をしていても、蛍は兄とは違うらしい。
口でわからぬのならば、その身体で壬生狼の巣に入ろうとした事を後悔させてやるしかない。
「どうした、もう終わりか?」
「参りました。兄には時折有匡様がお強いと聞きましたが、お強い。」
「実戦では、お前は三度死んだ事になっていた。ここはでは、剣すらもまとも振えぬ童は不要。」
「手厳しいですね。」
蛍はそう言って笑うと、少し嬉しそうに笑った。
「有匡様、こちらにいらっしゃったのですか。」
「火月、お前その姿はどうした?」
有匡は、小袖に袴姿の妻を見て驚愕の表情を浮かべた。
「最近薙刀の稽古をしていないなと思って。」
「そうか。」
「おや、そちらが有匡様の細君でしょうか?ならば彼女と手合わせ願いたいものですね。」
「女だから、僕に勝てるとでも?甘い考えですね。」
火月は蛍を睨みつけると、そう言って稽古用の木刀を彼に向けた。
「では、はじめ!」
火月と蛍の試合は、互いに一歩も引かず打ち合っていた。
「強いですね、あの二人。」
「女であっても、守れる術を持たなきゃ、生きてられねぇ。」
「随分と厳しいですね、土方さん。」
「まぁ、“あいつ”とは違う。」
土方はそう言うと、かつて屯所に居た少年の事を思い出していた。
今は亡き芹沢に拾われ、彼の死と共に濁流に呑み込まれ姿を消した少年―井吹龍之介の事を。
「“彼”の事なら心配しなくても大丈夫ですよ。それよりもあの子、どうします?」
「・・暫く泳がせておくか。」
こうして、蛍は新選組に“入隊”した。
「首尾は上々だな。」
「えぇ。」

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Last updated  Jul 23, 2021 12:18:35 PM
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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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有匡は火月に、“呪われた血”の事を話した。

「じゃぁ、有匡様も、僕と同じ・・」
「火月、それは一体・・」
「土方さん、大変だ!」
平助の叫び声を聞いた二人が部屋から出ると、中庭には何処か慌てふためいた表情を浮かべている平助と原田、永倉の姿があった。
「皆さん、どうかされたのですか?」
「どうした、何があった?」
「蔵に居た羅刹が、脱走した!」
「何だと!?日が暮れる前に俺達で羅刹を捜し出すぞ!」
「おぅ!」
土方達が羅刹捜索へ向けて慌しく動き始める中、山南は自室である“薬”の研究に勤しんでいた。
「これで、完成ですかね・・」
そう言った山南の瞳は、妖しく煌めいていた。
「居たか!?」
「畜生、あいつら何処に行きやがった!」
羅刹が蔵から脱走して、数刻が経った。
すっかり日が暮れ、辺りは闇に包まれていた。
(羅刹が人を襲う前に、早く見つけねぇと・・)
土方がそんな事を思いながら有匡と共に羅刹を捜していると、路地の向こうから女の悲鳴が聞こえて来た。
「行くぞ!」
二人が悲鳴が聞こえた方へ向かうと、そこには蔵から脱走した羅刹が、今まさに女の生き血を啜ろうとしているところであった。
「逃げろ!」
「ありがとうございます!」
女は礼を言うと、そのまま土方と有匡に頭を下げた後、闇の中へと消えた。
「血ヲ・・寄越セ!」
「生け捕りにしたいところだが、仕方ねぇ。」
土方はそう言うと、愛刀の鯉口を切った。
有匡も、それに倣った。
「血ヲ~!」
「くどい!」
有匡はそう叫ぶと、羅刹の首を一閃した。
「土方さん、見つかったか!?」
「あぁ。後始末を頼む。」
土方は原田達に指示を出していると、彼の背後に怪しい影が揺らめいた。
「土方さん、後ろ!」
「血ヲ寄越セ~!」
土方は背後に迫って来る羅刹の気配に全く気付けず、刀を振うのが遅れた。
有匡は、己の身体を盾にしながら、羅刹の首に刃を食い込ませた。
「お怪我はありませんか?」
「あぁ。」
有匡の首筋に、羅刹が残した引っ掻き傷があった。
かなり深いものであったが、それはすぐに塞がった。
「有匡・・お前ぇは一体何者だ?」
「隠しても、いつかはバレるだろうと思うから、屯所でお話します・・全てを。」
一方、火月は山南と共に蔵の中へと入った。
「あの、ここは・・」
「ここは、羅刹の実検を行う場所ですよ。」
「羅刹?」
「えぇ。彼らはわたし達新選組が作り上げた“化物”ですよ。」
「ひっ!」
蔵の中に居た白髪紅眼の男達に睨まれ、火月は思わず後ずさった。
「あなたは、彼らの力になってくれると、わたしは思っています。」
「一体、何を言って・・」
「火月さん、あなたの血を少しだけ、頂けませんかね?」
山南はそう言うと、脇差の鯉口を切り、火月ににじり寄って来た。
「山南さん、あんた何してんだ!?」
「土方君、あなたは、彼女が鬼だという事を知っているのですか?」
「あぁ。だからと言って、こいつを傷つけるのは許さねぇ!」
土方と山南の間に、静かな火花が散った。
「火月、怪我は無いか?」
「はい。」
「火月君、あなたを怖がらせてしまって、申し訳ありませんでした。」
「いいえ・・」
「戻るぞ、ここには用はねぇ。」
歳三は牢の中にいる羅刹に一瞥をくれた後、蔵から出て行った。
「それで、俺達に話しておきたい事というのは何だ?」
「実は、わたしと妻は、“呪われた血”を持った一族なのです。」
「“呪われた血”?」
「わたし達は吸血鬼・・人の生き血を啜る化物なのです。」
「吸血鬼・・つまり、あなたは“鬼”という事ですか。」
「はい。」
「先程あなたの奥方を蔵へ連れて行ったのは、羅刹のある“欠陥”をあなた方の“血”でなくせないかと思いましてね。」
「“欠陥”だと?」
「えぇ。それは・・」
山南が次の言葉を継ごうとした時、外から隊士達の怒号が聞こえた。
「今度は一体何があった!?」
「副長、この方が土御門殿に会わせろと・・」
「ええい、離せ!」
そう叫びながら隊士達の腕を払い除けたのは、匡俊だった。
「お久しぶりです、叔父上・・」
「お前に、話がある。」
「今日はもう遅いので、日を改めてくれませんか?」
「では用件だけを伝えておく。お前に土御門家の家督は継がせん。」
「そうですか。」
有匡は匡俊に背を向け、屯所の中へと戻っていった。
「その様子だと、説得は失敗に終わったようだな?」
「も、申し訳ありません!」
「まぁよい、お前の甥とはすぐに会う事になるだろうよ。」

そう言った男は、氷のような視線を匡俊に向けた。

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Last updated  Jul 21, 2021 03:12:06 PM
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Jul 18, 2021



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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「え、はじめ君の事を知りたい?急にどうしたの?」
「はい。斎藤さんは、おいくつなんですか?わたしよりも10よりも年上かと・・」
「え、はじめ君は俺と同い年だよ。」
「じゃぁ、わたしよりも4つ年上なのですか?」
「あ~、はじめ君年の割には落ち着いているからなぁ。」
平助はそう言うと溜息を吐いた。
「平助、こんな所に居たのかと思ったら、人妻を口説いていたのか?」
「いや、違ぇし!」
「火月ちゃん、ここでの生活は慣れたか?」
「えぇ、何とか・・」
「そういや、旦那さんとはひと回りも年の差があるんだよな?どうやって、知り合ったんだ?」
「実は、江戸に居た頃、僕は兄上のお手伝いで寺子屋に来ていたんですその時、有匡様とお会いしました。」
火月はそう言いながら、有匡と初めて会った時の事を思い出していた。
昨年の冬、火月はいつものように箏の稽古が終わり、家路へと着こうとしていた時、途中で寄った寺子屋で、兄・静馬の元へ一人の客人が来た事に彼女は気づいた。
「お嬢様、どうかされたのですか?」
「久、兄上の元に誰か来ているの?」
「お嬢様が恋い焦がれているお方ですよ。」
「まぁ、誰かしら?」
火月がそう言って兄の部屋の方を見ると、丁度部屋の襖が開いて有匡が姿を現した所だった。
「有匡様!」
「火月、久しいな。」
それは、有匡と10年振りに再会した日だった。
「え、ちょっと待って、旦那さんとは初めて会ったんじゃねぇのか?」
「あ、説明不足でしたね。有匡様と僕は、子供の頃からの知り合いで・・」
「そうなのか。でもさあ、あいつ女にモテそうじゃん。土方さんみたいに。」
「えぇ、有匡様は良く女の人から声を掛けられます。中には、恋文を渡された方もいらっしゃいました。」
「それで!?」
「有匡様は、“申し訳ないが、わたしには可愛い許婚が居る”とその方達にお断りしておりました。」
「へぇ、やるねぇ。」
「おいてめぇら、何そこで油を売っていやがる!」
頭上から突然声がしたので火月が俯いていた顔を上げると、そこには眉間に皺を寄せている土方の姿があった。
「土方様、おはようございます。」
「あぁ、おはよう。お前ぇに客だ。」
「僕に、ですか?」
「ここは俺がやっておくよ。」
「ありがとうございます。」
厨を出た火月が正門へと向かうと、そこには一人の青年の姿があった。
「久しぶりだね。」
「あなたは・・」
一方、有匡は総司率いる一番隊と共に、市中巡察をしていた。
「特に、おかしな事はなし、と。」
「最近は長州や肥後の浪士達が辻斬りをしていると噂で聞いていたが、それは偽りのようだ。」
有匡がそう言いながら総司の方を向いた時、突然背後から鳥なのか猿なのかわからぬ声が聞こえて来た。
「キェェ~!」
振り向くと、有匡の元へ口元から涎を垂らしながら刀を振り回している男が向かってゆこうとしているところだった。
男の前には、恐怖で固まっている男児の姿があった。
「危ない!」
有匡は電光石火の勢いで刀を振り回している男に手刀を入れると、男児を突き飛ばした。
男が昏倒した弾みで、彼が振り回していた刀の刃先が有匡の右腕に食い込んだ。
「怪我は無いか?」
「うん・・」
「では、走れ。」
男児が走り去るのを見た有匡は、安堵の溜息を吐いた。
「ねぇ、有匡さん怪我しているよ!」
「大丈夫だ、ただのかすり傷だ。」
「そう?」

刀が食い込んだ有匡の右腕を総司が見ると、そこにはある筈の傷がなかった。

(え?)

「もう、戻りましょうか?」
「うん、そうだね。」

先程自分が見たものは幻だったのか―総司はそんな事を思いながら、屯所へと戻った。

「あれ、火月ちゃんじゃない?」
(火月、その男は誰だ?)
「一緒にわたしと来てくれ、火月。そうすればきっと・・」
「離して下さい、わたしは行きません!」
火月はそう叫ぶと、自分の腕を掴んで離さない青年を睨みつけた。
「火月!」
「有匡様!」
「貴様、わたしの妻に何か用か?」
有匡がそう青年に声を掛けると、彼は舌打ちして雑踏の中へと消えていった。
「火月、大丈夫か?」
「はい・・」
総司達と共に屯所へ戻った有匡と火月は、用意された部屋に入るまで互いに一言も話さなかった。
「あの男は、お前の知り合いだったのか?」
「はい。あの人は、姉様の許婚だった方でした。」
「美祢殿の許婚だった男が、何故お前に用がある?」
「それは、わかりません・・」
「そうか。それよりも火月、お前にどうしても話しておきたい事があるんだ。」
「話しておきたい事、ですか?」
「あぁ、実は・・」

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Last updated  Jul 18, 2021 09:23:29 PM
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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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パチパチと、暖炉で薪が爆ぜる音がした。

『なに、スウリヤの息子を見つけただと!?』
『はい、ご主人様。どうやら彼は、京でサムライの軍隊に入ったようです。』
『そうか。引き続き監視を怠るなと、あいつに伝えておけ。』
『かしこまりました。』
執事が部屋から出て行った後、男は一枚の写真を眺めていた。
そこには妻と、息子・ウィリアム、娘・スウリヤと家族四人で撮った家族写真だった。
スウリヤは、美しく賢い自慢の娘だった。
『何だと、好きな男が出来た!?』
『・・はい。』
スウリヤが恋に落ちた相手は、日本人の男だった。
『許さんぞ、外国人の男との結婚など!』
『では、わたくしはこの家と縁を切ります!』
『勝手にしろ!』
スウリヤは家から出て行き、遠い異国の地で二人の子を儲けた。
その頃、ウィリアムが病に倒れ、そのまま亡くなった。
『ウィリアム、何という事・・』
『これから、この家はどうなってしまうのでしょう?』
『スウリヤ様はこの家と縁を切られているから、この家には跡継ぎが・・』
『じゃぁ、この家は・・』
『あなた、今からでも遅くはないわ。スウリヤをこの家に呼び戻しましょう。』
妻のエリーゼは、自分にそう言ったのだが、スウリヤを家に呼び戻す事は出来なかった。
しかし、エリーゼは諦めなかった。
彼女は探偵を雇い、スウリヤが日本で夫と子供達と共に暮らしている事を突き止めた。
『いつか、日本に行きたいわ。孫達を、抱き締めてあげたい。』
エリーゼは病に臥せり、亡くなるまでスウリヤ達に会いたいと話していた。
『スウリヤが、消えた?』
『はい。』
『そうか・・必ず見つけ出して、殺せ。』
『それは・・』
『あいつは、忌まわしい血が流れている。これ以上、その血を受け継ぐ者が居てはならんのだ!』
男―アレクサンダーは、自分達一族に流れる“呪いの血”を心底嫌っていた。
アレクサンダーに命を狙われている事を知ったスウリヤは、長い間身を隠すように暮らしていた。
そんな彼女が、二十年以上の時を経て有匡の前に現れた理由は、彼の妻である火月が、同じ“呪いの血”を持った一族であることを知ったからだった。
“呪いの血”―それは、人の生き血を啜る、吸血鬼の遺伝子。
自然治癒力が高く、強靭な精神力と超人的な体力を持った彼らは、中世に於いて魔女狩りの対象となった。
“呪いの血”を持つ一族は、その能力故に短命な者や精神に異常をきたす者が多い。
スウリヤは、己の中を流れる“呪いの血”を、物心ついた頃から憎んでいた。
彼女が唯一出来る事、それはこの血を次世代へと継がせない事だった。
だから、有仁と夫婦となり、有匡を授かった時、スウリヤは有仁に“呪いの血”の事を打ち明けた。
すると彼は、スウリヤにこう言った。

―血など関係ない。わたしは、君を愛している、ただそれだけだ。

この人と、生きてゆきたいと思った。

それなのにスウリヤは、彼の元を離れた。

彼と、子供達を守る為に。

(どうか、有匡には幸せになって欲しい。)

スウリヤはそんな事を思いながら、ゆっくりと目を閉じて眠った。

“有匡、わたし達には、誰にも知られてはならない秘密がある。”

あれは自分がまだ五歳の頃、スウリヤに彼女の自室に呼ばれた有匡は、彼女が手にしていた小太刀で己の掌を傷つけたので、恐怖の余り泣き叫んだ。

“大丈夫だ。ほら、見なさい。”

スウリヤはそう言って、有匡に小太刀で傷つけた掌を見せた。
そこには、何もなかったかのように傷口が完全に塞がっていた。

“わたし達には、人とは違う血が流れている。その血は、他者にとっては脅威になる。だから、この事は誰にも言ってはいけないよ、いいね?”
“はい、母上・・”
“良い子だ。”

あの時の、母の少し悲しそうな笑みが、有匡は未だに忘れられずにいた。

「有匡様、おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
「あぁ。久しぶりに、母と話す夢を見た。」
「そうですか。」
「火月、後でお前に話しておきたい事がある。」
「わかりました。」

朝餉の支度を火月が厨でしていると、そこへ斎藤がやって来た。

「斎藤さん、おはようございます。」
「あんたの旦那は、何処にいる?」
「有匡様でしたら、巡察へ行かれました。」
「そうか。」

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Last updated  Jul 18, 2021 09:19:59 PM
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May 1, 2021



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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「そうか。ここを辞めてしまうのは残念やなぁ。」
「お世話になったのに、申し訳ありません。」
火月は菊にそう言って頭を下げると、彼女は突然大声で笑いだした。
「女将さん?」
「阿呆やなぁ。そないな事でうちが怒るかいな。」
「えぇ・・」
「あんたが人妻やったやなんて、知らんかったわ。」
「火月ちゃん、ご主人と仲良うな。」
「はい!」
こうして、火月は池田屋の女中を辞めた。
「これから、お世話になります。」
「あぁ、こちらこそ宜しく頼む。」
火月は隊の風紀を乱さぬよう、土方から男装を命じられたが、彼女は快く受け入れた。
「本当にいいのか?」
「はい。有匡様のお傍に居られるのなら、これ位苦ではありません。」
「そうか。」
有匡は幹部隊士だけが持つことが出来る休息所を与えられ、そこに火月を住まわせるようになった。
突然現れた金髪紅眼の美少年に、隊士達は一斉に騒ぎ出した。

―なぁ、あいつ一体誰なんだ?
―さぁ・・

金髪紅眼という珍しい容姿故なのか、火月は隊内では目立つ存在となっていた。

「お前ぇを何でここに呼んだのか、わかるよな?」
「はい・・」

火月が隊内で噂となっている事を聞いた土方は、有匡を呼び出した。

「お前ぇの女房は良く働いてくれている。だがな、あの容姿はかなり目立つ。今、京では未だに尊王攘夷を叫んで異人斬りをする輩がうろついていやがるから、そいつらに目ぇつけられねぇようにしておけ。」
「わかりました。」

有匡はそう言うと、土方に向かって頭を下げた。

「そういえば、お前ぇの失踪した母親の消息だが・・監察方に色々と探って貰ってはいるが、中々掴めねぇ。」
「そうか。」
有匡は、スウリヤが何故実の父親から命を狙われているのかがわからなかった。
一体どんな理由や事情があって実の娘を殺そうとしているのか―有匡は全てを知りたかった。
「有匡さん、こちらにいらしたのですね。」
「井上さん。」
井上源三郎は、厨で昼餉の支度をしている有匡の姿を見つけると、彼の元へと駆け寄って来た。
「この文を、必ずあなたに渡すように言われたんだ。」
「あぁ。」
井上から文を受け取った有匡は、それが母の字で書かれたものである事に気づいた。
「井上さん、あなたに文を渡した人は・・」
「あぁ、まだ屯所の近くに居ると思うけれど・・」
「失礼!」
「有匡さん!?」
屯所から飛び出した有匡がスウリヤの姿を探していると、少し離れた所に壺装束姿のスウリヤが立っていた。
「久しいな、有匡。」
「母上・・」

二十数年余の、母との再会に、有匡は何も言えなかった。

何故、自分達の元を去ったのか。

何故、実の父親から命を狙われているのか。

尋ねたい事は山程あったのに、いざ本人を前にすると有匡は何も尋ねられなかった。

「今まで、お前達には辛い思いをさせてしまって済まなかった。」
「母上・・」
「わたしが伝えたい事は、全て文に書いてある。」
「待ってください、母上!」
「妻を大切にしろ、有匡。」

スウリヤはそう言うと、有匡の前から去っていった。

「有匡様、どうかなさったのですか?先程から、浮かない顔をされているようですが・・」
「実はな・・」

有匡がスウリヤに会った事を火月に話すと、彼女は驚きの余り目を丸くした。

「お義母様は・・」
「何も話してはくれなかった。」
「そうですか。」
「ただ、妻を大切にしろと言われた。」

有匡はそう言いながら皿を洗っていたが、手を滑らせてしまい、割れた皿の破片で指を切ってしまった。

「大丈夫ですか!?」
「あぁ、大丈夫だ。」

有匡がそう言いながら指先を見ると、そこにはある筈の傷口が塞がっていた。

“わたし達は、誰にも知られてはならない秘密がある。それは―”

「有匡様?」
「何でもない。」

有匡は無理に笑顔を浮かべると、火月を安心させる為に切った指先を見せた。

「ほら、大丈夫だろう?」
「良かった。」

火月が安堵の表情を浮かべているのを見た有匡は、決して“秘密”を彼女には話さないでおこうと決めた。

“火月、お前は・・”

何処からか、誰かの声が聞こえて来た。

“お前は・・お前だけは、幸せに・・”

誰かが幼い自分を抱いてすすり泣いている。
鳴り響く銃声と村人達の悲鳴。

「火月、どうした?うなされていたぞ?」
「昔の夢を見ていたんです。」
「そうか・・」

有匡はそう言うと、火月を抱き締めた。

「これで眠れるか?」
「はい・・」

“お前は・・鬼なんだ。”

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Last updated  May 1, 2021 10:23:36 PM
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Apr 22, 2021



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

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1863年、冬。

有匡が上洛し消息を絶ってから、半月が経った。
池田屋の女中として働きながら、火月は夫の消息を探る日々を送っていた。
それは、有匡も同じだった。
土御門家の追手と斬り結んだ際に負った傷も癒え、彼は新選組の一員として隊務に励んでいた。

―おい、見ろよ・・
―あぁ、アレが・・
―“副長のお気に入り”だろ?

廊下を有匡が歩いていると、擦れ違いざまに彼は平隊士達から陰口を叩かれた。
だが有匡が動じずに居るのを彼らは、舌打ちしながら去っていった。
江戸に居た頃、彼らのような輩から色々と嫌がらせのような事をされて来たが、気にするのは損だと思い、黙々と仕事をしていた。
(全く、うるさい奴らだ。)
昼餉の後、厨へ入ると、そこには何処か険悪な雰囲気を纏った山崎烝と総司が睨み合っていた。
「沖田さん、あなたは何故副長の邪魔ばかりするのですか?」
「別に。土方さんがいちいち僕のちょっかいに過剰反応するからつい・・」
「全く、あなたという方は、幹部の自覚が・・」
「さてと、もう巡察に行かないと!」
総司は突然そう叫んだ後、厨から出て行った。
「沖田さん、まだ話は・・」
「“また”ですか。」
「はい。沖田さんには困ってしまいます。」
山崎はそう言って溜息を吐いた。
「山崎さんは、沖田さんとは長いのですか?」
「いいえ。わたしは大坂生まれの京育ちで、沖田さんや土方副長は江戸の出身だとか。確か、多摩の試衛館とかいう剣術道場の・・」
「あぁ・・」
その道場の名は、江戸に居た頃よく耳にしていた。
(まさか、な・・)
時折自分が通っていた道場に、良く薬の行商をついでに剣の稽古に来ていた黒髪の美丈夫は、何処か土方に似ていた。
「土御門殿、これから道場へ?」
「はい。斎藤さんは、巡察に?」
「えぇ。斎藤さん、試衛館という道場の名はご存知ですか?」
「はい。俺は事情があってそこの食客となりました。それが何か?」
「そうですか・・ありがとうございます。」

間違いない。
あの薬売りは土方だ。

そう確信した有匡は、巡察へ向かう前に副長室へと向かった。

「トシ、彼は大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、あいつは口が堅いし信用できる。」
「そうか。」
「それよりもトシ、綱道さんの消息はまだ掴めないのか?」
「あぁ。こんな時、“あいつ”が居ればな・・」

(“あいつ”とは誰なんだ?)

巡察中、有匡は近藤と土方の会話の内容を思い出しながら歩いていると、一人の町娘とぶつかった。
「すいませんっ!」
「いや、大丈夫だ。怪我は無いか?」
有匡がそう言って自分をぶつかった町娘の方を見ると、彼女は自分が捜していた妻だった。
「火月・・」
「有匡様・・」
再会できた喜びで、二人は人目を憚らず抱き合った。
「で、その人が君の奥さんなの?」
「火月と申します。」
「今まで、何処で何をしていたんだ?」
「実は・・」
火月は有匡に、上洛してから池田屋の女中になるまでの経緯を話した。
「そうか・・父上は、元気にしているか?」
「はい。」
「良かったじゃない、奥さん見つかって。これからどうするの?」
「暫く池田屋で女中として働きます。女将さんには事情を説明します。」
「わかった。火月、今まで辛い思いをさせて済まなかった。」
「いいえ、僕は有匡様がご無事でいらっしゃったのが何よりも嬉しいです・・」
火月はそう言って、大粒の涙を流した。
「わたしも、同じ事を思っていた。」
有匡はそう言って泣きじゃくる火月の背を優しく撫でた。
屯所で火月と有匡が互いの再会を喜んでいる頃、京の土御門家では有匡の生存を知った匡俊が口元に笑みを浮かべた。
「そうか、生きていたのか・・」
「はい。ですが、ひとつ問題がございます。」
「問題、だと?」
「はい、それが・・」
匡俊は、自分の甥が妻帯している事を知り、激怒した。
「おのれ、有匡め、勝手な事を!」
「如何なさいますか、お館様?」
「まぁまぁ、一体何を大声で騒いでいらっしゃるのですか?」
サラサラと衣擦れの音が聞こえて来たかと思うと、匡俊の妻・福子が局に入って来た。
「福子・・」
「甥の結婚はめでたい事。そないに目くじらを立てんでもよろしい。」
「そ、そうだな・・」
「それよりもお前様、余り有仁様に迷惑をかけたらあきまへんえ?」
「あ、あぁわかった・・」
匡俊にとって唯一、福子は頭が上がらない存在であった。
「父上、あやつの事は・・」
「放っておけ!」

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Dec 12, 2020



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

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「これは、スウリヤ・・わたしの母上の、ロザリオだ。」
「ということは、お前ぇはキリシタンか?」
「いや、キリシタンは母だ。母は、わたしが幼い頃姿を消した」
有匡は歳三達に、上洛した後の事や江戸に居た頃のことを話した。
「そうか・・」
「土御門家といえば、攘夷派の公家でしょう。もしかして君、長州の間者だったりして。」
「滅多な事を言うな、総司。」
「訳ありのようですね?」
「母は、実の父親から命を狙われて、わたし達の前から姿を消したと、母の友人から聞いた。」
「そうか。」
「土御門家は、わたしが生きて江戸へ戻る事は困るらしい。」
「だから、君に深手を負わせた、という事ですね。」
そう言った山南敬助の眼鏡が、キラリと光った。
「すいません、どなたかおりませぬか~!」
屯所の門の近くから、少年特有の甲高い声が聞こえて来た。
「俺が行きましょう。」
「悪いな、斎藤。」
「いいえ。」
斎藤が屯所の門へと向かうと、そこには旅姿の少年が立っていた。
「ここへは何の用だ?」
「こちらに、土御門有匡様はいらっしゃいますか?いらっしゃったら、この文を必ず渡して下さい。」
そう言って少年は、付け文を斎藤に手渡した。
「わかった、必ず渡そう。」
斎藤は少年から付け文を受け取ると、副長室へと戻った。
「渡したか?」
「はい、確かに。」
「そうか。これは路銀代わりに取っておけ。」
「わかりました。」
男から金を受け取り、少年は歩き始めた。
「副長。」
「斎藤、それは?」
「土御門殿にこの文を渡すようにと・・」
「そうか。文を渡した奴の顔は見たか?」
「いえ、笠を深く被っていたのでわかりませんでした。」
「そうか、下がっていい。」
「はい。」
斎藤から付け文を受け取った有匡は、火月が自分を探しに京へと旅立ったと、父からの文で知った。
「どうした?」
「申し訳ないが、わたしは当分江戸には戻らず、暫くここに滞在しようと思う。」
「何故だ?」
「妻が、どうやらわたしを探しに京へ向かったと、父からの文で・・」
「そうか、で、その女房の名は?」
「火月。炎の月という意味だ。金髪紅眼で、年は17。」
「随分と若い奥さんだね。君いくつ?」
「28だが?」
「え、土方さんと同い年なの!?」
総司はそう言うと、有匡と歳三の顔を交互に見た。
新選組屯所で有匡が歳三達とそんな話をしている頃、火月は京に着いたものの、有仁から渡されていた路銀をすられてしまい、路頭に迷っていた。
「どないしたん?」
「あの、申し訳ないのですが、こちらで働かせていただけないでしょうか?宿代の分まで、働きますから。」
「そうか。あんた、見たところええところの家の娘さんやけど、女中の仕事はあんたが思っているよりもきついで。」
「大丈夫です、覚悟しています。」
「そうか。ほな、明日から頼むわ。」
「はい!」
こうして、火月は三条小橋にある旅籠「池田屋」で女中として働く事になった。
女中の仕事は火月が想像していたよりもきつくて大変だったが、江戸に居た頃女中達と共に家事などをしていたので、すぐに慣れた。
「あんた、何処から来たん?」
「江戸からです。主人を探しに。」
「そうなん?あんたの髪、綺麗な色やねぇ。」
「そうですか?」
「肌も雪のように白くて綺麗やし、うらやましいわぁ。」
「まぁ・・」
「火月ちゃん、これ明日の朝までに縫うといてな。」
「はい、わかりました。」

火月はそう言うと、女将から言いつけられ、大量の針仕事をこなした。

(有匡様、今何処に居るのかなぁ?)

「女将さん、縫い物終わりました。」
「そうか、ご苦労さん。立て続けで悪いけど、これを絹屋へ届けてんか。」
「わかりました。」
「途中で寄り道なんかしたら許しまへんで。」
「はい。」
「おい菊、お前あの子に厳しないか?」
「何言うてますの。あの子はうちの客やない、うちの女中だす。」
池田屋の女将・菊は、そう言うと帳簿を見た。
「すいません、池田屋から参りました。」
「わざわざ三条まで、来て貰うておおきに。これ、駄賃代わりとしてどうぞ。」
「ありがとうございます。」
絹屋の女主人・玲から受け取った金平糖が入った袋の中から火月は金色の金平糖を取り出すと、それを噛んだ。
甘い味が口の中に広がり、火月が思わず笑みを浮かべていると、彼女は一人の男とぶつかった。
「すいません・・」
「お嬢さん、怪我は無いかえ?」
そう言って火月に手を差し伸べた男は、不思議な瞳の色をしており、右目の下に泣き黒子があった。
「おまん、綺麗な瞳をしちゅうの?」
「すいません、急いでいますので!」

火月は慌てて男に頭を下げると、池田屋へと足早に戻っていった。

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Last updated  Dec 12, 2020 10:11:36 PM
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Aug 1, 2020



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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有匡は自分を取り囲んでいる数人の男達の内二人を斬り伏せていったが、仲間が目の前で殺されているというのに、自分と対峙している男は怯えるどころか、涼しい顔をしている。

「流石、江戸でその名を轟かせただけの剣の腕だな。」
「貴様、一体何者だ?」
「それは今から死ぬお前になど、知る必要もない事だ!」

男はそう叫ぶと、有匡に突然斬りかかって来た。
その攻撃は先程のものちは違い、有匡の急所を確実に狙い、彼の命を奪おうとするものだった。

「死にたくなければ、今すぐ江戸に帰れ!」
「あぁ、そうするとも・・貴様を倒した後でな!」

有匡はそう叫ぶと、男の胸に刃を突き立てた。
しかしその直後、有匡は背後から忍び寄って来た敵に腹を刺された。

(クソ、まだ仲間が居たか・・)

有匡は向かい合っていた男の胸から愛刀を引き抜くと、振り向きざまにそれで刺客を斬り伏せた。

「逃げたぞ、追え!」
「放っておけ、あの出血量では助かるまい。」
「そうだな・・」
「行くぞ、目的は果たした。」

刺客の男達の足音が遠ざかってゆくのを確めた後、有匡は喘ぎながら洛中を再び歩き始めた。
何としても、生きて江戸に戻らなければ。
妻(火月)が、帰りを待っているのだから。
全身を襲う激痛と死への恐怖に耐えながら、有匡は覚束ない足取りで闇の中を彷徨っていた。
暫く経った頃、有匡の前にゆらりと不気味な影が横切った。

(何だ?)

有匡が愛刀を握り締めながら、物陰から様子を窺っていると、突然耳をつんざくかのような悲鳴が辺りに響き渡った。
そっと物陰から路地の方を覗くと、そこには白銀の髪を振り乱した“何か”が、逃げ惑う男達に向かって刃を突き立てていた。
有匡の気配に気づいたのか、それとも血の臭いを嗅ぎ取ったのか―その“何か”は、ゆっくりと彼の方に振り向いた。
“彼ら”は、血のような真紅の瞳を欲望で滾らせながら、獣のように唸った。

「血を・・」
「血を寄越せ~!」

有匡は一斉に襲い掛かって来る“彼ら”のを倒そうとしたが、彼の身体は限界に達していた。
朦朧とした意識の中で、火月が自分に優しく微笑んでいる姿を、有匡は見たような気がした。

(火月、愛している・・)

「あ~あ、嫌になるよね。何でこんな寒い日に限って、羅刹が逃げ出すかなぁ。」
「声が大きいぞ、総司。」
「良いじゃない、どうせ誰も聞いていないんだし。」
「おい総司、さっきから煩せぇぞ、少しは黙りやがれ!」
「はいはい、わかりました。土方さんはうるさいなぁ・・」
「あ、聞いているぞ、総司!?」
歳三はそう言うと、総司を睨みつけた。
「総司、今のはお前が悪い。」
「副長、あれです!」
 隊士の一人がそう言って指したのは、今まさに人を喰い殺そうとしている羅刹の姿だった。
「あ~あ、酷いなぁ。こんなに汚して。土方さん、どうします?」
「始末しろ。」
「羅刹はもうはじめ君が始末しましたよ。僕が言っているのは、あいつらが喰おうとしていた“獲物”の事です。」
総司はそう言うと、地面に倒れたまま動かない有匡を指した。
「どうします?このまま放っておいたら死んじゃいますよ?まぁ、その方が僕達にとって好都合ですけど。」
「馬鹿を言うな、総司。すぐに医者を呼べ!」
「わかりました。」
刺客に襲われ、重傷を負った有匡だったが、新選組によって発見され、命を救われた。

一方、江戸では火月が夫からの文が途絶えてから半年が過ぎようとしていた頃、ある決意を固めた。

「本当に、京へ行くのか?」
「はい。」
「そうか。お前がそう決めたのならば、わたしは何も言わん。」
「火月殿、女一人の旅は辛いだろうから、これを旅費の足しにしてくれ。」
「ありがとうございます、義父上(ちちうえ)様。それでは、行って参ります。」

兄と舅に見送られ、火月は有匡を捜しに京へと旅立った。

その京では、過激派浪士達による幕府要人の暗殺が相次いだ。
そんな中、有匡は自分の命を救ってくれた新選組の世話になっていた。

「ねぇ土方さん、あの人これからどうします?」
「どうするも何も、あいつはここに置いておくしかねぇだろ。」
「それはそうですけれど・・」

歳三と総司がそんな話をしていると、そこへ有匡がやって来た。

「土方、わたしに話したい事とは何だ?」
「これは、お前ぇのもんか?」

歳三がそう言って有匡に見せたものは、襲撃の際に失くしたと思っていた、母・スウリヤのロザリオだった。

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Last updated  Sep 6, 2020 07:59:49 PM
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「さぁ有匡様、こちらです。」
「わかった・・」
雪之丞に連れられ、有匡は約十年振りに土御門本家へと向かった。
「誰かと思ったら、有匡殿ではありまへんか?」
背後から声を掛けられて有匡が振り向くと、そこには名すら知らぬ親族の男が立っていた。
「貴殿とこうして顔を合わせるのは久しいな。どうだ、向こうで茶でも・・」
「申し訳ありませんが、先約がありますので。」
「何だ、相変わらず愛想のない・・」
有匡は雪之丞と共に当主の部屋へと向かった。
「有匡様がご到着されました。」
「失礼致します。」
「おぉ、久しいな、有匡。」
有匡が部屋に入ると、そこには亡くなった筈の当主―叔父の姿があった。
「これは驚きました、まさか生きていらっしゃるとは・・」
「こういう嘘でも吐かぬと、そなたは京(ここ)へは来てくれぬだろう?」
有匡の叔父―匡俊はそう言うと、おもむろに有匡の手を握った。
「美しい手じゃ、この手を弟に独占されるのは惜しいのう。」
「京へとわたしを呼び出した用件はなんですか、叔父上?」
「単刀直入に言う。お前を京にまで呼び寄せた理由はお前に家督を継いで貰う為だ。」
「父上、我らは認めませぬぞ!」
「そうです、こんな奴に家を・・」
「黙れ!わたしが実子であるお前達に家督を譲らず、有匡に譲るのはお前達が情けないからだ。」
「お言葉ですが叔父上、わたしはこの家を継ぎません。お話が済んだのなら、わたしは江戸へ帰らせて頂きます。」
有匡がそう言って立ち上がろうとすると、部屋の外に控えていた男達が部屋の中に雪崩れ込むようにして入って来ると、彼らは一斉に有匡に刃を向けた。
「これは一体どういう事なのです、叔父上?」
「そなたをこのまま江戸へ帰す訳にはいかぬ。このまま京に居て貰うぞ。」
「わかりました・・いつ江戸にわたしは戻れるのですか?」
「それはわからぬ。安心しろ、そなたが下手な事をしなければ、すぐにお前を江戸へ戻してやる。」
そう言った匡俊は、口端を歪めて笑った。
「きゃぁっ!」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「えぇ・・嗚呼、どうしましょう、旦那様のお茶碗を割ってしまったわ・・」
「お嬢様、そんなに心配なさらなくても、有匡様はすぐに今日からお戻りになられますわ。」

火月の元に毎日のように京に居る有匡から届いていた文が途絶えたのは、彼が江戸を発ってから七日が経った頃だった。

有匡が土御門本家の一室に軟禁されてから七日が過ぎた。

江戸に居る家族に宛てて文を送れたのは最初の三日だけで、四日目からは土御門家の者達が有匡に文を出す事を禁じた。
外との連絡手段を全て遮断され、監視の目が四六時中光っているような生活は、有匡の心を次第に疲弊させていった。
「有匡様、朝餉をお持ち致しました。」
「要らぬ。」
「失礼致します。」
雪之丞はそう言うと、有匡の部屋に入った。
「勝手に入って来るな!」
「申し訳ありません、どうしてもこれをお渡ししたかったので・・」
雪之丞はそう言うと、懐から有匡宛の文を取り出した。
「奥様からの文です。」
「ありがとう。」
「・・見張りの者達は、申の刻(午後三時頃)から酉の刻(午後五時頃)まで二度交代があります。抜け出すのなら、二度目の交代が終わってからです。」
「そうか。」
「では、わたしはこれで。」
雪之丞はそう言って頭を下げると、部屋から出て行った。
彼は信用できるのだろか―有匡はそう思いながら、雪之丞が運んできた朝餉に手をつけた。
一方、江戸の高原家では、火月が夫の安否を確かめる為に京へ行くと言い出し、静馬が慌てて彼女を止めた。

「火月、はやまってはいかん!」
「ですが兄上、僕は旦那様の事が心配で堪らないのです!せめて、一目無事を確める為にも・・」
「ならん。お前がもし命を落とすような事があれば、わたしは有匡殿に顔向けできぬ。」
「兄上~!」
「火月殿、わたしの倅は新妻であるそなたを悲しませるような男ではない。どうか倅の事を信じてくれないか?」
「はい、義父上。」

酉の刻、有匡は自分の部屋の見張りが部屋から離れるのを確めた後、夕闇に紛れ土御門本家から抜け出した。
春先とはいえ、まだ冬の寒さが残る洛中を有匡が歩いていると、突然彼の前に数人の男達が現れた。

「何だ、貴様ら?」
「そのほう、土御門有匡殿とお見受け致す。新時代の為、そなたには天誅を下す!」
「抜かせ!」

有匡はそう叫ぶと、愛刀の鯉口を切った。

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Last updated  Sep 6, 2020 07:57:50 PM
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Jul 10, 2020

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「気を付けて行くのだぞ、有匡。」
「はい、父上。」

上洛前夜、有匡は有仁と久しぶりに酒を酌み交わした。

「すぐに戻って参りますので、ご心配なさらないでください。」
「そうか。火月殿にはこの事は言っていないのか?」
「明朝、彼女と会う事にしました。」
「この前、瑞庵殿とお会いしたそうだな。」
「はい、母上の事で・・」
「スウリヤには、可哀想な事をした。あの者達さえ来なかったら、今頃は・・」
「あの者達とは?」
「スウリヤの親族の者だ。彼らも、スウリヤを探しているらしい。それに、先程スウリヤの部屋を探していたらこんな物が見つかった。」
有仁はそう言うと、ある物を有匡に見せた。
それは、スウリヤの日記帳だった。
有匡が中を見ると、そこには隠れキリシタンであった母の苦悩が綴られていた。
「その日記が、スウリヤを探す手がかりになるかもしれん。」
「ありがとうございます、父上。」
「艶夜はどうした?」
「さぁ、わかりませぬ。」

翌朝早く、有匡は火月と聖心寺で会った。

「本当に、行ってしまわれるのですね?」
「あぁ。なに、すぐに戻って来るから心配するな。」
「そうですか。では、僕は先生の帰りをお待ちしております。」
「待っていろ。」
有匡はそう言うと、懐から紫の袱紗に包まれた美しい紅玉の簪を取り出し、それを妻の髪に挿した。
「この簪を、わたしだと思って大切にしてくれ。」
「はい・・」
そんな会話を交わした後、二人は口づけを交わした。
「では、行って来る。」
「行ってらっしゃいませ。」
火月は夫の姿が見えなくなるまで、聖心寺の正門前で彼に向かって手を振っていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。有匡様にはお会いできましたか?」
「えぇ、お会い出来たわ。」
「大丈夫ですよ、有匡様派すぐにお戻りになられますよ。」
「そうね・・」
「素敵な簪ですね、それは有匡様から頂いたものですか?」
「えぇ。」
「きっと、無事に戻られますよ。」
「・・わたしも、そう信じているわ。」
火月はそう言った後、有匡に挿して貰った簪に触れた。
火月と聖心寺の正門前で別れた有匡は、船で大坂へと向かい、その日の夜は“吉田屋”という船宿に泊まった。
部屋に入った彼は、背負っていた網袋を下ろし、溜息を吐いた。
あと数日歩いたら京に辿り着くのだが、船酔いと疲労の所為で彼は布団を敷かずにそのまま眠ってしまった。
翌朝、雨音で有匡が目を覚ますと、何やら宿の外が騒がしかった。
「何かあったのか?」
「へぇ、何でも浪士達の斬り合いがあったそうで・・その死体が道端に放置されて迷惑なこっちゃ。」
「そんな事が・・」
「京では長州の浪士が幕府のお役人を殺しまくってるちゅう噂や。」
宿の主の話を聞いた後、有匡が京に着いたのはその日の昼の事だった。
「もう桜の季節も終わりか・・」
有匡がそう呟きながら三条大橋近くにある茶店で茶を飲んでいると、そこへ一人の少年がやって来た。
「失礼、貴方が土御門有匡様ですね?わたしは土御門家の使いとして参りました、雪之丞と申します。」
使いを寄越すとは、どうしても土御門家は自分を逃がしたくないのか―有匡はそう思いながら、雪之丞と茶店を後にした。

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Last updated  Sep 6, 2020 07:57:04 PM
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