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JEWEL

JEWEL

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火宵の月幕末パラレル 二次創作小説:想いを繋ぐ紅玉

2022年07月24日
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画像はコチラからお借りいたしました。

「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

“スウリヤ、お前と離れて以来、一日たりともお前を想わない日はなかった。わたしは、お前に裏切られたとは思っていない。だから、お前は・・”
有仁からの文は、そこで終わっていた。
その文には、血痕と思しき赤黒い染みがついていた。
「これは・・」
「旦那様の元へ行かはるんどしたら、うちに任しておくれやす。」
「済まない。」
「折角あなた様と会うた縁どす。老い先短い身、人助けをしたいんどす。」
「そうか。」
その日の夜、スウリヤは密かに江戸へと旅立った。
「残念ですが、有仁様は長くは生きられないかと。」
「そんな。では・・」
「長くても、数年かと。」
「そうですか。」
静馬はそう言うと、苦しそうに息をしている有仁を見た。
「困ります、勝手に入られては!」
「ええい、そこを退け!」
廊下が急に騒がしくなったので、静馬が廊下へと出て様子を見てみると、そこでは土御門家の使用人達と争っているスウリヤの姿があった。
「貴女は・・」
「静馬様、この女をご存知なのですか?」
「この方は、有仁様の奥方だ。どうぞスウリヤ様、お部屋で有仁様がお待ちです。」
「ありがとう。」
スウリヤは静馬に一礼した後、有仁の部屋に入った。
「スウリヤ、会いに来てくれたのか?」
「旦那様・・」
有仁は、苦しそうに咳込みながら、スウリヤを抱き締めた。
「まだ、間に合いますか?あなたと一緒に・・」
「あぁ、勿論だとも。」
スウリヤと有仁が再び暮らす事になった事を有匡が知ったのは、数日後に彼宛にスウリヤから届いた文だった。
「どうしたんですか、そんなに嬉しそうな顔をして?」
「母上から文が届いた。母上は、父上と江戸の家で暮らしているそうだ。」
「良かったですね。」
「あぁ。」
有匡はそう言った後、スウリヤからの文を大切そうに懐にしまった。
「江戸へ、ですか?」
「あぁ、新しく隊士を向こうで募ろうと思ってな。君も色々とあるだろうし、暫く江戸に戻ってみたらどうかと思ってな。」
「わかりました。」
有匡は、火月に江戸行きの事を話した。
「そうですか。気を付けて行って来て下さいね。」
「あぁ。何か欲しい物でもあるか?」
「いいえ。」
「すぐに戻って来る。」
「はい。」
こうして、有匡は近藤達と共に江戸へと旅立った。
「父上、ご無沙汰しております。」
「有匡、良く帰って来たな。元気そうで良かった。」
有仁は、そう言うと嬉しそうに有匡の顔を見た。
彼の隣には、スウリヤの姿があった。
「スウリヤ、漸く有匡と会えたな。」
「母上、お久しぶりです。」
「有匡、長い間済まなかった。」
「いいえ、いいのです母上、もう毎日誰かに謝らなくてもいいのです。」
「そうか。」
スウリヤは、そう言うと涙を流した。
「これから、わたしは有仁とこの家で暮らす。もう、逃げも隠れもしない。」
「有匡、この家にはいつまで居る?」
「明後日まで。」
「久しぶりに帰って来たのだから、ゆっくりしなさい。」
「はい。」
隊士募集の為帰郷した有匡は、静馬に会う為、高原家へと向かった。
「有匡様、お元気そうで何よりです。」
「静馬殿も、お変わりないようで安心しました。」
「妹は、元気にしていましたか?」
「はい。」
「スウリヤ様が戻られて良かった。」
「ええ。父が幸せそうな顔をしていて良かったです。」
静馬は有匡の言葉を聞いた後、少し顔を曇らせた。
「静馬殿、どうかなさったのですか?」
「実は・・」
有匡に、静馬は有仁の事を話した。
「そうですか、父上が・・」
「有仁様から、有匡様には伝えないように言われていましたが・・」
「父上は優しい方ですから、きっとわたしに心配を掛けたくなかったのでしょう。」
「有匡殿・・」
「今日は、会えて嬉しかったです。」
有匡は高原家を後にすると、恵心尼の元へと向かった。
「そうですか。スウリヤ様と有仁様が・・」
「庵主様、大変です!」
「どうしたのですか?」
「異人が・・」
聖心寺の使用人がそう言った時、彼らの前に数人の男が現れた。
「あなた方は、一体・・」
『退け、女。我々は彼に用がある。』
男達の中から長身の大男が出て来たかと思うと、有匡の腕を掴んだ。
『わたしに何か用か?』
『我々と共に来て貰おう。』
「有匡殿・・」
「恵心尼様、わたしは大丈夫だから心配しないでくれと、家族に伝えて下さい!」
両脇を屈強な男達に囲まれ、有匡は訳がわからぬまま男達に馬車に乗せられた。
『わたしを何処へ連れて行く気だ?』
『それは着けばわかる。』

有匡達を乗せた馬車は、やがて横浜の外国人居留地内にある、一軒の邸宅の前で停まった。

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Last updated  2022年07月24日 21時13分15秒
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2021年11月11日



画像はコチラからお借りいたしました。

「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

一部残酷描写があります、苦手な方はご注意ください。


「出て行け!」
「出て行け!」
有匡が抵抗しないのをいい事に、子供達は憎しみと怒りで顔を醜く歪ませながら、次々と彼に向かって石を投げた。
一体、何が起きているのか、有匡にはわからなかった。
長州を京から追い出して感謝される筈なのに、逆に人々から罵られ、石を投げられている。
「こら、何しとる!」
そう叫んで子供達と有匡との間に割って入ったのは、商人風の男だった。
「あの子らは、親を火事で亡くした子どす。どうか、うちに免じてあの子らを許してやってくれまへんやろうか?」
「貴殿は?」
「大黒屋総右衛門と申します。」
「土御門有匡と申します。」
「土御門様・・もしや、スウリヤ様の息子はんどすか?」
「母を、ご存知なのですか?」
「へぇ。スウリヤ様には、よう店の手伝いをして貰うてました。」
「そうなのですか。」
「詳しい話は、また後で。ほな、うちはこれで。」
「はぁ・・」
男―大黒屋総右衛門は、そう言うと有匡に一礼して去っていった。
「あなた、こんな所に居たのですね?さぁ、屯所に戻りましょう。」
「あぁ・・」
有匡は、焼け野原となった町から去った。
その姿を、焼け焦げた柱の陰から一人の女が見つめていた。
「スウリヤ様、お久しゅうございます。」
「どうしてわたしだと気づいた?」
「背格好でわかりました。」
「そうか。」
「さ、こないな所で立ち話でも何どすから、店の方へどうぞ。」
「かたじけない。」
スウリヤは、『大黒屋』の中に入ると、被っていた頭巾を脱いだ。
すると、炎のような紅い髪がまるで波のように広がった。
「見事な御髪どすなぁ。簪や櫛で飾ったら美しいでしょうに。」
「おかしな事を言う。わたしの国では赤毛は呪われたもの、癇癪持ち、そして裏切り者の証だといわれている。美しいと言われたのは初めてだ。」
「あなた様は、ご自分の美しさに気づいておられないようですな。」
 大黒屋はそう言うと、スウリヤを見た。
「そういえば、先程ご子息にお会い致しましたよ。凛々しい殿方でした。」
「あの子と共に居られたのは、ほんの数年だけだったが、幸せだった。」
「人にはそれぞれ、事情というものがあります。スウリヤ様には、ご子息をお捨てになられたのではないと思っています。」
「そうか・・」
スウリヤは、江戸の土御門家で過ごした数年間の事を思い出した。
親から勘当され、有仁の元に駆け落ち同然に転がり込み、彼との間に二人の子宝に恵まれ、幸せな結婚生活を送っていた。
しかし、その幸せは長くは続かなかった。
スウリヤの父は、娘を殺害しようとしていた。
しかし、有仁はスウリヤを彼から守った。
『スウリヤ、どうしても行くのか?』
“済まない、子供達を頼む。”
有仁は、子を置いて家を出た自分に、恨み言ひとつ言わなかった。
有仁は、今どうしているのだろうか。
「わたしは、あの人を裏切ってしまった・・」
「旦那様に文を書かれてみては?口に出来ない想いを、文にしたためてみれば・・」
「いいな、それは。」
江戸の土御門家では、有仁が風邪をひいて寝込んでいた。
「旦那様、文が・・」
「誰からだ?」
「それが・・」
使用人から文を受け取った有仁は、その文の送り主がスウリヤだと気づいた。
“愛しいあなたへ・・”
「旦那様?」
「済まないが、文机の一番下の引き出しから羊皮紙とインク、羽根ペンを出してくれないか?」
「はい、かしこまりました。」

使用人が有仁に手渡したそれらのものは、スウリヤが自分の誕生日に贈ってくれたものだった。

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Last updated  2021年11月11日 21時19分44秒
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2021年08月21日



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

一部残酷描写があります、苦手な方はご注意ください。


その人物とは、枡屋喜右衛門―攘夷派志士・古高俊太郎だった。

「まだ吐かねぇのか?」
「はい・・」
「“例の物”は、用意して来たか?」
「はい、こちらに。」

山崎がそう言って歳三に手渡したのは、五寸釘と百目蝋燭だった。

二階から逆さ吊りにされた古高は、貫通した足裏に百目蝋燭を立てられ、火をつけられたことにより、長州の過激派浪士達が御所に火を放ち、帝を萩へ連れ去ろうとしている計画を自白した。

「どうする、近藤さん?このまま会津と桑名からの連絡を待っていたら、何も出来ねぇぜ?」
「そうだな・・」

勇はそう言って唸ると、隊士達に向かってこう言った。

「我々はこれから、二手に分かれ、浪士達の捜索を行う!」
「おう!」

こうして、新選組の長い夜が始まった。

「皆さん、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。わたし達は、わたし達の仕事をしましょう。」
「はい・・」

千鶴と火月は、屯所で病人の看病をしながら勇達が慌しく動いている姿を見ると、彼女達の元へ山崎がやって来た。

「山南さん、居ますか!?」
「山崎君、どうかなさったのですか?」
「伝令を土方隊に届けたいのですが、誰か一緒に行ってくれる者は居ませんか?」
「わたしは左腕を怪我して動けません。」
「千鶴さん、山崎さんと一緒に行ってあげて下さい。」
「でも・・」
「僕は、有匡様を信じていますから。」
「・・わかりました。」

山崎と共に屯所から出て、四国屋へと向かった千鶴は、息を切らしながら歳三達にこう言った。

「伝令―本命は、池田屋!」

一方、池田屋では既に近藤隊と浪士達の戦闘が始まっていた。

「ったく、折角話がまとまろうとしていたところだっていうのによぉ。俺はもうずらかるぜ。」
「好きにしろ。」
「それでは、わたし達もここから立ち去りましょうか。」
「そうだな・・」

二階に居た二匹の鬼―天霧と風間がそんな事を言っていた時、部屋の襖が勢い良く開かれ、総司と平助が中に入って来た。

「わたし達は、あなた方と争うつもりはありません。」
「お前ら、長州の奴らだろ!だったら逃がす訳にはいかねぇんだよ!」

平助がそう叫んで天霧に突進すると、彼は天霧に額を殴られ額を負傷した。

「平助!」
「この状況で余所見とは、随分と余裕だな?」

風間は鼻を鳴らすと、総司を睨みつけた。

「雪村君、来たのか!」
「土方さんに、本命は池田屋だと伝えました!すぐに来てくれる筈です!」
「そうか、ありがとう!」

千鶴がふと二階の方を見た時、奥から綱道と思しき男の姿を見かけた。

「父様!」
「待て、雪村君!二階は危険だ!」

男の声も聞かず、千鶴が二階へと上がると、奥の部屋から総司と風間の刃がぶつかり合う音が聞こえて来た。

「沖田さん!」
「千鶴ちゃん、どうして・・」
「人間如きが、この俺を侮るとは、良い度胸だ!」

風間の刃を受け止め、総司は彼に向かって突きを繰り出そうとしたが、彼は突然激しく咳込むと、その場に蹲った。

「沖田さん!」
「そこを退け。」
「やめて下さい!」
「ほぉ・・」

風間は自分の前に立ち塞がり、総司を守ろうとする千鶴を見つめた。

「貴様、名を何という?」
「え?」
「・・どうやら、お前はまだ己の“力”を知らぬらしいな?」

風間はそう言うと、己の“気”を千鶴に放った。
部屋は蒼い焔に包まれ、千鶴は己の髪が徐々に銀色へと変わってゆくのを感じた。

(何、これ・・)

「やはり、な。」

呆然とする千鶴を前に、風間は満足そうに笑った。

「女鬼は貴重だ、我が元へ来い。」
「千鶴!」

階段を駆け上がる音が聞こえ、歳三が部屋に入って来た。

「千鶴、無事か!?」
「はい・・でも、沖田さんが・・」
「興が削がれた。女鬼よ、また会おう。その時は、お前を我妻として貰い受ける。」
「てめぇ、待ちやがれ!」

歳三が風間にそう叫んで刃を向けようとしたが、その刃が届く前に彼はまるで煙のように消えていった。

「一体、あいつは何者なんだ?」

その日、新選組は長州派の過激派浪士を捕縛した。

この事件は、“池田屋事件”と呼ばれた。

「おのれ、新選組め!」
「このままでは、済まさんぞ!」

“池田屋事件”から一月後、“禁門の変”が起きた。

「見ろ、京が燃えているぞ!」
「何という事だ・・」

蛤御門で会津は長州と戦い、一時劣勢となったが、薩摩の援軍によって長州藩は蹴散らされた。
そして、久坂玄瑞をはじめとする志士達が堺町御門前鷹司邸にて自害。
それにより、残党を炙り出す為、鷹司邸に会津藩が火を放った。
強風でその炎は、洛中を包んだ。

「ひでぇ・・一面、焼け野原だ。」
「そっちに怪我人が居ねぇかどうか、調べてくれ!」
「わかりました。」

有匡が他の隊士として会津藩士達と共に生存者や怪我人の捜索に当たっていると、何処からともなく飛んで来た石が、有匡の頬を打った。

「会津は鬼や!」
「鬼は出て行け!」

石を投げたのは、親を亡くした子供達だった。

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Last updated  2021年09月15日 14時24分16秒
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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

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「貴殿は・・」
「わたしを忘れてしまったのですか?」

男はそう言うと、寂しそうな笑みを浮かべた後、店から出て行った。

(何だったんだ?)

有匡が火月の為に選んだ簪は、美しい銀細工の物で簪の先には鼈甲の小花がついていた。

「おぅ、お前ぇもここに居たのか?」
「土方さん。」

いつも京では、“鬼の副長”と呼ばれて恐れられている歳三が、やけに真剣な目で簪や結紐を選んでいる姿を見た有匡は、思わず笑いを噛み殺した。

「何だ、そんなにおかしいのか?」
「いえ、珍しいなと思いまして。」
「俺はいつも怒っている訳じゃねぇ。色々と怒る事が多かっただけだ。」
「そうですか。あの、その結紐はもしかして千鶴殿に?」
「まぁな。あいつには、娘らしい格好をさせてやれねぇから、せめてな・・」
「きっと、喜ばれると思いますよ。」
「そうか・・」

店から出た二人は、その足で歳三の実家へと向かった。

「トシ、久しぶり!あら、そちらの方は?」
「お初にお目にかかります。土御門有匡と申します。」
「姉貴、こいつには嫁さんが居るんだ、変な気を起こすなよ!」
「やぁね、そんな気ないわよ!」

土方家の宴会は、賑やかだった。

「賑やかな家で羨ましいですね。」
「うるさいだけだ。俺は十人兄弟の末っ子で、父親は俺が産まれる前に、母親は五つの時に労咳で亡くなった。さっきあんたに絡んで来たのが、俺の母親がわりの姉貴だ。」
「そうですか。わたしには、少し年の離れた妹がおりましてね・・余り、仲が良くないのですよ。」
「まぁ、色々あるさ。」

歳三と有匡が日野で酒を酌み交わしている頃、京では火月と千鶴が、茶を飲みながら互いの身上話をしていた。

「へぇ、許婚同士だったのですか?」
「えぇ。有匡様・・旦那様とは幼い頃からの知り合いでした。」
「そのお話、詳しくお聞かせ願えませんか?」
「はい。」

火月は千鶴に、有匡と初めて会った時の事を話し始めた。

その時、火月は家族と共に花見に来ていた。

「うわぁ、綺麗!」
「火月、余り遠くに行ってはなりませんよ。」
「わかった!」

そう言いながらも火月は、風に舞う桜の花弁を追いかけている内に、家族とはぐれてしまった。

「父様、母様、どこ~!?」

泣きべそをかきながら火月が必死に華族を捜していると、そこへ一人の少年がやって来た。

「どうした、迷子か?」
「うん・・」
「お前、名前は?」
「火月・・」
「そうか。じゃぁ、僕と一緒に家族を捜そう!」
「うん・・」

こうして火月は、有匡のお陰で家族と再会できた。

「その時はまだ、お互いの事を知らなかったんです。でも、また有匡様と僕が出会えたのは、僕が薙刀の出稽古へ向かった道場なんです。」
「火月さんは、薙刀をおやりになられるのですか?」
「はい。父が常々、“女子だろうと己の身を守る術を持たねばならぬ”と言っていましたから・・千鶴さんは何か武術を嗜んでいらっしゃいますか?」
「わたしは、小太刀を少し・・と言っても、火月さんと違って余り強くありませんが・・」
「そういえば、千鶴さんのお父様は蘭方医ですよね?僕の兄も、蘭方医のお弟子さんをしているんですよ。」
「もしかして、火月さんのお兄様は高原静馬様ですか?」
「えぇ。兄を、ご存知なのですか?」
「はい。江戸に居た頃、父の診療所を手伝って下さっていました。」
「まぁ、そうでしたか・・」
「僕達、何かとご縁がありそうですね。」
「そうですね。」

江戸から戻った歳三は、千鶴を副長室へと呼び出した。

「あの、わたしに渡したい物って・・」
「これだ。」

歳三はそう言うと、千鶴の掌の上に紅い結紐を載せた。

「昔、奉公していた呉服屋で買って来た。」
「これを、わたしに?」
「見りゃわかんだろうが。要らねぇんならいい。」
「ありがとうございます、大切にします!」
「そ、そうか・・」

歳三はそう言うと、照れ臭そうな顔をした後、少し困ったように頭を掻いた。


1864(元治元)年、六月。

京の夏は、江戸のそれとは違い、うだるような暑さだった。
千鶴と火月は、食あたりで倒れた隊士達の看病をしていた。

同じ頃、歳三は蔵である人物を尋問していた。

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Last updated  2021年08月25日 12時26分30秒
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「わたしを、斬るつもりですか?」
「山南さん、あなたは変わりましたね。」
「人は、変わるものですよ。」
「わたしの血で良ければ、いくらでもあなたに差し上げましょう。ですが、妻は傷つけてないで下さい。」
「わかりました。」
山南はそう言うと、有匡が指先を傷つけ、それを硝子壜の中に注ぐのを黙って見ていた。
「ありがとうございます。」
「また、わたしの血が必要だと思ったら言いに来てください。」
有匡はそう言うと、山南の部屋から出た。
「有匡様、山南さんと何の話をしていたのですか?」
「男同士の話だ。それよりも、千鶴殿は?」
「彼女でしたら、庭で洗濯物を干していますよ。」
「そうか。」
有匡が中庭へと向かうと、そこには大量の洗濯物を干そうとしている千鶴の姿があった。
「手伝おう。」
「そんな・・」
「二人でやった方がいい。」
「ありがとうございます。」
「ここでの生活にはもう慣れたか?」
「いいえ・・」
「それはそうだろう。あんな目に遭った上で、男所帯に女一人に放り込まれたのだから、慣れも何もないだろう。」
「えぇ。あの、土御門様は・・」
「“様”づけはいらない。」
「じゃぁ、どうお呼びすれば・・」
「“土御門さん”でいい。」
「母を捜しに。」
「会えたのですか?」
「一瞬だが、会えたよ。今までわたしは母を憎んで来たが、彼女にも事情があると思ったら、憎しみが消えた。親が、己の分身である子を好き勝手に捨てる訳ではない。きっと君の父上も、事情があったのだろう。」
有匡がそう言って千鶴を励ましている姿を、副長室の窓から見ていた。
「トシ、雪村君の事が気になるのか?」
「いや、別に。」
「それにしても、土御門君は頼りになるなぁ。剣の腕もそうだが、隊士達の指導も上手い。」
「土御門家から連絡は?」
「ない。それにしても、土御門家が長州と繋がっているという噂は本当なのか?」
「それを今、監察方に探って貰っている。」
「そうか。」
「トシ、顔色が悪いぞ?少し働き過ぎじゃないのか?」
「大丈夫だ。」
「山南さんの怪我さえなければ、少しはトシの負担が減るんだがな。」
「そんな事を言うな。山南さんが、一番思い詰めているんだよ。」
「そうだな・・」
二人のやり取りを、山南は密かに聞いていた。
「ほぉ、面白くなって来たな。」
「あの時、山南総長を襲っておいて良かったですね。」
「狙いは土方だったが、まぁいい。」
「これからどうなさるおつもりで?」
「それはまだ話せん。」
男はそう言うと、自分の飯代だけを払って店から出て行った。
「お前の主は、お前をこき使っている癖に、ケチなのだな。」
「あ、有匡様・・」
「さて、今後の事を話そうか?」
「お許しください、わたしは・・」
「黙れ。」
有匡はそう言うと、蒼褪めている蛍を屯所まで引き摺った。
「豊川蛍、切腹を申しつける。」
「介錯はわたしが致しましょう。」
「そんな・・」
蛍は縋るような目で有匡の方を見たが、彼は冷たく蛍を見下ろすだけだった。
蛍の切腹は、翌朝早くに行われた。
有匡は蛍の切腹が終わった後、その足で土御門家へと向かった。
「貴様、一体何をしに来た!?」
「これから江戸へ発つので、あなた方に土産を渡そうと思いまして。」
「土産だと?」
茶菓子を美味そうに頬張っている匡俊の膝上に、有匡は塩漬けにした蛍の首を放り投げた。
匡俊は悲鳴を上げ、その場に居た者達は悲鳴を上げたり嘔吐したりしていた。
「あないな事をしたらあきまへんえ。」
「申し訳ありません、叔母上。」
「蛍はこちらでちゃんと弔いますさかい、もう行きなされ。」
「はい。」
 福子に向かって深々と一礼した有匡は、土御門家を後にした。
「有匡、久しいな。」
「父上、ご無沙汰しております。」
「スウリヤには、会えたのか?」
「はい、一瞬でしたが。」
「そうか・・」

それ以上、有仁と有匡は言葉を交わさなかったが、それだけでも彼らの間には通じるものがあった。

「火月を京に残しておいて大丈夫なのか?」
「えぇ。」
「色々と向こうではあるだろうが、余り無理をするなよ。」
「はい。」

こうして、父子二人水入らずの時が、穏やかに過ぎていった。

「おや有匡殿、久しいですね。」

火月への土産に簪を有匡が選んでいると、そこへ一人の男がやって来た。

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Last updated  2021年08月21日 21時58分37秒
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2021年07月28日



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「おいトシ、そんなに睨んでいたら、この子はますます怯えてしまうだろう。」
「そうだよ土方さん、昨夜あんな怖い思いをさせちまったのに、そんなに睨んだらますます怯えちまうじゃん。」
そう言って千鶴に助け舟を出したのは、近藤と平助だった。
「別に睨んでいる訳じゃねぇ、今後の事を色々と考えていたんだよ。」
土方はそう言って軽く咳払いした後、千鶴にこう尋ねた。
「お前、名前は?」
「雪村千鶴と申します。江戸から、京で行方不明になった父を捜しに参りました。」
「おい待て、今雪村とか言ったな?まさか、お前綱道さんと関係があるのか!?」
「雪村綱道は、わたしの父です。」
「そうか。実は俺達も、綱道さんの行方を捜している所なんだ。あ、自己紹介が遅れたな、俺は近藤勇、新選組局長だ。そして俺の隣に座っているのはトシ、副長の土方歳三だ。」
「わたしは新選組副長の山南敬助です。さて、自己紹介を終えたところで、貴女の処遇をこれから決めたいと思います。土方君、何かいい案はありませんか?」
「女が新選組に居ると知ったら、隊内の風紀が乱れるし、かといって隊士にする訳にもいかねぇし・・誰かの小姓にした方がいいだろう。」
「じゃぁ、土方さん、お願いしますね。」
「はぁ!?何でそうなる!?」
「言い出しっぺの法則ですよ、土方君。」
歳三は舌打ちした後、溜息を吐いた。
「俺の隣の部屋を使え。」
「はい・・」
「食事は部屋に運んでおくから・・」
「ここでいつも食べればいいじゃん。」
「あの・・」
「あ、俺は藤堂平助。よろしくな、千鶴。」
「平助でいいよ、年も近そうだし。それに、堅苦しいのは余り好きじゃないんだよな。」
平助はそう言うと、屈託の無い笑みを浮かべた。
大広間の様子を密かに見ていた蛍は、そっと屯所の裏口から外へと出た。
「何か、動きはあったか?」
「雪村の娘が、屯所へ来ました。何か事情があるようです。」
「そうか。何か動きがあったら知らせろ。」
「はい。」
蛍が屯所へと戻った時、丁度有匡が縁側から出て来る所だった。
「お前、今まで何処に行っていた?」
「わたくしは、何も企んでおりません。」
「さぁ、どうだか。」
暫く二人は睨み合っていたが、有匡の方が先に視線を外して去っていった。
「有匡様、どうかされたのですか?」
「いや、何でもない。それよりも、広間の方が妙に騒がしいな?」
「あぁ、確か昨夜羅刹に襲われそうになった所を保護された娘さんが・・」
「そうか。」
「まぁ、暫くここに居るみたいですし、僕達も彼女に会えると思いますよ。」
火月の言葉通り、有匡は千鶴と屯所の厨で顔を合わせた。
「初めまして、雪村千鶴と申します。暫くこちらでお世話になります。」
「土御門有匡だ。こちらは、妻の火月だ。」
「よろしくお願いしますね。」
「はい。」
年が近く、同性同士という事もあってか、火月と千鶴はすぐに仲良くなった。
「火月さんも、江戸から来たのですか?」
「えぇ、有匡様を捜しに。」
「でもすぐにお会い出来て良かったですね。」
「大丈夫、千鶴さんのお父様もすぐに見つかりますよ。」
「そうだといいんですが・・」
二人の会話を聞きながら、有匡は一冊の書物に目を通していた。
それは江戸を発つ前、有仁から渡された物だった。
『父上、これは?』
『これは、ある人物の日記だ。読んでいけば、誰が書いたのかわかるだろう。』
有匡は書物を見ると、そこにはスウリヤの字で英語でこう書かれていた。
“愛しい我が子へ”
英語を独学で学んでいたので、その書物がスウリヤの日記であるという事がすぐにわかった。
そこには、有匡を有仁に託して去らざるおえなかった事情などが書かれていた。
(母上は、勝手にわたしを捨てたのではないのだな。)
だから、再開した時母は、“妻を大切にしろ”と自分に伝えてくれたのだ。
自分と同じ過ちを犯すなと。
今、母が何処に居るのかはわからない。
だが彼女と、また会いたいと有匡は思い始めていた。
長年抱いていた母への憎しみは、彼女と再会した事によって徐々に薄れていった。
「有匡様、お茶が入りました。」
「ありがとう。」
「それは?」
「これは、母の日記だ。江戸を発つ前、父がわたしに渡してくれた。」
「そうですか。それよりも、さっき山南さんが何処か深刻そうな顔をして自分のお部屋に入っていかれましたよ。」
「何だか、嫌な予感がするな。」
「えぇ。」
有匡の予想は的中し、大坂へ出張に行っていた山南が左腕を負傷した。
「土御門君、今よろしいですか?」
「はい。」
「あなたは、わたしの怪我の事を知っていますね?」
「はい。」
「そこで提案なのですが、あなたの血を頂けませんか?」

山南の言葉を受け、有匡は思わず腰に差してある愛刀へと手を伸ばしそうになった。

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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

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「羅刹の研究は進んでいるか?」
「はい。蛍を新選組に入隊させたのは、その為です。あの雪村という蘭方医が作った変若水とやらの効果も、確めたいですし。」
「そなたには期待しているぞ、匡俊。」
「ありがたきお言葉・・そのご期待に沿えるよう、精進致します。」
“主”は、匡俊の言葉を聞いた後、満足そうに笑って扇子をパチンと閉じた。
「福子、居るか?」
「へぇ。」
「硯と筆を持ってきてくれないか?」
「わかりました。」
福子は、夫の言葉を聞いた後、何も言わずに部屋から出た。
一方、江戸の土御門邸では、匡俊の文を読んだ有仁が渋面を浮かべていた。
「どうかなさったのですか、旦那様?」
「全く、匡俊には困ったものだ。有匡には決して家督を譲るなと書いてある。」
「その文に、でございますか?」
「あぁ。」
有仁はそう言うと、匡俊の文を火鉢にくべた。
「最近、寒くなってきましたね。」
「あぁ。だが、江戸よりも京の方がもっと寒いだろう。有匡は少し寒さに弱い故、風邪をひいていなければいいが・・」
有仁は遠く京に居る有匡の身を案じながら、降り始めた雪を眺めた。
「有匡様、大丈夫ですか?」
「あぁ。少し油断していたな。」
京では、有匡が熱を出して寝込んでいた。
「濡れた髪をそのままにして寝てしまうなんて、自業自得だな。」
「ゆっくり休んで下さいね。」
「あぁ、そうする。」
「土御門さん、いらっしゃいますか?」
「山南さん、どうかされたのですか?そんなに慌てて・・」
「巡察に出た羅刹二人が、行方知れずとなりました。」
「そんな・・」
「この事は既に、土方君には報告済みです。あなたも羅刹捜索に加わって頂きたいのです。」
「申し訳ありませんが山南さん、有匡様は体調を崩してしまいまして・・代わりに僕が行きます。」
「いいえ、それには及びません。」
山南はそう言うと、襖を静かに閉めた。
「有匡さん、無理だって?」
「はい。」
「そうか。じゃぁ俺達で、羅刹を捜すしかないな。」
「早く見つけ出して、“始末”しないといけませんね。」
「あぁ。」

こうして土方達は、羅刹捜索へと向かった。

京の町に、しんしんと冷たい雪が降り始めた。

その中を、一人の少女が息を切らしながら走っていた。

「待て、小僧~!」

背後から、男達の怒号が聞こえて来て、少女―雪村千鶴はとっさに路地裏に隠れた。
「畜生、何処行きやがった!」
「何じゃ、貴様ら!?うわぁぁ~!」
突然男の悲鳴が聞こえたので、千鶴がそっと物陰から少し顔を出して様子を窺うと、男達は“何か”に襲われていた。
「ぎぁぁ~!」
「何じゃこいつは1」
けたたましく、おぞましい白髪紅眼の化物の哄笑が、夜の闇にこだました。
「ひっ」
涎を垂らしながら、化物は千鶴に襲って来た。
「血ヲ、血ヲ寄越セ~!」
「きゃぁ~!」
両手で顔を覆い、千鶴は目を閉じたが、痛みは襲って来なかった。
恐る恐る目を開けると、そこには浅葱色の羽織を着た二人の青年の姿があった。
「あ~あ、僕が先に仕留めようと思ったのに。はじめ君、相変わらず仕事早いよね。」
「俺は勤めを果たしたまでだ。」
そう言って総司が斎藤を見ると、彼は屠った羅刹の血で汚れた刀を懐紙で拭っていた。
「この子、どうするの?“あれ”、見ちゃったんでしょう?」
少し癖のある、栗色の髪を夜風になびかせた青年は、そう言いながら翡翠の瞳を千鶴に向けた。
「それは、俺達が決める事ではない。」
“はじめ君”と呼ばれた黒髪の男は、そう言うと千鶴の背後を見た。
砂を踏む音と同時に、刀の鯉口を切る音がした。
「逃げるなよ、背を向ければ斬る。」
なびく美しい漆黒の髪に、千鶴は目を奪われた。
その時、雲に隠れていた月が、男の美しい顔を照らした。
すっきりとした鼻筋に、血のように紅く美しい唇。
そして、宝石のような美しい紫の切れ長の瞳と目が合った瞬間、千鶴は気を失った。
「土方さん、この子、どうします?」
「屯所に連れて行け。そいつをどうするのかは、明日決める。」
歳三はそう言うと、刀を鞘におさめ、気絶している少女を優しく抱き上げた。
翌朝、千鶴が目を覚ますと、彼女は手足を縛られている事に気づいた。
「やぁ、起きたんだね?済まないねぇ、こんなに強く縛ってしまって。」
そう言いながら部屋に入って来た男は、千鶴のいましめを解いてくれた。
「あの、わたし、これからどうなるんでしょうか?」
「それは、これからみんなで、というよりトシさん達が決める事だから、わたしと一緒に来てくれ。」
「わかりました。」

千鶴が大広間に男と共に入ると、そこには昨夜会った黒髪の男が、眉間に皺を寄せて自分を睨みつけている事に気づいた千鶴は思わず俯いてしまった。

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2021年07月21日



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「火宵の月」「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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「例の“計画”は進んでいるのか?」
「はい。」
「そうか。それで、新選組とあの“化物”とは、どういった関係が・・」
「それはまだ、わかりませぬ。」
「フン、役立たずめ。」
匡俊を睨みつけていた男は、そう言った後部屋から出て行った。
「旦那様、お茶を持ってきました。」
「入れ。」
「失礼致します。」
すっと襖を開けて中に入ったのは、土御門家から突然姿を消した雪之丞の双子の弟・蛍だった。
雪之丞は有匡が行方知れずとなった同時期に、姿を消したのだった。
「蛍、まだ雪之丞の行方はわからぬのか?」
「はい。」
「お前も何かと気苦労が多いな。」
「えぇ。」
「さ、気晴らしに一杯やれ。」
「ありがとうございます。」
匡俊から酒を受け取った蛍は、それを一気に飲み干した。
「はぁ、久しぶりに飲む酒は美味いです。」
「そうであろう。まぁ、お前に酒を馳走したのだから、今度は儂の頼みを聞いてくれないか?」
「えぇ、何でも。」
「そうか。お前は、兄とは違って賢いようだ。」
「お褒め頂き、光栄です。」
(狸爺めが。)
蛍は匡俊にしなだれかかりながらも、彼を心底軽蔑していた。
「それで?わたくしに頼みたい事とは何です?」
「新選組に、潜入して欲しい。」
「わかりました。」
こうして、蛍は匡俊の命を受け、新選組に潜入する事になった。
「へぇ、新選組に入隊希望ねぇ・・何だか、嬉しくないなぁ。」
「何でだよ、隊士の数が増えれば新選組の名が広まるんじゃ・・」
「馬鹿、ただでさえ狭い所が更に狭くなるだろうが。」
「あ~、そうだったぁ!」
「てめぇら、朝からうるせぇぞ!」
「ひ、土方さん!」
「こんな所で油を売っている暇があったら、稽古でもしやがれ!」
「ひぃぃ~!」
原田達は、そそくさと大広間から出て行った。
「ったく、あいつら気が緩み過ぎだ。」
「まぁトシ、そんなにカリカリするなって。」
「勝っちゃん・・」
「土方さん、こんな所に居たんですか。入隊希望者の面接、やってくださいよ。」
「わかったよ。」
歳三が大広間から出て入隊希望者が居る道場へと向かうと、そこには有匡と打ち合っている少年の姿があった。
「頼もう、頼もう!」
「何だ、こんな朝っぱらから、道場破りか?」
「そうみたいだな。」
道場で朝稽古をしていた有匡達は、屯所の方から甲高い少年の声がして、その手を止めた。
「わたしが見て参ります。」
有匡がそう言って道場から外へと出ると、屯所の前には雪之丞と瓜二つの顔をした少年が立っていた。
「お前は・・」
「お初にお目にかかります、有匡様。わたくしは雪之丞の双子の弟の、蛍と申します。」
「それで?叔父上の差し金でここへ来たのか?」
「えぇ。それに、単にここへ来たのは興味本位です。」
「興味本位、だと?」
「ですから・・」
「ここは、壬生狼の巣だ。お前のような子供が来るような所ではない、帰れ。」
「・・そうですか。では、わたくしの剣の腕をその目で確かめて頂きたい。」
蛍はそう言うと、有匡を見た。
「ほぉ?」
同じ顔をしていても、蛍は兄とは違うらしい。
口でわからぬのならば、その身体で壬生狼の巣に入ろうとした事を後悔させてやるしかない。
「どうした、もう終わりか?」
「参りました。兄には時折有匡様がお強いと聞きましたが、お強い。」
「実戦では、お前は三度死んだ事になっていた。ここはでは、剣すらもまとも振えぬ童は不要。」
「手厳しいですね。」
蛍はそう言って笑うと、少し嬉しそうに笑った。
「有匡様、こちらにいらっしゃったのですか。」
「火月、お前その姿はどうした?」
有匡は、小袖に袴姿の妻を見て驚愕の表情を浮かべた。
「最近薙刀の稽古をしていないなと思って。」
「そうか。」
「おや、そちらが有匡様の細君でしょうか?ならば彼女と手合わせ願いたいものですね。」
「女だから、僕に勝てるとでも?甘い考えですね。」
火月は蛍を睨みつけると、そう言って稽古用の木刀を彼に向けた。
「では、はじめ!」
火月と蛍の試合は、互いに一歩も引かず打ち合っていた。
「強いですね、あの二人。」
「女であっても、守れる術を持たなきゃ、生きてられねぇ。」
「随分と厳しいですね、土方さん。」
「まぁ、“あいつ”とは違う。」
土方はそう言うと、かつて屯所に居た少年の事を思い出していた。
今は亡き芹沢に拾われ、彼の死と共に濁流に呑み込まれ姿を消した少年―井吹龍之介の事を。
「“彼”の事なら心配しなくても大丈夫ですよ。それよりもあの子、どうします?」
「・・暫く泳がせておくか。」
こうして、蛍は新選組に“入隊”した。
「首尾は上々だな。」
「えぇ。」

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Last updated  2021年07月23日 12時18分35秒
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有匡は火月に、“呪われた血”の事を話した。

「じゃぁ、有匡様も、僕と同じ・・」
「火月、それは一体・・」
「土方さん、大変だ!」
平助の叫び声を聞いた二人が部屋から出ると、中庭には何処か慌てふためいた表情を浮かべている平助と原田、永倉の姿があった。
「皆さん、どうかされたのですか?」
「どうした、何があった?」
「蔵に居た羅刹が、脱走した!」
「何だと!?日が暮れる前に俺達で羅刹を捜し出すぞ!」
「おぅ!」
土方達が羅刹捜索へ向けて慌しく動き始める中、山南は自室である“薬”の研究に勤しんでいた。
「これで、完成ですかね・・」
そう言った山南の瞳は、妖しく煌めいていた。
「居たか!?」
「畜生、あいつら何処に行きやがった!」
羅刹が蔵から脱走して、数刻が経った。
すっかり日が暮れ、辺りは闇に包まれていた。
(羅刹が人を襲う前に、早く見つけねぇと・・)
土方がそんな事を思いながら有匡と共に羅刹を捜していると、路地の向こうから女の悲鳴が聞こえて来た。
「行くぞ!」
二人が悲鳴が聞こえた方へ向かうと、そこには蔵から脱走した羅刹が、今まさに女の生き血を啜ろうとしているところであった。
「逃げろ!」
「ありがとうございます!」
女は礼を言うと、そのまま土方と有匡に頭を下げた後、闇の中へと消えた。
「血ヲ・・寄越セ!」
「生け捕りにしたいところだが、仕方ねぇ。」
土方はそう言うと、愛刀の鯉口を切った。
有匡も、それに倣った。
「血ヲ~!」
「くどい!」
有匡はそう叫ぶと、羅刹の首を一閃した。
「土方さん、見つかったか!?」
「あぁ。後始末を頼む。」
土方は原田達に指示を出していると、彼の背後に怪しい影が揺らめいた。
「土方さん、後ろ!」
「血ヲ寄越セ~!」
土方は背後に迫って来る羅刹の気配に全く気付けず、刀を振うのが遅れた。
有匡は、己の身体を盾にしながら、羅刹の首に刃を食い込ませた。
「お怪我はありませんか?」
「あぁ。」
有匡の首筋に、羅刹が残した引っ掻き傷があった。
かなり深いものであったが、それはすぐに塞がった。
「有匡・・お前ぇは一体何者だ?」
「隠しても、いつかはバレるだろうと思うから、屯所でお話します・・全てを。」
一方、火月は山南と共に蔵の中へと入った。
「あの、ここは・・」
「ここは、羅刹の実検を行う場所ですよ。」
「羅刹?」
「えぇ。彼らはわたし達新選組が作り上げた“化物”ですよ。」
「ひっ!」
蔵の中に居た白髪紅眼の男達に睨まれ、火月は思わず後ずさった。
「あなたは、彼らの力になってくれると、わたしは思っています。」
「一体、何を言って・・」
「火月さん、あなたの血を少しだけ、頂けませんかね?」
山南はそう言うと、脇差の鯉口を切り、火月ににじり寄って来た。
「山南さん、あんた何してんだ!?」
「土方君、あなたは、彼女が鬼だという事を知っているのですか?」
「あぁ。だからと言って、こいつを傷つけるのは許さねぇ!」
土方と山南の間に、静かな火花が散った。
「火月、怪我は無いか?」
「はい。」
「火月君、あなたを怖がらせてしまって、申し訳ありませんでした。」
「いいえ・・」
「戻るぞ、ここには用はねぇ。」
歳三は牢の中にいる羅刹に一瞥をくれた後、蔵から出て行った。
「それで、俺達に話しておきたい事というのは何だ?」
「実は、わたしと妻は、“呪われた血”を持った一族なのです。」
「“呪われた血”?」
「わたし達は吸血鬼・・人の生き血を啜る化物なのです。」
「吸血鬼・・つまり、あなたは“鬼”という事ですか。」
「はい。」
「先程あなたの奥方を蔵へ連れて行ったのは、羅刹のある“欠陥”をあなた方の“血”でなくせないかと思いましてね。」
「“欠陥”だと?」
「えぇ。それは・・」
山南が次の言葉を継ごうとした時、外から隊士達の怒号が聞こえた。
「今度は一体何があった!?」
「副長、この方が土御門殿に会わせろと・・」
「ええい、離せ!」
そう叫びながら隊士達の腕を払い除けたのは、匡俊だった。
「お久しぶりです、叔父上・・」
「お前に、話がある。」
「今日はもう遅いので、日を改めてくれませんか?」
「では用件だけを伝えておく。お前に土御門家の家督は継がせん。」
「そうですか。」
有匡は匡俊に背を向け、屯所の中へと戻っていった。
「その様子だと、説得は失敗に終わったようだな?」
「も、申し訳ありません!」
「まぁよい、お前の甥とはすぐに会う事になるだろうよ。」

そう言った男は、氷のような視線を匡俊に向けた。

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2021年07月18日



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「え、はじめ君の事を知りたい?急にどうしたの?」
「はい。斎藤さんは、おいくつなんですか?わたしよりも10よりも年上かと・・」
「え、はじめ君は俺と同い年だよ。」
「じゃぁ、わたしよりも4つ年上なのですか?」
「あ~、はじめ君年の割には落ち着いているからなぁ。」
平助はそう言うと溜息を吐いた。
「平助、こんな所に居たのかと思ったら、人妻を口説いていたのか?」
「いや、違ぇし!」
「火月ちゃん、ここでの生活は慣れたか?」
「えぇ、何とか・・」
「そういや、旦那さんとはひと回りも年の差があるんだよな?どうやって、知り合ったんだ?」
「実は、江戸に居た頃、僕は兄上のお手伝いで寺子屋に来ていたんですその時、有匡様とお会いしました。」
火月はそう言いながら、有匡と初めて会った時の事を思い出していた。
昨年の冬、火月はいつものように箏の稽古が終わり、家路へと着こうとしていた時、途中で寄った寺子屋で、兄・静馬の元へ一人の客人が来た事に彼女は気づいた。
「お嬢様、どうかされたのですか?」
「久、兄上の元に誰か来ているの?」
「お嬢様が恋い焦がれているお方ですよ。」
「まぁ、誰かしら?」
火月がそう言って兄の部屋の方を見ると、丁度部屋の襖が開いて有匡が姿を現した所だった。
「有匡様!」
「火月、久しいな。」
それは、有匡と10年振りに再会した日だった。
「え、ちょっと待って、旦那さんとは初めて会ったんじゃねぇのか?」
「あ、説明不足でしたね。有匡様と僕は、子供の頃からの知り合いで・・」
「そうなのか。でもさあ、あいつ女にモテそうじゃん。土方さんみたいに。」
「えぇ、有匡様は良く女の人から声を掛けられます。中には、恋文を渡された方もいらっしゃいました。」
「それで!?」
「有匡様は、“申し訳ないが、わたしには可愛い許婚が居る”とその方達にお断りしておりました。」
「へぇ、やるねぇ。」
「おいてめぇら、何そこで油を売っていやがる!」
頭上から突然声がしたので火月が俯いていた顔を上げると、そこには眉間に皺を寄せている土方の姿があった。
「土方様、おはようございます。」
「あぁ、おはよう。お前ぇに客だ。」
「僕に、ですか?」
「ここは俺がやっておくよ。」
「ありがとうございます。」
厨を出た火月が正門へと向かうと、そこには一人の青年の姿があった。
「久しぶりだね。」
「あなたは・・」
一方、有匡は総司率いる一番隊と共に、市中巡察をしていた。
「特に、おかしな事はなし、と。」
「最近は長州や肥後の浪士達が辻斬りをしていると噂で聞いていたが、それは偽りのようだ。」
有匡がそう言いながら総司の方を向いた時、突然背後から鳥なのか猿なのかわからぬ声が聞こえて来た。
「キェェ~!」
振り向くと、有匡の元へ口元から涎を垂らしながら刀を振り回している男が向かってゆこうとしているところだった。
男の前には、恐怖で固まっている男児の姿があった。
「危ない!」
有匡は電光石火の勢いで刀を振り回している男に手刀を入れると、男児を突き飛ばした。
男が昏倒した弾みで、彼が振り回していた刀の刃先が有匡の右腕に食い込んだ。
「怪我は無いか?」
「うん・・」
「では、走れ。」
男児が走り去るのを見た有匡は、安堵の溜息を吐いた。
「ねぇ、有匡さん怪我しているよ!」
「大丈夫だ、ただのかすり傷だ。」
「そう?」

刀が食い込んだ有匡の右腕を総司が見ると、そこにはある筈の傷がなかった。

(え?)

「もう、戻りましょうか?」
「うん、そうだね。」

先程自分が見たものは幻だったのか―総司はそんな事を思いながら、屯所へと戻った。

「あれ、火月ちゃんじゃない?」
(火月、その男は誰だ?)
「一緒にわたしと来てくれ、火月。そうすればきっと・・」
「離して下さい、わたしは行きません!」
火月はそう叫ぶと、自分の腕を掴んで離さない青年を睨みつけた。
「火月!」
「有匡様!」
「貴様、わたしの妻に何か用か?」
有匡がそう青年に声を掛けると、彼は舌打ちして雑踏の中へと消えていった。
「火月、大丈夫か?」
「はい・・」
総司達と共に屯所へ戻った有匡と火月は、用意された部屋に入るまで互いに一言も話さなかった。
「あの男は、お前の知り合いだったのか?」
「はい。あの人は、姉様の許婚だった方でした。」
「美祢殿の許婚だった男が、何故お前に用がある?」
「それは、わかりません・・」
「そうか。それよりも火月、お前にどうしても話しておきたい事があるんだ。」
「話しておきたい事、ですか?」
「あぁ、実は・・」

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