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JEWEL

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薔薇王韓流時代劇パラレル 二次創作小説:白い華、紅い月

Apr 26, 2020
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画像はコチラからお借りいたしました。

「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

「あ~、忙しいったらありゃしない!」
「なんなのよ、連日宴ばかり開いて、準備するこっちの身にもなれっての!」
「あなた達、口よりも手を動かしなさい!」

水刺間では、連日宴の準備に追われて、水刺間の女官達が互いに愚痴り合いながら仕事をしていると、そこへ王妃がやって来た。

「お、王妃様・・」
「皆、仕事を続けよ。」
「は、はい!」
「そなた達も連日の宴の準備で疲れていると思うが、わたし達はそなた達に心から感謝しておる。」

王妃はそう言うと、女官達に菓子を振る舞った。

「これを食べて精をつけるがよい。」
「王妃様、よろしいのですか?あれは、大妃(テビ)様から頂いた高価なもので・・」
「あんな物、わたしの好みではない。」

大妃―マーガレットは、そう言うと水刺間を後にした。

「昭媛様、大妃様がお呼びです。」
「わかりました、すぐに行きます。」

リチャードが大妃の元へと向かうと、そこには見知らぬ女の姿があった。

「お初にお目にかかります、大妃様。」
「そなたが、リチャードか?美しい瞳をしておるな。」
「ありがたきお言葉にございます。」

「そなた、瑠璃楼の妓生だったようだな?」
「はい。」
「王妃が認めても、妾はそなたを認めぬぞ。」

大妃はそう言うと、リチャードを睨みつけた。

「そなたに、これを贈ろう。」
「はい・・」

大妃がリチャードに渡したものは、ノリゲだった。

「これは?」
「これは、王の母が死に間際に握っていたものだ。」
「何故、そのような物をわたくしに?」
「もし王様の身に何かあったら、命を絶ちなさい。それが、そなたの役目です。」
「わかりました、大妃様。」

大妃殿から出たリチャードは、暫く震えが止まらなかった。

「おや、昭媛様はどちらに?」
「昭媛様ならば、先程体調を崩されて、今宵の宴に出席できませんと・・」
「そうか。」

大妃はそう言うと、ほくそ笑んだ。

「大妃様、少しお話が・・」
「おや、王妃がわたくしの元に訪れるなど珍しい。」
「大妃様、昭媛様にノリゲを贈られたとか・・王様の母の形見のノリゲを・・」
「わたくしは、あの女を認めておらぬ。」
「どういう意味です?」
「その言葉通りだ。」

何処からか、雷鳴が轟いた。


「クソッ、もう降り出したか。」

商店の軒先で雲の様子を見ていたバッキンガムは、雨が降り出した事に気づいて舌打ちした。
なるべく濡れないように黒笠(フンニプ)を被った彼は、屋敷へ戻る途中、瑠璃楼の跡地へと立ち寄った。

かつて隆盛を極めた妓楼は、荒れ果てた廃墟と化していた。

(気味が悪いな・・)

バッキンガムが瑠璃楼の跡地から出ようとした時、何かがさっと横切る気配がした。

(何だ、今のは?)

バッキンガムが影の後を追うと、塀の近くには白いものが丸まっていた。

それは、白い猪だった。

猪は寒さに震えながら、じっと自分を見ていた。
殺すのが惜しいと思っていたバッキンガムは、その猪を家まで連れ帰った。

「まぁ坊ちゃま、こんなに濡れては風邪をひきます!」
「こいつを俺の部屋へ入れておけ。」
「こいつをですか?」
「あぁ、そうだ。」
「・・わかりました。」

使用人は少し戸惑いながらも、白い猪をバッキンガムの部屋に入れた。

「大丈夫ですか、リチャード様?」
「あぁ・・」

ヘンリーと愛し合った後、リチャードは最近体調を崩し、一日の大半を床に臥せっている状態だった。
水とケイツビーが作った粥以外、リチャードは何も食べられなくなってしまった。

「リチャード様、薬師を呼んで参ります。」
「悪いな・・」

リチャードの部屋に薬師が入っていくのを見た大妃付きの女官は、慌てて主の元へと向かった。

「昭媛が体調不良だと?それは本当か?」
「はい・・」
「そうか、昭媛の容態がわかり次第、わたくしに伝えなさい、いいですね?」
「はい、大妃様。」

リチャードは薬師の診察を受けた後、信じられない言葉を聞いた。

「今、なんと・・」
「昭媛様はご懐妊なさっておられます。」
「それは、確かなのですか?」
「はい、おめでとうございます。」

(わたしが、王様の子を・・)

リチャードはそっと、まだ目立たない下腹を撫でた。

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Last updated  Apr 26, 2020 08:58:21 PM
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Mar 14, 2020



画像はコチラからお借りいたしました。

「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


(あれが、王の新しい側室・・)

一目見た瞬間、バッキンガムはその女の顔を見ようと、身を潜めていた叢(くさむら)から少し身を乗り出した時、彼は傍に落ちていた枝を踏んでしまった。
その後、玄琴(コムンゴ)の音が止み、部屋の中から女が外へと出て来た。

「リチャード様、お久しぶりでございます。」
「ケイツビー、お前生きていたのか?」

瑠璃楼の者達は、行首(ヘンス)であったチョンジャ以下、妓生達や使用人達は皆都から追い出されてしまった。

「はい。わたしは、王妃様からあなた様の身の回りのお世話をするようにと命じられました。」
「そうか。皆、俺の事を恨んでいるだろうな・・」
「王妃様は、瑠璃楼に居た妓生達を宮廷付きにしました。」
「王妃様が?」
「はい、詳しい理由はわかりませんが・・それよりもリチャード様、少し顔がおやつれになりましたね?」
「まぁな。瑠璃楼にはいつも俺の周りには沢山の人が居たから、王宮の静かさには少し戸惑っている。」
「そうですか・・」

王の寵愛と庇護を受けているとはいえ、一介の妓生に過ぎなかったリチャード突然王の側室になったのだから、彼女が急な環境の変化に戸惑うのも無理はないと、ケイツビーは思った。

「さっきの音はお前だったのか、ケイツビー?」
「いいえ。」

(それでは、一体誰が・・)

「・・ふぅ、危なかったな。」

バッキンガムはそう呟いた後、エリザベスと合流した。

「あら、遅かったじゃないの。」
「少し、道に迷ってしまって・・」
「まぁ、これから気をつけなさいね。」
「はい・・」

バッキンガムはそう言うと、エリザベスと共に王宮をあとにした。

「昭媛(スグウォン)様、王妃様がお呼びです。」
「わかりました、すぐに参りますと王妃様にお伝えください。」

リチャードは溜息を吐くと、ケイツビーの方へと向き直った。

「ケイツビー、暫くお前とゆっくり話せる暇はない。申し訳ないが・・」
「わかっております。」

王妃が住まう宮殿へと向かう途中、リチャードは水刺間(スラッカン)の女官達と出会った。

―あの方が、王様の新しい側室の方。
―妓生ですってね。一体どんな手を使って王様を誑(たぶら)かしたのかしら?
―やめなさい、聞こえるわよ。

「遅かったな、リチャード。一体何があった?」
「いいえ、何もありません。」
「わたくしに嘘は通じぬぞ。正直に話せ。」
「王妃様、わたくしがこの王宮で歓迎されていない事はわかっております・・」
「何をそんな弱気な事を言っているのです、リチャード。」

マーガレットはそう言うと、チマの裾を乱しながら立ち上がった。

「わたしが、何故お前を王宮に迎えたのか、わかるか?」
「いいえ・・」
「其方が、王様の心を救ってくれると信じているからです。リチャード、お前は、暫く王宮で辛い思いをする事があるでしょう。しかし、口さがない者達を其方が黙らせる唯一の方法があります。」
「唯一の方法、ですか?」
「それは、其方が王様の子を産む事です。」
「しかし、王様には既に世子(セジャ)様が・・」
「世子様は、王様の御子ではありません。わたしが一夜の過ちで授かった子。さぁリチャード、心を決めなさい。王様の御子を授かり、国母となりなさい。」
「はい・・」

リチャードはその日の夜、ヘンリーの寝所へと向かった。

「リチャード、待ってたよ。」
「王様、どうかわたくしにお情けをくださいませ。」
「リチャード・・」

ヘンリーは、自分の前に一糸纏わぬ姿をしたリチャードを見て、彼女の余りの美しさに息を呑んだ。

「父上、何という大胆な体位で・・」
「世子よ、何をしているのです?」
「は、母上・・」

ヘンリーとリチャードの情事を盗み見ていたエドワードは、マーガレットによって自室へと連れ戻された。

(全く、油断も隙もないわね。)

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Last updated  Mar 14, 2020 12:00:18 AM
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Oct 21, 2019

※BGMと共にお楽しみください。

「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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「・・恐れながら申し上げます、王妃様。この者は魔物です!この者を王室に入れるなど、この国に災厄を齎しますぞ!」
「其方、昭媛に対する無礼な物言いは、わたくしを侮辱することになるのですよ?」
「も、申し訳ございませぬ王妃様!」
マーガレットの剣幕に怯んだセシリーは、それ以上リチャードを侮辱する事はせず、そのまま彼女の部屋から辞した。
「王妃様、わたくしはあの女を一度も母だと思ったことはありませぬ。」
「そうか、ならばわたくしが其方の母となろう。リチャード、わたくしは其方の事を高く買っている故、わたくしの期待を裏切るような事はしないでおくれ。」
「はい、王妃様。」

王妃の部屋から辞したリチャードは、後宮内にある自分の宮へと戻った。

そこは妓楼に住んでいた頃に自分が使っていた部屋とは余り変わらなかったが、唯一変わった事といえば、部屋の外に数人の女官達が控えている事だけだった。

「昭媛様、お召し替えをなされませ。」
「暫く一人にさせてくれ。」

女官達が居なくなり、リチャードは漸く部屋で寛ぐことができた。

妓楼で暮らしていた頃、リチャードの傍には常に多くの人間が居て騒がしかったので、こんなに静まり返った部屋の中で過ごすのは少し心細かった。

「ケイツビー。」

いつもの癖でケイツビーを呼ぼうとしたリチャードだったが、ケイツビーはもう自分の傍に居ない事に気づいた。

壁に立てかけてある玄琴(コムンゴ)を手に取ったリチャードは、静かにそれを爪弾き始めた。

「それにしても、妓生だった者を側室に迎えるなんて、王様はかなりの変人だこと。」
「それは言い過ぎでしょう、義姉上(あねうえ)。そのような事が王妃様の耳に入れば、我ら一族は無傷では済みませんよ。」
「まぁバッキンガム、お前はいちいち大袈裟ね。ねぇ、今日のわたくしの装いはどうかしら?」
「とても素敵ですよ。」
義姉・エリザベスの華やかな姿を見て、バッキンガムはそんな月並みの誉め言葉しか彼女に送れなかった。
「一度、王宮に住めたのならどんなにいいと思ったわ。でもわたくしはエドワード様の妻となる身。その願いは、妹に叶えて貰うしかなさそうね。」
エリザベスの妹・キャサリンは、エドワードの口添えで水刺間(スラッカン)の女官として王宮入りしていた。
いつか妹が王の目に留まり、彼女が王の側室となり男児を儲け、一族が繁栄することこそが、エリザベス達ウッドウィル一族の野望であった。
今日エリザベスが義弟・バッキンガムと共に王宮を訪ねたのは、病に伏せたキャサリンを見舞う事と、王の新しい側室の顔を見る為だった。
「姉様、わざわざいらしていただかなくても宜しかったのに。」
「キャサリン、慣れない王宮での生活は疲れが溜まる事でしょう。お前の好きな菓子を作らせたから、これを食べて元気におなりなさい。」
「まぁ嬉しい。ありがとう、姉様。」
バッキンガムは久しぶりに会う姉妹の時間を奪ってはいけないと思い、バッキンガムは二人が居る部屋から出て、広い王宮内を散策した。
エリザベス達が居る部屋へと戻ろうとした時、バッキンガムは風に乗って聞こえる玄琴の音色にまるで誘き寄せられるかのように、後宮の中へと迷い込んだ。

半分開けられた扉の中から、バッキンガムは艶やかな黒髪を揺らしながら玄琴を奏でている一人の美しい女の姿に見惚れてしまった。

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Last updated  Oct 24, 2019 08:57:37 PM
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Oct 18, 2019



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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養母・チョンジャは、リチャードと今生の別れをした後、牢内で自らの喉を刃で突いて自害した。

「遺体は手厚く葬りなさい。卑しい妓生であったにせよ、昭媛の養母であった女です。」
「はい、媽媽。」
マーガレットは物言わぬ骸と化した瑠璃楼の行首に一瞥をくれた後、自室へと戻った。
「母上、どちらへ行かれていたのですか?」
「エドワード、野暮な事を聞くのではありません。お前はこんな夜更けに、何処へ行こうとしているのです?」
「そ、それは・・」
「もしや、昭媛と王様との情事を覗き見ようと、王様の部屋に行こうとしているのではないだろうね?」
「母上、そのような事は・・」
「其方は、まだ男女の艶事を知るには早過ぎます。決して王様の部屋に行ってはなりません、良いですね?」
「は、はい・・」
「宜しい、では戻りましょうか、世子様。」
マーガレットはそう言うと、エドワードを夫とリチャードが居る部屋から遠ざけた。
夜が明け、リチャードがヘンリーの腕の中でまどろんでいると、そこへ女官達が入って来た。
「おはようございます、王様、昭媛様。お二人ともお召し替えをなさいませ。」
「まだ眠いよ・・少しだけ寝かせて。」
「いけません。」
絹の布団に包まって眠ろうとするヘンリーにそう厳しく声を掛けたチェ女官長は、乱暴に彼が包まっている布団を引き剥がした。
「リチャード、何処へ行くの?」
「王様、わたくしはこれで失礼いたします。」
リチャードがそう言って女官達とヘンリーの部屋から出ようとした時、ヘンリーが寂しそうな顔をして彼女を見た。
「一人にしないで、リチャード。」
「王様、わたくしは側室の身。王様には王妃様がおられるのですから、わたくしよりも王妃様の事を大切になさいませ。」
「王妃は怖いから嫌だ。ねぇ、今日はずっと僕の傍に居てよ、お願い。」
「まぁ王様、我儘を言ってはなりません。」
チェ女官長達がそう言いながら駄々を捏ねるヘンリーを宥めていた時、マーガレットが部屋に入って来た。
「王様、いつまでそのような格好をなさっているのです?早くお召し替えをなさいませ。」
「わかったよ・・」
「昭媛はわたくしと共に来るがよい。其方に会わせたい者をわたくしの部屋に待たせてあります。」
「わたくしに、会わせたい者でございますか?」
マーガレットの言葉を聞いたリチャードは、嫌な予感がした。
そしてその予感は、見事に的中した。
「まぁ王妃様、お久しぶりでございます。」
「セシリー、二人の息子達は息災か?」
「はい。漸く上の息子のエドワードの縁談が調いましたの。」
「まぁ、それはめでたい事、後でわたくしの方から祝いの品を贈ることにしよう。」
「有り難き幸せにございます、王妃様。わたくしに会わせたい者は、どちらにおられるのですか?」
「其方の娘に決まっておろう、セシリー。」
マーガレットはそう言うと、かつてセシリーが捨てた娘を彼女と引き会わせた。
「恐れながら王妃様、わたくしには娘は居りません!」
「ああ、其方はこの娘を捨てたのであったな、セシリー。リチャード、其方の母だ。」

自分を捨てた産みの母と対面しても、リチャードは何の感情も湧いてこなかった。

「この女がわたしの娘の筈がありません、この女は卑しい妓生・・」
「口を慎め、セシリー。この娘は王様の側室であるぞ。」

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Last updated  Oct 24, 2019 08:56:55 PM
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Oct 17, 2019



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者・出版社とは一切関係ありません。

二次創作が嫌いな方は読まないでください。


「王様、正気ですか?妓生を側室に迎え入れるなど・・」
「わたしは本気だ。」
「なりません!氏素性もわからぬ妓生を側室に迎え入れたりなどしたら、天の怒りを買いますぞ!」
「お考え直してください、王様!」
「王様!」
朝議の席では、ヘンリーがリチャードを側室として宮廷に迎え入れる事に反対している大臣たちの声で溢れ返っていた。
そんな事とは露知らず、当の本人は王の寝所で絹の布団に包まって眠っていた。
「う・・」
低く呻いたリチャードは、少し寝癖がついた艶やかな黒髪を撫でつけながら布団から起き上がると、そこには深緑のチョゴリと濃紺のチマを着た数人の女官達の姿があった。
「お目覚めですか、リチャード様?」
「ヘンリー・・王様はどちらに?」
「王様なら、朝議にご出席中です。」
「そうか。俺はもう妓楼に戻るので、王様に伝言を・・」
「なりません。貴女様を一歩でもこの部屋から出すなと王様から仰せつかりました。」
女官の言葉を聞いたリチャードは、驚きの余り目を丸くした。
「それは、どういう事だ?」
「まずはお召し替えを。中殿媽媽がお見えになられます。」
訳が解らぬまま、リチャードは女官達に身支度を手伝って貰い、夜着から華やかなチマ=チョゴリへと着替えた。
「中殿媽媽がお見えになられました。」
リチャードが部屋の入り口に控えている女官の声を聞いて王妃に向かって深々と頭を下げていると、衣擦れの音ともにマーガレット王妃が入って来た。
「リチャード、顔を上げなさい。」
「はい・・」
リチャードが恐る恐る顔を上げると、マーガレットは自分に向かって笑みを浮かべていた。
「先ほど朝議に於いて、お前を王の側室として宮廷に迎え入れることが決まりました。」
「王妃様、お願いですから一度妓楼に戻らせてくださいませ。養い親に対して別れの挨拶一つも出来ぬのは、辛いです。」
「ええ、そうでしょうね。お前がそう言うと思っていたので、わたくしが特別にお前の養い親を連れて来ましたよ。」
マーガレットはそう言うと、手を鳴らして兵士達を中庭へと呼んだ。
両脇を兵士達に固められ、白い衣に身を纏った養母が顔から血を流している姿を見たリチャードは、唖然とした表情を浮かべながらマーガレットと養母の顔を交互に見た。
「王妃様、これは一体・・」
「お前の養母には、お前が王を誑かし、国を傾けさせようとした罪を代わりに背負って貰おうと思います。さぁリチャード、この場で王と養母、どちらを取るのかを決めなさい。」
「そんな・・そのような事は出来ません。」
「どうかわたくしのような卑しい妓生の事はお忘れになってください、昭媛様。」
チョンジャはそう言うと、リチャードの手を優しく握った。
「義母上・・」
「さぁ、今すぐ決めなさい、リチャード!お前は愛しい王と義理の母、どちらを取るのです?」
リチャードが涙を流しながらチョンジャを見つめると、彼女は優しく微笑んだ。
「恐悦至極にございます、中殿媽媽。改めて宜しくお願い致します。」
「そう。では養母と今生の別れをなさい。」
マーガレットはそう言って兵士達と女官達を下がらせると、リチャードとチョンジャを二人きりにさせた。
「義母上、俺の所為で・・」
「自分を責めるのではないよ、リチャード。あんたがいずれ王様の目に留まることはわかっていた。」
「それは一体、どういう意味ですか?」
「わたしの部屋に、螺鈿細工の箱がある。その底にわたしの日記が隠されている。その日記が、お前に真実を伝えてくれるはずだ。」
チョンジャはそうリチャードの耳元に囁くと、そっとリチャードから離れた。
「幸せになりなさい、リチャード。これまで苦しんできた分、王様に愛されて幸せになるのだよ。」
「義母上~!」
養母・チョンジャと今生の別れをしたその日の夜遅く、リチャードは瑠璃楼へと向かった。
あれ程賑やかだった瑠璃楼は今や見る影もなく、まるで建物全体が死んだかのように静まり返っていた。
顔を隠したまま、リチャードは義母の部屋へと向かった。
螺鈿細工の箱の底に隠されていた彼女の日記を見つけたリチャードは、そのまま闇に隠れて王宮へと戻った。
仄暗い蝋の灯りの下でその日記を読んだリチャードは、己の出生の秘密を知り戦慄いた。

(そんな・・まさか俺が・・)

「こんな暗い所で、何をしているの?」
「王様・・」
背後から誰かに抱き締められ、リチャードが振り返ると、そこには夜着を纏ったヘンリーの姿があった。
「君が遅くに王宮を抜け出したから心配したよ。もう僕の元へは戻って来ないんじゃないかと思った。」
「義母と妓楼のみんなに別れを告げて来たのです。わたくしの所為で、瑠璃楼の者達は罰を受けました。一生彼らはわたくしの事を許さないでしょう。」
「あれは君の所為ではない、王である僕が悪いのだ。」
ヘンリーはそう言うと、リチャードの首筋を強く吸い上げた。
「王様・・」
「今夜は、人肌がとても恋しくて堪らないんだ、リチャード。」
ヘンリーはリチャードの女の部分から蜜が滴り落ちるまでそこを指で愛撫すると、己の分身を埋めてきた。
「王様っ・・」
「何も怖がることはない、リチャード。全て僕に身を委ねて・・」

ヘンリーの腕の中で蕩けながら、リチャードは養母を想って泣いた。

―幸せに、おなりなさい。

何処かで、彼女の声が聞こえたような気がした。

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Last updated  Oct 17, 2019 12:00:18 AM
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Oct 16, 2019



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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リチャードが剣舞を舞っている時、金色の髪を揺らしながら自分の方へと走って来る男の姿を捉えると、彼は自分に抱きついて来た。

「リチャード、また君と会えるって僕は信じていたよ!」
「お前、あの時の・・」

リチャードがそう言って男の顔を見ると、彼はあの時泉で出逢った男だった。

「王様、どうか席にお戻りください。」

急に席を立った王を慌てて呼び戻す為、内侍府長・チョジョンは慌ててヘンリーの元へ駆け寄った。
リチャードは今自分に抱きついている男がこの国の王であるという事実を知り、そっとヘンリーから離れた。

「王様、これは失礼を致しました。どうぞわたくしなどには構わず、お席にお戻りくださいませ。」
「嫌だよ、リチャード、君と離れたくないんだ!」
「王様、どうか・・」
「何を騒いでいるのです?」
中々リチャードから離れようとしないヘンリーの様子を見て痺れを切らした王妃が数人の女官達を引き連れて夫の元へと駆け寄った。
「このような妓生に構わず、席にお戻りください!そうしなければ宴の進行が滞ります。」
「リチャード、リチャード・・」
王妃はリチャードをチラッと一瞥すると、夫の腕を掴んで無理矢理自分の方へと引き寄せた。
「わたくしに恥をかかせるおつもりですか!?」
王妃はそう叫ぶと、躊躇いなく王の頬を平手で打った。
乾いた音が中庭に響き、ヘンリーは打たれた頬の痛みで涙ぐんだ。
「母上、おやめください。」
慌ててエドワードが王妃を止めに入り、王妃は憤然とした様子で自分の席へと戻った。
「何をしておる、宴を続けよ!」
世子の言葉に恐怖で固まっていた楽士達が、賑やかな楽の音を響かせた。
リチャードは中断していた剣舞を再開し、なるべく王の方を見ないようにして剣舞を終えた。
「いやぁ、見事な剣舞だった。其方、リチャードと申したな?褒美を遣わすから、こちらへ来い。」
「はい・・」
エドワードに呼ばれ、リチャードは彼の前で頭を垂れた。
「おもてを上げよ。」
リチャードがゆっくりと顔を上げると、エドワードは困惑と驚愕が入り混じった表情を浮かべながらリチャードを見ていた。
「其方、あの時の・・」
エドワードがそう叫びそうになった時、リチャードは彼の唇に人差し指を押し当てた。
「いつぞやは世子様とは知らず、ご無礼を。後で存分にお叱りを受けますから、何卒わたくしの事はお許しになってくださいませ。」

(おのれ、妓生の分際で俺に取引を持ち掛けるつもりか?だが、可愛いから許してやる!)

「何か欲しい物はあるなら申せ、金銀財宝全てを其方に与えてやろう!」
「いいえ、そのような物は頂けません。どうかわたくしの事をお忘れ頂ければ・・」
「何を言う、そなたのような美妓を簡単に忘れられるものか!そうでしょう、母上!」
「折角の世子様の計らいです、有り難く褒美を受け取りなさい、リチャードよ。」
「はい、王妃様・・」
威厳に満ちたマーガレットは、女官達に命じてリチャードに褒美を渡した。
それは、美しい宝石の髪飾りだった。
「其方の黒髪にその髪飾りはさぞや映える事でしょう。」
「有り難き幸せにございます、王妃様。」
リチャードがそう言ってマーガレットから賜った髪飾りを付けると、恭しく彼女に向かって頭を下げた後、仲間の妓生達の元へと戻った。
背後からヘンリーの強い視線を感じたが、リチャードは宴が終わるまで一度も彼の方を見ようとしなかった。

(もう二度と、会う事はないだろう。)

彼はこの国の王、この国を照らす太陽。

自分は妓生、卑しい賤民。

彼とは、一生結ばれぬ仲なのだ。

「リチャード様、帰りましょう。」
「ああ。」
ケイツビーと共に王宮から立ち去ろうとした時、リチャードは突然数人の兵士達に囲まれた。
「何ですか?わたくしに何か用ですか?」
「王様がお前をお呼びだ。我々と共に来るように。」
有無を言わさずリチャードの細腕を兵士達は掴み、そのまま王の寝所へとリチャードを連れて行った。
「リチャード様!」
「ケイツビー、義母上には俺は無事だと伝えろ!」
ケイツビーはリチャードの元へと駆け寄ろうとしたが、兵士達に阻まれ、非情にも目の前で閉まる門を前に立ち尽くす事しか出来なかった。
「王様、例の妓生をお連れ致しました。」
「ご苦労だった。皆、下がってよい。」
篝火が、嬉々とした表情を浮かべながら自分の元へとやって来るヘンリーの顔を照らした。
「リチャード、漸く二人きりになれたね。」
「王様・・」
「そんな呼び方は止めてくれ、名前で呼んでくれ。」
ヘンリーはそう言うと、リチャードの頬を優しく撫でた。
「わたしをどうなさるおつもりですか?」
「僕は、君を今抱きたいんだ。」
ヘンリーの言葉に、リチャードは微かにその身を震わせた。
「わたしは、貴方に抱かれたくありません。わたしは、出来損ないの身体なのです。」
「出来損ないの、身体?」
「それを今から、お見せ致します。」
リチャードはそう言うと、纏っていたチマとチョゴリを脱ぎ去り、下着姿となった。
リチャードの足元で、乾いた音と共に紫と薄紅色の花が落ちた。
下着を全て脱ぎ去り、一糸纏わぬ姿でリチャードはヘンリーの前に立った。
その身体には、男と女、それぞれを象徴するものがあった。
「わたしは、この身体の所為で親に捨てられ、妓生として生きて参りました。わたしの身体は前世の罪故に呪われたもの。この世の太陽である王様が触れることなど・・」
「どうして触れてはいけないの?こんなに綺麗なのに。」
ヘンリーはそう言うと、そっとリチャードを自分の方へと抱き寄せた。
「僕は今まで、孤独の闇の中に居た。妻と子を得ても、その闇から抜け出せない・・そんな中、僕は君と出会ったんだ。その時僕の中にあった暗闇に、
君という一筋の光が射した。」
「・・ヘンリー・・」
「リチャード、僕は君が男でも女でもなくても、君さえ居てくれればそれでいい。だから、ずっと僕の傍に居て・・」
涙を流すリチャードを見たヘンリーは、そっとその涙を優しく舐め取り、彼の柔らかな唇を塞いだ。
ヘンリーが彼の女の部分に挿入すると、彼は痛みに呻いたが、やがてそれは快楽の喘ぎへと変わった。
互いの身に宿した情欲の炎が燻るまで、ヘンリーとリチャードは飢えた獣のように互いの身体を貪り合った。
絶頂に達した時、リチャードはヘンリーの肩口に深い歯形を残して意識を手放した。

「妓楼の者にこの文を届けてくれ。」

部屋の外で自分達の様子を窺っていたチョジョンにヘンリーがそう言って文を渡すと、彼は暗闇の中へと消えていった。

その文には、リチャードを王の側室として宮廷に迎えるという旨が書かれていた。

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Oct 15, 2019



画像はコチラからお借りいたしました。

「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者・出版社とは一切関係ありません。

二次創作が嫌いな方は読まないでください。

王の不在で王宮中が大騒ぎになっている頃、当の本人は森の奥にある泉の中で気持ちよさそうに水浴びをしていた。
そんな彼の姿を暫くリチャードは眺めていたが、時間の無駄だと思ったのでさっさと彼に背を向けて泉から立ち去った。

(変な奴だったな。あいつといい、エドワード様といい・・両班の子息はみんなあのような変わり者ばかりなのか?)

妓楼に戻り、女物の服に着替えたリチャードが東屋でそう思いながら伽耶琴を奏でていると、遠くから豚の鳴き声が聞こえて来た。
気のせいかと思いながらリチャードが再び伽耶琴を奏でようとした時、突然彼女の前に白い物体が降って来た。
「うわぁ!」
「リチャード様、どうかなさいましたか?」
「ケイツビー、こいつを俺の胸の上から退かせろ!」
主の悲鳴を聞きつけたケイツビーが東屋へと駆けつけると、そこには甲高い悲鳴のような声で鳴く白猪がリチャードの胸の上に乗っていた。
「猪が人里に降りてくるとは珍しいですね。それに白い猪とは珍しい。」
「大方どこぞの両班に狩られそうになってここへ逃げて来たんだろう。怪我をしているようだから、後で傷薬でも塗っておくか。」
「わたしがこの猪に塗っておきますから、リチャード様はどうぞ練習を続けてくださいませ。」
「お前、そう言いながら俺が奏でる伽耶琴の音を聴きたいだけだろう?」
リチャードがそう言って半ば呆れたような顔をしながらケイツビーの方を見ると、彼は少し頬を染めて俯いていた。
「ケイツビー、俺の水揚げは当分延期にすることになったようだ。」
「それは・・」
「母上が何とかエドワード様に掛け合ってくださったそうだ。母上には深く感謝しないとな。」
「それは良かったですね、リチャード様。」
「あの女好きの両班に俺の初物を奪われずに済んで良かったと思っているのだろう?」
「わたしは決してそのような事は・・」
「おい、誰か俺の獲物を見なかったか?」
叢から物音がしたかと思うと、今度は両班の子息と思しき身なりのいい服を着た一人の少年が二人の前に現われた。
光を全て集めたかのような肩先まで伸びた金色の髪を揺らしながら、その少年は蒼い瞳でリチャードと、ケイツビーの腕に抱かれている白い猪を見た。
「旦那様。」
リチャードは艶のある声で少年に向かってそう言うと、嫣然とした笑みを口元に浮かべた。
「旦那様の獲物というのはわたくしの従者に抱かれている白い猪ですか、それとも・・」
チマの裾を軽く乱して立ち上がったリチャードは、その少年の耳元にこう囁いた。
「このわたくし?」
リチャードの銀の瞳が、少年の赤面する顔を捉えた。
「お、俺が子供だと思って揶揄っているのか、無礼な妓生め!」
「まぁそれは失礼いたしました。」
リチャードはそう言ってクスクスと笑いながら少年から離れようとした時、チマの裾が伽耶琴を載せている台に引っ掛かり、それと同時に少年もバランスを崩し、彼はリチャードを半ば押し倒すような形で転んでしまった。
「だ、大丈夫か?」
「まあ旦那様、何て大胆な方ですこと。」
そうリチャードに言われ、己の両手が彼女の乳房を触っている事に気づいた少年は、素っ頓狂な叫び声を上げながらそのまま何処かへと行ってしまった。
「あれは女を知らないな。身なりからすると両班の子息だ。あのエドワードと違って、少し可愛げがあっていい。」
「リチャード様、お戯れが過ぎますよ。」
「そんなに怒るな、ケイツビー。」

そう言ったリチャードは、少し乱れたチョゴリの胸紐を結び直すと、再び伽耶琴を奏で始めた。

(うわぁぁ~、初めて俺は女人の乳を触ってしまったぞ!)

妓楼を飛び出した少年―この国の世子であるエドワードは、先程触った妓生の柔らかな乳房の感触を思い出してはその都度赤面した。
その感触を頭から必死に振り払おうとしても、ますますそれを意識してしまった。

(あの妓生、可愛い顔をしていたな・・また会えるのだろうか?)

「世子様、こちらにおられましたか。」
「チッ、見つかったか。」
従者に見つかり、エドワードはその美しい顔を歪めて舌打ちした。
「王様が何処に居らっしゃるのかもわからないのに、世子様まで居なくなられては困ります。」
「おいお前、瑠璃楼を知っているか?」
「はい、存じ上げておりますよ。あそこの妓楼の妓生は皆美しく一流ですからね。それがどうかないましたか、世子様?」
「その中に居る一人の妓生の素性を調べて欲しい。そいつは黒髪で、左右の目の色が違う。その妓生の名は―」

リチャードと言う。

「王様、宴がもうすぐ始まりますので、どうか・・」
「わかったよ。」
森から王宮へと戻った王・ヘンリーは渋々と寝床から出ると、宴が行われている景徳宮の中庭へと向かった。
そこでは都一の妓楼と謳われる瑠璃楼の妓生達が色とりどりのチマを揺らしながら美しく舞い踊っていた。
「王様がこのような場にいらっしゃられるなどお珍しい。」
ヘンリーが宴に姿を現すと、すかさず王妃・マーガレットが彼に嫌味を言ったが、ヘンリーは一人の妓生の姿に釘付けになっていた。
妓生達の群舞が終わり、その妓生は男装姿で舞台に現われると、静かに剣舞を舞い始めた。
日の光に当たり緑色に美しく輝く黒髪を揺らしながら舞うその妓生の、黒と銀の瞳が自分の姿を捉えた瞬間、ヘンリーは自然と彼女の方へと駆け寄っていた。

「リチャード、また君と会えるって僕は信じていたよ!」

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Last updated  Oct 15, 2019 12:00:18 AM
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Oct 14, 2019



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

二次創作が嫌いな方は読まないでください。

「聞いたわよリチャード、あんたエドワード様との水揚げから逃げ出したんだってねぇ?」

リチャードが剣の稽古を妓楼の中庭でしていると、そこへ昨夜エドワードの宴席に居た先輩妓生・ミジャが話しかけて来た。

「あんたって子は、本当に変わった子よねぇ・・妓生の癖に男装して、男の真似事ばかりして・・いい加減、現実と言うものを見つめたらどうなの?」
「そちらこそ、いつまでもあんなうだつの上がらない“旦那様”にお仕えしていらっしゃるなんて、感心しますね。まさか、あの方と添い遂げるおつもりでも・・」
「行首様に気に入られているからって、いい気になっているんじゃないわよ!」
リチャードに恋人の事を揶揄われたミジャは激昂すると、そう叫んで彼の頬を平手で打った。
「貴方の気が済むのなら、いくらでも俺を殴ればいい。まぁ、俺は間違った事は言っていないがな。」
「このっ!」
再びリチャードを殴ろうとミジャが手を振りあげようとした時、ケイツビーが彼女の腕を掴んだ。
「リチャード様に何をする!」
「こいつが先にわたしを馬鹿にしたのよ、先輩として後輩妓生の指導をしてやっただけよ!」
「暴力を振るう事が指導だと?」
「ケイツビー、止せ。先にそっちが俺を馬鹿にしてきたが、その安い挑発に乗ったのは俺だ。」
「ですが・・」
「全く、あんたの顔を見ていると虫唾が走るわ!」
ミジャはそう言ってリチャードを睨みつけると、ケイツビーを軽く突き飛ばしてそのまま姿を消した。
「ああ、こんなにお顔が腫れてしまって・・すぐに冷やさないと痣になってしまいます。」
「構うな、ケイツビー。それくらいの事は自分でやれる。」
リチャードは、慌てて自分の世話をしようとするケイツビーを中庭に残し、汗で濡れた身体をさっぱりとさせる為、自室で着替えの服を取りに行った後、ある場所へと向かった。

そこは、森で剣の稽古をしていた時に偶然見つけた泉だった。
森の奥にあるので殆ど人が来ず、誰にも自分の身体を見られる危険がないので、リチャードはこの泉が唯一安らげる場所だった。
木の枝に着替えと汗で濡れた服を掛け、リチャードはゆっくりと水の中へと入っていった。
ふとリチャードが上空を見上げると、雲ひとつない上空には一羽の鷹が飛んでいた。

(鳥は自由でいいな・・世間の柵といったものに苦しめられなくていい。)

水浴びを終えてリチャードが泉から上がろうとした時、背後の叢からガサガサという音が聞こえてきた。
急いで岸に上がり、着替えのチョゴリを羽織ったリチャードが叢の方を警戒していると、中から昨夜森の中で会った青年が現れた。

「やあ、また会えたね。」

青年は美しい刺繍が施された靴で草を軽く踏みながら、ゆっくりとリチャードの方へとやって来た。
彼の身なりからすると、彼は何処かの両班の子息らしい。
「俺の着替えが終わるまで向こうを向いていろ。」
「あ、ごめん・・着替え中だったんだね!」

青年は急に我に返った様子で、そう言うと慌ててリチャードに背を向けた。

(変な奴だ。)

着替えが終わったリチャードがチラリと青年の方を見ると、彼は顔を覆った両手の隙間からチラチラと自分の様子を窺っていた。

「着替えはもう済んだから、こちらを向け。」
「そう。ねぇ、君はどうして女の子なのに、男の格好をしているの?」
「パジを穿いている方がチマを穿いている時より動きやすいし、着替えの時間が短くて済むからだ。どうしてお前はここに?」
「息抜きに来たんだ。ねぇ、君の名前を教えてよ。僕はヘンリー。」
「俺はリチャードだ。ヘンリー、お前見た所何処かの両班の子息らしいが、こんな所で暇を潰していると家の者が心配するんじゃないか?」
「いいんだ、家の者は僕の事なんて心配していないよ。それよりもリチャード、僕達友達にならないかい?」
「お前、変わっているな・・」

リチャードはそう言いながらも、ヘンリーの笑顔を見て胸が甘く疼くのを感じた。

一方、王宮では女官達や兵士達が慌てふためいた様子で誰かを探していた。

「中殿媽媽、あの方が何処にもいらっしゃいません!」
「良く探しなさい、あの方が行きそうな場所を全て当たるのです!」

王妃・マーガレットはそう言うと、溜息を吐きながら美しい刺繍が施された椅子に座った。

(全く、これから朝議が始まるというのに、王は一体何処で油を売っているのやら・・)

「媽媽、お呼びですか?」
「そんな堅苦しい呼び方は二人きりの時はお止めなさいと言った筈ですよ、エドワード。」
「申し訳、ございません・・」

鮮やかな真紅の衣を着た少年は、そう言うと蒼い瞳を伏せた。

「王は頼りになりません。エドワード、こちらへいらっしゃい。」
「はい、母上・・」

自分の方へと恐る恐るやって来た息子を、マーガレットは優しく抱き締めた。

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Oct 11, 2019



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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(俺は、男になりたかった・・それなのに、どうしてこんな物がついているんだ。)

ひとしきり泣いたリチャードは、そう思いながら晒しの下に隠された乳房をそのまま握り潰さんばかりに両手でそれを掴んだ。
自分が男と女、両方の性を以て生まれてきた事を知ったのは、13の時に初潮を迎えた日の朝の事だった。
下腹と腰に鈍痛が走り、違和感を抱いた後、褥の上に広がっている赤い染みを見たリチャードは、恐怖のあまり泣き叫んだ。
その時慌てふためくリチャードを優しく宥め、処理の方法を教えてくれたのはケイツビーだった。
彼はリチャードの出産に乳母と共に立ち会い、彼が両性具有である事を知る数少ない人物の一人でもあった。
『お前は知っていたのか?俺がこんな身体だと言う事を!』
そうリチャードがケイツビーを詰った後、彼は何も言わずに俯いた。
『リチャード様、どうか貴方様のお傍に居ることをお許しください。』
それから、ケイツビーは常にリチャードの傍に寄り添うように仕えていた。
妓楼には男の使用人が何人か居るが、ケイツビーの様に一人の妓生に仕える使用人の存在は稀で、妓楼内ではリチャードとケイツビーが恋仲ではないのかという事実無根の噂が飛び交う始末だった。
男でも女でもない自分を受け入れてくれたのはケイツビーだった。
母親や周囲から疎ましがられ、常に孤独だった自分に寄り添ってくれたのはケイツビーだった。
冷たい夜風を頬に受け、リチャードはケイツビーに急に会いたくなり、先程飛び出していった邸宅へと戻ろうと、森の中を歩き始めた。
闇に包まれた森の中では、時折聞こえる鳥の鳴き声や、木々のざわめき以外何も聞こえず、静寂に包まれていた。
リチャードにとって、闇に包まれた夜の森は恐怖そのものだった。
何故なら、母親のセシリーは幼い自分を夜の森に一晩中置き去りにし、そのまま姿を消してしまったからだ。
セシリーから疎まれている事を、リチャードは森に置き去りにされる前から薄々と感じていた。
王家の血筋をひいた両班の名家の妻として生きる彼女にとって、出来の良い息子達の後に生まれて来た「厄介者」は、邪魔な存在でしかなかったのだ。
一晩中森の中で夜を明かし、木の洞の中で寒さに震えているリチャードを見つけたのは、「瑠璃楼」の行首・チョンジャとケイツビーだった。
親に捨てられたリチャードを哀れに思ったチョンジャは、我が子同然にリチャードを育てた。
剣術や乗馬の腕もさることながら、舞や楽器、書画に於いても一流だったリチャードは、妖艶でありながら何処か謎めいた雰囲気を持った童妓として成長していった。
やがては名妓に成長するであろうリチャードの噂はたちまち都中に広がり、リチャードの水揚げをしたいと申し出たのは好色家として名高い両班の嫡男・エドワードだった。
その水揚げのお膳立てをしたのがチョンジャだと知っていながらも、リチャードはそれを蹴った―養い親の顔に、泥を塗ったのも同然の行為をしたのだ。
どんな顔をしてチョンジャと会えばいいのかわからなかったリチャードだったが、せめて白粉が崩れた顔で彼女と会いたくなかったので、近くにあった池の前に屈みこんでその水で顔を洗った。
その時、誰かが背後から自分を抱き締める感覚がしてリチャードが振り向くと、そこには美しく澄み切った宝石の様な蒼い瞳をした青年が自分を見つめていた。
「駄目だよ、どんなに辛い事があっても、自分で命を絶とうとするなんて・・」
青年はそう言ってリチャードの手を掴んで立ち上がらせると、突然自分の方へとリチャードを抱き寄せた。
「何をする!」
入水自殺しようとしていたと勝手に勘違いされた挙句、見知らぬ青年に抱きつかれた事に激昂したリチャードはそう叫ぶと、青年を突き飛ばしてその頬を平手で打った。
「痛いよ・・」
「それ以上俺に近寄ると殺してやる!」
赤くなった頬を擦りながら、今にも泣きだしそうな顔で自分を見つめている青年に背を向け、リチャードは再び森の中を歩き出した。
一方、リチャードがエドワードを拒んだ事を知ったチョンジャは、溜息を吐いた後必死にエドワードに向かって平謝りした。
「どうかリチャードの事をお許しくださいませ、エドワード様。あの子はまだ幼いのです、男女の艶事などを知らぬ子を貴方様に宛がったのが間違いでした。」
「わたしも性急すぎたようだな。チョンジャ、わたしはあの子が大人になるまで待つとしよう。あの子という花はまだ固い蕾の中に隠れている。その花が開くまで、あの子の水揚げをわたしが貰うのは楽しみにしておこう。」
「わかりました、寛大なるエドワード様に感謝致します・・」
チョンジャはそう言ってエドワードに跪くと、彼の手の甲に接吻した。
リチャードが息を切らしながらエドワードの邸宅へと戻ると、彼の部屋からチョンジャが出て来た。
「行首様、申し訳ございませんでした・・俺は・・」
「エドワード様は、お前の事をお許しになられたよ。」
チョンジャはそう言うと、リチャードの肩を優しく叩いた。
「リチャード、お前の身体の事は知っている。いつかエドワード様に抱かれるその日まで、その身体を他人に開いてはいけないよ、わかったね?」
「はい・・」
「さぁ、帰るよ。」
チョンジャと共に邸宅を後にしたリチャードは、背後から視線を感じて振り向いたが、そこには誰も居なかった。
「どうしたんだい、リチャード?」
「いいえ、何でもありません。」

(何だろう、誰かに見られていたような気が・・)

チマの裾を摘みながらリチャードがチョンジャとケイツビーの後をついていく姿を、先程の青年が木陰から見つめていた。

彼はそっと、リチャードに打たれた右頬を擦った。

そこはまだ、リチャードの手の温もりが残っているような気がした。

(名前、聞いていなかったなぁ・・)

青年は、月に照らされた金色の髪を揺らしながら、森の中へと消えていった。

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Oct 10, 2019



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二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

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―俺には闇の中で生きるのが相応しい、何故なら俺は・・

白く照り輝く月の下、ある貴族の邸宅では華やかな宴が開かれていた。

食べきれない程の料理が食卓の上には所狭しと並べられ、貴族達は談笑しながらそれらを時折摘みながら美酒に舌鼓を打っていた。
彼らの傍には、都一の妓楼である「瑠璃楼」の妓生達が侍り、彼女達が笑う度に纏っている色鮮やかなチマ(スカート)が衣擦れの音を立てていた。

「今宵はあの麗しい妓生の姿はないのか?」
「まぁ旦那様、この美しいわたくしを差し置いて、他の妓(こ)のお話をするのですか?」
「そんなに気を悪くしないでくれ。わたしはこの世の美しい女人を全て愛でたいんだ。」
「まぁ、悪いお方。」
貴族―エドワードにそう囁かれた妓生はすっかり気を良くしたようで、彼女はエドワードの空になったグラスに新たな酒を注いだ。
「あの子なら、朝から姿を見かけませんわ。何処かで剣術の練習でもしているのでしょう。」
「妓生が剣術の練習を?珍しい事もあるものだね。」
「あの子は妓生なのに、宴席に行くことを嫌いますし、いつも男の格好ばかりして・・一体何を考えているのかわかりませんわ。」
そう言って溜息を吐いた妓生が空を見ると、そこには黒雲がかかって白く輝く月を瞬く間に覆い隠してしまった。
同じ頃、貴族の邸宅から少し離れた竹林の中で、一人の少年が剣術の練習をしていた。
敵に模した木型の人形を相手に、少年は一心不乱に剣を振るっていた。
艶やかな黒髪を時折夜風に靡かせながら、額から流れ落ちる汗にも気づかずに、彼は剣を握る手が痺れて動かなくなるまでひたすらそれを振るい続けていた。
苦しそうに息を吐きながら、振るっていた剣を鞘におさめた少年は、その華奢な身体を竹の近くに預けた。
「こちらにいらっしゃったのですね、お嬢様。」
「その呼び方は止めろと言っただろう、ケイツビー。」
「申し訳ありません、リチャード様。」
褐色の肌に深緑の瞳をした青年は、そう言うと主の前に跪いた。
「このような所に居てはお風邪を召されます。早くお屋敷に戻りませんと・・」
「言っておくが、俺は貴族の宴席には行かないぞ、ケイツビー。」
「承知しております、リチャード様。」
ケイツビーが恭しく自分の前へと差し出した手を、少年はしっかりと握った。
二人が竹林を出て向かった先は、「瑠璃楼」の中にある部屋だった。
「お召し替えをしてくださいませ、リチャード様。汗で濡れた服を纏ったままではお風邪を・・」
「わかった。」
少年―リチャードは汗で濡れたチマ(上衣)の胸紐を解くと、それをケイツビーに手渡した。
鏡に映っているのは、リチャードの胸に巻かれた白い晒しの下に隠された小ぶりな乳房だった。
溜息を吐きながら、リチャードが目障りなそれを見下ろした後、泥で汚れたパジ(袴)を脱ぎ捨てた。
ケイツビーが着替えとしてリチャードに手渡したのは、女物の服だった。
「男の服はないのか?」
「ここは妓楼です、リチャード様。地味な服はこれしかありませんでした。」
「そうか、ならば仕方ないな。」
漆黒のチョゴリと白地に黒糸で薔薇の刺繍が施されたチマに着替えたリチャードは、ケイツビーに付き添われながらあの貴族の邸宅へと向かった。
「ケイツビー、俺は宴席には侍らないと言った筈だが?」
「リチャード様、わたくしの顔を立てると思って、暫く辛抱してくださいませ。」
「わかった。」
リチャードは不快そうに鼻を鳴らすと、宴席が開かれている母屋の中へと入った。
そこには、数人の妓生を侍らせながら葡萄酒を飲んでいるエドワードの姿があった。
「漸く来たか。さぁ、こちらへおいで。」
リチャードがエドワードの近くに行くと、彼の身体から酒の匂いが漂って来て思わずリチャードは顔を顰めてしまった。
「どうした、気分でも悪いのか?」
「いいえ。」
ここに来てから、やけに下腹と腰に鈍痛が断続的に襲ってきたが、リチャードはその痛みを隠す為、エドワードに向かって愛想笑いを浮かべた。
「ここでは人目があるから、わたしの部屋へ行こう。」
エドワードはリチャードにしか聞えないような声でそう囁くと、リチャードの華奢な腰を抱いた。
リチャードは細い肩を震わせながら、エドワードの言葉に頷いた。
エドワードとリチャードが宴席から抜け出すのを見た妓生達は、これからリチャードの身に何が起きるのかを知っていた。
見習いの童妓(トンギ)から卒業する為には、その操を捨てなければならない。
その儀式―水揚げは、妓生として生きる為なら避けては通れぬ道なのだった。

「エドワード様なら大丈夫だろうと思うけれどねぇ・・」
「でも、あの子の秘密を知ったら、どうなるのかしら?」
「さぁ・・」

エドワードの部屋に通されたリチャードは、すぐさま用意されていた褥の上に押し倒された。
彼の手が欲望を孕みながらチョゴリの胸紐を解くのを見ていたリチャードの脳裏に、幼き頃の悪夢が突如浮かんだ。

“悪魔の子、汚らわしい!”

「どうした?怖くて震えているのかい?」
「嫌だ、嫌・・」

掠れた声でそう言ったリチャードは、自分を宥めようとしているエドワードを押し退け、チマの裾を乱しながら部屋から飛び出し、闇に包まれた森の中へと駆けだした。
息を整える為、近くの木の太い幹に両手をついたリチャードは、屈辱と怒り、そして恐怖の感情が内側から大きく溢れ出し、堪えていた涙が頬を伝い白粉によって施された薄化粧が台無しになるのも構わずに、彼はひたすら泣き続けた。

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