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JEWEL

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火宵の月オメガバースパラレル 二次創作小説:その花の名は

Jul 15, 2021
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。

「火宵の月」オメガバースパラレルです。

詳しい設定についてはコチラのページをご覧ください。

苦手な方はご注意ください。


「土御門先生、まだ帰らないんですか?」
「えぇ、少し調べたい事があるので。」
「そうですか。戸締りに気を付けて下さいね。」
「はい。」
同僚の男性教師が職員室から出て行ったのを確めた後、有匡はある事件について調べ始めた。
それは三年前、この学校で起きた凄惨な殺人事件の資料だった。
被害者はΩの男子生徒で、密かに想いを寄せていた教師Aに呼び出され、頭や顔、首など数十回タガ―ナイフで刺した後、出口へと向かおうとした男子生徒を背後から切りつけ、失血死させた。
現場は血の海で、教室のドアは内側から施錠されていた。
犯人の教師Aは、“生徒が自分を拒絶したので殺した。”と全面的に犯行を認めた。
弁護側は犯人が精神疾患であり、心神喪失を主張した。
しかし検察側は、教師A(被告)が犯行時教室のドアを内側から施錠した上で現場を密室状態にしたのは計画的な犯行であり、被告には責任能力があるとして、死刑を求刑した。
被害者がしつこく被告に交際を迫られて拒絶していたという検察側の証言と、“あいつを殺してやる。”という被告の肉声のテープが決定的な証拠となり、被告は昨年暮れに死刑判決が下った。
学校という聖域内で起きた教師による凄惨な殺人事件はマスコミに大きく取り上げられ、話題となった。
有匡は被害者生徒の個人ファイルを見ると、彼はあの自殺した生徒の親族だとわかった。

(三年前と、今回の事件、何かが繋がっているように思えてならない。一体、何が・・)

有匡がそう思いながらノートパソコンをシャットダウンしようとすると、廊下の方から物音が聞こえた。
「誰だ?」
懐中電灯を手に廊下を出た有匡は、数人分の足音が向こうから駆けてゆく音に気づいた。
その向こうには、事件の現場となり、今は封鎖された教室があった。
「ねぇ、本当に出るの?」
「出るに決まってんじゃん!」
「そこで何をしている?」
「きゃぁぁ~!」
有匡が教室の中に入ると、そこには数人の女子高生達の姿があった。
「今回は見逃しておいてやるから、早くここから失せろ。」
「す、すいませんでした!」
女子高生達は、有匡に叱責された後一目散に逃げていった。
(ったく、しょうがないな。)
あの事件の所為で、夜になるとあの教室へ“肝試し”に来る者は絶えない。
「先生、どうかしましたか?」
「またあの、肝試しの連中ですよ。困ったものです。」
「あぁ、あれねぇ。まったく、困ったもんです。」
警備員とそんな事を話しながら有匡が教室から出ようとすると、何かが落ちる音がした。
(気の所為か・・)
その日の夜、有匡は幸せな夢を見た。
あの少女―火月に良く似た女性と、仲良く中庭で遊んでいる我が子達を見ていた。

―ねぇ、もし来世というものがあるのなら、僕は・・

そこで、有匡は目を覚ました。

(一体、あの夢は何だったんだ・・)

「土御門先生、理事長がお呼びです。」
「わかりました、すぐに行きます。」
「失礼致します。」
「入り給え。土御門先生、あなたとは一度お話ししてみたかった。」
そう言った理事長は笑っていたが、目は笑っていなかった。
彼がαだと、有匡は一目合った瞬間にわかった。
やり手の経営者のような、クールな顔立ちをしているが、本性は残酷な狼そのもの―αの本能を有匡の前では上手く隠しているものの、オーラでわかった。
「わたしに、何がご用ですか?」
「わが校は、Ω優遇措置校だという事はご存知で?」
「えぇ。」
そんなシステムは、ただの、“政府に媚を売る為のパフォーマンス”だと有匡は知っていた。
「わたしは、いつか子供達が第二性に縛られない生き方をさせてやりたいんですよ。」
「はぁ・・」
「ですから先生、わたしに力を貸して頂けないでしょうか?」
「は?」
「同じα同士、これからお互いに親交を深めていきましょう。」
「そうですね・・」

(一体、何が目的なんだ、この男?)

「理事長。」
「すいませんが、用事がありますので、これで失礼を。今度、二人きりで食事でもしませんか?」
「えぇ、是非。」

理事長室から出た有匡は、深い溜息を吐いた。

(あぁいう奴は苦手だ。)

廊下を歩きながら有匡がそんな事を思っていると、数人の女子生徒達が向こうからやって来た。

「先生、お昼まだでしたら、一緒に食べましょう!」
「え~、ずるい!」
「先生は、好きな人とか居るんですか?」
「居ないな。それよりもお前達、一体わたしに何の用だ?」
「わたし達は別に、ねぇ?」
「先生と仲良くしたいだけですよ~」
「あ、先生あのΩの生徒の事を知っています?」
「知っているが、あいつがどうした?」
「あいつの事、先生がどう思っているのかなぁって、わたし達それを聞きに来ただけなんです。」
「何故、そんな事を聞く?」
「それは・・」
「わたしは、誰とも番わない。」
「そうなんですか・・」
女子生徒達は有匡の言葉を聞いた途端、落胆したような表情を浮かべながら彼の元から去っていった。
「なぁんだ、狙っていたのにがっかり。」
「でもあれ、嘘かもよ?」
「え、じゃぁ・・」
「わたし達にもチャンスはあるわよね!?」
「きっとあるわよ!」
火月はそんな彼女達の話を聞きながら、教室で一人自分の机に座って弁当を食べていた。
彼女は伊達眼鏡だが少し底が厚い眼鏡をかけ、いつも結ばずにいる金色の髪は、ダサいおさげにしていた。
Ωだというだけで目をつけられているのに、これ以上彼女達と関わり合いたくなかったので、火月は敢えて地味な格好をする事にした。

「ねぇ、明日転校生来るって!」
「へぇ、楽しみ~」

「漸く始まりますわね、暁人様。」
「あぁ。」
都内の一等地にあるタワーマンションの最上階にある部屋で、火月達が通う高校の理事長・権名暁人は、愛人の恵とそんな事を言いながら、美しい夜景を見てワインを楽しんでいた。
「“あの子”は、どんな活躍をしてくれるのかしら?」
「さぁ・・でも、あのいけすかない土御門を学校から追い出してくれるだろうよ。」
「まぁ、彼がそんなにお気に召さないのですか?」
「あぁ。同族嫌悪、というやつかな?」

同じαでありながらも、名家の御曹司である有匡と、愛人の子である自分とは境遇が全く違う。
そう、有匡は、自分にはないものを持っている。

それが、憎くて堪らないのだ。

「暁人様?」
「いや、何でもない。」
「そうですか。それよりも、大切な話があるのですが・・」
「大切な話?」
「わたし、妊娠したのかもしれません。」
「それは、確かなんか?」
「えぇ。」
「恵、こんな事を言うのは何なんだが・・君は、どうしたいんだ?」
「決して、暁人様のお手を煩わせるような事は、致しませんわ。」
「そうか・・」
「では、わたくしはこれで失礼致します。」

(さて、どうするか・・)

恵には、色々と協力して貰っている。

彼女とは利害関係で繋がっているだけの存在で、いくらでも切り捨てることが出来る。
恵は、敵に回せば厄介な女だ。
今まで自分がして来た悪事の証拠は、全て彼女が握っている。
そうすると、自分いすべき事はひとつ。
それは―
「わかった、今度そっちに帰るわ。」
実家の母親とスマホで会話をしなければ、恵はこの後己の身に降りかかる災難から逃れられたのかもしれない。
彼女が有名コーヒーチェーン店で好きなフラペチーノを飲みながら歩いていると、彼女は横断歩道で信号待ちをしていると、突然彼女は誰かに押され、バランスを崩した。
体勢を立て直そうとした彼女の目の前に、トラックが迫っていた。
「理事長、おはようございます。」
「おはよう。」
「理事長、相沢が出勤途中、交通事故に遭って亡くなりました。」
「そうですか・・」
恵の死を悲しむ振りをして、暁人は密かに口端を上げて笑った。
「へぇ、ここか・・」
「麗様、どうぞこちらへ。」
「あぁ。」
黒塗りのリムジンから降りて来たのは、白銀の髪をなびかせた、何処か妖しい雰囲気を纏う少年だった。
「皆さん、今日からこのクラスに転校してきた、九条麗君です。」
「九条麗です、よろしくお願い致します。」
教壇の前に立ってクラスメイト達に挨拶をした麗は、一人の少女の存在に気づいた。
(へぇ、可愛いじゃん。)
「ねぇ、九条君って、前は何処かに住んでいたの?」
「イギリス。まぁ、長い間向こうで暮らしていたから、まだ日本の暮らしには慣れなくて・・」
「え~、じゃぁわたし達が色々と教えてあげる!」
「はは、それは嬉しいなぁ。」
麗の周りには、すぐさま女子生徒達が群がって来た。
「あれ、あの子は?」
「あぁ、あのダサい子?」
「あの子はΩよ。」
「うちのクラスには、αやβが多いけれど、Ωなのはあの子だけ。いい迷惑よねぇ。」
「へぇ・・」
麗達が自分の事を話しているとは知らず、火月は読書をしていた。
その本は、有匡が数日前に貸してくれたものだ。
『もし良かったら、感想を聞かせて欲しい。』
そう言って自分に優しく微笑んで本を貸してくれた有匡の笑顔を浮かべると、思わず火月は頬を赤らめてしまった。
「なに読んでいるの?」
「え?」
我に返ると、火月の前には麗が立っていた。
「この本は、人から借りた物なんです、失礼します。」
「へぇ、そうなんだ。」
火月はそれ以上麗と話したくなくて、鞄を持って教室から出て行った。
「ふぅ・・」
漸く図書室で一人になれた火月は、そのまま次の授業が始まるまでそこで本を読んでいた。
「雨、か・・」
「うわ~、かなり振って来てますね。」
「それにしても理事長、今日はお休みですか?」
「あぁ、今朝理事長の秘書の方がお亡くなりになられたそうですよ。」
「へぇ・・」
放課後、雨は朝よりもかなり激しく降っていた。
「うわぁ~、最悪。」
「あたし、傘持って来てない~」
「じゃぁ、みんな俺の車に乗っていく?みんなともっと仲良くしたいし!」
「え~、いいの?」
「やったぁ!」
「高原さんは?」
「僕は・・」
「あの子は放っておいていいわよ、早く行きましょう!」
「う、うん・・」
麗はちらりと火月を見た後、取り巻き達と共に教室から出て行った。
(はぁ、どうしよう・・)
火月は教室の窓から土砂降りの雨を見ながら、このまま帰ってしまおうかと思い始めていた。
「何だ、まだ居たのか?」
「先生・・」
教室のドアが開き、有匡が教室に残っている火月を見た。
「傘を持っていなくて・・」
「そうか。じゃぁ家まで送ってやろう。」
「え、いいんですか?」
「いいに決まっているだろう。」
「ありがとうございます。」
火月は有匡に車で家まで送って貰う事になった。
「先生、貸して頂いた本、今度返しますね。」
「そんなに急いで読まなくていい。」
「はい、すいません・・」
「謝るな。」

(何だろう、先生と居ると何だか安心する・・)
(こいつと居ると、何故か心が落ち着く・・)

二人は徐々に、だが気づかぬ内に互いの心の距離を縮めていった。

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Last updated  Jul 15, 2021 09:12:16 PM
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Aug 3, 2020



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「火宵の月」オメガバースパラレルです。

詳しい設定についてはコチラのページをご覧ください。

苦手な方はご注意ください。

(全く、義父上にはいい加減にして貰いたいものだ。)

パーティー会場から出た有匡は、溜息を吐きながら人気のないバルコニーで冷たい風に当たっていた。
αとして生まれた彼の元には、山の様に名家出身のΩからの縁談が持ち込まれた。
土御門家は名門のαとして戦前からこの国に君臨してきた名家だった。
それ故、その血統を絶やさぬために唯一直系の血をひいている有匡の元へ縁談が殺到するのは当然の事なのだが、有匡はその縁談を全て断って来た。
それは、有匡の亡き父・有仁が相思相愛だった番の母親と家の者に引き離された後、そのショックで病死してしまったからだった。
αとΩは番となり、αの優秀な遺伝子を継ぐ子孫を産む―それが世の理であると、家の為であると、有匡は幼少の頃からそんな教えを学校から、社会から叩き込まれて育った。
しかし、有仁は番であった妻との契約を解消した後、後妻を迎えなかった。
“お父さん、どうして再婚しないの?”
ある日、有匡はいつものように病室の外から窓を眺めている父にそんな質問をぶつけてみた。
すると彼は寂しそうに笑いながら、こう答えた。

―何故だろうね、もう二度と会えないと想っている人が、わたしの事を待っていると想っているからかな・・

その時、まだ子供だった有匡は、父の言葉の意味がわからなかったが、大人になった今となってはわかる。
父は、番だった母の事を待っていたのだ。
亡くなるその日まで、ずっと。
その事を知った時、有匡は家の為だけに利害が一致する名家のΩと番うことを一切拒否した。

(わたしは誰とも番わない・・決して父のようにはならない。)

そう自分に誓いを立てながら、有匡は高校教師として普通の生活を送っていた。
しかし、αである自分を周囲は放っておくはずがなかった。
翌朝、パーティーでの事で早速有匡は義父から小言を食らった。
「有匡、結婚はまだ考えていないのか?お前もそろそろいい年だ。身を固めておいた方が・・」
「お言葉ですが義父上、わたしは一生誰とも番いません。貴方はどうやら、わたしの父にした事をもう忘れてしまったようですね?」
「あ、あれは仕方がなかったのだ!ああしなければ、お前の父親はあのΩに滅ぼされるところだったのだぞ!」
自分に都合のいい言い訳ばかりを並べ立てる義父の姿に、有匡は嫌悪を感じた。
「わたしを、父の二の舞にさせるおつもりですか?」
「有匡・・」
「この際だからはっきりと言っておきます。わたしは家の為の道具ではありません。」
有匡はそう言って椅子から乱暴に立ち上がると、そのままダイニングルームから出て行った。
「まったく、有匡には困ったものだ・・」
「旦那様、そんなに気を落とさずに・・」
そう言って義父を慰めたのは、彼の愛人であるΩだ。
彼女は義父にしなだれかかると、嫣然とした笑みを口元に浮かべた。
「そういえば、有匡様が働いておられる高校では、Ωの特殊学級があると聞きましたわ。その特殊学級の生徒達の中から、有匡様の番を選べば宜しいのではなくて?」
「名案だな。そうしないと、いつまで経ってもあいつは独身のままだろう。」
義父はそう言った後、美味そうにワインを飲んだ。
有匡が高校に出勤すると、校長が彼を校長室に呼んだ。
「校長先生、わたしにお話とは何でしょうか?」
「・・実は、こんな物が先程保護者の皆さんから渡されてね。うちの高校に在籍しているΩの生徒を、専門機関へと隔離して欲しいという嘆願の署名だ。」
「何故、そのような事を?バース性の差別は法律で禁じられている筈・・」
「ああ、表面上ではな。だが、人種差別や性差別が未だ根絶できないのと同じく、バース性への差別は、わたし達の生活に深い根を下ろしている。」

校長がそう言って溜息を吐いた時、廊下が急に騒がしくなった。

有匡が校長と共に校長室から廊下へと出ると、一人の女性が髪を振り乱しながら一人の生徒に掴みかかっていた。

「あの子を返してよ、この人殺し!」
「奥様、落ち着いて下さい!」
「あんたが唆した所為で、あの子は自殺したのよ~!」
女性に掴みかかられた生徒は、無言で俯いているだけだった。
「あれは一体、何なのですか?」
「あぁ、あの女性は、先月自殺した生徒の母親だ。」
「じゃぁ、あの殴られている生徒は?」
「Ω(オメガ)だ。彼は自殺した生徒の番だった。だが、彼は自殺した生徒との番契約を一方的に破棄した。」
「それは、何故です?」
「さぁ・・」

校長はそう言葉を濁すと、校長室へと戻っていった。

(彼は、何かを隠している・・)

職員室に戻った有匡は、教職員専用のサイトにアクセスした。
生徒名簿にアクセスし、自殺した生徒の名前をクリックしようとしたら、“パスワードを入力して下さい”というメッセージが画面に表示された。
いつの間にか、何者かによってアクセス制限がかけられていた。

何処かが、おかしい。

「先生、どうかなさったのですか?」
「いえ、何でもありません・・」
「これから、色々と忙しくなりますねぇ。」
「何か、あるんですか?」
「あぁ、土御門先生はご存知ないんでしたっけ?来週、国のバース機関の視察があるんです。」
「そうですか・・」
「うちは、表向きはΩ優遇措置校ですからね。あ、もうわたし授業に行かないと!」
同僚の女性教師は少し喋り過ぎたと思ったのか、そう言うとそのまま有匡と目を合わさずに職員室から出て行ってしまった。
この学校には、何かがある―有匡は、彼女の話を聞いて確信した。
一方、家庭科室では、火月がクラスメイト達と共にクッキーを作っていた。
「あ、ごめん、手が滑っちゃった!」
火月が、教師が居る席に提出用のクッキーを置いた後、一人の女子生徒がそう言った後、わざと火月に向かって足を突き出した。
火月は、転びはしなかったものの、その女子生徒を睨んだ。
「何よ、文句でもあるの?出来損ないのΩの癖に。」
「そうよ、あんた達Ωが居るだけでも迷惑なのよ。」
悔しいが、火月は何も言い返す事が出来ぬまま、授業が終わるなり片付けを済ませて家庭科室を後にした。
何故Ωに生まれただけで、理不尽な差別を受けなければならないのだろうか。
(α(アルファ)に生まれていれば、人生は楽しいものになってたかなぁ?)
そんな事を思いながら人気のない空き教室で弁当を食べていると、そこへ有匡がやって来た。
「先生、どうしてここに?」
「職員室に居ると何かと息が詰まってな。」
「αの先生も色々と大変なんですね。」
「まぁな。教師は派閥があって、新人のわたしには余り馴染めないんだ。」
「そうですか・・」
「その弁当、自分で作ったのか?」
「はい。シェアハウスでは、“自分の事は自分でする”のがルールなんです。なので、みんな家事全般が出来て、お互いに助け合いながら生活しています。」
「そのシェアハウスには、Ωしか居ないのか?」
「いいえ、βの人も居ます。シェアハウスのオーナーはとても良い人で助かっています。」
「そうか・・」
Ωが差別を受けるのは、就職・進学だけではなく、部屋を借りる際もΩというだけで断られる事があると、有匡は雑誌の記事で知っていた。
「親は居ないのか?」
「えぇ。僕が生まれてすぐに、両親は交通事故で亡くなったんです。ですから僕は、シェアハウスで暮らすまで施設で暮らしていたんです。先生は、どうなんですか?」
「結婚はしていないし、これからするつもりもない。わたしの父は、無理矢理番(つがい)だった母と引き離されて病死した。母は今生きているのか死んでいるのかわからない。」
「すいません、変な事を聞いてしまって・・」
「いや、いいんだ。包み隠さずに話しておけば楽になる。」

有匡はそう言って笑うと、コンビニで買ったサンドイッチを一口食べた。

「あの子は?」
「あの子はΩの生徒です。どうかされましたか、理事長?」
「いや・・昔の知り合いに彼女が何処か似ているような気がしてね・・」
「そうですか・・」
「彼は確か・・」
「あぁ、土御門有匡先生ですか?今年こちらに赴任されたばかりですが、生徒達から慕われていますよ。」
「ほぅ・・」

理事長は、暫く空き教室に居る有匡と火月を見つめた後、秘書を従えて廊下から去っていった。

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Last updated  Jul 13, 2021 05:12:31 PM
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Nov 16, 2019



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「火宵の月」オメガバースパラレルです。

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苦手な方はご注意ください。

火月と禍蛇が暮らしている家は、同じ児童養護施設出身の者達が暮らしているシェアハウスだった。

バース性に対する差別を法律上では禁止されているものの、未だにバース性の差別は社会に蔓延っており、Ωの子供達は親から虐待を受けたり、捨てられたりして児童養護施設に引き取られた。
二人は共にΩで、彼女達は16歳の誕生日を迎えて施設から出た後、このシェアハウスで暮らし始めた。
このシェアハウスでは男女共にΩが多く、そのほかにβの男女が数人と、合計20人が共同生活を送っている。
「他の皆は帰ってないの?」
「うん。ねぇ火月、学校で何かあったの?俺にだけは隠さないでちゃんと話してよ。」
「実はね・・」
火月は親友に、学校で起きたことを話した。
「何だよそいつ、腹立つな!Ωには何してもいいっていうのか?」
「僕が悪いんだよ、番が居ないから。禍蛇はいいよね、番が居て。」
「あぁ、琥龍のこと?あいつ俺の番の癖に、この前俺とデート中なのにもかかわらずあいつ、βの女を見かけたらナンパしてるんだぜ、俺の前で堂々と!まぁ、後でシメてやったけどな。」
禍蛇の番である琥龍とは同じ施設仲間で、彼は事情があって親から捨てられたαだった。
主に貴族や政治家、資産家などの特権階級出身のαだが、家督争いや遺産相続などの「お家騒動」に巻き込まれ、施設に預けられたりするαの子供が稀に存在している。

琥龍も、そんなαの一人だった。

彼の実家は戦前華族であったが、戦後すぐに没落の憂き目に遭い、それから日本では有名な財閥の一つとして国内外でも知られている。
「あいつ、俺と番になって結婚する気あるのかな?まぁ、あいつはαだから、色々と縁談が来ているんだろうけど。」
「番が居るのと居ないのとでは大違いだよ。禍蛇は羨ましいよ、琥龍から愛されているんだもん。」
「火月も番を探せばいいじゃん。そうすれば襲われなくなるかもよ?」
「僕はいい。僕みたいなΩを欲しがる人なんて居ないもん。」
「そんなに自分を卑下しなくてもいいんじゃない?俺は火月の方が羨ましいよ。俺よりもスタイルいいし、頭もいいしさ。」
「そうかなぁ。ねぇ禍蛇、禍蛇が通っている学校にはαの生徒や先生は居るの?」
「居るよ。でも殆どβの生徒や先生が多いかな。火月の学校の方はどうなの?」
「どっちかというと、βが少数派で、αの方が多いかな。僕と同じΩの生徒は居るけれど、αやβと同じ教室で勉強できないんだ。」
「何それ、酷いじゃん。まぁ、火月が通っている学校は進学校だから、そうするのも無理もないけどさぁ、学校側がΩを軽く扱っているんじゃないの?」
「まぁ、学校側が決めた事に僕達は逆らえないし、別の学校でαの生徒がΩの生徒のヒートに当てられて集団レイプ事件が起きたっていうから、そういった事件を未然に防ごうとしているから、仕方ないよ。」
「でもさぁ、それだと俺達Ωが男女見境なくフェロモン撒き散らしている獣だって見ているようなもんじゃん。何かすっげぇ腹立つ~!」
禍蛇がそう叫んだ時、玄関のチャイムが鳴った。
「誰かな、こんな時間に?」
「今日は俺達を除いてみんな、会社の研修に行ってて明日の朝まで帰って来ないって言ってたし・・一体誰なんだろう?」

禍蛇がそう言いながらインターフォンの画面を見ると、そこには泥酔状態のαと思しき数人の男達が映し出された。

『男日照りのΩちゃん、俺達の相手しろよ~』
『金なら沢山払うからさ~』

「警察に通報するね。」

火月がスマホを持って二階の部屋に逃げ込もうとした時、裏口のドアの鍵が誰かに回される音がした。

「おい二人とも、無事か!?」
「琥龍か、脅かさないでよ!」

ドアを開けて姿を現したのは、禍蛇と火月の幼馴染である琥龍だった。

「さっきαの野郎どもがこの家に来るのを見たから、警察に通報したぜ。二人とも、大丈夫か?」
「うん。それにしてもあいつら、何でここの場所知ってたんだろう?」
「さぁな。最近ここらへんでΩの襲撃事件が増えているから、警察に通報したらすぐに来てくれたぜ。ったく、最近変な奴が多くて困るよな。」
琥龍はそう言うと夕飯のカレーを一口スプーンで掬ってそれを頬張った。
「今後もこんなことがあるようなら、引っ越しを考えた方がいいかもしれないね。」
「そうだね・・でもさ、引っ越したら色々と不便だよ?それに、お金ないし・・」
施設から出て、禍蛇と火月はアルバイトをしながら高校に通っているが、バイト代ではスマホ代を含む生活費を稼ぐだけで精一杯だった。
「何だったら俺ん家来るか?部屋沢山余ってるし、万が一の事を考えたらそれがベストだと思うんだけどなぁ。」
「却下。琥龍ん家は周りにαが沢山居るし、琥龍の家から学校に通う距離が遠いし、色々と不便だよ。」
「そうか。なぁ火月、お前学校で虐められたりしてねぇか?」
「え、なんでそんな事急に聞くの?」
そう言って火月が琥龍の方を見ると、彼は低く唸った後、こう言った。
「実はこの前、俺が住んでるマンションの近くで飛び降り自殺があったんだよ。自殺したのは、お前と同じ高校に通ってた男子高校生で、最近Ωだって病院の検査でわかって、人生を悲観して死んだんだってさ。Ωだからって人生終わりっていう事はないのになぁ。でも、お前と同じ高校に通っていたって聞いたから、お前もΩだって事で色々と苛められているんじゃないかと思ってさぁ・・」
「僕は大丈夫だよ、琥龍。まぁ、うちの学校はΩの生徒ばかり集めた特殊学級があるから、αやβの生徒とは余り交流がないし・・」
火月はそう言いながら、数日前自分の机が何者かによって傷つけられていた事を思い出した。
「何かあったら俺を呼べよ、火月。お前を苛める奴は片っ端からぶっ飛ばしてやるから。」
「有難う琥龍、そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。」
「琥龍、俺がお前の番なんだけど?何で火月ばっかり構う訳?」
「何だぁ、ヤキモチか?」
「違う、俺が隙見せるとてめぇが火月に手ぇ出しそうで油断できねぇんだよ!」
禍蛇はそう琥龍に向かって怒鳴ると、彼の頭を拳骨で殴った。
「いってぇな、何すんだ暴力女!」
「うるせぇスケベ野郎、この間も部屋に女連れ込んでただろう?」

隣で口論を始める禍蛇と琥龍の姿を見ながら、火月は彼らの関係が羨ましいと思った。

いつか自分にも、番が現れるのだろうか。

「火月、どうしたの?」
「ううん、何でもない。先にお風呂、入ってくるね。」

無理に二人に向かって笑顔を浮かべると、火月はリビングから出て浴室へと入ると、深い溜息を吐いた。

その頃、有匡は都内某所にあるホテルで開かれている資産家のパーティーに出席していた。

「有匡、来てくれて嬉しいよ。」
「お久しぶりです、義父上(ちちうえ)。」
有匡がそう言って養父に挨拶すると、彼の隣に美しい振袖姿の若い女性が立っている事に気づいた。
その姿を見た途端、彼はこのパーティーの目的が解った。
「有匡、紹介するよ。こちらは三条家の・・」
「申し訳ありませんが義父上、少し酒に酔ってしまったようです。外の風に当たってきます。」

義父に反論する隙を与えず有匡は彼にそう言うと、そのままパーティー会場から出て行った。

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Last updated  Jul 13, 2021 05:11:57 PM
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Nov 9, 2019

※BGMと共にお楽しみください。


「火宵の月」オメガバースパラレルです。

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この世には、二次性別というものが存在する。

男女という性別の他に、α(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)という三種類の性別が存在し、βが世界の全人口の大半を占め、主にエリート階級に属するα、そしてかつて被差別階級であったΩは人口の約3%を占める。

これは、一人のαと、Ωの物語である―


「先生、さようなら。」
「気を付けて帰れよ~」

茜色に染まりつつある廊下を歩く生徒達に同僚教師・高田が声を掛けている姿を遠くから眺めながら、土御門有匡は彼に気づかれぬように今来た道を戻った。
彼はこの学校に赴任してきたばかりの自分に対して親切にしてくれているのだが、顔を合わせると毎日放課後に飲みに誘われるので、それが苦痛で有匡は彼を避けるようになった。
余り人付き合いが得意ではない有匡は、高田のような熱血教師タイプが苦手だった。
高田だけではなく、他の同僚教師達とも何だか反りが合わないような気がするのは、自分が無愛想で事務的な態度を彼らに取っているからだろう。
革靴を履き、有匡が職員用駐車場へと向かおうとした時、人気のない体育用具倉庫からくぐもった声が聞こえた。

(気のせいか?)

そう思いながら有匡が体育用具倉庫の扉を開けると、そこには一人の少女が今まさに中年男性に組み敷かれているところだった。
「そこで何をしている!」
有匡が男性を怒鳴りつけると、彼は飢えた獣のような目で有匡を睨みつけた。
それと同時に、男性の全身から威嚇フェロモンが放たれた。

(こいつ、αか・・)

「Ωの癖に、こいつが俺に逆らうから懲らしめてやろうとしているだけだ、邪魔するな!」
「獣め、消え失せろ。」
有匡は舌打ちしながらそう言って男を睨みつけると、男が放っているよりも強烈な威嚇フェロモンを男に向かって放った。
男は覚束ない足取りで喉元を掻き毟りながら体育用具倉庫から出て行った。
「大丈夫か?」
「はい、助けてくださって有難うございます。」

金髪紅眼の少女と目が合った瞬間、有匡は彼女から花の蜜の様な甘い匂いが漂って来ている事に気づいた。

“運命の番”―αとΩ間であっても極稀にしか存在しないという“魂の番”。

「お前、名前は?」
「火月・・炎の月という意味の名です。あの、先生?」

この少女が、自分の“運命の番”だというのか?

「家まで送ろう。」
「有難うございます。」

火月を助手席に乗せ、有匡が車に乗り込もうとした時、上着の胸ポケットに入れていたスマートフォンが振動した。

スマートフォンの液晶画面を見た有匡は舌打ちするとスマートフォンの電源を切った。

「すいません、ここで降ります。」
有匡の運転する車が市街地を抜け、閑静な住宅街に入っていくと、火月はそう言ってシートベルトを外した。
「家までまだ距離があるだろう?」
「そうですけど、余り男の人と一緒に居るところを家族に見られたくないんです・・」
火月は何か複雑な事情を抱えているらしく、それだけ言うと俯いてしまった。
「男に襲われた時、何故抵抗しなかった?」
「僕はΩで、男を誘うフェロモンを出しているから、男に襲われて当然だと思って・・無駄に抵抗するよりは、嵐が過ぎ去るのを待った方がいいと・・」
「馬鹿な事を!」
Ωはエリート階級に属しているαと比べ、αを誘うフェロモンを発するΩは、長年“劣等品種”とされ、謂れのない迫害と差別を受けてきた時代があった。
Ωの発情を抑える抑制剤や、バース性に対する差別撤廃運動、そしてバース性に対しての法整備が進みつつある現代に於いても、未だにΩに対する差別は根強く残っている。
それ故にαの男性によるΩ男性、女性へのレイプなどが頻発し、その結果違法な堕胎手術により命を落とすΩが少なくはない。
Ωは種の繁殖に適するものと思われている為、その社会的地位は低く、妊婦が出生前判断で腹の胎児がΩである事がわかると中絶し、また生まれて来た子供がΩである事を理由に殺害し、遺棄したりする事件も後を絶たず、社会問題となっている。
しかし一番問題なのが、Ωとして生まれた者の自己肯定感が低い事だった。
「あの時、もしわたしがお前を助けていなかったら、お前はあの男に犯されていたんだぞ?それなのに、お前はそれを当たり前だと思っているのか?」
「先生にはわからないんです、Ωとして生まれてきた僕の苦しみが!僕だって好きでΩに生まれてきた訳じゃないのに・・」
「済まん、言い過ぎた。」
有匡は顔を両手で覆って泣く火月の背中を優しく擦った。
「すいません、取り乱してしまって・・」
「あんな事は、いつもあるのか?」
「いいえ。僕がフリーのΩで、油断していたから襲われてしまったんです。」
「番は居るのか?番を持てば、発情フェロモンが抑えられると噂に聞いたが?」
「番は持っていません。強い抑制剤をいつも服用しているので、今日も大丈夫だと思っていたんですが、襲われるなんて思いもしませんでした。」
「あの男は学校関係者じゃないな。今日の事を学校に報告して、警備を強化して貰うようにしよう。」
「でも、そんな事をしたら迷惑を掛けます。」
「生徒の身の安全を守るのが教師の役目だろう?」
「それはαやβの生徒に対してだけでしょう?Ωの生徒を守る学校なんてありません。」
「火月、お前・・」
「送ってくださって有難うございました、さようなら先生。」

有匡が止める間もなく、火月は車の助手席から降りて住宅街の中へと消えていった。

(少し言い過ぎたかな・・)

火月はそんな事を思いながら溜息を吐くと、一軒の家の前に立った。

そこは、自分と同じ境遇で育った者達が共同生活を送るシェアハウスだった。
火月が玄関先のインターフォンを鳴らすと、玄関先に黒髪紅眼の少女が現れた。
「火月、お帰り。帰りが遅かったから、また襲われたんじゃないかって心配していたんだよ?」
「ごめん、禍蛇(かだ)。心配かけちゃって・・」
「謝らないで。ご飯もう出来てるから、配膳手伝って。」
「うん、わかった。」

火月は黒髪の少女と共に家の中へと入った。

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Last updated  Jan 7, 2021 09:01:12 PM
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