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JEWEL

全9件 (9件中 1-9件目)

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薄桜鬼×刀剣乱舞 腐向けクロスオーバー二次創作小説:輪廻の砂時計

Jul 18, 2020
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

「ありゃ、どうしたんだい?」

衣擦れの音を立てながら髭切が菊の部屋に入ると、そこには見知らぬ男に今にも殴りかかろうとしている弟の姿があった。
「髭切、いいところに来てくれたわ!」
菊はそう言うと、髭切の手を掴んで彼を石山の前に押し出した。
「貴方が、髭切太夫ですか?」
「そうだけど、僕に何か用?」
「騙されてはならんぞ兄者!こいつはその面妖な機械で兄者の命を奪おうとしているのだ!」
「誤解です、わたしはこのカメラで髭切太夫の姿を撮りたいだけなのです!」
「嘘を吐け!」
「ふぅん、何だか面白そうだね。」
髭切はそう言うと、石山が大事そうに抱えているカメラを見た。
「これで、人の姿が撮れるのかい?」
「はい。少々お時間が掛かりますが、魂を抜かれることはありませんので、ご安心ください。」
「そうだ、折角だからお前も一緒に撮ろうよ、肘丸。」
「俺は膝丸だ、兄者!」
膝丸は自分の名を憶えてくれない髭切に対して少し苛立ちながら、彼と共に写真撮影をすることになった。
「暫く動かないでください。」
髭切の部屋で彼と共に写真撮影に臨んだ膝丸は、石山が箱型のカメラを自分達に向けていることに気づき、思わず顔が緊張で強張ってしまった。
「大丈夫だよ、僕がついているから。」
「兄者・・」
「はい、撮りますよ~!」

石山がシャッターを押したとき、そこに写っていたものは泣き顔の膝丸とそれを宥める髭切太夫の姿だった。

「兄者、これを渡しに来た。」
「おお、綺麗だね。これを僕にくれるのかい?」
「兄者の髪に似合うと思って買ったのだ。気に入ってくれてよかった。」
膝丸から紅い櫛を贈られ、髭切は鏡台の前で早速それを髪に挿してみた。
「どう、似合う?」
「ああ、似合うぞ兄者!」
「有難う、大切にするよ。それよりも今日はここに泊まっていくのかい?」
「いいのか?兄者に迷惑が掛かるのではないか?」
「そんな事ないよ。それに、兄弟で遠慮し合うこともないだろう?」
「兄者~!」
髭切の言葉に感動した膝丸は、彼の胸に顔を埋めて泣くと、そのまま眠ってしまった。
「あら、今日は弟が来てたのかい。」
次郎太夫が酒瓶を片手に髭切の部屋に入ると、彼の膝の上に膝丸が頭を預けて眠っていた。
「遊びに来ていたのだけれど、いつの間にか眠ってしまってねぇ。本当に僕の弟は可愛いねぇ。」
「その櫛、似合っているじゃないか。誰から貰ったんだい?」
「弟からさ。この子はこの世で一番大事な存在なんだ。名前は良く忘れてしまうけれどね。」
「そうかい、そうかい。さてと、あたしは自分の部屋で飲み直してくるかねぇ!」

次郎太夫がそう言いながら髭切の部屋から出て行こうとした時、一瞬次郎太夫は髭切と目が合った。

「次郎姐さん、この子は僕のものだから、あげないよ?」
「わかっているさ、そんな事!」
「そう・・ならいいけど。」

そう言った髭切の瞳が、真紅に染まるのを次郎太夫は見た。

「それじゃぁ、お休み~!」

「ありゃ、どうしたんだい?」

衣擦れの音を立てながら髭切が菊の部屋に入ると、そこには見知らぬ男に今にも殴りかかろうとしている弟の姿があった。
「髭切、いいところに来てくれたわ!」
菊はそう言うと、髭切の手を掴んで彼を石山の前に押し出した。
「貴方が、髭切太夫ですか?」
「そうだけど、僕に何か用?」
「騙されてはならんぞ兄者!こいつはその面妖な機械で兄者の命を奪おうとしているのだ!」
「誤解です、わたしはこのカメラで髭切太夫の姿を撮りたいだけなのです!」
「嘘を吐け!」
「ふぅん、何だか面白そうだね。」
髭切はそう言うと、石山が大事そうに抱えているカメラを見た。
「これで、人の姿が撮れるのかい?」
「はい。少々お時間が掛かりますが、魂を抜かれることはありませんので、ご安心ください。」
「そうだ、折角だからお前も一緒に撮ろうよ、肘丸。」
「俺は膝丸だ、兄者!」
膝丸は自分の名を憶えてくれない髭切に対して少し苛立ちながら、彼と共に写真撮影をすることになった。
「暫く動かないでください。」
髭切の部屋で彼と共に写真撮影に臨んだ膝丸は、石山が箱型のカメラを自分達に向けていることに気づき、思わず顔が緊張で強張ってしまった。
「大丈夫だよ、僕がついているから。」
「兄者・・」
「はい、撮りますよ~!」

石山がシャッターを押したとき、そこに写っていたものは泣き顔の膝丸とそれを宥める髭切太夫の姿だった。

「兄者、これを渡しに来た。」
「おお、綺麗だね。これを僕にくれるのかい?」
「兄者の髪に似合うと思って買ったのだ。気に入ってくれてよかった。」
膝丸から紅い櫛を贈られ、髭切は鏡台の前で早速それを髪に挿してみた。
「どう、似合う?」
「ああ、似合うぞ兄者!」
「有難う、大切にするよ。それよりも今日はここに泊まっていくのかい?」
「いいのか?兄者に迷惑が掛かるのではないか?」
「そんな事ないよ。それに、兄弟で遠慮し合うこともないだろう?」
「兄者~!」
髭切の言葉に感動した膝丸は、彼の胸に顔を埋めて泣くと、そのまま眠ってしまった。
「あら、今日は弟が来てたのかい。」
次郎太夫が酒瓶を片手に髭切の部屋に入ると、彼の膝の上に膝丸が頭を預けて眠っていた。
「遊びに来ていたのだけれど、いつの間にか眠ってしまってねぇ。本当に僕の弟は可愛いねぇ。」
「その櫛、似合っているじゃないか。誰から貰ったんだい?」
「弟からさ。この子はこの世で一番大事な存在なんだ。名前は良く忘れてしまうけれどね。」
「そうかい、そうかい。さてと、あたしは自分の部屋で飲み直してくるかねぇ!」

次郎太夫がそう言いながら髭切の部屋から出て行こうとした時、一瞬次郎太夫は髭切と目が合った。

「次郎姐さん、この子は僕のものだから、あげないよ?」
「わかっているさ、そんな事!」
「そう・・ならいいけど。」

そう言った髭切の瞳が、真紅に染まるのを次郎太夫は見た。

「それじゃぁ、お休み~!」

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Last updated  Aug 15, 2020 09:10:41 PM
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

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道場の帰り、膝丸は一軒の小間物屋の前で何度も行ったり来たりしていた。

「お客様、うちに何か用どすか?」

店主からそう声を掛けられ、膝丸は紅い漆塗りの美しい櫛を指した。

「この櫛は幾らだ?」
「この櫛なら、二両します。」
「頂こう。」
膝丸は懐から財布を取り出し、櫛の代金を払うと店主からそれを受け取って店から出て行った。
(兄者の髪にきっと映えることだろう。)
膝丸は買ったばかりの櫛を握り締めながら、その櫛を髪に挿している髭切の姿を思い浮かべた。
「膝丸、こんな所でどうしたんだ?」
急に背後から肩を叩かれ、膝丸は慌てて懐に櫛をしまった。
彼が振り向くと、そこには道場仲間の氷室が立っていた。
「別に。お前こそ、俺に何か用か?」
「いや、さっき島原の方に変な機械を持った奴がうろついていたから、それをお前に知らせようと思って。」
「変な機械だと?そいつはどんな奴だ?」
「羽織袴姿の奴だ。」
「有難う。」
氷室に礼を言った膝丸は、島原へと向かった。
同じ頃、鈴振楼に“変な機械”を持った羽織袴姿の男・石山がやって来た。
「はぁ、ふぉとがら?聞いたことがないようなものどすなぁ。」
「正式にはフォトグラフィーといって、このカメラで皆さんを撮影するだけです。」
「こんな面妖な機械でうちらを撮るやなんて・・噂では魂が抜かれてしまうって聞いてますけど・・」
「そんな噂は全くの出鱈目(でたらめ)です。」
石山はそう言って菊に向かって微笑むと、菊は笑顔を浮かべて石山を中へと招き入れた。
「髭切太夫はこちらにいらっしゃいますか?」
「髭切なら自分の部屋におりますが、何やあの子にご用どすか?」
「今を時めく島原の太夫を是非このカメラで撮りたいと思いましてね。」
「わかりました。あの子を呼んで来ますさかい、うちの部屋で暫くお待ちください。」
菊が石山を自分の部屋へと通し、髭切の部屋へと向かおうとした時、表の方が何やら騒がしい事に気づいた。
「兄者、兄者はおらんか~!」
「まぁお武家様、こんな日の高いうちから何のご用どすか?」
菊がそう言って廓の中に入って来た若者に笑みを浮かべると、彼はこの廓に変な機械を持った男が入って来なかったかと聞いて来た。
「ああ、そのお方ならうちの部屋にいらっしゃいますよ。何や、髭切を撮りたいとか言うて・・」
「何だと!その男、やはり兄者の命を狙って・・」
「お武家様?」
「女将、部屋へ案内しろ。」
膝丸の尋常ではない様子に気づいた菊は、自分の部屋へと彼を案内するしかなかった。
「女将さん、髭切太夫はまだ・・」
「兄者の命を狙う不届き者め、ここで俺が成敗してくれる!」
膝丸は勢いよく部屋の襖を開け放ち、恐怖と驚きで腰を抜かした石山に向かって飛び掛かった。
「何かの誤解です、わたしは何も・・」
「その面妖な機械で、兄者の命を奪うつもりだろう!?」
「お武家様、落ち着いてくださいませ!」

菊が慌てて石山に殴りかかろうとしている膝丸を止めようとした時、廊下からサラサラという衣擦れの音が聞こえてきた。

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Last updated  Aug 15, 2020 09:11:03 PM
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

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「ご、ごめん。あたしったら、変な事を言っちゃったね。」
「次郎姐さんは悪くないよ。ちょっと嫌な事を思い出しちゃって、つい声を荒げてしまったんだ。」
そう言った髭切の瞳は、真紅から金へと戻っていた。
「それにしてもあんたも良く働くよねぇ。昨夜だって幾つかお座敷を掛け持ちして、その後は大黒屋様のお座敷に行ったんだろう?身体が幾つあっても足りないんじゃないかい?」
「まぁね。昨夜は長年生き別れて来た弟がやって来て、色々と忙しかったし。」
「へぇ、あんたに弟が居るなんて話、初耳だよ。あたしにも、少し年が離れた兄貴が居るんだよ。兄貴の名前が太郎で、あたしが次郎。まぁ呼びやすいし覚えやすいよね。」
次郎太夫はそう言うと、髭切の髪を梳き終わった。
「そうかぁ。弟の名前をいつも忘れてしまうのだけれど、あの子は僕にとって大切な弟には変わりはないんだ。幼い頃に別れたきりだから、久しぶりに会えたのが嬉しくて・・」
「これからはいつでも会えるじゃないの。髭切太夫の話を聞いたら、あたしも兄貴に会いたくなったなぁ。」

次郎太夫はそう言うと、鬱陶しげに髪を掻き上げた。

今日も、島原に夜が訪れた。

「髭切太夫や。」
「天女のような美しさや。」
「なぁ、知ってるか?太夫は武家の生まれらしいけど、家の為にここへ売られて来たんやて。」

左右に禿を従わせ、太夫道中をする髭切太夫の耳に、自然と見物人達の声が聞こえて来た。
やはり噂というものは広まるのが早い―髭切はそう思いながら、フッと笑った。
「姐さん?」
右側に立っていた禿が怪訝そうな顔で髭切を見つめたので、彼は何でもないと言って再び歩き続けた。
今を時めく髭切太夫の華やかな太夫道中を、小烏は恨めしそうな目で物陰から見ていた。
髭切と同じ容姿を持ちながらも、彼からその存在を否定され、拒絶された自分。

『僕に弟は一人だけだ。お前なんか、僕の弟じゃない!』

あの時髭切から放たれた冷たい拒絶の言葉と視線を、未だに小烏は憶えている。

髭切に死よりも辛い思いを味あわせてやりたいという復讐心がいつしか小烏の中で芽生え始めたのは、彼から拒絶された頃からだった。
そして、髭切が島原の太夫として生きている事を知り、少しでも彼に近づこうと、小烏は祇園で舞妓となった。
髭切と似た舞妓が祇園に居る、という噂は、小烏の目論み通り、この島原界隈でも流れている。
後は、彼が自分の存在に気づけばいいだけだ。
その時が、彼に―髭切に復讐できる機会だ。

(焦ることはない、少しずつ進めていこう。)

小烏は華やかな太夫道中から背を向け、元来た道を戻った。

「小烏、遅かったやないの。」
「すいまへん、姐さん。」

小烏は姉芸妓にそう言って微笑むと、降り出した雪の中を彼女と共に歩き出した。

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Last updated  Aug 15, 2020 09:11:31 PM
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

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膝丸が道場へと向かうと、彼と島原へ行った仲間達が駆け寄って来た。

「膝丸、聞いたぞ。お前髭切太夫と閨を共にしたんだってな!」
「ど、何処からそのような話が出たんだ!?」
「今更とぼけたって無駄だぜ?奥の座敷で髭切太夫にしがみついて離れなかったんだってな?」
「あ、あれは・・」
「後で話、聞かせろよ。」
完全に仲間達に誤解されたまま、膝丸はその日の稽古を終えて帰宅した。
道場から出ようとした時、土砂降りの雨が降っていることに気づいた膝丸は舌打ちしながら雨の中を走り出した。
「そこの方、どうぞ。」
目の前に突き出された紅い傘に戸惑いながら、膝丸はその傘を差し出した町娘の顔を見た。
彼女は、今朝助けた町娘だった。
「まさか、こんな所で再会するとはな。」
「家が近くにありますので・・わたくしの方も、貴方と再び会えるなんて思ってもみませんでした。」
雨宿りの為に近くの甘味処に入った膝丸は、兄に似た町娘・小烏(こがらす)と団子を食べながら再会したことを彼女と互いに喜び合った。
「家が近くにあると言ったが、何処にあるのだ?」
「祇園です。わたくしは“鈴屋”という屋形に籍を置いている舞妓なのです。」
「舞妓か・・そうか。京言葉を話さない舞妓は珍しいな?」
「生まれが江戸なので、余り上手く話せないのです。あの、わたくしの顔がそんなに珍しいですか?」
じっと自分を見つめる膝丸に気づいた小烏がそう彼に尋ねると、彼は突然破願してこう言った。
「済まん、俺には君によく似た兄者が居てな。君の顔を見て、兄者を思い出してしまったのだ。」
「お兄様、ですか?」
「ああ。幼い頃離れ離れになっていたが、今は島原で太夫として暮らしている。昨夜兄者と会ったが、元気そうで良かった。」
「そう・・なのですか。」
膝丸から彼の兄の話を聞いた小烏の胸が、チクリと嫉妬で痛んだ。
「今日は会えて良かった。傘を有難う。」
「いいえ、ではお気をつけてお帰り下さいませ。」
紅い傘を差した膝丸の姿が徐々に小さくなってゆくのを、小烏は涙を堪えながら見ていた。
「雨、か・・鬱陶しくて嫌だな。」
「天下の髭切太夫がそんな顔をすることもあるんだねぇ。何か嫌な思い出でもあるのかい?」
「まぁね・・」
自分の髪を櫛で梳いている次郎太夫の方を見た髭切は、そう言って笑った。
「そういえば、あんたによく似た舞妓が居るって噂を最近聞いたことがあるね。」
「僕とよく似た舞妓?」
「何でも、名前を小烏っていうんだってさ。可愛い娘に烏なんて、酷い名前をつける親が居るものだね。」
次郎太夫がそう言って髭切の方を見ると、彼は険しい表情を浮かべて何かを呟いていた。
その横顔は、いつも飄々としていて何処か儚げな太夫としての顔ではなく、嫉妬に狂う鬼の顔だった。

「髭切、どうしたの?」
「あ、ごめん。ちょっと、昔の事を思い出しちゃってね。」

そう言った髭切の瞳が、真紅に染まっている事に次郎太夫は気づいた。

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Last updated  Aug 15, 2020 09:12:04 PM
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

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朝を迎え、布団から出た膝丸は軽く身支度を済ませると、布団の中で寝ている兄を起こさぬようそっと部屋から出た。

「お武家様、もうお帰りですか?」

膝丸が廊下を歩いていると背後から急に声を掛けられ、彼が振り向くと、そこには髭切付きの禿(かむろ)が立っていた。
「ああ、兄者を起こしたくないのでこれで失礼する。」
「お気をつけてお帰り下さい。」

膝丸が禿に背を向けて廓から出ると、彼女はパタパタと足音を立てながら髭切の元へと向かった。

朝を迎えた島原は、夜とは違い人気がなく静まり返っていた。

冬の寒さに少し身を震わせながら、膝丸は髭切の事を想いながら帰宅した。

「義父上、義母上、只今戻りました。」

膝丸が自宅の中に入ると、奥から女中が何やら慌てふためいた様子でやって来た。

「どうした、何かあったのか?」
「膝丸様、大変です!奥様が・・」

女中から義母が喀血した事を知り、膝丸が義母の部屋へと向かうと、襖の向こうから彼女が苦しそうに咳込む声が聞こえた。

「義母上、おかげんは・・」
「開けてはなりませんよ!」

義母の様子を見ようと膝丸が襖を開けようとした時、中から義母の鋭い声が聞こえて来た。
「膝丸、わたくしの事には構わないで!」
「ですが・・」
「母の言う事が聞けぬのですか!」
「申し訳ありませんでした、義母上。では俺はこれで失礼いたします。」
震える声で義母にそう言った膝丸はそのまま彼女の部屋の前から辞すと、道場へと向かった。
その途中、膝丸は柄の悪い男達に絡まれている町娘を見かけた。
「貴様ら、何をしている。」
「くそ、逃げろ!」
膝丸に睨みつけられた男達は、町娘から手を離して蜘蛛の子を散らすかのように逃げていった。
「大丈夫か?」
「へぇ、おおきに。」
膝丸は町娘の顔を見て驚いた。
彼女は、髭切と瓜二つの顔をしていたのである。
「そなた、名を何と申す?」
「小烏(こがらす)と申します。助けて頂いておおきに。」

髭切に似た町娘は、そう言って膝丸に礼をするとそのまま何処かへ消えてしまった。

(あの娘、兄者に似ていた・・他人の空似とはよく言ったものだな。)

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Last updated  Jul 18, 2020 12:50:04 AM
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

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荒い呼吸を何度か繰り返し、己の内側で猛り狂う激しい負の感情を必死で抑え込んだ髭切は、俯いていた顔を上げて自室へと戻った。
髭切が襖を開けると、布団には膝丸が幼子のように安らかな寝息を立てながら眠っていた。

(僕が居ない間、お前はどんな思いで生きて来たんだろう?)

座敷で自分と再会した時の弟の喜びようを想像すると、彼は自分の事を必死で探していたに違いない。
自分が廓に居ると知った時、膝丸はどんな顔をして大門をくぐったのだろうかと想像するだけでも、髭切の頬は自然と弛んでしまった。
「兄者?」
暫く髭切が膝丸の手を握りながら彼の寝顔を眺めていると、膝丸は低く呻いた後、ゆっくりと糖蜜色の瞳を開いて髭切を見た。
「ここは何処だ?」
「僕の部屋だよ。あの後、お前は泣き疲れて眠ってしまったから、座敷からここまで運ぶのに苦労したよ。」
「済まなかった兄者、座敷での事といい、俺は兄者に迷惑を掛けてばかりだ!」
「いいんだよ、弟を甘やかすのは兄である僕の特権なんだから。」
髭切はクスクス笑いながら膝丸の頭を撫でた。
「兄者が廓に売られた事は知っていたが、まさか島原で会えるとは思わなかった。」
「僕も、こんな場所でお前と再会できるなんて思わなかったよ。真面目なお前がこんな所に一人で好んで来る訳がないし、仲間を連れてやって来たのもうなずけるよ。」
「兄者、俺が居ない間、兄者はここで何をしていたんだ?」
「話せば長くなるよ。それよりも僕ももう疲れたから一緒に寝よう。」
「あ、兄者と俺が一緒に寝るなど、そんな恐れ多いことが出来るか!」
「遠慮しなくてもいいじゃない、久しぶりに会えたんだから一緒に寝よう、膝丸。」
「兄者・・」
一緒に寝ようという兄の言葉に最初は戸惑っていた膝丸だったが、隣に兄が居る安心感からか、再び彼は安らかな寝息を立てながら眠り始めた。
時折自分の髪を梳く弟の手を握りながら、髭切はこの廓に初めて来た日の事を思い出していた。
女衒に手を引かれ、島原の大門をくぐり、裏口からこの廓の中に入った髭切を待ち受けていたものは、怒りと屈辱の日々だった。
菊は金髪金眼の髭切を一目見た瞬間から気に入り、舞や音曲などを彼に直に教え込んだ。
家は傾いたが、名家の御曹司として幼い頃から礼儀作法などを両親から叩き込まれながら育った髭切は、女将のしごきに耐え、次第に廓での生活に慣れていった。
しかし、客に抱かれる事だけは未だに慣れない。
それは髭切に苦痛しか与えなかった。
膝丸を起こさぬようそっと寝床から脱け出し、髭切は鏡台の前に座った。
引き出しから一振りの懐剣を取り出すと、その鞘を抜いた。
白銀の刀身が姿を現し、それが月光に照らされて鈍色に光った。
まだこの懐剣であの女を殺すべきではない。
あの女が苦しむ姿を見た後で、とどめを刺してやる―そう思いながら、髭切は鈍色に光る刀身を鞘に収めた。
「兄者?」
「ごめんね、起こしちゃったね。」

髭切は弟に笑みを浮かべると、彼の隣に滑り込んだ。

「お休み、弟よ。」
「お休み、兄者。」

一組の布団の中で、髭切と膝丸は互いの手を握り合って眠った。

(可愛い僕の弟・・これからはずっと一緒だよ。)

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Last updated  Jul 18, 2020 12:40:05 AM
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「ありゃ、眠ってしまったねぇ。」

髭切はそう言って、自分の膝の上に頭を預けている弟を見た。
長い間生き別れていた兄と再会を果たし、涙を流したまま自分にしがみついて離れようとしなかった弟は、どうやら泣き疲れてしまい、そのまま眠ってしまったらしい。
「世話の焼ける弟を持って災難じゃの。」
「そんな事ないよ、この子は僕の可愛い弟だからね。」
すぅすぅと寝息を立てている弟の頭を撫でながら、髭切は大黒屋に向かって笑みを浮かべた。
「小さい頃は泣き虫で、僕の姿が見えないと泣きじゃくりながら家中を捜しまわっていたよ。」
「兄弟仲が良くていいのう。わしにも弟が居るが、おまん達のようには仲が良くない。」
「まぁ、毎日同じ屋根の下で暮らしていると、色々と相手の悪い面を見てしまうものだから、些細な事を喧嘩するのは仕方がないでしょうね。僕達は小さい頃からいつも一緒でしたから、お互いの良い面も悪い面も知り尽くしていて、喧嘩なんてしなかったなぁ。」
「そうか。それよりもお前は名家の出だと噂があるが、それは本当だったか。」
「ええ。名家といっても、名ばかりのもので、今は傾いた家を僕が支えているようなものです。」
髭切の言葉に、大黒屋は何も言わずに猪口に注がれた酒を飲んだ。
廓に売られてくるのは大抵が百姓の娘だが、髭切のような武家出身の者も少なくはない。
「そういえば、おまんがここへ来た時の事をまだ聞いていなかったな。」
「昔の事は、余り思い出さないようにしているのですよ。」

そう言った髭切の顔には、何処か哀愁が漂っていた。

「う~、兄者・・」
「はいはい、僕はここに居るよ。」

大黒屋に手伝って貰い、眠っている膝丸を自室へと運んだ髭切は、布団の中で寝返りを打っている弟の頭を再度撫でると、彼に微笑んだ。

「太夫、女将さんが呼んでますえ。」
「解った、すぐ行くよ。」

膝丸を起こさぬよう自室から出た髭切が女将の部屋へと向かうと、そこには煙管を咥えて不機嫌そうな様子で顔を顰めている女将・菊の姿があった。

「女将さん、僕にご用とは何でしょうか?」
「髭切、あんた最近客の相手をしてへんそうやな?」
「ええ、少し体調が優れなくて・・」
「大黒屋様から聞いたのやけれど、あんたの弟があんたの事を迎えに来たってなぁ?あんたが変な気を起こしてここから逃げようとか考えてへんやろうかと思うて、ここへ呼んだのや。」
「そんな事、ある訳ないでしょう。僕は女将さんに、一生かけても返しきれない恩を頂いたのですから。」
「そうか。もう帰っていいで。」

菊は髭切の言葉を聞いて安心したのか、髭切にそっぽを向いた。

「では、失礼いたします。」

菊の部屋から出た髭切は、誰も居ない廊下を暫く歩いた後、拳で壁を殴った。

「僕がいつまでもお前の言いなりになると思うなよ、鬼婆め。いつかお前を僕の手で屠(ほふ)ってやる。」

そう呟いた髭切の瞳は、血のような紅に染まっていた。

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Last updated  Jul 18, 2020 12:30:05 AM
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(ここが、島原か・・)

道場の仲間達と島原へと繰り出した膝丸は、初めて足を踏み入れる島原の賑やかさに圧倒されていた。
「おい、何を突っ立っているんだよ、膝丸!」
「さっさと行こうぜ!」
「ああ、わかった・・」
暫く大門の前で呆けていた膝丸だったが、仲間達の声を聞いて我に返ると、髭切太夫が居る女郎屋「鈴振楼(すずふりろう)」へと向かった。
「いらっしゃいませ。お腰の物を御預かり致します。」
膝丸達が鈴振楼の中へと入ると、奥から楼主と思しき白髪の男が彼らを出迎えた。
「其方に聞きたいことがある。」
「なんでございましょうか、お武家様?」
「髭切太夫は何処に居る?」
「ああ、髭切でしたら奥の座敷で大黒屋様の接待をしております。」
「大黒屋だと?最近異国との貿易で儲けているという薩摩の商人か?」
「へぇ、そうどす。お武家様は髭切と一体どのような関係で・・」
「髭切の居る座敷へと案内しろ。」
膝丸はそう言って男を睨みつけると、鈴振楼の楼主・弥助は恐怖に顔を引き攣らせながら膝丸を奥座敷へと案内した。
「何だあいつ、おっかない顔をしていたな。」
「ああ・・まるで鬼のようだったぞ。」
膝丸の全身から発せられる殺気に気づいた仲間達は、そんな事をひそひそと囁き合いながら慌てて彼の後を追った。
「そこの廊下を曲がったら、奥座敷です。」
「楼主、先程は済まなかった。これは礼として受け取ってくれ。」
「おおきに。」

弥助は膝丸から小判を受け取り、それを懐にしまうとそそくさと彼に背を向けて元来た道を戻っていった。

(あそこに、兄者が・・)

膝丸が奥座敷の前に立つと、中から賑やかな笑い声が聞こえて来た。
彼は深呼吸した後、勢いよく襖を開けた。

「兄者、迎えに来たぞ!」

突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)に、大黒屋は不快感を露わにした顔を膝丸に向けた。
「何じゃ、随分とうるさい奴が来たのう。」
「貴様が大黒屋か。兄者は何処に居る?」
「お前の兄なぞここには居らんわ、去ね!」
「兄者と会うまでここを動かんぞ!」
大黒屋と膝丸が睨み合っていると、廊下の方から衣擦れの音が聞こえた。
「ありゃ、こっちだったか。」
頭上から振って来た声を聞いた膝丸が背後を振り向くと、そこには黄金色の髪を簪や櫛で美しく飾り、華やかな衣を纏っている兄の姿があった。
「兄者~!」
膝丸が髭切に抱きつくと、彼はきょとんとした顔をしていた。
「髭切、そん男はおまんの知り合いか?」
「へぇ、これはうちの弟の・・」
「膝丸だ、兄者!」
涙で潤んだ瞳で膝丸が髭切を睨むと、髭切は口元を袖口で覆ってクスリと笑った。
「久しぶりだね、膝丸。」
「兄者ぁ~!」

長い間生き別れていた兄との再会を果たした膝丸は感極まって涙を流し、髭切にしがみついたまま離れようとしなかった。

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Last updated  Jul 18, 2020 12:20:06 AM
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「薄桜鬼」「刀剣乱舞」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

「兄者、兄者と別れるのは嫌だ!」
「大丈夫だ、すぐに会えるさ。」

傾いた家を救う為、双子の兄・髭切(ひげきり)が遊郭へと売られることになった。

行かないでくれと必死に懇願して泣いた自分の頭を優しく撫でる兄の手の温かさを、膝丸は未だに憶えていた。
「兄者、いつか必ず俺が兄者を迎えに行くから、それまで待っていてくれ!」
「ああ、解ったよ、膝丸(ひざまる)。お前が迎えに来るその日まで、待っているよ。」
家の前で、幼い兄弟は指切りをして別れた。
あれから十年もの歳月が過ぎ、泣き虫だった膝丸は立派な青年へと成長し、縁談の話が持ち込まれるようになった。
だが、膝丸はそれらの縁談を頑として断った。
その理由は、兄を迎えに行く為だった。

(兄者、貴方は一体何処に居るんだ?)

道場で素振りをしながら膝丸がそんな事を考えていると、外の井戸で水浴びをしている門下生達の話が聞こえて来た。

「なぁ、髭切太夫を知っているか?」
「ああ、知っているとも。何でも肌が雪のように白くて、髪は金色で天女の如く美しいとか。だが、どんなに大金を積まれても身請け話には首に縦を振らないとか。」
「噂じゃ、廓に入る前に惚れた男への操立てをしているって話だぜ。」

“髭切”―彼らが話していたその太夫は、もしかしたら自分が探していた兄なのだろうか?
気が付くと膝丸は、彼らに詰め寄っていた。

「その髭切太夫とは、何処で会える?」
「な、何だ膝丸、急に・・」
突然詰め寄って来た膝丸の剣幕に押されるように、彼らは髭切太夫が居る廓の名を教えた。
「かたじけない。」
「おい、何処へ行くんだよ、膝丸?まさか今から廓へ向かうつもりじゃあないだろうな?」
道場から出て行こうとする膝丸を呼び止めた門下生の一人が、そう言って彼を見た。
「その廓に行けば、髭切太夫と会えるのだろう?」
「お前、名にも知らないんだな。廓は昼間には開いてないって。」
「そうだ、今夜島原へ繰り出そう。」
「し、島原だと!?」
生まれてこのかた潔癖で遊郭など一度も行ったことがない膝丸は、仲間の言葉を聞いて思わず頬を赤く染めてしまった。
「何だ膝丸、今更怖気づいたのか?」
「慣れない事はしない方がいいぞ?」
そう言ってニヤニヤと笑いながら自分を見る仲間達に、膝丸はこう言い放った。
「怖気づいてなどいない!」

こうして膝丸はその日の夜、兄が居るという廓へと仲間達と共に向かったのだった。

同じ頃、鏡の前で一人の遊女が唇に紅をさしていた。

「太夫、大黒屋様が呼んではりますえ。」
「わかった、すぐ行くよ。」

凛とした声音でそう言った遊女は、衣擦れの音を立てながら部屋から出た。

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Last updated  Jul 18, 2020 12:10:06 AM
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