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JEWEL

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薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て 第一部:太陽と月

Feb 17, 2022
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画像はコチラからお借りいたしました。

「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

帝―ヘンリーが息を引き取った後、雨は一月も振り続けた。

「一体、リチャードは何処に?」
「申し訳ありません、使用人総出で、リチャード様の行方を捜しているのですが、見つからず・・」
「もう良い、さがれ。」
「は・・」
ヨーク公は、使用人を下がらせると、大きな溜息を吐いた。
「父上、ジョージです。入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ。」
「リチャードの行方を、バッキンガム公が密かに探っているようです。」
「帝の乳兄弟であるバッキンガムが何故リチャードを?」
「それはわかりませんが・・やはり許婚の安否が気になるのでしょうね。」
「許婚といえば、ネヴィル家のイザベル様とは上手くいっているか、ジョージ?」
「父上、それは・・」
「ジョージ、運命の相手を見つけたのなら、その相手の手を離してはならないよ、わかったね?」
「はい、父上・・」
一月も都に振り続けた雨は、疫病をもたらした。
「これは、鬼の祟りですわ!弘徽殿女御様、わたくしに良い考えがございます。」
「それは何だ?」
エリザベスは口端を上げて笑うと、弘徽殿女御の耳元に何かを囁いた。
「それは良い事だ。」
弘徽殿女御は、すぐさまリチャードを討つよう命じた。
「父上・・」
「ケイツビー、ひとつ頼まれてくれるか?」
「はい。」
リチャードは、あの酒呑童子が棲んでいたとされる大江山の近くにある洞窟の中に居た。
―姫様、誰かに苛められたの?
―可哀想。
全身傷だらけになったリチャードが疲れて寝ていると、そこへ小鬼達がやって来た。
暫くすると、洞窟の入口の方から微かな物音が聞こえて来た。
「こんな所に居たのか・・月読の君。」
「バッキンガム、どうしてここがわかった?」
「あんたが、鬼の気―陰の気が強いこの山に居る事位わかっている。どうして、こんな所で引き籠もっているんだ?」
「お前には関係の無い事だ。」
リチャードはそう言ってバッキンガムに背を向けると、バッキンガムはその華奢な身体を抱き締めた。
「何をする!」
「あんたに、こんなに暗くて寂しい所は似合わない。俺と一緒に戻ろう。」
「うせろ!」
「・・仕方無い、あんたの気が変わるのを待っている。」
バッキンガムが去った後、リチャードは冷たい岩の上に横になって眠った。
―ここに居たのか。
生ぬるい風が吹き、洞窟の中に後宮で会った鬼が入って来た。
―俺と共に行こう、姫よ。
鬼はそう言うと、そっとリチャードの身体を横抱きにし、洞窟から去っていった。
「ん・・」
リチャードが目を覚ますと、そこは冷たくて暗い洞窟の中ではなく、寝心地の良い御帳台の中だった。
「目が覚めたか?」
「お前は・・」
「酷い顔をしているな。食事の前に湯浴みを済ませよ。」
鬼に言われるがままに、リチャードは汚れた髪と肌を清めた。
「何故、俺を助けた?同族の誼でか?」
「それもあるが、そなたを妻として迎える為だ。」
「俺は、誰も愛さない。」
リチャードはそう言うと、鬼にそっぽを向いた。
「若様、お館様がお呼びです。」
「わかった、すぐ行く。」
鬼はそう言うと父が待つ寝殿へと向かった。
「父上、お呼びでしょうか?」
「都で疫病騒ぎを起こしている鬼姫を匿っているそうだな?」
「はい。それは彼女を妻として迎え入れたいと思います。」
「それは出来ぬ。そなたと鬼姫は血が繋がった兄と妹。」
「何と・・」
「あの娘・・安子には酷な事をした。人との間に子を成し、一人で苦しませた末に死なせてしまった。」
「安子様・・わたしの母上ですね。」
「鬼姫は何処に?」
「わたしが用意した局で休んでおります。」
「そうか。では、後で鬼姫をこの局に呼べ。」
「はい・・」
リチャードが眠っていると、外から微かな物音がした。
「漸く見つけたぞ、月読の君・・リチャード。」
「どうして、こんな所に・・」
「あんたを迎えに来た・・妻として。」
「妻ならば、あの娘が居るだろう?俺に構うな。」
「わかっていないな、あんたは。」
バッキンガムはそう言うと、リチャードの唇を塞いだ。
「俺は、あんたみたいな高貴な女が好きだ。」
「それはガキの頃に一度お前から聞いた。」
リチャードはそう言うと、バッキンガムを睨んだ。
「離せ!」
「離さない。俺は、ずっとあんたが好きだった。」
「貴様、そこで何をしておる?」
鬼―安高はそう言うと、バッキンガムを睨んだ。
「俺は妻を迎えに来ただけだ。」
「ほぉ?」
安高の紅い瞳が、剣呑な光を宿した。
「我が妹を妻として迎えるだと?人間風情が、ふざけた事を・・」
「俺は本気だ。」
「ならば、この兄の前で我が妹を抱いてみよ。」
バッキンガムは、リチャードの耳元でこう囁いた。
「今からあんたを抱く、いいな?」
「・・好きにしろ。」
リチャードが都から姿を消して、半月が経った。
「父上、父上!」
「どうした、ジョージ?」
「リチャードが、リチャードが・・」
「お館様、リチャード様がお戻りになられました!」
「何だと!?」
ヨーク公が寝殿から渡殿へと出ると、丁度リチャードがバッキンガムに身体を支えられながら姿を現したところだった。
「父上・・」
「リチャード、息災で何よりだ。」
「長らく文も寄越さず、申し訳ありませんでした。」
「早く中へ入りなさい、身体を冷やしてはいけない。大切な身体なのだから。」
「はい・・」
そう言ったリチャードの下腹は、大きく迫り上がっていた。
程なくして、リチャードは元気な男児を産んだ。
「可愛い子だ。」
「父上、この子を抱いてやってください。」
ヨーク公がリチャードから赤子を受け取ると、赤子は金と銀の瞳で彼を見つめて来た。
「鬼姫が戻って来ただと?それはまことか!?」
「はい・・それが・・」
女房からリチャードが出産した事をしった弘徽殿女御は、烈火の如く怒り狂った。
「ただちに兵をヨーク邸へ向かわせろ!」
「はっ!」

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Last updated  Feb 17, 2022 05:06:24 PM
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Sep 22, 2021



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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「一体何なのです、あの黒雲は!?」
「それが・・あの黒雲は、亡くなったあの御方が呼んだのではないかと・・」
「何を馬鹿な事を!」
「弘徽殿女御様、落ち着いて下さいませ!」
「あの女、死してもなお妾を苦しめるつもりか!」
「お言葉でございますが女御様、わたくしに考えがございます。」
「そなたは?」
「エリザベス、と申します。」
「エリザベスとやら、そなたの話を聞こうか?」
「実は・・」
 エリザベスは、弘徽殿女御の耳元に、ある事を囁いた。
「それは、確かなのか?」
「はい。」
(これで、わたしの敵は居なくなる!)
「帝のご容態は・・」
「今は落ち着いておられますが、主上が危険な状態に陥られるのは時間の問題です。」
「そうか・・」
「主上は、うわごとでリチャード様を呼んでおられます。」
「リチャードを呼べ。」
「父上、どうされたのですか?わざわざわたしをお呼びになられるなんて、お珍しい。」
「主上が、お前を呼んでいるらしい。一度、主上に会いに行ってやれ。」
「ですが、わたしは・・」
「決めるのは、お前だ。」
リチャードはヘンリーに会いに、ケイツビーを連れて彼の元へと向かった。
「まぁ、あんなに空が黒くなって・・」
「呪われているのではなくて?」
「噂に聞いたところによると、あの御方の呪いかもしれぬと・・」
「まぁ、恐ろしい・・」
清涼殿の廊下を女房装束姿のリチャードが歩いていると、自分と擦れ違った女房達の話を聞いてリチャードは顔を曇らせた。
「リチャード様・・」
「ケイツビー、何か俺に隠している事はあるか?」
「いいえ、ありません。」
「そうか、ならばいい。」
二人がヘンリーの寝所へと向かおうとした時、渡殿の向こうからエリザベスがやって来た。
「あら、来たのね。」
「義姉上・・」
「主上の寝所には、わたくしの主である弘徽殿女御様がいらっしゃるから、あなたは行かない方がいいわよ。」
「ご忠告どうもありがとうございます。行くぞ、ケイツビー。」
(相変わらず、生意気ね・・まぁ、それもいいけど。)
「主上、あの者が・・」
「妾が会おう。」
苦しそうに咳込んでいるヘンリーの手をそっと握った後、弘徽殿女御は彼の寝所へ入ろうとするリチャードを阻んだ。
「主上に会わせる訳にはいかぬ。」
「何故です?」
「そなたが、あの御方を呼んだのでしょう?」
「女御様、一体何をおっしゃって・・」
「とぼけても無駄よ・・お前は、この国に災いを齎しに来たのだろう?周りの者は騙せても、妾に騙されぬぞ!」
一瞬、弘徽殿女御の顔が、幼い自分を罵った時の母の顔に重なって見えた。
“お前は全ての者を不幸にする!”
「ここから去ね!」
「せめて主上に会わせて下さいませ!」
「くどい!」
弘徽殿女御はそう叫ぶと、リチャードを突き飛ばした。
リチャードは、土砂降りの雨の中、放り出された。
「リチャード様!」
「俺は大丈夫だ、もう行こう。」
「嫌だわ、また雨が降って来たわ。」
「天候ばかりはどうにもなりませんわ、ベス様。」
「それにしても伯父様はどちらへ?」
「それはわかりません。」
「早く帰って来てくれないかしら。一人だと退屈だわ。」
ベスは、そう言うと御簾の向こうで吹き荒れる雨風を見て溜息を吐いた。
「リチャード、助けて・・」
「主上、気が付かれましたか?」
「リチャードは何処に居るの?」
「もうあの者と会う事はなりませぬ。あの者は・・」
ヘンリーは、激しく咳込むと、再び意識を失った。
「リチャード様大変です、主上が・・」
「行くぞ、ケイツビー!」
リチャードがヘンリーの寝所へと向かうと、彼は苦しそうに息を吐いた。
「ヘンリー!」
「リチャード、やっと来てくれた・・」
ヘンリーはそう言ってリチャードに優しく微笑むと、静かに息を引き取った。
「嘘だ!」
「何をしておる、早うこの者を追い出さぬか!」
「ヘンリー、目を開けろ!」
「リチャード様、落ち着いて下さい!」
半狂乱となったリチャードを落ち着かせようとしたケイツビーは、空に白銀と紅色の稲光が浮かんでいる事に気づいた。
「きゃぁぁ~!」
雷鳴が轟き、その雷はリチャードをヘンリーから引き剥がそうとしていた衛士の一人に直撃した。
肉が焦げるような嫌な臭いがあたりに漂い、女房達は悲鳴を上げて逃げ惑った。
「怯むな、あの鬼を捕えよ!」
「リチャード様・・」
鬼の姿へと変化したリチャードは、金色の瞳で自分を睨みつけた。
その額には、以前見た梵字は浮かんでいなかった。
(一体、これは・・)
「射て、射て!」
衛士達はリチャードに向けて矢を放ったが、それらは全て弾き飛ばされた。
「一体、どうなっている!?」
「化物!」
リチャードは衛士達に石を投げられ、全身傷だらけになりながら、闇の中へと消えていった。
「先程、宮中で鬼騒ぎがあったとか・・」
「はい・・」
「ほぅ・・」
バッキンガムは、嵐が止むのを待って鬼騒ぎがあった弘徽殿へと向かった。
「まぁ、バッキンガム様・・わざわざこちらにいらっしゃるなんて・・」
「リチャード様はどちらに?」
「それが、昨夜から行方知れずなのです。」
「何だと!?」
「何でも、弘徽殿に雷を落としたそうです。」
(一体、あいつは・・リチャードは何処へ消えたんだ?)
バッキンガムは、一人の女房と目が合った。
「あ・・」
「待て、お前何か知っているな?」
「わたくしは・・」
「知っている事だけを話せ。」
バッキンガムに迫られ、彼女は昨夜の事を話し始めた。
「そんな事が・・」
「あぁ、主上がおかくれあそばしたばかりだというのに、これからどうなってしまうのかしら?」

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Last updated  Sep 22, 2021 10:10:38 PM
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Apr 13, 2021



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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「あら、帰って来たのね。」
「母上・・」
ヨーク公と共に実家の母屋の中に入ると、そこには珍しく笑みを浮かべた母・セシリーの姿があった。
「バッキンガム様からの文が届いたわよ。」
「はい・・」
バッキンガムの文には、“あなたが恋しくて堪らない”という旨の和歌が書かれてあった。
「帝の乳兄弟でいらっしゃるバッキンガム様に見初められるなんて、あなたは何て幸運なのかしら。」
「母上、わたしは・・」
「リチャード、局へ行きなさい。」
「わかりました。」
リチャードはヨーク公に向かって頭を下げると、自分の局へと向かった。
そこは、幼い頃から過ごしていた時の部屋と、変わらない場所だった。
唯一つ、式神が居る事だけを除いては。

――姫様、お帰りなさい。

「ただいま。」

白い毛を揺らしながらリチャードの元へやって来たのは、バッキンガムの魔手から助けてくれたあの狼だった。
彼女は、森の中で怪我をした時にリチャードに保護されたのだった。

――何か、あったのですか?

「あぁ。」

考えなければならない事が山程あるが、とにかくリチャードは休みたかった。

「少し休むから、誰か来たら教えてくれ。」

――はい。

御帳台の中に入ったリチャードは、夢も見ずに眠った。

「あなた、リチャードさんに縁談が来たというのは本当なの?」
「あぁ。しかもその相手は、帝の乳兄弟だそうだ。」
「まぁ、それはめでたい事。お義母様も、さぞやお喜びの事でしょう。」
「そうだが・・それよりもエリザベス、弘徽殿の方はどうなっている?」
帝が病に臥せってしまい、帝不在の朝議に出席する為参内したエドワードは、昨夜事件が起きた弘徽殿へと向かった。
「皆、動揺しておりますわ。ですが、女御様は冷静に対応されておりますわ。」
「そうか。」
「それよりもあなた、アンソニー達の事を早く主上に話して下さいな。」
「あぁ、わかったよ。」
エリザベスの弟と兄達は、粗暴な性格でこれまで色々と厄介事を起こしていた。
夜中に公卿の屋敷を襲ったりして、その悪名を都中に轟かせていた。
そんな者を宮中に上げる事など到底出来ないが、エリザベスは何としてでも自分の親族達を宮中へ上がらせようと躍起になっていた。
何故ならば、エリザベスの実家であるウッドウィル一族は下級貴族で、エリザベスがプランタジネット家に嫁いだ事によりその存在は宮中で良い意味でも悪い意味でも注目されていたが、それ以後は忘れられていった。
「どうか、お願いいたしますね。」
エリザベスはそう言った後、夫を微笑みながら見送った。
(バッキンガム公とは、わたくしの妹と結婚させたかったのに。)
エリザベスは針仕事をしながら、己の野望がひとつ潰えた事に歯噛みした。
下級貴族である父は、立身出世など望まぬ穏やかな性格であったが、その子供達はそうではなかった。
長女のエリザベスは野心家で、何としてでも帝の目に留まり、やがて国母となる――その野望を叶える為、彼女が目をつけたのはプランタジネット家の長男・エドワードだった。
エドワードは都一の色男で、かなりの女好きであるという噂を聞いたエリザベスは、早速彼と接近する事にした。
「お父様、わたくしをプランタジネット家のエドワード様と結婚させて下さいませ!」
「突然何を言うのだ。そのような事、出来る筈がなかろう!」
「ならば、わたくしこの場で自害致します!」
「はやまるな!」
「わたくし、エドワード様以外の殿方と結婚したくありません!」
こうして、エリザベスは半ば強引にエドワードの元へ嫁いだのだった。
この時代の結婚は、夫が妻の元へ通い、文を送り合うものであったが、エドワードは己の為に自害しようとしたエリザベスの事を大層気に入り、周囲の猛反対を押し切り彼女を正室に迎えた。
だが、エリザベスはそれで満足するような女ではなかった。
(わたくしはこの程度で満足するような女ではないわ・・もっと、もっと上を目指すの!)
エリザベスは、自分だけではなく己の一族を宮中で一目置かれる存在となる事――それが彼女の最終的な野望だった。
だから、エリザベスは自分の妹であるキャサリンを帝の乳兄弟であるバッキンガムの正室に迎えようとしたのだが、その矢先に彼と義妹・リチャードとの縁談話が来た。
(リチャード、いつもわたくしを見下したような目で見る・・絶対に、潰してやるわ!)
「お母様、どうなさったの、怖い顔をして?」
「いいえ、何でもないわ。」
「そう・・」
「ベス、あなたには良い殿方と素敵なご縁を結んであげますからね。」
「お母様、わたしは・・」
「ベス様、こんな所にいらしたのですか、リチャード様が探されていましたよ。」
「リチャード伯父様が!?」
そう言った娘の声が少し弾んでいる事に、エリザベスは気づいた。
リチャードを心底憎んでいる自分とは対照的に、娘はリチャードを慕っている。
母と娘で、同じ価値観を持てとは言わないが、エリザベスは何処か寂しい気がした。
「お母様、わたしはこれで。」
「ベス、待ちなさい!」
エリザベスは慌ててベスを追い掛けたが、彼女は既にリチャードの局へと向かった後だった。
(わたくしから全てを奪うつもりなのね、リチャード・・そうはさせないわ!)
エリザベスは、リチャードへの敵意を日に日に募らせていった。
「リチャード伯父様、お久しぶりです!」
「久しいな、ベス。」
宮中へ上がって以来、久方振りに姪と再会したリチャードは、懐紙に包んだ唐菓子を彼女に渡した。
「わぁ、ありがとう伯父様!」
「暫く会わない内に綺麗になったな。」
「まぁ、ありがとう・・」
彼女の母親であるエリザベスは嫌いだが、娘のベスとリチャードは気が合った。
「ねぇ伯父様、主上はどんな方なの?一度お会いしてみたいわ!」
「リチャード様、大変です!」
「どうした、ケイツビー。そんなに大声を出して?」
「先程、エドワード様の従者から文を受け取りましたが、主上が血を吐かれたそうです!」
「それは、本当なのか!?」

清涼殿の上空は、黒雲で覆われていた。

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Last updated  Apr 13, 2021 05:20:52 PM
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Apr 10, 2021



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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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―姫様・・

また、あの声が聞こえて来る。
誰かが、自分を呼ぶ声。

一体、誰が自分を呼んでいるのだろうか。
そんな事を思いながらリチャードがゆっくりと閉じていた目を開けると、暗闇の中から人の気配がした。
「誰だ!?」
リチャードが護身用の懐剣を握り締めながら周りを警戒していると、その“気配”は消えた。
(何だったんだ、あれは?)
「リチャード様、どちらにおられますか!?」
「どうした、ケイツビー?」
局の中に、何処か慌てた様子のケイツビーが入って来た。
「また、鬼が出たそうです!」
「何だと?今度は何処だ?」
「弘徽殿です!」
リチャードが、鬼が出たという弘徽殿へと向かうと、そこには既に人だかりが出来ていた。
「あら、リチャードさん、わざわざ心配でわたくしの様子を見に来て下さったの?」
「義姉上・・」
自分が居る局が大変な騒ぎだというのに、エリザベスは何処か落ち着いていた。
そんな彼女の様子に、リチャードは違和感を抱いた。
「襲われたのは、ここに入ってまだ数日しか経っていない下﨟(身分が低い)の娘だそうよ。あなたに良く似た・・」
「・・何がおっしゃりたいのですか、義姉上?」
「あら、いけない。女御様が呼んでいるわ。」
エリザベスはそう言ってわざとらしく咳払いすると、そそくさとその場から去って行った。
「ケイツビー、戻るぞ。」
「はい。」

エリザベスの、妙に落ち着き払った態度が気になり、リチャードはその夜は一睡も出来なかった。

「きゃぁぁ~!」

夜明け前の静寂を破ったのは、若い女の悲鳴だった。

「女御様、大変です!」
「弘徽殿女御様のお付きの女房が、何者かに殺されました!」
「まぁ、それは本当なの!?」
藤壺女御は、弘徽殿女御付の女房が殺害された事を知り、恐怖で蒼褪めた。

―後宮で殺人事件ですって・・
―祟りよ、あの女御の祟りに違いないわ!
―次は藤壺が狙われるかもしれないわ。

後宮では、弘徽殿で殺人事件が起きた事により、次に狙われるのは自分のではないかと、戦々恐々としていた。

「リチャード様、実家から文が届いております。」
「父上から俺宛に文とは、珍しいな。」
「ええ・・」

リチャードがヨーク公からの文に目を通すと、たちまちその美しい顔が険しくなった。

「どうなさいましたか、姫様?」
「父上が、俺に縁談が来ていると・・相手は、あのバッキンガムだとか・・」
「バッキンガムとは、帝の乳兄弟の・・」
「とにかく、一度俺は実家に帰る。」
「そうですか。では、わたくしもお供致します。」
「あぁ。」

ヨーク公の文を読んだリチャードは、すぐさま実家へと戻った。

「父上・・」
「リチャード、済まない・・」
「何故、謝るのですか?」
「それは後で話す。」

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Last updated  Apr 13, 2021 05:20:12 PM
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Aug 1, 2020




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―姫様、姫様・・
闇の中で、誰かが呼んでいる。
―ひめさま・・
誰だ、俺を呼ぶのは・・
「姫様、起きて下さいませ。」
リチャードが目を開けると、そこには自分を心配そうに自分の顔を覗き込んでいる芹の姿があった。
「芹、一体俺は・・」
「姫様は高熱で一晩中うなされていたのですよ。もうお熱は下がりましたから、大丈夫ですね。」
芹はそう言うと、リチャードの額に手を当てた。
「藤壺女御様がお見えです。」
「わかりました、すぐに参ります。」
リチャードが藤壺女御の部屋へと向かうと、そこにはエリザベスの姿があった。
「あらリチャードさん、すっかり女房装束姿が似合って来たじゃないの。」
「・・大変ご無沙汰しております、義姉上。」
「いやぁね、そんなに堅苦しい態度を取るのを止して。」
エリザベスはそう言って笑ったが、目は全く笑っていなかった。
「義姉上、わたしに何かご用でしょうか?」
「主上は、あなたの事を気に入ったそうよ。」
「そうですか・・」
「後宮で上手く立ち回りたければ、敵は作らない方がいいわよ。」
「どういう意味でしょうか?」
「その言葉通りの意味よ。あなたは、少々目立ち過ぎているから。」
エリザベスはそう言うと、衣擦れの音を立てながら藤壺女御の部屋から出て行った。
「あんな言葉、気にしない方がいいわ。」
「はい・・」
「最近主上があなたにばかり気にかけて、弘徽殿へちっともお渡りにならないものだから、僻(ひが)んでいるのよ。」

「主上、また考え事をしていましたね?」
「ごめん、何の話だったかな?」
「あの泉で、主上が見たという天女の話ですよ。」
バッキンガムはそう言うと、扇で口元を覆いながら笑った。
「ねぇバッキンガム、僕最近変なんだ・・あの子の事を考えると、胸が苦しくなるんだ。」
「そうですか・・それは恋というものでしょう。」
「恋?」
「主上はあの姫にすっかり心を奪われてしまっているのでしょう?」
「どうしたら、それは治せるの?」
「・・わたしに任せて下さい。」
バッキンガムはそう言って口元に笑みを浮かべた。
「縁談?わたしにですか?」
「あぁ。相手は橘家の姫だそうだ。」
「そのような方など、おそれ多い・・」
ケイツビーはヨーク公から縁談を持ち掛けられ、戸惑いながらそう言うと、溜息を吐いた。
「わたしは、結婚するつもりはありません。」
「心に決めた相手が居るのか?」
「それは、申し上げられません。」
「そうか・・」
ケイツビーが部屋から出て行った後、彼と入れ違いにジョージが入って来た。
「父上、ケイツビーと何を話していたのですか?」
「ジョージ、ネヴィル家のイザベラとは最近どうなのだ?」
「上手くやっております・・」
「そうか。先程ケイツビーに縁談を持ち掛けたのだが、彼は余り乗り気ではなかったようだ。」
「ケイツビーはリチャードを想っているのだから当然でしょう?」
「そうか・・あれは、リチャードが生まれた頃からずっとリチャードを見ていたから、リチャードを好いていたのか。」
「ケイツビーはリチャードしか見ておりませんよ、父上。」
「そうか。それよりも、雷壺女御の事は何かわかったのか?」
「はい。雷壺女御の子を取り上げた産婆の元を訪ねると、そこは今にも朽ちそうなあばら屋だった。
「誰かおらぬか?」

ジョージが小屋の中に入ってそう声を張り上げると、そこは今にも朽ちそうなあばら屋だった。
「誰かおらぬか?」
ジョージが小屋の中に入ってそう声を張り上げると、奥から痩せて垢まみれの女が悪臭を撒き散らしながらやって来た。
「お前が、雷壺女御の子を取り上げた産婆か?」
「はい、わたしがあの方の御子を取り上げた産婆でございます。」
そう言った女―元産婆・くめは、雷壺女御が鬼の子を出産した時の事を話した。
「あの方は、稀に見る難産でございました。あの方はご自分のお命と引き換えに、元気な姫君様をお産みになられました。」
「今姫君と言ったな?その姫は今何処に?」
「御子は黒と銀の瞳を持った、大層可愛らしい姫君様でございました。」
「何だと、今何と言った?」
「これ以上、わたくしの口からは何も申し上げる事は出来ません。」
「では最後にひとつだけ答えろ。雷壺女御が産んだ御子は、左右違う色の瞳を持った姫君なのか?」
「はい・・」

(何という事だ・・)

ジョージは雷壺女御が産んだ姫君がリチャードであるという衝撃的な事実を知り、暫くその場に立ち尽くしていた。

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Last updated  Aug 1, 2020 12:00:13 AM
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Jul 18, 2020




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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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「あ・・」
ヘンリーはそう言いながら、じっとリチャードの白い裸身を見た。
「きゃぁっ!」
突然ヘンリーが現れ、唖然としていたリチャードだったが、慌てて傍にあった衣で身体を覆い隠した。
「ごめん、まさか君が水浴びをしているなんて思わなかったから・・」
「あの、暫くあちらの方を向いて頂けませんか?」
「わかったよ・・」
ヘンリーがそう言って自分に背を向けた後、リチャードは濡れている髪をそのままにして手早く衣を着て、泉から立ち去った。
「主上、天女は見つけられましたか?」
「うん・・とても綺麗だったよ。ねぇバッキンガム、もう帰ろう。僕、疲れちゃったよ。」
「主上、せっかくここまで来たというのに、何をおっしゃるのです。少し水浴びをした後で戻りましょう。」
「・・わかったよ。」
ヘンリーはそう言うと、乳兄弟のバッキンガムに従って彼と共に泉で水浴びをした。
濡れた髪と身体を十分に乾かさぬまま衣を着てしまったリチャードは、その日の夜案の定風邪をひいてしまった。
「リチャード様も慌てん坊ですね。まだ髪が乾かない内に泉から出て行かれるなど・・一体何があったのですか?」
「ゆっくりと泉で水浴びをしようとしたら、人が来てな・・」
「これから薬湯をお持ちいたしますので、ゆっくり休んでくださいませ。」
リチャードの式神・芹はそう言って嘆息して局から出ると、衣擦れの音を立てながら廊下を歩き始めた。
リチャードが時折咳込みながら御帳台の中で寝返りを打っていると、廊下の方から微かな足音が聞えて来た。
芹だろうかと思い、リチャードが微かに顔を上げて廊下の方を見ると、そこには芹ではなく帝の乳兄弟(ちきょうだい)であるバッキンガムの姿があった。
「・・ほぅ、先程泉で水浴びをしていた天女は、貴女だったのか。」
「・・何の用でございますか、バッキンガム様。」
「新しくこの藤壺女御様の女房となられた高貴な女人の顔を是非とも拝見したくて、貴女の女房に代わって薬湯を届けに参った次第です。」
妙にかしこまった口調でそうリチャードに話すバッキンガムは、ゆっくりとリチャードの傍に腰を下ろした。
「薬湯を口移しで飲まして差し上げましょう。」
「いいえ、結構です。後宮は女人禁制です。人に見つかる前に早くここから立ち去ってはいかが?」
「ふふ、貴女がそうおっしゃると思いましたから、先程人払いを命じておきました。ここに居るのはわたしと貴女の二人だけ・・」
バッキンガムはそう言って薬湯を口に含むと、間髪入れずにリチャードの唇を塞いだ。
「何をなさいます!」
「貴女の唇は柔らかいですね・・まるで天女のようだ。」
そう言いながらバッキンガムは、リチャードの衣の中へと手を滑り込ませ、彼女の乳房を軽く揉んだ。
「天女との交合は、まるで天にも昇るかのような快感を得られると、ある書物に記されておりました。是非ともそれを天女の貴女と試したいものですね。」
「やめて、誰か・・」
「人払いを命じたと、先程言ったでしょう?」
バッキンガムはそう言って欲望で金眼を爛々と輝かせながら、リチャードの衣を脱がせた。
その時、さっと二人の前に白い影のようなものが横切ったかと思うと、それはバッキンガムにのしかかり、リチャードの乳房を揉んでいる彼の手に噛みついた。
「玻璃(はり)・・」
「イテテ、一体何なのですか、この狼は?」

バッキンガムがそう言いながら自分の手を噛んだ白い狼の方を見ると、狼は彼に向かって唸っていた。

「わたしが飼っている狼です。これ以上わたしに触れると、この子が貴方の喉仏を食いちぎってしまうかもしれませんよ?」

狼に邪魔されたバッキンガムは、軽く舌打ちしながら局から出て行った。

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Last updated  Jul 19, 2020 07:36:46 PM
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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

宴の後、弘徽殿女御(こきでんのにょうご)・マーガレットは、ヘンリーが何処か上の空である事に気づいた。

「主上、どうなされました?何処かお身体の具合が芳しくないのですか?」
「藤壺女御様付の女房・・先程の雪見の宴で舞っていた黒髪の・・」
「まぁ、そんなにその娘がお気に召したのですね・・」
マーガレットはそう言って溜息を吐きながら、ヘンリーの心を虜にした藤壺女御(ふじつぼのにょうご)付の女房・凛の事を調べるよう、自分付の女房に命じた。
一方藤壺では、滅多に後宮にお渡りになられない帝が今夜お渡りになられるという事で、帝をお出迎えする為の準備に慌ただしく追われていた。
「ねぇ、何故主上は後宮嫌いになられたのかしら?」
「さぁ、詳しい事は知らないけれど、前の帝が早くにお亡くなりになられて、主上の母上が男好きで、色んな男達を誑かしては袖にしていたとか・・」
「まぁ・・」
「何でも、雷壺の女御様とは犬猿の仲だったと・・あら、喋り過ぎたわね。」

そうリチャードに話した女房は、そそくさと向こうへと行ってしまった。

(初耳だな、主上の母上と雷壺の女御様とは接点があったとは・・)

今回の騒動の原因は、もっと根が深いところにある―そう思いながら渡殿を歩いていたリチャードは、数人の男達の存在に気づかず、その中の先頭を歩いていた一人の男とぶつかってしまった。

「大丈夫、怪我はない?」
「わたくしの方こそ、失礼いたしました。」

リチャードがそう言ってぶつかった男に謝罪しようとした時、その男が帝その人である事に気づき、リチャードは慌てて顔を檜扇で隠した。

「君は、確か宴で舞っていた子だね?」
「はい・・」
「君の名前を聞かせて!」
「わ、わたくしはこれで失礼いたします!」
「待って!」

ヘンリーは慌ててリチャードを追いかけようとしたが、衣擦れの音を立てながらリチャードは局の中へと入り、几帳の陰に隠れた。

(危なかった、もう少しで顔を見られるところだった・・)

まさかヘンリーが自分に興味を持っている事などつゆ知らず、リチャードは後宮での潜入生活を続けていた。
その潜入生活を始めてから半月が経ち、都はうだるような暑さに連日襲われた。
「暑い・・」
御簾越しでありながらも、夏の陽光に容赦なく照らされ、リチャードはその白い肌にうっすらと汗を滲ませていた。
腰下まである髪は先日櫛で梳ったものの、余りの暑さに耐えきれず、リチャードは重ねて着ていた衣を被って顔を隠し、藤壺から出て雷壺の近くにある人気のない泉へと向かった。

衣を脱ぎ捨て裸となったリチャードが泉の中に入ると、ひんやりとした水の感触が爪先に伝わり、思わずリチャードは悲鳴を上げた。
リチャードが肌に纏わりついている汗を水で洗い流していると、遠くから数人分の足音が泉の方へと近づいてきた。

「なぁ、ここか?天女が水浴びしたとかいう伝説の泉は?」
「ここみたいだよ。」

叢を隔てて聞こえるその声に、リチャードは聞き覚えがあった。

(どうして帝が、こんな所に・・)

慌てて泉から上がって衣を着ようとしたリチャードだったが、その前にリチャードはヘンリーに見つかってしまった。

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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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「リチャード様、わたしです。」

白銀の髪を靡かせたリチャードは、金色の双眸で己の従者を見つめた。
しかし、その後ケイツビーは強い衝撃を受け、地面に倒れた。
ケイツビーが顔を上げると、そこには冷たい表情を浮かべて自分を見つめるリチャードの姿があった。
その額に、梵字のようなものが浮かんでいる事に、ケイツビーは気づいた。
「下がれ、ケイツビー!」
「お館様、危険です!リチャード様が・・」
「リチャード、おいで。」
ヨーク公がそう優しくリチャードに話しかけると、憎しみに滾っていたリチャードの金色の双眸が彼の姿を捉えた途端、髪の色が白銀から黒へと戻ってゆき、リチャードの額から梵字が消えていった。
「お館様、これは一体・・」
「お前にはまだ話していなかったな、リチャードの事を。」
気絶したリチャードを抱きかかえたヨーク公は、藤壺へとケイツビーと共に誰にも見られぬように戻り、リチャードを御帳台の中へと寝かせた。
「リチャードには、生まれつき見鬼の才がある事は、お前も知っているな?」
「はい・・それと、さっきのリチャード様と何の関係があるのですか?」
「あいつは昔、鬼に拐かされた事があるのだ。丁度、こんな雪が降る肌寒い季節だった・・」
ヨーク公はそう言葉を切ると、静かにリチャードが鬼に攫(さら)われた事をケイツビーに話し始めた。
その日、リチャードが管狐と遊んでいると、そこへ偶々セシリーが通りかかり、セシリーは幼い我が子に向かって鬼だと罵った上に、その小さな頬を張った。
頬を張られ、母から拒絶された痛みでリチャードは邸を飛び出し、闇の中へと逃げ出した。
道に迷い、リチャードが辿り着いたのは古い祠の前だった。
「可哀想に・・わたくしと一緒に暮らしましょう?」
そう言って自分に微笑んだ鬼の胸の中に、リチャードは飛び込んだのだった。
リチャードが見つかったのは、かつて隆盛を極めた貴族の邸の荒れ果てた中庭にある、池に浮かんだ小舟の中だった。
リチャードが凍えぬよう、彼の小さな身体には綿入れの衣が掛けられてあった。
「わたし達はリチャードを攫った鬼の姿を見たことはないが、その鬼はセシリーよりもあの子の身を案じていた。」
「お館様、その鬼は一体何者なのですか?」
「それはわたし達にも解らない・・だがリチャードは時折己の力を制御できずに暴走してしまった事が何度かあった。それは成長するにつれ少なくなってきたが・・どうやら雷壺の女御とリチャードとの間には、何か深い繋がりがあるのかもしれない。」
「そうですか・・」
ケイツビーがリチャードの方を見ると、彼は安らかな寝息を立てて眠っていた。
雷壺で起きた鬼騒ぎは、翌日後宮中を揺るがす大騒動となった。
「不吉だわ、また鬼が現れるのかしら?」
「そんな・・ああ、恐ろしい・・」
後宮の女達が鬼の影に震えている中、その七日後に弘徽殿女御主催の雪見の宴が開かれ、色とりどりの美しい衣を纏った弘徽殿、麗景殿、桐壺、梅壺、雷壺から選ばれた五人の舞姫達が舞台上に現われた。
「まぁ、美しい舞姫達だこと。主上もそうお思いになられるでしょう?」
「うん、そうだね・・」
そう言った帝の蒼い瞳は、何も映していなかった。
また彼は夢の世界にいるのだ―弘徽殿女御・マーガレットは自分の隣に座る夫の姿を苦々しい表情を浮かべながらそう思っていた時、一人の巫女装束を纏った舞姫が舞台上に現われた。
艶やかな黒髪に金色の挿頭を付けたその舞姫は、ゆっくりと右手に鈴、左手に扇を持ちながら雅楽の調べに乗って舞い始めた。

「ねぇ、あの子は誰?」
「藤壺に新しく入った女房ですわ、主上。確か彼女の名は、凛とか。」
「凛・・」

マーガレットは、初めて夫の目に生気が宿っているのを見た。

「女御様、いかがなさいましたか?」
「藤壺に主上が今宵お渡りになると、藤壺女御に伝えなさい。」

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「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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「お前は誰だ?」

リチャードはそう言うと、その美しい鬼を見つめた。

「俺は其方を知っている、我が妻よ。」
美しい鬼はそっとリチャードの黒髪を優しく梳いた。
「産まれた時から其方の事をずっと見て来た。」
「もしかしてお前が、雷壺(かんなりつぼ)で鬼騒ぎを起こした鬼か!?」
リチャードは美しい鬼を睨みつけ身構えると、鬼と自分とを隔てる結界を素早く張った。
「お前は何故、人間どもを守ろうとするのだ、姫よ?」
その鬼は、いとも容易くリチャードが作った結界を破った。
「な・・」
「其方の母親は、お前に愛の代わりに憎悪を与えた。蛇のような冷たい目をした女が、其方の母親だと思うのか?」
「俺は鬼などではない、俺は父上の子だ!」
「其方は俺達の側の人間だ。気が変わったらこちらへ来い、その時は手厚くもてなしてやろう。」
鬼はリチャードに向かって優しく微笑むと、煙のように掻き消えた。
「リチャード様!」
「ケイツビー、お前どうしてここに・・」
「アン様から文を頂いて、こちらに馳せ参じました。」
そう言ったリチャードの従者・ケイツビーは、寒さで悴んで赤くなった主の足を見た。
「陰湿な事をする輩は誰ですか?わたくしが懲らしめて差し上げましょう。」
「気にするな。こんな嫌がらせ、母上から受けた仕打ちに比べるまでもない。」
リチャードはそう言って努めて平静な態度をケイツビーの前では崩さなかったが、御帳台の中にその身を横たえ、目を閉じると、あの鬼の言葉が甦って来た。

―其方の母親は、お前に愛の代わりに憎悪を与えた。蛇のような冷たい目をした女が、其方の母親だと思うのか?

母・セシリーが幼い頃から自分を忌み嫌っている事に、リチャードは薄々気づいていた。
両親の容貌を濃く受け継いだ二人の兄達とは違い、リチャードだけが黒髪に黒と銀の瞳といった、異なる容姿を持って生まれた。
そしてその身体も、二人の兄達とは違った。
セシリーは鬼であるリチャードをこの世に産み落としてしまったという罪の意識からか、リチャードを疎んじ、憎むようになった。
二人の兄達や父はリチャードを大事にしてくれたが、母から蔑ろにされ、傷ついたリチャードの心は彼らの愛情を以てしても癒される事はなかった。
初潮を迎え、子供らしい身体つきから、女性らしい身体つきへと変わりつつあるリチャードの姿を疎んじ、セシリーは彼を別邸へと追いやった。

「お前はこの家に災厄を齎(もたら)す!お前の姿を目にするのも疎ましい!」

鬼女の如き表情を浮かべながら自分を面罵したセシリーの顔は、未だに忘れることができなかった。

―其方の母親は、お前に愛の代わりに憎悪を与えた。

セシリーが自分に対して話す時は、自分を面罵する時だけだった。
自分を罵る言葉を美しい唇から吐き捨てる母の目は、蛇のような底なしに冷たいものだった。

―其方は俺達の側の人間だ。

セシリーから疎んじられ、蔑ろにされて来たリチャードの孤独を癒したのは、目に見えぬ妖達だった。
妖達の多くは闇に生き、人に疎んじられて生きて来た者達だった。
彼らの姿を幼い頃から見て来たリチャードは、いつしか彼らの友となっていた。
彼らはリチャードの事を、“ひめさま”と呼んでは慕ってくれた。
自分は男だと言うのに、何故彼らが自分の事を姫と呼ぶのかが、リチャードには解らなかった。

―それに貴女、あの方に瓜二つの顔をしているわ。

藤壺女御が自分に話した、鬼と愛し合い、その鬼の子を身籠り、そしてその子の命と引き換えに死んだ雷壺に居たという女御。
その女御に、自分は瓜二つの顔をしているのだとしたら・・

―目覚めよ、姫・・

闇の中から、自分を誘う誰かの声が聞こえて来た。

(違う、俺は鬼なんかじゃない・・俺は、父上の子だ・・)

―目覚めよ・・

汗に滲んだリチャードの額に、梵字のようなものが浮かんだ。

―愛しい吾子よ、母の胸にいらっしゃい・・

セシリーのものとは違う、優しい女人の声。

その声に導かれるようにして、リチャードはフラフラとした足取りで雷壺へと向かった。

雷壺の中庭に植えられている桜の木にリチャードが触れた瞬間、天から轟くような雷鳴が鳴り響き、闇を明るく照らした。

「さっきの雷は一体何だ?」
「雅人様、大変です!あの稲妻をご覧ください!」

陰陽頭・土御門雅人が上空を見上げると、そこには白銀と紅色の稲光が闇の中で光っていた。

「リチャード様?」

息を切らしながらケイツビーが雷壺へと向かうと、そこには白銀の髪を靡(なび)かせた主の姿があった。

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Last updated  Jul 19, 2020 07:16:14 PM
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「・・大変御無沙汰しております、義姉上。」
リチャードがそう慇懃無礼な口調で挨拶すると、エリザベスは口元に笑みを湛えたままリチャードの女装姿を見た。
「その唐紅の衣、貴方の黒髪によく映えて似合っているわ。」
「そうでしょう?わたくし達が選んだのですよ!」
「まぁ、そうなの。アン、イザベル、二人とも遊びに来てくれたのね。」
「ええ。それよりもエリザベス様は弘徽殿女御(こきでんのにょうご)様にお仕えしていらっしゃるのですって?わたくし達近々入内するので、宮仕えがどのようなものなのか知りませんの。」
「後宮は華やかだけれど、女達の嫉妬や怨念、愛憎が渦巻く場でもあるわ。そういえば、鬼騒ぎが起きた雷壺では、前に女房が祟り殺されたという噂があるわね。」
「祟り殺された?それは本当ですか、義姉上?」
「さぁ・・わたしはその噂を人づてに聞いただけだけれど、前に雷壺には帝のご寵愛を受けながらも、鬼との子を産んだ女御が居たと・・でもその女御は産後の肥立ちが悪くてすぐに亡くなり、怒り狂った鬼は帝と朝家に恐ろしい呪詛を掛けたのですって。」

エリザベスの話を聞きながら、リチャードの脳裏に浮かんだのは、夢の中で己の名を呼んだあの女の姿だった。

―姫よ・・我が一族の姫よ・・

急に何処からか自分を呼ぶ声が聞こえて来て、リチャードは辺りを見回した。

「どうかなさったの、叔父様?」
「いや、何でもない・・」

そう言ったリチャードの姿を、遠くで金髪紅眼の鬼が見つめていた。

「あれが、噂の鬼姫か・・美しい顔をしている。」

数日後、リチャードは後宮に入内するアンとイザベルと共に、“入内”した。
三人が仕えるのは、エリザベスが仕える弘徽殿女御と対立している藤壺女御だった。
「顔をお上げなさいな。」
リチャードが姉妹に倣って顔を上げると、そこには天女の如き美しい女人が脇息に凭れかかりながら座っていた。
「貴女、お名前は?」
「凛と申します、女御様。」
「珍しい色の瞳をしているわね。それに貴女、あの方に瓜二つの顔をしているわ。」
「あの方?」
「女御様、その事は・・」
女御の言葉に反応した傍仕えの老女が突然鋭く声を張り上げ、女御を諫めた。
「まぁごめんなさい、わたくしったらつい・・あぁそうだわ、七日後に弘徽殿女御が開く雪見の宴があるの。その宴は弘徽殿、麗景殿、桐壺と梅壺、雷壺からそれぞれ舞姫を選ばなければならないのだけれど、凛、貴女雪見の宴で舞いなさい。」
「女御様、それは・・」
「女御様直々のお願いですよ、有り難くお受けしなさい。」
「恐悦至極にございます、女御様。有り難く雪見の宴で見事な舞を舞わせていただきます。」
「これから舞の稽古に励んで、あの女の鼻を明かしておやりなさい。」
藤壺女御はそう言ってリチャードに微笑むと、鈴を転がすような声で笑った。
かつて宮仕えをしていたかの中宮の女房が、自ら著した随筆に、“げにすさまじきものは宮仕え”という一文があったが、正にその言葉通りだとリチャードが思ったのは、入内初日の夜だった。
新入りの癖に藤壺女御から目を掛けられた事が気に入らない古参の女房たちによる新入りいじめと称した洗礼をリチャードは受け、彼女達からは自分の道具類や針箱を隠されたり、箏の弦を切られたりといった地味な嫌がらせをされた。

(義姉上様が言っていた通りだったな・・女の嫉妬は恐ろしい。)

リチャードは溜息を吐きながら、舞の稽古を終えて中庭から自分の局へと戻ろうとした時、藤壺へと繋がる扉が全て錠を掛けられて閉じられている事に気づいた。

(くそっ、やられた!)

リチャードは舌打ちしながら、閉ざされた扉に背を向けて中庭へと戻った。
骨まで凍えるような寒さに晒され、リチャードは思わず両腕で己の身体を抱き締めた。
上に少し厚手の唐衣を纏っているとはいえ、冬の夜に戸外で一晩明かすのは厳しい。
リチャードは白い息を吐きながら、悴んだ手を擦り合わせた。
その時、何処からか龍笛の澄んだ音色が聞こえて来た。

(何だ?)

リチャードが池の方へと目を向けると、そこには薄衣を頭に被った水干姿の少年の姿があった。
このような時間に、男子禁制の後宮で何故少年が居るのか―そう思いながらリチャードが少年を見つめていると、彼は血のような紅い瞳でリチャードの姿を捉えた。

「漸く見つけたぞ、我が一族の姫・・そして我が妻よ。」

少年から瞬く間に大人の男へと姿を変えた鬼は、そう言うとリチャードの黒髪を一筋手に取り、それに優しく口づけた。

「お前は何者だ?一体俺の何を知っている?」
「その様子だと、お前は真の姿を知らないのだな・・」

鬼は口端を歪めて笑うと、リチャードの顎を掴み上げ、その形の良い唇を塞いだ。

「目覚めよ、古の世からこの国を統べてきた貴き方の血をひく美しき姫よ・・」

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