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JEWEL

全8件 (8件中 1-8件目)

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薔薇王転生パラレル小説 巡る星の果て 第二部:黒い華

Jul 18, 2020
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

「リチャード、待って!」

黒谷へと文を届けに行くだけだったのに、リチャードは女装したヘンリーを彼の自宅まで送り届ける羽目になってしまった。

「おい、黒谷へ使いはどうする?」
「済まないが、お前一人で行ってきてくれないか?」
「わかった・・何やら、訳有りのようだしな。」

バッキンガムはそう言った後、ちらりと横目でヘンリーを見て雑踏の中へと消えていった。

「ねぇ、これから何処行くの?」
「お前を家まで送る。」
「そんな・・すぐに君と離れるのは嫌だよ。」
「そう言われてもな・・」
「お願い、一緒に居てよ、リチャード・・」

ヘンリーは蒼い瞳を涙で潤ませながら、上目遣いでリチャードを見た。

「・・わかった。」
「やったぁ~!」

先程の涙は何処へやら、ヘンリーは満面の笑みを浮かべていた。

(こいつは何をやってもあざとく見える・・そう見せているだけなのか、それとも・・)

「リチャード、喉が渇いたよ。」
「じゃぁ近くの井戸にでも・・」
「あ、あそこの茶店で何か食べようよ!」
「こらヘンリー、待て・・」
茶店に入ったヘンリーは、嬉しそうな顔をして団子を食べていた。

「おいしいね、リチャード!」
「ヘンリー、まだ食べるつもりか?」
「うん!」
「もうそれで五本目だぞ?いい加減食べるのを止めないと太るぞ。」
「わかったよ・・」

ヘンリーはそう言うと、溜息を吐いた。

そんな彼の顔を見ていると、リチャードは思わず団子を一本注文しようとしたが、やめた。

「ねぇリチャード、僕の格好、おかしいかな?」
「おかしくないぞ?何か言われたのか?」
「ううん、ただ通りすがりの人にジロジロと見られるんだ。」
「そうか・・」

はた目から見れば、ヘンリーは良家の令嬢にしか見えない。

そんなヘンリーと、若侍姿のリチャードは、何処からどう見ても幼馴染の男女とお嬢様と使用人にしか見えない。

「ねぇ、どうしたのリチャード?さっきから黙ってばかり・・」
「いや、何でもない。日が暮れる前にここを出るぞ。」
「うん、わかったよ。」

リチャードがヘンリーと共に京の町を歩いていると、そこへバッキンガムがやって来た。

「何だ、この娘とまだ居たのか?」
「リチャード、あの小物屋に入ろうよ!」
「おい待てヘンリー、急に引っ張るな!」

小物屋へと向かったヘンリーは、簪や櫛を手にとっては蒼い瞳をキラキラと輝かせていた。

「わぁ、これ可愛いなぁ。」
「そんな事言っても、買わないぞ。」
「店主、これは幾らだ?」

バッキンガムはそう言うと、ヘンリーが持っていた紅い櫛を買った。

「これはあんたに。」

そう言って、バッキンガムはリチャードに桜を象った簪を彼女の髪に挿した。

「あんたの黒髪によく映える。」
「・・そんな物、要らない。」
「許嫁からの贈り物だ、受け取れ。」
「・・わかった。」

リチャードは バッキンガムにそう言うと、照れ臭そうに笑った。

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Last updated  Feb 2, 2022 07:32:21 AM
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

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 リチャードの前に突然現れた許嫁と名乗るバッキンガムは、その日からまるで金魚の糞のようにリチャードに付きまとうようになった。

「おいバッキンガム、毎日俺につきまとっていても、俺はお前と結婚する気はないぞ。」
「そんな事はわかっている。ただ俺は、あんたの傍に居て、あんたがどんな女なのかを観察したいだけだ。」
バッキンガムはそう言うと、金色の瞳を光らせながらリチャードを見た。
「土方さん、いいんですか、あいつ放っておいても?」
「放っておくも何も、藩主の姫君様を無碍にすることは出来ねぇだろうが。」
「違いますよ。僕が話しているのは、彼女に最近つきまとっている奴ですよ。」
総司が指した方を見て、土方は漸くバッキンガムの存在に気づいた。
「リチャード、お前に至急頼みたいことがある。この文を黒谷へ届けてきてくれないか?」
「わかりました。」
「それならば、俺も共に行こう。」
土方はリチャードからバッキンガムを引き離そうとしたのだが、その目論見は無駄に終わった。
「リチャード、そいつは誰だ?お前の知り合いか?」
「副長、彼は・・」
「俺はバッキンガム公ヘンリー=スタフォード、リチャードの許嫁だ。」
「許嫁ぇだと?じゃぁお前が家を出た理由がこいつか?」
「まぁ、端的に言えばそういう事になります。」
「そうか。それでバッキンガム、お前はいつまでここに居るつもりだ?」
「さぁな。俺はリチャードが居る限りここに居るつもりだが、何か問題でも?」
「別に問題はないが・・」
「そうか、ならば俺はこのままここに居る事にしよう。」

バッキンガムと土方の会話を聞いていた総司は、少し嬉しそうな顔をしていた。

「ねぇ、土方さんがあんなに気圧されるなんて珍しくない?」
「そうだな。今日は空から槍が降ってきそうだな。」

 結局、リチャードは、バッキンガムと共に黒谷へと文を届けに行くことになった。

「お前はいつもそんななりをしているのか?女子でありながら、勿体ないな。」
「言っただろう、俺は女子としての幸せは望んでいないと。女子は髪を美しく結って、美しく着飾って夫の帰りを待つ・・そんな平凡で退屈な人生は真っ平御免だ。」
「そうか。だからあんたの両手のタコは男になりたい証なのか。」
バッキンガムはそう言うと、リチャードの両手に残る竹刀ダコを見た。
竹刀ダコの他に、刀傷が白魚のような両手に幾つも残っていた。
「お前には関係のない事だ。」
リチャードは己の手を握っているバッキンガムの手を邪険に払うと、先を急いだ。
あと少しで黒谷に着くという時、娘の甲高い悲鳴が向こうから聞こえてきた。
「一体何の騒ぎだ?」
リチャードとバッキンガムが、悲鳴が聞こえた方へと向かうと、そこには美しい振袖姿の娘と、その供と思しき女性が不逞浪士と思しき数人の男達に絡まれていた。
「弱い者いじめとは感心しないな。」
「何だぁ、若造はひっこんじょれ!」
「田舎侍がほざくな。」
愛刀の鯉口を切ったリチャードを見たバッキンガムは、すかさず彼女に助太刀した。
「おい、こんな所で無駄な殺生をするなよ?」
「安心しろ、全員峰打ちで片付ける。」
バッキンガムはリチャードの言葉を聞くなり、笑った。
路上に無様に転がされた浪士達を軽く足蹴にしたリチャードは、恐怖で震えている娘に手を差し伸べた。
「もう大丈夫だぞ。」
「リチャード、助けてくれてありがとう!」

その娘―もとい女装したヘンリーは、そう叫ぶとリチャードに抱き着いた。

「ヘンリー、お前その格好はどうした?」
「リチャードに会いたくて、少しお洒落したんだ、似合う?」

 ヘンリーはそう言った後、嬉しそうに真新しい振袖をリチャードに見せた。

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Last updated  Feb 2, 2022 07:31:46 AM
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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リチャードが藩邸から姿を消したことを知ったセシリーは半狂乱となった。

「あぁ、あの子に何かあったら・・」
「母上、リチャードは心配要りませんよ。わたし達よりもリチャードは強く逞しい娘です。」
「何を寝ぼけた事を言っているのです、エドワード!」
セシリーはそう叫ぶと、家臣達にリチャードの消息を探るよう命じた。
「母上はリチャードに対して過保護すぎる。あいつが普通の女子の幸せなど望まないことくらい、俺達でも知っているというのに。」
「そう言うな、ジョージ。母上は母上なりにリチャードを心配されているのだ。」
エドワードは溜息を吐いてすっかり冷めてしまった茶を飲んだ。
同じ頃、新選組隊士となったリチャードは、屯所に隣接する道場で稽古に励んでいた。
「次!」
自分よりも倍の大きさがありそうな程の大柄の隊士を倒したリチャードは、汗ひとつかいていなかった。
「やるねぇ、あの子。まぁ、あれほどの剣術の腕前なら当然か。」
リチャードの稽古の様子を遠巻きに見ていた沖田は、そう言うと溜息を吐いた。
「それにしても、あの土方さんが良くあの子の入隊を許したよなぁ。」
「藩主の姫君様だから、無下にできなかったんだろう。まぁ、向こうは特別扱いしないで欲しいって言っていたからな。」
原田と藤堂は道場の隅でそんなことを話しながら、昨夜リチャードが屯所へやって来たことを思い出していた。
「ここへ入隊してぇだと?」
夜遅くに新選組屯所の門を叩いたリチャードに待っていたものは、驚愕の表情と戸惑いの表情がない交ぜになった土方の顔だった。
「何でも、親が望まない縁談を持ってきたから、それで家出したんだそうです。」
「家出ねぇ・・仮にも藩主の姫君様が、大胆な事をしやがる。」
土方はそう言うと、眉間に皺を寄せ、溜息を吐いた。
「まぁいいんじゃないんですか?この子の剣術の腕は確かなものだし、それに身分を隠していれば周りにはバレませんよ。」
「それはそうだが・・誰かの小姓にでもしなきゃぁ収まりがつかねぇだろうが。」
「それは言い出しっぺの土方さんが面倒を見ればいいでしょう?」
「総司、てめぇ・・」
こうして、リチャードは土方付の小姓として新選組に入隊を果たしたのだった。
稽古の後、リチャードが井戸で額に浮かんだ汗を拭っていると、そこへ一人の青年がやって来た。
「もし、ここが新選組の屯所か?」
「あぁ、そうだが・・貴殿は?」
「自己紹介が遅れた。俺はヘンリー=スタフォードと申す。」
青年はそう言って被っていた笠を脱ぐと、金色の瞳でリチャードを見つめた。
「新選組に何か用か?」
「ここを訪ねたのは、新選組に用があるからじゃない。あんたに用があるからだ、リチャード。」
青年はリチャードとの距離を詰めると、彼女の前髪を掻き上げ、その下に隠していた左目を露わにした。
「ヨーク藩主が溺愛している一ノ姫は、左右違う色の瞳を持っていると噂に聞いた。なるほど、美しい瞳をしているな。」
「貴様、何者だ!?」
「まさか、自分の縁談相手の名を忘れたわけではあるまい?」

―女の幸せは良い人と結婚し、その人との子を成して育てることです!それが女として生まれたお前の幸せなのよ!

「俺は女の幸せなど要らない。悪いが俺の事は諦めてくれ。」
「面白い。俺は高貴で扱いにくい女が好きだ。」

ヘンリー・スタッフォード、バッキンガム公はそう言うと口端を上げて笑った。

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Last updated  Feb 1, 2022 03:22:08 PM
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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―リチャード・・

闇の中から、誰かの優しい声が聞こえてくる。

―リチャード・・

リチャードが目を覚ますと、そこにはあの日の雪山で出会った、美しい鬼の姿があった。
彼女は金色の瞳でリチャードを見つめると、そっと彼女を優しく抱きしめた。

―こんなに大きくなったのね。

鬼の声は、どこか嬉しそうでいて、切ないものに聞こえた。

(貴女は誰?)

―また、会いましょう・・

「待って!」

リチャードが鬼に向かって手を伸ばそうとすると、そこに広がるのは漆黒の闇ばかりだった。

(夢か・・)

京に来てから、リチャードはよく幼い頃雪山で会った美しい鬼の夢ばかりを見る。
夢の中の鬼は、いつも自分に優しかった。
まるで彼女は、リチャードを実の子のように優しく接してくれた。
母の愛に飢えているリチャードは、夢の中で鬼に甘えていた。

(あの人が自分の母親だったらいいのに。)
そんな馬鹿な事を考えながら、リチャードは再び目を閉じて眠った。

「リチャード様、起きてください。」
「どうした、ケイツビー。朝早くから俺のところに来るとは珍しいな?」
「セシリー様がいらっしゃいました。」
「母上が?父上と共に国元に居るのではなかったのか?」
「詳しくはわかりませんが、お支度をなさいませ。」

国元に居るはずのセシリーが突然上洛し、訳が分からぬままリチャードはケイツビーと女中達に身支度を手伝って貰い、ケイツビーと共に彼女は兄達が待つ部屋へと向かった。

「失礼いたします、兄上。」
「リチャード、久しいわね。元気そうで何よりだこと。」

上座に座ったセシリーはそう言うと、華やかな着飾ったリチャードを見て嬉しそうに笑った。

「母上、何故突然上洛などされたのです?」
「母が子に会うことに何か理由でもあるのかしら?それよりもリチャード、お前は相変わらず剣術にうつつを抜かしているそうね?ジョージから聞いたわよ、御前試合で男達を打ち負かしたとか・・」
「母上、わたしは・・」
「わたしは今までお前を甘やかしてきたわ・・剣術にお前が夢中になっていることを知ったとき、わたしはいずれ飽きるだろうと思っていた・・でもそれは大きな間違いだったわ!」
セシリーはそう叫ぶと、苛立ちを紛らわせるかのように脇息を叩いた。
「これ以上お前を好きにさせてはいけない。お前を国元へ連れて帰ります。」
「母上、それだけはおやめください、俺は・・」
「立場をわきまえなさい、リチャード!お前がどれだけ剣術や武術の腕を磨いても、女であるお前が戦場に立つことはできないの!女の幸せは良い人と結婚し、その人との子を成して育てることです!それが女として生まれたお前の幸せなのよ!」
「そんな生ぬるい幸せなど俺には不要です、母上!」

リチャードはそう叫ぶと、部屋から飛び出した。

(女の幸せなどクソ食らえだ!俺は母上のように髪を簪で飾り、美しい衣を着てひたすら夫の帰りを待つ女になどなりたくはない!)

乱暴に櫛と簪を抜き取り、結い上げられた髪を崩したリチャードは、鏡台の中に映る己の顔を見た。

リチャードは両親や兄達の誰とも似ていない。

金髪碧眼の中で、リチャードだけが黒髪で左右違う色の瞳をしている。
その所為で母には疎まれ、周囲の者たちからは鬼の子だと畏怖されていた。

これ以上ここに居たら、母に無理矢理国元へ連れ戻され、飼い殺される日々が待っているだけだ。

女としての幸せなど要らない、自分が欲しているのは戦場で鮮血を浴びながら戦う男としての幸せだ。
もうここには居たくない―そう思ったリチャードは、夜明け前に藩邸を飛び出した。

彼女が辿り着いた先は、新選組屯所だった。

「頼もう!」
「何だ、道場破りかと思ったら君か。ここに何の用?」
「俺を新選組に入隊させてくれ。」
「へぇ・・何だか面白そうだから、話を詳しく聞こうか。」

沖田は緑の瞳を閃かせると、そう言ってリチャードを屯所の中へと招き入れた。

「“探さないでください”か・・」
「リチャードを探さなくてもよろしいのですか、兄上?」
「大丈夫だ、あいつの事だからまた何処かで会うこともあるさ。」

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Last updated  Jul 19, 2020 08:20:40 PM
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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リチャードが会津藩の御前試合に出場した数日後、彼女宛にセシリーからの文が届いた。

「姫様、奥方様は何と?」
「読まなくてもわかる。女子ならば武道にうつつを抜かしていないで花嫁修業をしろ、女子らしく生きろと、どうせ小言ばかり長々と書き連ねているのだろう。」
「奥方様は奥方様なりに姫様の事を心配してんだなし。」
「さぁ、どうだか。」
爺やが淹れてくれたお茶を飲みながら、リチャードはあの時自分が助けた金髪の優男・ヘンリーの事を想っていた。
自分と同い年くらいだったが、彼は男の癖に頼りなかった。
あれでは、一度も刀を振るったことがないのだろう。
あんな奴でも男として生まれれば家を継ぐことが出来るのだから、理不尽過ぎる。
「姫様?」
「少し俺は出かけてくると兄上達に伝えておいてくれ。」
そう言ってリチャードは自室に入ると、刀掛けに置かれている大小を腰に帯び、そのまま縁側を通って裏口から外へと出た。
以前京見物した時は髪を結い、振袖姿で頭が重くて動きにくかったが、男装姿だと動きやすい。
それに、男装していると周囲になめられないで済む。

「おこしやす。」
「リチャード、また会えたね!」

鍵善の中に入ると、ヘンリーがそう言ってリチャードに抱きついた。

「また君にここで会えると思ったから待っていたんだ。そしたら、また君に会えた!」
「ヘンリー、離れろ、苦しい。」
「ごめん、君に会えて嬉しくてつい・・」
ヘンリーはそう言うと、慌ててリチャードから離れた。

「それにしてもお前、何故店に入ったとき俺だとわかったんだ?お前と初めて会った時、俺は振袖姿だったろう?」
「君の瞳を、憶えていたんだ!」
「俺の、瞳?」
「うん。リチャードの瞳はとっても綺麗だから、姿が変わっても君の瞳を憶えていたから、一目で君だとわかったんだ!」
「そ、そうか・・」
リチャードは少し恥ずかしそうに俯いた。
今まで左右の瞳の色が違うことでセシリーから忌み嫌われたり、女中達から気味悪がられたりしていたが、その瞳を綺麗だと言われたことは初めてだった。
「ねぇリチャード、これから何処に行こうか?」
「俺は別に行きたいところなんてないから、お前に任せる。」
「じゃぁ僕、君と一緒に行きたいところがあるんだ!」

そう言ってヘンリーは、躊躇いなくリチャードの手を掴むと、店から出た。

彼が向かった先は、八坂神社だった。

「まだ桜が咲いてないよ、リチャード。満開の桜を君と一緒に見たかったのに。」
「桜が咲くのはまだ先だ。それよりもこんな所に居たら風邪をひく、戻ろう。」
「うん・・」

ヘンリーが少し落胆した表情を浮かべながら石段を下りようとした時、彼は足を滑らせてバランスを少し崩してしまった。

「危ない、ヘンリー!」
「リチャード!」

リチャードは咄嗟にヘンリーを自分の方へと引き寄せたが、その弾みでリチャードもバランスを崩してしまい、ヘンリーの上に倒れてしまった。

「大丈夫か?」
「うん・・リチャードも、大丈夫?怪我はない?」
「ああ。」
リチャードはそう言って頬を羞恥で赤く染めると、慌ててヘンリーの上から退いた。
「ねぇリチャード、また会えるよね?」
「あぁ。」
「もう帰らないと・・また爺やに叱られちゃう!」
ヘンリーは急いで立ち上がると、そのまま石段を駆け下りた。
「リチャード、じゃあね!」
「あぁ、またなヘンリー!」
八坂神社の前でヘンリーと別れたリチャードが藩邸の裏口からこっそりと自室へと戻ろうとした時、彼女は運悪くケイツビーに捕まってしまった。
「姫様、そのような格好をなされて・・また、男装をして町に行っていたのですね?」
「ケイツビー、何故それを知っている?」
「貴女の事は幼少の頃から見てきましたから、貴女が日頃何をなさっているのかは大抵把握できます。それよりも姫様、大小を腰に差して出歩くのはおやめください。貴女様に剣の腕があるとは言え、もし貴女の大事なお身体に傷がついたとしたら、わたしは命を代えてお詫びするしかございません。」
「わかった、次からは気を付ける。ケイツビー、今から着替えをするから出ていけ。」
「わかりました。では姫様が着替えを済ませるまで、外で待っています。」

漸くケイツビーの小言から解放され、リチャードは安堵のため息を吐いた。

一方、ヘンリーは風邪をひいて寝込んでしまっていた。

「若様、お粥を作りましたよ。」
「ありがとう。」
「若様は体が弱いのですから、無理をしないでくださいよ。若様に何かあったら、奥方様にわしらが叱られてしまいますからね。」

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Last updated  Jul 19, 2020 08:18:29 PM
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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京見物で謎の優男とリチャードが出逢ってから数日が経った。

いつものようにリチャードは次兄・ジョージと共に武芸の稽古に励んでいた。
「参った!」
「有難うございました、ジョージ兄上。」
「お前は京に来てからますます武芸の腕を上げたな、リチャード。お前が男として生まれていたら、その名を日の本中に轟かせていただろう。」
ジョージはそう言って手拭いで額から流れる汗を拭うと、隣に立っている妹を愛おしそうに見つめた。
「俺は女ですが、母上や義姉上のように家の中で大人しく夫の帰りを待つような女にはなりたくはありません。ヨーク家の一員として、戦場で敵将の首を討ち取ってみせます。」
「頼もしい事を言うようになったな、お前!貴方もそうお思いになるでしょう、兄上?」
ジョージに突然話を振られ、長兄・エドワードは少し困ったような顔をした。
「リチャード、お前は武芸に優れているが、女子は勇ましさよりも優美さを身に付ける方がいい。」
エドワードはそう言うと、リチャードの汗をそっと優しく懐紙で拭った。
「二人とも、稽古の後で腹が減っただろう?爺やが握り飯を作ってくれたから、一緒に食おう。」
「はい、兄上。」
三人は縁側に座り、爺やが作ってくれた握り飯を美味そうに頬張った。
「爺やの作る握り飯は絶品だな。俺でもこうは上手く作れない。」
「姫様にそう言っていただけると、作り甲斐があります。」
爺やはそう言って皺が目立つ顔をまた皺くちゃにして笑った。
「爺や、俺の事を姫様と呼ぶな。」
「でも、儂らにとっては姫様だぁ。それよりもエドワード様、先程国元から使者の方がお見えになりました。」
「そうか、すぐに行こう。」
エドワードはそう言ってゆっくりと立ち上がると、国元からの使者・ウォリックを自室で迎えた。
「ご機嫌麗しゅうございます、エドワード様。」
「ウォリック、遠路はるばる京までの長旅、ご苦労だった。父上や母上は息災か?」
「お二人ともお元気にしておられます。今日こちらに参りましたのは、姫様のご縁談の事でお話があるからです。」
「リチャードに縁談だと?相手は誰だ?」
「スタッフォード家の嫡男・ヘンリー様です。姫様とはお年が近いので、良き縁組だと奥方様が喜んでおられます。」
「母上が決めた縁談を、あいつが首を縦に振ると思うか?」
エドワードの問いに、ウォリックは静かに首を横に振った。
「その縁談、お断りいたします。」
「やはりな、お前ならばそう言うと思っていたぞ、リチャード。」
「俺は男として生きたいのです、兄上。顔も知らぬ男の元へ嫁ぎ、婚家に尽くすなどまっぴらごめんです。」
「リチャード、これは母上がお決めになられた縁談なのだ。もしお前がその縁談を断ったら、母上の顔を潰すことになるのだぞ?」
「母上の顔など何度潰れても構いません。」
リチャードは縁談に対して頑なに拒絶し、エドワードはどうリチャードを説得しようかどうか迷っていた。
「それならば、今度ヨーク藩と新選組で行う武芸大会が金戒光明寺で開かれる。そこでお前がもし彼らに勝ったら、お前の縁談を白紙に戻そう。どうだ、悪い話ではないだろう?」
「武士に二言はありませんね、兄上?」
「ああ。」
その日からリチャードは、ますます武芸の稽古に励んだ。
「兄上、あいつは本気ですよ?嘘だとわかったらどうなさるおつもりなのですか?」
「それはそうなったら考える。新選組は元々江戸の片田舎の百姓達や町人達で作られた集団だという。相手が田舎侍とはいえ、れっきとした男だ。所詮男の腕力の前では女子が無力だということに、あいつが気付けばいいだけの話だ・・」
「策士ですね、兄上。」
ヨーク藩主催の武芸大会が金戒光明寺で行われ、そこでは藩士達が新選組隊士と実戦さながらの打ち合いをした。
たかが田舎侍の集まりだと新選組を侮っていたエドワードだったが、彼は皆一流の剣の遣い手だった。
中でも、沖田と斎藤の剣の腕は目を見張るものがあった。
「土方、あの二人もお前達の部下か?」
「ええ。あいつら・・総司と斎藤とは、江戸の道場仲間です。それよりもエドワード様、今日は一の姫様のお姿が見えませんが・・」
「ああ、妹ならばこの後に出る。ほら、出て来たぞ。」
エドワードが扇子で指示した先には、男袴を穿いて襷がけをした姿のリチャードが沖田と対峙している姿だった。
「まさか、女が相手なんて、新選組一番隊組長である僕も舐められたものだね。」
「女相手だからといって一切の手加減は無用だ。お前のような田舎侍など、俺の相手ではない。」
「ふぅん、随分と言ってくれるじゃない。じゃぁ、容赦しないよ!」
リチャードの挑発に乗った沖田は鋭い突きでリチャードを押したが、リチャードは難なくそれを躱し、沖田の面を打とうと見せかけ、彼の鳩尾を鋭い一撃を打ちこんだ。
「勝負あり!」
「兄上、約束通り、わたしの縁談話を白紙に戻してくださるのですよね?」
「リチャード、それは・・」
「兄上、武士に二言はありませんよ。俺が兄上に代わり、すぐさま母上に文をしたためましょう。」
「そうしてくれ、ジョージ。」
「有難うございます、兄上!」
息を弾ませながらその場から去っていくリチャードの背を見た沖田は、初めて彼女がヨーク藩主の娘だと言う事を知り、驚愕の表情を浮かべながら土方を見た。
「土方さん、どうして僕達にあの子がヨーク藩の姫様だと言う事を黙っていたんですか?」
「お前達に自分の素性を明かしたら、妙な気遣いをされるから嫌だと、本人が直接俺に言ってきたんだ。」
「まぁ、性別と身分が違えば、あの子とは背中合わせで戦えるかもしれないなぁ。」

屯所へと帰る道すがら、沖田はそう言うと溜息を吐いた。

藩邸へと戻ったリチャードは、汗を井戸の水で流していた。

濡れた艶やかな黒髪の隙間から、リチャードの首にある梵字のような痣が、月明かりに照らされた。

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Last updated  Jul 19, 2020 08:17:01 PM
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「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

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「有難う、助かったよ。」
金髪の優男はそう言うと、澄んだ蒼い瞳でリチャードを見つめた。
「お前、見た所何処かの坊ちゃんのようだが、供を連れずに一人でこんな人気のない通りを歩いていたらどうぞ襲ってくださいと言うようなものだ。」
リチャードが呆れた顔で金髪の優男を見ると、彼は蒼い瞳を潤ませながらこう言った。
「だって、この近くに美味しいぜんざいのお店があるって聞いたから、探している内に道に迷っちゃって・・」
「あいつらに捕まったという訳か。」
碁盤の目の様に整っている京の道は、幾つも裏道などがあり、国元から上洛してきた諸藩の藩士達が度々迷子になってしまう事が多かった。
二人の兄達と共に上洛してきたリチャードは、京で迷子にならぬよう、京見物をする前に全ての道を把握していた。
「お前が行きたかったそのぜんざいの店は何処にあるんだ?」
「確かこの近くだったと思うんだけれど・・鍵善良房というお店なんだ。」
「その店なら知っている、案内するから俺について来い。」
「いいの?」
リチャードは金髪の優男を連れて鍵善へ行くと、彼は店員に嬉しそうな顔をしてぜんざいを注文した。
「このお店でぜんざいが食べられるのが冬だけで、夏は黒蜜入りのくずきりが美味しいんだ!」
「そうか。」
「ねぇ君、名前は?僕はヘンリー、君に危ない所を助けて貰ったからお礼がしたいんだ!」
「俺はリチャードだ。俺はお前に礼をされるような事はしていない、当然の事をしたまでだ。」
リチャードがそう言って金髪の優男・ヘンリーにそっぽを向くと、丁度そこへ二人前のぜんざいがやって来た。
「頂きます!」
ヘンリーは熱いぜんざいを冷ますことをせず、そのままレンゲを持って口へと運んだので、その熱さに彼は思わず悲鳴を上げてしまった。
「大丈夫か?」
「ごめん、こんなに熱いなんて知らなかった・・」
「口に垂れてるぞ。」
リチャードはヘンリーの口端に垂れたぜんざいの食べかすを懐紙で拭うと、彼は恥ずかしそうに俯いた。
(何だかこいつと居ると調子が狂うな・・)
「お前、家族は?」
「僕は父上を早くに亡くして、母上は僕が15の時に死んだから、僕を心配する人は誰も居ないんだ。」
そう言ったヘンリーの横顔は、何処か寂しそうに見えた。

(俺と同じだ・・)

「なぁ、お前がもしよければだが・・もう一度ここで会えないか?」
つい、リチャードはそんな言葉が口から突いて出てしまった。
「僕と、友達になってくれるの?」
「まぁ、そういう事だ。」
「有難う、友達になってくれって僕に言って来たのは、君が初めてだよ!」
その後、ヘンリーとまた会う約束をしてリチャードは彼と店の前で別れた。
(何であんな事を言ったんだ俺は!またあいつに会える保証何てないのに!)
そんな事を考えながらリチャードが歩いていると、彼女は人相が悪い男と擦れ違いざまに肩がぶつかってしまった。
「おい姉ちゃん、人にぶつかっておいて謝りもせぇへんのかい?」
「済まない、周りを見ていなかった。」
「それが人に謝る態度か、あぁ!?」
リチャードの態度に激昂した男が、彼女の胸倉を掴もうとした時、浅葱色の羽織がリチャードの視線の端に映ったかと思うと、一人の黒髪の美丈夫が、彼女と男との間に割って入った。
「てめぇ、天下の往来で女に手ぇだすたぁ感心しねぇなぁ。何処の組の者だ?」
「ふん、壬生狼め、早う京から去ね!」
男はそう言って黒髪の美丈夫を睨みつけると、そのまま雑踏の中へと消えていった。
「嬢ちゃん、怪我はないか?」
「助けて貰って礼を言う。」
「家はどこだ?送ってやろうか?」
「結構だ。」
リチャードはそう言って黒髪の美丈夫の申し出を断ったが、結局彼に藩邸まで送って貰う事になった。
「そういや、あんたの名前をまだ聞いていなかったな・・俺は新選組副長・土方歳三。」
「俺は・・」
「姫様、こぢらにいらしていたのですか~!」
リチャードが男に自分の名を名乗ろうとした時、彼女の背後に乳母の濁声が響いた。
「さぁ姫様、早く中に入ってくなんしょ、これ以上外に居ると凍えちまう!」
「待て、“姫様”だと?」
リチャードが男の方を見ると、彼は紫紺の瞳を驚きで大きく見開きながら自分の顔を見つめていた。
「こんお方は、ヨーク藩主・リチャード様の一ノ姫様、リチャード様だ、控えなんしょ!」
「ここまで送ってくれてありがとう、土方。」
乳母に半ば強引に邸の中へと入れられそうになったリチャードは、そう土方に礼を言った。
「まぁ若、今までどちらに行っちょったとですか?」
「ごめん、ちょっと美味しいぜんざいの店に行こうとしたら道に迷っちゃって・・でも、友達に連れて行って貰ったからちゃんと美味しいぜんざいを食べられたよ。」
「そんな問題じゃありません!若の身に何かあったらお家の一大事ですよ!」
長い金髪を揺らしながらヘンリーが藩邸の中へと入ると、彼の元へそう言いながら蒼褪めた爺やと乳母が駆けつけて来た。
「今度出掛ける時はわしらにひと言声を掛けてからにしてくださいませ。若が中々お戻りにならんで、わしゃぁ心の臓が止まりそうになりました。」
「わかったよ、心配を掛けてごめんね。」
「して若様、そのお友達の名前は何というので?」
「リチャード、リチャードっていうんだ。」

ヨーク藩主の娘・リチャードと、ランカスター藩の若き藩主・ヘンリー。

互いに二人は敵同士である事を知らず、こうして運命の出会いを果たしたのだった―

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Last updated  Jul 19, 2020 08:14:43 PM
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画像はコチラからお借りいたしました。

「薄桜鬼」「薔薇王の葬列」二次創作小説です。

作者様・出版者様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

1853(嘉永6)年1月。

その日は、何年振りかの大雪に見舞われ、ヨーク藩の城下町は雪で白く染まっていた。

「リチャード、お前もこっちに来いよ!」
「いいです。わたしは・・」
「何遠慮してるんだ、雪合戦は楽しいぞ!」
長兄・エドワードと、次兄・ジョージはそう言うと、嫌がるリチャードの腕を無理矢理引っ張り、雪合戦に参戦した。
はじめは兄達に遠慮していたリチャードだったが、やがて彼らと雪玉を投げ合う内に笑顔を浮かべるようになった。
「何をしているの!」
「母上、リチャードと一緒に雪合戦をしているだけですよ。そんなに怒らなくても・・」
「リチャードが病弱なのは知っているでしょう?」
リチャード達の母・セシリーはそう言うと、リチャードの頬を容赦なく叩いた。
「お前が兄達を誑かしたのね、この化け物!」
「母上、お願いですからリチャードを苛めないでやってください。」
咄嗟にリチャードをエドワードが庇ったが、リチャードは泣きながら森の中へと駆け出していった。

“化け物!”―物心ついた頃から、リチャードはセシリーにそう罵られて育った。
母親への愛に飢えていた彼は、彼女から言葉の暴力を受ける度に、その小さな心に傷を抱えながら生きて来た。

(母上は、わたしがお嫌いなんだ・・だからわたしの事を苛めるんだ・・)

「どうしたの?こんな寒い森の中で震えて・・」

頭上から突然声が聞こえたので、リチャードが顔を上げると、そこには雪の精と思しき銀髪金眼の女だが立っていた。
女の頭部には、六つの角がついていた。
「貴方はだぁれ?」
「わたしは貴方の味方よ。貴方の名前を教えて?」
「リチャード。」
「リチャード・・美しい名ね。リチャード、また会いましょう。」
そう言うと女はリチャードを優しく抱き締めると、何処かへと消えていった。
その後リチャードはエドワード達に森に一人で居るところを見つかり、翌日熱を出して数日間寝込んだ後、リチャードの頭の中からはあの女の事は綺麗さっぱりなくなってしまった。

10年後―1864(元治元)年1月、京。

泣き虫で臆病だったリチャードは、美しく成長した。

「兄上、お呼びですか?」
「おお、来たかリチャード。今度新しい着物を誂えようと思ってな。どうだ、似合うだろう?」
「はい。とてもよくお似合いです、兄上。」
緋色の地に龍の刺繍が施されている布を見たリチャードは、華やかな兄に良く似合うと思った。
「お前もいつも黒ずくめの格好などやめて、少しは着飾れ。」
エドワードはそう言うと、白地に黒い蝶と薄紅色の小花を散らせた振袖をリチャードに羽織らせた。
「お戯れを、兄上。」
「何を言う、お前はこの世の誰よりも美しい。母上に気兼ねする事などないのだぞ。」
「兄上・・」
リチャードが二人の兄達と共に上洛してから早一年が過ぎようとしていた。
セシリーが居る国元から遠く離れ、リチャードは武芸の稽古を欠かさずにし、それに加えて華道や茶道、裁縫などの女子の嗜みも毎日こなしていた。
艶やかな黒髪に半ば隠されたその美しい華の顔を一目拝みたいと、リチャードの元には山ほど恋文が届いたが、リチャードはそれらを全て燃やした。

(俺は、普通のものなど望めない。俺は化け物なのだから。)

幼き頃にセシリーから掛けられた呪いが、未だにリチャードの心を責め苛んでいた。
結局完全に乗り気になった女中達に着付けをされ、髪を結われてしまったリチャードは、鏡の前に映った己の姿に絶句した。
何処からどう見ても、今の自分の姿は高貴な武家娘か、大店の令嬢にしか見えない。
「まだ京見物をしていなかったな、リチャード?俺達に遠慮せずに行ってこい。」
「はい・・」
長兄の言葉に甘えたリチャードは、供を連れずに京見物をした。
白い雪に染まる京の街は何処か幻想的で美しかった。
リチャードが真紅の傘を差しながら橋を渡っていると、向こうから誰かの悲鳴が聞こえた。
「さっさと金出しな。そうすれば痛い目に遭わねぇよ。」
「やめてください・・」
リチャードが人気のない路地裏へと向かうと、そこには恰幅がいい二人の男達が、金髪の優男から金を集ろうとしていた。
「男が二人掛かりで弱い者苛めか、情けない。お前達の腰に差しているのは竹光か?」
リチャードが口元に嘲笑を閃かせながら男達の前に出てそう言うと、彼らは憤怒で赤くした顔を彼女に向けた。
「女は引っ込んでろ!」
「待てよ、こいつはぁ上玉だ。痛めつけるよりも、俺達で楽しもうぜ?」
男達は下卑た笑いを浮かべながら、じりじりとリチャードとの距離を縮めていった。
「俺に気安く触るな、下衆が。」
リチャードはそう言って男達の足元を素早く払うと、彼らの喉元に懐剣を突きつけた。
「命が惜しくば、去れ。」
「畜生!」
男達が去った後、リチャードは路上に蹲っている優男に向かって手を差し伸べた。
「大丈夫か?」

―靡く漆黒の髪の美しさに、僕は目を奪われた。そして僕は、彼女と目が逢った瞬間、彼女と恋に落ちてしまったのだ―

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