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JEWEL

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薄桜鬼 ハーレクイン風昼ドラパラレル 二次小説:紫の瞳の人魚姫

Sep 24, 2020
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。


「ここなら、助産師や看護師が多胎児育児の相談に乗ってくれる。双子の育児はかなり辛いと聞く。俺は仕事で殆ど家に居ないし、お前が一人で三歳児と双子の育児をしながら家事やママ友との付き合いを完璧にこなすのは難しい。」
「そうか?そんなの・・」
「お前は何でも自分一人で抱え込む。お前はこれから誰かに頼る癖を身につければいい。」
「あぁ。」

今まで歳三は、誰にも頼れぬ状況で、必死に歯を食い縛って生きて来た。
誰かを頼るよりも、頼られる存在だった。
だから、いつも弱音を吐かず、己の“弱さ”を見せないようにしていた。
だが、千景の言葉を聞いた歳三は、長年纏っていた、“心の鎧”を脱ぎ捨てた。

「なぁ千景、俺はお前ぇと結婚して良かったのかもしれねぇ。」
「何だ、惚気か?」
「ま、まぁな・・」
「あらぁ、千景さんも来てたのねぇ。」
「信子さん、お久しぶりです。」
「可愛い双子ちゃんねぇ。」
信子はそう言うと、誠と千歳の寝顔を見た。
「これからが大変ね。」
「産後ケア施設で暫く世話になる事にした。初めての事ばかりだから、プロに相談した方が良いと思ってな。」
「そうね。」
「姉貴、勇太の事なんだが・・」
「勇太なら俺が面倒を見よう。」
「大丈夫か?」
「あぁ。」
千景はこの時、育児を完全に嘗めていた。
「母様~!」
歳三が産後ケア施設に入所した後、勇太は四六時中歳三を恋しがって泣いた。
「母様は今忙しいから、父様が・・」
「やだ~、母様がいいっ!」
朝食を何とか食べさせ、着替えさせたりするまで二時間もかかってしまった。
世の男性達は、家事育児をしている女性をもっと尊重した方が良いのではないか。
専業主婦を、“三食昼寝付き”の贅沢な職業だと誰が決めたのか。
家族の健康管理や家計の管理など、家事はトイレットペッパーの補充やトイレ掃除に至るまで、多岐にわたるものだ。
それを年中無休で、見返りもなくやっているのだ。
SNSを開けば、彼女達の日常生活―特に夫への不満が溢れている。

(全く、こんな大変な事を歳三は一人でやっていたのか・・)

勇太を幼稚園へと送った後、千景はそう思いながら駐車場へと向かっていると、自分の車の前には意外な人物の姿があった。

「千景さん、お久しぶりね。」
「義母上・・」
「ちょっと、お茶でも飲みながら話さない?」
「・・はい。」
千景はそう言うと、継母・富貴子と共に都内にあるオーガニック・カフェへと向かった。
「お話とは一体なんでしょう?」
「これを、歳三さんに渡して頂戴。初めて双子ちゃんが産まれた時に立ち会えなかったから。」
「ありがとうございます。」
「ねぇ、今度食事会でも開きましょうよ。結婚式の相談もしたいし。」
「えぇ、考えておきます。」
「千景さん、こんな事を言うのも何なのだけれど、四人目の予定は無いのかしら?」
「ありませんね。今は勇太が反抗期真っ只中で双子育児が忙しいので・・」
「そう?歳三さんは、今どちらに?」
「産後ケア施設に居ます。」
「それじゃぁ、あなたが今家事と育児をしているの?嫁の癖に夫に家事をさせるなんて・・」
「今は性別など、関係ありませんよ。」
「大体、そんな所に頼るなんて・・うちへ来ればいいのに。」
口を開けば、歳三への不満ばかり。
「ねぇ、そうしなさいよ。」
「申し訳ありませんが、我妻とその子供達は、あなたの所有物ではないので。」
「まぁ・・」
「先約がありますので、これで。」

気色ばんだ富貴子を残し、千景は足早にその場から去った。
ストレスが溜まる相手と同居する物好きなどいるものか。

「社長、おはようございます。」
「天霧、今から会議を始める。」
「わかりました。」
数分後、千景は社内の空きスペースを社内託児所として利用した上で、子供の育児や親の介護などを抱えている社員には在宅勤務を許可する旨を全社員に伝えた。
「風間、本気なのですか?」
「あぁ。」
「このような事をしたら・・」
「会社の利益が落ちるとでも?社員一人一人の幸せよりも会社の利益ばかり求めている会社の方が、生産性が落ちるとは思わぬか?」
「そうですか、ではそのように致します。」
千景の試みは、たちまちネット上で話題となった。
『千景さん、あなた何勝手な事を・・』
「失礼。」
千景はそう言って携帯の電源を切ると、仕事を早く切り上げて帰宅した。
「お帰りなさいませ、千景様。」
玄関先でそう言って千景を出迎えたのは、土方家の家政夫・清だった。
「貴様は・・」
「千景、暫くうちで預かる事になった清だ。」
「はじめまして、清です。」
「そんなに俺の家事能力は低いのか、歳三?」
「いや、そういうつもりじゃねぇ。お前ぇ一人だと何かと大変だし、家事を三人で分担した方が楽だろう?」
「そうだな。貴様、清といったな?俺はまだ、貴様を認めた訳ではないぞ。」
「あれ、いいんですか?」
「まぁ、あいつ天邪鬼な所あるからな。気にするな。」

こうして、大人三人の奇妙な同居生活が始まった。

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Last updated  Sep 24, 2020 01:36:39 PM
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Sep 22, 2020



「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

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「もう出歩いて大丈夫なのか?」
「あぁ。」
七夕祭りの日、歳三は安定期を迎え、病院から退院の許可が下りた。
「母様~!」
「勇太、元気で良かった。その浴衣、良く似合っているぞ。」
歳三は実家に預けていた勇太を千景と共に迎えに行くと、彼は水色に土方家の家紋である左三つ巴の模様の浴衣姿だった。
「トシ、あんたも着替えなさいよ。」
「わかった。」
信子に着付けを手伝って貰いながら、歳三は時折苦しそうに息を吐いた。
「さっき千景さんから聞いたわよ。お腹の赤ちゃん、双子なんだってね?」
「あぁ。勇太の時は安定期になっても悪阻が治まらなかったけれど、こいつらの時はその逆で、何か口にしてねぇと吐きそうなんだよ。」
「あ~、いわゆる食べつわりってやつね。赤ちゃんの性別はわかったの?」
「男の子らしい。まぁ、元気に生まれてくれれば、どっちでもいい。」
「帯、きつくない?」
「あぁ。」
歳三が着たのは、藤の花をあしらった上品な浴衣だった。
「良く似合っているな。やはりお前は紫が似合う。」
そう言いながら部屋に入って来た千景は、赤字に大きな花柄の、派手な浴衣姿だった。
「では、行こうか?」
「あぁ。」
七夕祭りの会場である幼稚園には、既に常子達が来ていた。
「すいません、遅れました。」
「あらぁ、土方さん。綺麗な色の浴衣ねぇ。」
「ありがとうございます。」
「土方さんって、運が良いわよね。」
「え?」
「素敵な旦那様が居て、可愛いお子さんも居るのに・・何で不倫なんかしているの?」

馴れ馴れしく自分に話しかけて来た一人の母親が、そう言って歳三を睨むと、子供の手を引いてヨーヨー釣りの方へと行ってしまった。

(何だ?)

「ねぇ、あの人でしょう?」
「嘘、あの人が!?」
「大人しそうな顔をして、やるわね・・」

母親達がそんな事を話しながら、ジロジロと自分の方を見ている事に歳三は気づいた。

「常子さん、本当なの?」
「えぇ・・」
「酷いわね、土方さんって!あんなに素敵な旦那様が居るのに、どうして・・」
「不潔だわ!」
「皆さん、落ち着いて。」

義憤に駆られ、歳三を避難し始めたママ友達をそう宥めながらも、常子は口端を歪めて笑った。

「あれ、おかしいな・・」
「どうした、歳三?」
「さっき祭りの売上金の確認をしていたんだが、足りねぇんだよ・・」
「いくらだ?」
「2万円程だ。さっきまで、ここにあったんだが・・」
「もしかしてそのお金、あなたが盗ったんじゃないの?」
「俺ぁ、そんな事してねぇ!」
「さぁ、どうかしら?あなたはわたしの夫を盗んだ・・」
常子はそう言うと、歳三を睨んだ。
「あなたを絶対に幸せなんかにさせないわ。」
「歳三、暫く日陰で休んでいろ。」
「わかった。」
歳三が藤棚の下へと向かうのを確認した千景は、常子をにらみつけた。
「我妻への誹謗中傷をこれ以上続けるつもりなら、法的措置を取る。」
「まさかわたしを訴えるつもり?だったら、わたしもあなたの奥さんに対して慰謝料を請求するわ。」
「貴様は一体何がしたいのだ?我妻と貴様の夫との関係は、もう終わった事だ。」
「いいえ、終わってなどいないわ!勇太君が居る限り、主人とあなたの奥さんとの縁は永遠に切れないの!」
「それは、どういう意味だ?」
「あら、知らないの?勇太君は、主人と、あなたの奥さんとの間に出来た子なのよ。」
常子はそう言うと、車内で勇と歳三が激しくセックスしている動画を千景に見せた。
「これを観て、少しはわたしの気持ちがわかるでしょう?」
七夕祭りの後、千景は帰りの車の中で歳三を抱いた。
「何で、こんな事・・」
「お前は、車の中でするのが好きだろう?」
「千景、何でそんな事知って・・」
「勇太は、あの男との子なんだろう?」
「・・あぁ、そうだ。勇太は・・あいつの父親は、近藤さんだ。でも、勇太は俺とお前の子だ。もう、あの人との縁は切れた。信じてくれ。」
「乱暴に抱いて済まなかった。安定期とはいえ無理をさせたな。」
千景はそう言うと、歳三の大きく迫り出した下腹を撫でた。
「もうすぐハロウィンか、早ぇもんだな。」
「歳三、そんなに動いて大丈夫なのか?」
「余り動かねぇと難産になるから、少しは動いた方が良いって先生から言われたんだよ。」
「そうか・・どうした、歳三?」
「陣痛、来たのかもしれねぇ・・」
「何だと!?」

2014年10月31日、歳三は元気な双子の男児を帝王切開で出産した。

金髪に紫の瞳を持った長男を誠、黒髪に真紅の瞳を持った次男を千歳と、歳三は千景と考えた末にそう名付けた。

「歳三、これからの事だが、勇太と共にお前は暫く実家に行っていろ。」
「そうしたいのは山々なんだが、実家はこれから繁忙期に入るから、余り頼れねぇんだよな。」
「ではこういった所はどうだ?」

千景がそう言って歳三に見せたのは、産後ケア施設のパンフレットだった。

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Last updated  Nov 2, 2020 09:06:47 PM
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Sep 19, 2020



「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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「何よ、ネットで悪い噂を流してやるからねっ!」
「ええどうぞ、お構いなく。名誉棄損で訴えてやりますから。」
母親達は子供達を連れて座敷席から出て行った。
「姉貴、あんな事を言ってもいいのか?」
「構やしないわよ。うちは客を選ぶ権利があるんだから。」
「そうか。なぁ姉貴、手伝おうか?」
「いいわよ。今日あんたはお客様として来たんだから、ゆっくりしていって。」
「わかった。」
「すぐに料理を運ばせるから、個室で待っていてね。」
歳三が千景と個室に入ると、彼は突然吹き出した。
「どうした?」
「お前の気の強さは、姉に似たのだな・・」
「まぁな。姉貴は俺の母親代わりみたいなものだから、性格も似ているのかもしれねぇ。」
「そうか。仲の良い姉弟で羨ましいな、うちとは大違いだ。」
「お前にも兄弟が居るのか?」
「あぁ。だが継母の連れ子だから、俺にとっては義理の兄弟にあたるな。」
「色々とあるみてぇだな。」
「うちは茶道の家元だが、風間コンツェルン総帥でもある。」
「そうか。」
「父はかなりの遊び人だったようでな、女の噂は死ぬまで絶えなかった。母は旧華族の深窓育ちの令嬢で、潔癖な人だったそうだ。俺が7つの時、父の度重なる浮気に耐えかねて出て行ったらしい。継母は、その時父が付き合っていた愛人だ。」
「複雑だな・・」
「あぁ。」
「そういえば、一度もお前ぇの家族に会った事がねぇな。今度、うちで食事会でも開くか?」
「今度義母に予定を聞いてみる。」
「済まねぇな、辛い事を思い出させちまって・・」
「いや、もう昔の事だ。それよりも歳三、七夕祭りの準備は進んでいるか?」
「あぁ。幼稚園のイベントなんてやるのは簡単だと思ったが、色々と大変なんだな。」
「お前には家の事を任せきりで、済まないな。俺もこれから、幼稚園の行事や保護者の集まりに顔を出そう。」
「ありがとう。」
「トシ、お待たせ。」
「ありがとう。」
信子が運んで来たランチの炊き込みご飯が入った椀の蓋を開けてその匂いを嗅いだ途端、歳三は猛烈な吐き気に襲われた。
「大丈夫?」
「あぁ。只の消化不良だ。胃薬でも飲んどきゃ治るさ。」
「そうか・・」
その吐き気はすぐに治まったが、歳三は何故か食欲が湧かなかった。
「あんた、一度病院に診て貰った方がいいんじゃない?」
「本当に大丈夫だから・・」
そう言って歳三が立ち上がろうとした時、彼は突然下腹の激痛に襲われ、その場に蹲った。
「トシ、トシ!」
「救急車を呼んだからな、しっかりしろ、歳三!」

薄れゆく意識の中で、歳三は勇を呼んだ。

何処からか、子供の泣き声が聞こえた。

「おい、何で泣いているんだ?」

歳三がそう言って泣いている子供に声を掛けると、その子供は自分と同じ菫色の瞳をしていた。

―帰る場所がないの。

「帰る場所なら、俺が見つけてやる。」

―本当?

「あぁ。」

―じゃぁ、僕と弟を守ってくれる?

子供はそう言うと、歳三の下腹―子宮の辺りを指した。

「必ずお前達を守ってやる、約束だ。」

歳三は子供と指切りをした後、夢から覚めた。

「歳三、大丈夫か?」
「千景・・ここは?」
「病院だ。お前は切迫流産しそうになったんだ。」
「切迫流産、じゃぁ・・」
「6週目に入っているそうだ。暫く安静にしていろ。七夕祭りの準備は俺がする。」
「済まねぇな。」
「お前はお腹の子達の事だけ考えろ。」
「お腹の子達?」
「双子だから、悪阻や貧血が酷くなる妊婦も居るそうだ。」
「そうか・・」
歳三はそう言うと、あの夢の意味はこういう事だったのかと悟った。
千景は切迫流産で入院した歳三に代わって保護者会に出席する事になった。
「あら、勇太君パパ。珍しいですね、あなたが保護者会に来られるなんて。」
「妻が入院中なので、暫くわたしが七夕祭りの経理を務めさせて頂きます。」
「まぁ、そうなのですか。これから、お願いしますね。」
そう言って千景に愛想笑いを浮かべた朋代は、すぐさま常子の元へと走っていった。
「どうしたの、朋代さん?」
「常子さん、大変よ!土方さんが入院したんですって!」
「入院?それは確かなの!?」
「えぇ。」
「もしかしたら、妊娠したのかしら!?」
「さぁね。」
「皆さん、ここはわたしに任せて仕事して下さいね。」

常子はそう言って朋代達に微笑むと、七夕祭りの実行委員のメンバーに話しかけている千景に声を掛けた。

「風間さん、またお会いしましたね。」
「貴殿は、近藤殿の細君か?」
「まぁ、憶えてくださったのですね、嬉しいわ。」
常子はそう言うと、千景に微笑んだ。
「この後、少しお話ししません?」
保護者会の後、常子は風間と共にマンションの近くにあるカフェへと向かった。
「俺に話したい事とは何だ?」
「あなたの奥さん、うちの主人と不倫していますよ。だから・・」
「それがどうした?歳三が今その身に宿している子が貴様の主人の子だとでも?下らん。」
「下らないですって!?あなたは、怒りを感じないの!?」
「俺は妻の昔の男に悋気を起こすような男ではない。」

呆然とする常子に背を向け、千景はカフェから出て行った。

「そう・・あなたがそのつもりなら、わたしにも考えがあるわ。」

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Last updated  Sep 19, 2020 12:20:04 AM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

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三年前、歳三が西口家から出て行った後、暫くは信也が二人の姪達の世話をしていたが、彼はやがて結婚して家から出て行ってしまった。

「香苗さんはどうしているんだ?」
「あの人、再婚して今はアメリカに住んでいるの。一度彼女にあの子達の事で話し合ってみたんだけれど、引き取りたくないって。」
「は?」
「“あの子達を見ると、あいつの事を思い出すから嫌なの。”彼女、もうあの子達とは縁を切りたいみたいで・・」
「じゃぁ、二人は実母から捨てられたのか・・お義母さんはどうしたんだ?」
「“二人の世話をしたいのは山々なんだけれど、こっちも色々と大変なのよ”とおっしゃって・・」
「それで、困り果てて俺の所に来たと。悪ぃが、俺にとっちゃ二人は完全に赤の他人だ。どうしてもあいつらが可哀想だと思うなら、あんたが引き取るか、施設に入れるかどちらかを選ぶべきじゃねぇのか?」
「それは、そうですけれど・・」
「あんたは、二人を引き取るつもりはねぇんだろ?10代のガキ二人を、路頭に迷わせる程俺は冷酷じゃねぇ。」
「じゃぁ・・」
「他に頼れる親戚は居ねぇのか?」
「確か、博多の方に・・」
「それじゃぁ、その親戚と連絡が取れるまでの間、俺が二人を預かる。」
「ありがとうございます。」
「言っておくが、俺は俺のやり方であいつらに接するから、そのつもりでいてくれ。」

こうして、華と梓は遠縁の親族から連絡が来るまで、歳三の元で世話になる事になった。

「お世話になります。」
「言っておくが、お前達は俺にとっちゃ赤の他人だ。少しでも俺達に舐めた態度を取ったら問答無用で叩き出すからな。」
「はい、わかりました。」
「そうか。じゃぁ明日から朝5時に起きて俺と朝食の支度をしろ。」
「えっ」
「家事は出来る人がやればいいとか、甘えた考えは捨てろ。最低限てめぇの世話が出来る位になれ、他人を頼るな。」
「はい・・」
夕食後、二人は溜息を吐きながら用意された部屋に入った。
「これから、どうなるのかなぁ?」
「さぁね。でも、あたし達はお客様じゃないんだから、大人しくしないとね。」
「わかった。」
二人がそんな事を話している頃、夫婦の寝室では歳三に千景が七夕祭りの事を話した。
「母親同士の付き合いというものは、大変だな。」
「あぁ。しかもママ友の大半が中学時代の同窓生。面倒臭いったらありゃしねぇ。」
「お前が中学生の頃を見てみたかったな。」
「そんなもん、見てどうするんだよ?あの頃の俺は、今みてぇにお淑やかじゃなかったな。」
「ほう・・」
「ま、寝物語ついでに話してやるよ。」

歳三はそう言うと、千景に中学時代の話をした。

彼が在籍していた聖林学院は、幼稚園から大学までのエスカレーター式の、所謂お嬢様学校だった。


戦前から華族女学校として名を馳せた学校だけあってか、そこに通う生徒達の大半は皆資産家令嬢や旧華族令嬢だった。

その中で老舗料亭の娘である歳三は、いじめの恰好の的となった。
女同士のいじめというものは、実に陰湿かつ狡猾なものだった。
最初は無視から始まり、事実無根の噂を流されたりした。
だが、そんな事でやられっ放しになっている歳三ではなかった。
彼はいじめの加害者達にされた事を倍以上にやり返した。
いつしか、歳三は学院内で“鬼番長”と呼ばれるようになった。
結局、歳三は学院側から強制退学させられ、彼は共学の高校へと入学した。
そこで、近藤勇と出会った。

「そうか。」
「おい、明日は早いからやめろ・・」
「基礎体温はちゃんとつけているのか?」
「ま、まぁな・・」
「では、今日が排卵日なのか?」
「馬鹿・・」
「それは、“イエス”という意味だな?」
「あ、あぁ・・」
そう言った歳三は、頬を赤く染めて、千景にその身を委ねた。
「短い間でしたが、お世話になりました。」
「おう、達者でな。」
二週間後、華と梓は博多へと旅立っていった。
「はぁ、これでやっと休めるな。」
「そうか。それよりも歳三、昨夜は徹夜していたな?」
「何で、そんな事・・」
「顔色が悪いぞ、余り無理をするな。」
「あぁ、わかった・・」

空港からの帰り道、歳三と風間は『石田屋』に寄った。

「あらぁ、いらっしゃい!」
「済まねぇな、急に来ちまって。個室、空いているか?」
「気を遣わなくてもいいのよ。今日は個室はあるけれど、一室だけだから、もしかして愛席になるけれど、いい?」
「構わねぇよ。」

姉の信子とそんな話を玄関先でした後、歳三と千景は奥の個室へと向かった。

その日は、近くにある小学校で何か集まりが会ったのか、座敷席には何組か小学校低学年位の子供と母親達が居た。
母親達は自分達のおしゃべりに夢中で、子供達が騒いでいても注意しない。
周囲の客達が迷惑そうな顔をその親子連れに向けていた時、信子が軽く咳払いをしながら彼らの元へと向かった。

「すいませんがお客様、これ以上騒いでいるのなら、他のお客様のご迷惑になるので出て行って貰えませんか?」
「はぁ、店員の癖にあたし達に向かって何なのその態度!?お客様は神様じゃないの!?」
「えぇ、良く言いますけどね、でもあなた方は神でも何でもない、只の迷惑な人達です!うちは客商売ですが、あなた方みたいな人達にまで媚を売る程、落ちぶれちゃいませんよ!」

信子の啖呵を聞いた周囲の客達は、一斉に拍手した。

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Last updated  Sep 19, 2020 12:00:06 AM
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Sep 12, 2020



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第二部


「あっ、勝っちゃん、もう・・」
「トシ、トシ!」
勇はそう叫ぶと、歳三の乳房を鷲掴みにした後、何度目かの絶頂を迎えた。
「いきなり来て、何盛ってんだよ?」
「お前に聞きたい事があって来たんだ。」
勇はそう言いながら、ウェットティッシュで歳三の陰部の汚れを拭った。
「勇太の事か?」
「プレイルームであの子を見た時、すぐにわかった。勇太は・・あの子は、俺の子だ。」
「今更それを知ってどうするんだ?」
「責任を取りたいんだ、父親として。」
「馬鹿な事言うな。あんたには家族がいる。俺には夫が居る。あんたは俺達の存在を無視してくれて構わない。」
「そんな事、出来る訳がない、俺は・・」
「常子さんは、俺達の関係を知っている。それに、彼女とはママ友になるから、厄介事は起こしたくねぇんだ。」
歳三はそう言うと、着ているワンピースの皺を直した。
「もう、ここには来ないでくれ。」
「・・連絡する。」
勇が去った後、歳三は溜息を吐きながらコーヒーを淹れた。
あの様子だと、勇は勇太の事を諦めないだろう。
一体、どうすれば―そう思いながら歳三が溜息を吐いてコーヒーを飲んでいると、インターフォンのチャイムが鳴った。
「突然お邪魔しちゃって、ごめんなさいね~」
「いえ、別に忙しくないので・・何か飲み物でも・・」
「あらぁ、ありがとう。頂くわ。」
そう言って歳三に愛想笑いを浮かべているのは、中学時代の同級生で、ママ友の一人である山崎朋代だった。
「何か、ご用ですか?」
「七夕祭りの事、ご存知よねぇ?」
「ええ。」
「それがねぇ、祭りの実行委員会が今夜六時に26階で開かれるの。必ず出席して下さいね。」
「わかりました。」
歳三は朋代が部屋から出て行った後、スマートフォンに着信が一件来ている事に気づいた。
(誰だ?)
急いで彼がスマートフォンを確認すると、その画面には懐かしい男の名前が表示されていた。
「トシさん、久しぶり!」
「八郎、どうしてここに?」
「英国から昨日帰国したんだ。トシさん、暫く会わない内に変わったね。」
「そうか?」
都内某所にあるホテルのカフェで歳三は遅めのランチを取りながら、高校時代の同級生である伊庭八郎ととりとめのない話をしていた。
「八郎、お前今何してんだ?」
「今、僕は大手食品会社に勤めてるよ。」
「へぇ、凄ぇな。」
「あ、今度うちの顧客を招いたパーティーがあるんだ。これ、招待状。」
「ありがとう。今日は久しぶりに会えて嬉しかったよ。」
「またね。」

カフェの前で別れる八郎と歳三の姿を、常子が見ていた。

「あらぁ、来て下さったのねぇ。」

六時五分前に歳三が26階にある会議室に入ると、そこには朋代の他に、六人のママ友の姿があった。

「土方君、また会ったねぇ。」

そう言って歳三に抱き着いて来たのは、山本有紗だった。

「あのね~、さっき榊さんと話していたんだけれど、土方君には会計やって貰おうと思って。」
「会計、ですか?」
「あたし、お金の計算できなくてぇ。土方君、昔同じ会社で経理やってたからぁ、安心できるなぁって。」
「わかりました。」
「やったぁ、助かる~!」
有紗がそう言って嬉しそうに飛び跳ねているのを、歳三は何処か冷めた目で見ていた。
「お祭りのメニュー、どうしようかしら?」
「普通に焼きそばとかでいいんじゃないんですか?」
「食物アレルギーの子にも楽しんで貰いたいのよねぇ。」
「じゃぁ、ブッフェとかはどうですか?良いケータリング業者、わたし知っていますよ。」
「それじゃぁ、常子さんにお願いしようかな。」
会議は三十分位で終わった。
「土方さん、お久しぶりです。少し、お話ししませんか?」
そう言った山田文華の目は、何処か冷たかった。
「あんたとまた会う事になるとはな。それで、話って何だ?」
「華ちゃんと梓ちゃん、そちらで引き取れませんか?」
「断る。あいつらとは赤の他人だ。あんたが引き取ればいいだろ?」
「実は・・」

文華は、静かに西口家の現状を歳三に話し始めた。

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Last updated  Sep 13, 2020 08:22:22 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

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「うわぁ~、凄い所ね!」
「そうだろう。いやぁ、俺もこんな所に住めるなんて思わなかった。」

勇は三年振りに単身赴任を終えて妻子と共に新居であるタワーマンションの住民説明会に来ていた。
受付には、既に何組かの家族連れや夫婦が集まっていた。

「あら、信ちゃんママ。」
「たまこちゃんママ、お久しぶりです・」
「ねぇ、このマンションの50階を購入した人、あの風間コンツェルンのCEOですって。」
「えぇ、それ本当なの!」
「セレブと一緒に住む事になるなんて、信じられないわ。」
「そうね・・」

常子がママ友の文華とそんな話をしていると、マンションのコンシェルジェ達が何やら慌てた様子で、ロビーへと走っていった。

「何かしら?」
「さぁ・・」

暫く二人が様子を見ていると、一台の黒塗りのリムジンがマンションの前に停まり、その中から一組の家族が出て来た。
全身オーダーメイドの高級スーツ姿の男は、風間千景だとすぐにわかった。
そして、彼の隣に居るのは―

「トシ・・」
「土方さん・・」

幼児を抱いていた歳三は、自分を姿を見て唖然としている勇と文華を無視すると、住民説明会の受付に立った。

「50階に住む風間です。」
「風間様、この度はご購入して下さりありがとうございます。どうぞ、あちらへ・・」
「ありがとう。」
住民説明会が終わった後、歳三は勇太を7階のプレイルームで遊ばせていた。
「トシ・・」
頭上から声がして歳三が振り向くと、そこにはもう二度と会わないと決めた人が立っていた。
「あの子は、もしかして・・」
「勇太は、俺が産んだ子だ。」
「お願いだトシ、話を・・」
「俺はあんたと話す事なんてねぇ。」
歳三はそう言うと、勇太の自分の元へと呼び寄せた。
「母様、その人誰ですか?」
勇太の琥珀色の瞳に見つめられた勇は、堪らず彼を抱き締めた。
「やめろ、息子から離れろ!」
「母様、助けて~!」
歳三は慌てて勇から勇太を引き剥がすと、そのままプレイルームを後にした。
「母様・・」
「大丈夫だ、母様がお前を守ってやるから。」
勇太を寝かしつけた後、歳三は溜息を吐いて彼を起こさぬように子供部屋のドアを閉めた。
「漸く寝たか。」
「あぁ。」
「歳三、こちらへ来い。」
千景はそう言うと、ベッドカバーを捲って自分の隣の空いたスペースをポンポンと叩いた。
彼に言わるがまま歳三が千景の隣に寝ると、千景は寝間着の合わせ目から手を入れ、歳三の乳房を触って来た。
「やめろ、今はそんな気分じゃ・・」
「ここは濡れているが?」
執拗に陰部を弄られ、歳三は必死に声を抑えていたが、堪らず白い喉を仰け反らせて喘いだ。
「そろそろ頃合いだな。」
千景はそう言うと、己の猛ったものを歳三の中に奥まで穿った。
「済まない、乱暴にしたな。」
「初めて俺を抱いた時、あんたは下手糞だったのに、こんなに上達するなんてな・・」
歳三はそう言いながら、枕に顔を埋めた。
「おい、もう終わったつもりでいるのか?」
千景はそう言うと、歳三に覆い被さった。
「てめぇ、何しやがる!?」
「朝まで寝かせぬから、覚悟しておくのだな。」
翌朝、歳三は痛む腰を擦りながら夫婦の寝室から出てリビングに行くと、そこには出来立ての朝食と一枚のメモがキッチンテーブルに置かれてあった。

『昨夜は無理をさせて済まなかった。勇太は俺が幼稚園へ送るから、ゆっくり休め。』

(気障な奴め・・)

料理のプレートの上には、味噌汁とご飯、そして歳三の好物である沢庵が盛られた小皿が載せられていた。

「あら~、風間様がこちらにいらっしゃるなんてお珍しい!」

勇太を幼稚園へ送った後、千景は突然見知らぬ母親達から声を掛けられた。

「どちら様ですか?」
「初めまして、わたし、土方君の中学時代の同級生の、山本有紗です。」
「わたしは、山田文華と申します。」
「近藤常子です。あの、よろしかったら、一緒にお茶でも・・」
「申し訳ありませんが、急いでいるので。」

風間はそう言って彼女達に背を向けると、そのまま幼稚園を後にした。

「何あれ、感じ悪い~。」
「初対面だから、仕方ないでしょう。ねぇ常子さん、わたし達に話したい事って何?」
「それはカフェに行ってからにしましょう。」

常子はそう言うと、新しくオープンしたばかりのカフェへと有紗を連れて行った。

「わぁ、お洒落な店内ですね!」
「でしょう?このカフェ、実は主人が手がけたものなの。」
「え~、確か常子さんのご主人って、大手の食品会社にお勤めなんですよねぇ?」
「そうよ。ねぇ有紗さん、あなたあの人・・土方さんとは中学時代の友人だったのでしょう?」
「う~ん、友人というかぁ、ちょっと複雑なんですよねぇ。」
「有紗さん、確かあなたは聖林学院出身よねぇ?土方さんと同じクラスだったの?」
「えぇ。三年間同じクラスでした。ほら、あそこって元華族女学校だったから、周りには名家のお嬢様しか居なかったんです。その中で、土方君は老舗料亭の娘で、周りからは良く、“飯屋の娘”とか呼ばれて陰口を叩かれていましたね。それに、“逆賊の子孫”とか呼ばれていました。」
「“逆賊の子孫”?もしかして、土方さんのご先祖様は、旧幕府側の人間かしら?」
「そうかもしれませんね。常子さん、どうしてそんな事を聞くんですか?」
「・・知りたいのよ、あの人の事を。あの人がどんな過去を背負っているのか、興味があるの。」

そう言った常子は、邪悪な笑みを口元に閃かせた。

一方、歳三が自宅のリビングで寛いでいると、インターフォンが鳴った。

「どちら様ですか?」
『・・俺だ、トシ。少し話したい事がある、開けてくれないか?』
「わかった。」

歳三がそう言ってドアロックを解除すると、勇は玄関先で靴を脱いだ後、歳三をソファに押し倒し、彼の唇を強引に塞いだ。

「勝っちゃん、何する・・」
「済まんトシ、我慢出来ない!」

―第一部・完―

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Last updated  Jul 20, 2021 05:21:18 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。

歳三は風間と共に招待客達へ挨拶回りをしていた。

「そのネックレス、とても素敵だわ。」
「まぁ、ありがとう。」
「土方様、今度わたくし達とランチに行きません?新しくオープンしたカフェのオーナーとお知り合いで・・」
「考えておきますわ。」
「ワインをどうぞ。」
そう言って給仕人が歳三にワインを差し出した。
―紛い物だろうが何だろうが、貫きゃ真実になる筈だ!
そう叫んで、真紅の液体を飲み干した。
たちまち艶やかな黒髪は白銀へと変わり、菫色の瞳は血のような真紅のそれへと変わっていった。
―絶対に見捨てきゃいけねぇ相手を見捨てて、てめぇだけ生き残って!
茜空に染まる丘の上で、敵の返り血を全身に浴びた己の姿。
「歳三、どうした?」
「いや、何でもない・・」
「母乳を赤子にやるのだから、酒は飲むな。」
「わかった・・」

耳の奥で、何かがゴウゴウと唸りを上げて迫って来る感覚に襲われ、歳三は意識を失った。

―トシ、そろそろ楽にさせてくれ。

流山で、最期にあの人が自分に言った言葉。
悲しんでいるというよりも、何処か辛そうでそれでいて安堵していそうな顔。
そんな顔、させたくなかったのに。
ずっと、あんたの為に俺は・・

「気がついたか?」
「ここは・・」
「寝室だ。」

千景はそう言うと、苦しそうに喘いでいる歳三の額に水で濡らしたタオルを置いた。

「パーティーの最中に、突然倒れたのだ。その様子だと、“昔”を思い出したのか?」
「何で、それが・・」
「わかったのかと?愚問だな。」

千景は歳三を真紅の瞳で見つめながらそう言った後、恭しい仕草で彼の左手薬指にダイヤモンドの指輪をはめた。

「俺も、お前と同じだ。」
「さっき、俺が“見た”のは・・」
「貴様の前世・・新選組副長・土方歳三、そして己の生きた道を貫いた“薄桜鬼”としての記憶だ。」
「だから、俺は・・」
「これからは、俺がお前を幸せにしてやる。」

千景はそう言うと、歳三の宝石のような美しい菫色の瞳から流れる涙を、そっと拭った。

「今は休め・」
「あぁ・・」

急に眠気が襲って来て、歳三はゆっくりと目を閉じた。
懐かしくも悲しい夢は、何故か見なかった。


子供の成長は早い。
あれ程自分を求めて泣き叫び、自分が離れると泣いていた勇太は、三歳の誕生日を迎えた。

「母様~!」
「勇太、どうした?」

風間と結婚して、久しぶりに実家に帰った歳三は、庭でボール遊びをしている勇太に気づいて、そう彼に声を掛けると、彼は歳三に開口一番、こう言った。

「勇太、赤ちゃんが欲しい!」
「・・は?」

歳三は、息子の爆弾発言に目を丸くした。

「そうか、勇太がそんな事を・・」
「何でも、友達ん家に赤ん坊が産まれたから、自分も“お兄ちゃん”になりたいんだと。」
「そうか。」

千景はそう言うと、飲んでいたコーヒーを半分残してそれが入ったマグカップをキッチンテーブルに置いた。

「二人目は、考えていないのか?」
「勇太を産んだ時、大変だったんだぞ?5日間も陣痛に苦しんで、不眠不休であいつを育てて・・もう俺はあんなの体験したくねぇ。」
「子供が手のかからない年になるまで、二人目は考えたくないと?」
「あぁ、そうだ。」
「実は、継母から二人目を催促されてな。今日、こんな物を渡された。」
千景がそう言って歳三に見せたのは、不妊治療専門クリニックのパンフレット合った。
「一度、ここに行ってみないか?」
「わかった・・」
千景と歳三が向かったのは、セレブ御用達の不妊専門クリニックだった。
「先生、どうなのでしょう?」
「お二人共、問題はありませんよ。ただ、奥様が過去に堕胎手術を受けられたので、もし妊娠されたとしても、出産は帝王切開でされるのが望ましいでしょう。」
「わかりました・・」

クリニックから出た二人は、暫く帰宅する車の中で黙り込んでいた。
最初に口火を切ったのは、歳三だった。

「どうして、俺はこんなに・・」
「それ以上言うな、自分を惨めにするな。」
「出来れば、俺は勇太に弟妹を抱かせてやりてぇ。10人兄姉の末っ子として可愛がられてきたから、兄姉の良さをあいつにも知って貰いてぇんだ。」
「そうか。お前がそういうつもりなら、俺も力になろう。この問題は、夫婦二人のものだからな。」
「ありがとう。」
「それよりも、引っ越しの事だが・・新居が決まったぞ。」
「へぇ、何処だ?」
「ここだ。」

千景がそう言って歳三に見せたタブレット画面に表示されているのは、一週間前に完成したばかりのタワーマンションだった。

「いい所だな。で、何階に住むんだ?」
「最上階だ。」

数日後、二人は都内某所にあるタワーマンションの住民説明会に出席した。

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Last updated  Sep 12, 2020 12:10:06 AM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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「まさかあの風間様がご結婚されるなんて、喜ばしい事ですわね。」
「お相手は、どんな方なのかしら?」
「さぁ・・」
「何でも、老舗料亭の娘さんみたいですって。」
「料亭ですって?議員の先生や旧華族のお嬢様ならともかく、飯屋の娘なんて・・」
「あらあなた、『石田屋』をご存知ないの?あそこは昨年、フランスで三ツ星を獲得された事がある名店なのよ。」
「それに、土方様のお祖父様は元警察庁長官でいらっしゃったのよ。」
「まぁ・・」
「土方?今土方とおっしゃったわよね?」
パーティー会場で上流階級に属する女性達が主役の登場を待ちながらそんな話をしていると、そこへ一人の女性がやって来た。
彼女は、キッズカフェの授乳室で歳三に声を掛けて来た女性だった。
「あら、あなた見ない顔ね?」
「はじめまして、わたくしこういう者です。」
女性はそう言うと、彼女達に自分の名刺を手渡した。
「“ネイルサロン・ジュリー 社長 山本有紗”?まぁ、あなたあの“ARISA”なの!?」
「まぁ、こんな所に有名人がいらっしゃるなんて嘘みたい!」
「後でサイン頂けないかしら?」
「えぇ、勿論ですわ。」

(注目されるって、やっぱり気持ちが良い!)

一方、歳三は風間家専属のヘアメイクアーティスト達によって朝からエステの全身コースや脱毛などを施され、苛々していた。

「なぁ、俺はもうクタクタなんだよ!たかがパーティーにこんな大掛かりな準備なんざしなくてもいいだろうが!」
「まぁ歳三様、そんな心構えではこの先社交界を生きていけませんわ。」
歳三の言葉を聞いてそう言った後柳眉を吊り上げたのは、かの国民的アニメに登場する家庭教師を連想させるかのような風間家の執事長・大江敏子だった。
「はぁ!?」
「社交界は常に嫉妬と欺瞞に満ちた世界ですわ。女達はそこで常に笑顔で殴り合いをし、策を巡らし、足を引っ張り合うのです。あなた様は風間様の婚約者。彼女達にとってあなた様は新しい生贄の子羊なのです。」
「良くわからねぇが、はじめが肝心だって事だな?」
「えぇ。」
「何を女同士でコソコソと話している?」
「風間様・・」
「大江、下がれ。」
「失礼致します。」
大江が部屋から出た後、彼女と入れ違いに千景が入って来た。
「何の用だ?」
「別に。これから俺達は夫婦になるのだから、互いに遠慮など要らぬだろう。」
「それもそうだけど・・」
「今夜は俺達が夫婦として社交界にお披露目される日だ。その記念として、お前にこれを贈ってやろう。」
千景はそう言うと、大人の握り拳大位の大きさがあるエメラルドの首飾りを歳三の白い首につけた。
「良く似合っている。」
「こんな高ぇ物、要らねぇ。」
「お前は、俺の妻となるのだ。俺の妻になるのだから、これ位の宝石が似合ってもらわねば困る。」
「風間・・」
「歳三、俺にあってお前にないものは何だ?」
「さぁな。」
「力だ。他者を圧倒させ、ねじ伏せ、君臨する程の力。それさえあれば、誰にも負けぬ。」
千景はそう言うと、歳三のうなじに軽く口づけた。
「歳三、今夜お前は生まれ変わるのだ。」
「生まれ変わる・・」
「そうだ。今までお前は、力ある者に虐げられて来た。だが今夜、お前は俺と共に力ある者となる。力を欲しろ、歳三。」
「力が欲しい・・」
「そうだ。」

歳三は、鏡に映る己の顔を見た。

その顔は、三年前に西口家の半分割れた鏡で見た時のそれとは違い、自信に満ち溢れたものだった。

「さぁ行くぞ、準備は良いか?」
「あぁ。」
「待て、戦化粧を施してやる。」

千景はそう言うと、ドレッサーの上に置かれている口紅を手に取り、それを優しく歳三の唇に塗った。

「行こうか?」

歳三は自分に差し出された千景の手を、しっかりと握った。

「恐れるな、堂々と前を向け。」

今まで俺は、強い者から虐げられ、自由を奪われて、半ば死んだように生きてきた。

だが、これからは力を持って強くなる。
勇太を守る為に、俺は強くなる―

「いらっしゃったわ!」
「あれが、風間様の・・」
「とても素敵な方ね・・」

(嘘、あれがあの土方君・・)

有紗は自分の前に現れた歳三の変わりように驚いた。

真紅のワンピースを纏い、美しいエメラルドの首飾りをつけた歳三は、全身から強いオーラに満ち溢れていた。

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Last updated  Sep 12, 2020 12:00:12 AM
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Sep 8, 2020



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「・・その様子だと、初対面という訳ではなさそうだな?」
「芹沢さん、こいつと知り合いなのか?」
「こいつとは、こいつが襁褓(むつき)を穿いていた頃から知っておる。」
「今日から何しにここへ来たんだ?」
「そう尖るな。出産祝いを渡しに来ただけだ。」
「ありがとう・・」
「息子は元気か?」
「あぁ、良く乳を飲んでクソして寝てるよ。一日中俺はあいつの世話でクタクタだけどな。」
「土方、俺がこいつを連れて来たのは、お前にある提案をしに来たのだ。」
「ある提案、だと?」
「そうだ。お前は、こいつ―風間千景と契約結婚しろ。」
「ハァッ!?」
思わぬ芹沢の言葉に、歳三はそう叫ぶと芹沢と風間を見た。
「何、何で・・」
「こいつは親から勧められた縁談を断っているのだが、ならば相手を連れて来いと言われたらしいのだ。こいつの親は、名のある茶道の家元だ。その縁談相手はこの辺りの有力者の娘だ。」
「で、何で俺がこいつの相手をしないといけないんだ?」
「そこら辺に居る娘は、こいつの相手は務まらん。だが、お前の家は老舗料亭で、お前の祖父が元国会議員だったからだ。人間は肩書きに弱い。」
「言っとくが、俺は・・」
「勘違いするな、土方。これは決定事項だ。貴様に拒否権はない。」
「何だと・・」
「また来る。その時には覚悟を決めておくのだな。」
芹沢は一方的に歳三に向かってそう言うと、風間と共に部屋から出て行った。
「トシさん、どうしたんだ?」
「なぁ源さん、俺はどうすればいいんだ?」
「焦らずに自分で答えを出せばいい。」
「そうか・・」
「もうすぐ勇ちゃんのお宮参りだね。」
「そんな時期になるのか・・早ぇな。」
「トシさん、母乳の出はどうだい?」
「出過ぎて病気なんじゃないかって思うんだが・・」
「トシ、話があるんだけど、いい?」
「あぁ。」
「芹沢様から、例の話は聞いたわね?」
「俺は、この話を受けようと思う。」
「本気なの?」
「勇太には父親が必要だ。」
「トシ・・」
「大丈夫、これで大丈夫だ。」

(こいつには、勇太には幸せになって欲しいな・・)

そう思いながら、歳三は勇太を寝かしつけた。

「トシ、良く似合っているわよ。」
「ありがとう。これ、アンティーク着物だろ?何処から持って来たんだ?」
「これは、曽祖母ちゃんから譲り受けたものよ。何でも、ここが料亭を始める前には診療所だったそうよ。」
「診療所?」
「えぇ。何でも維新後にはここに旧幕府軍のお侍さんが刀を捨てて包丁を代わりに握ってからだって。」
「へぇ・・」
「ここの屋号は、そのお侍さんの故郷の村にちなんで名付けたそうよ。」
「初めて聞くな、それ。」
「ま、あたしも昨日蔵に入った時に曽祖母ちゃんの形見の品を探していた時にね、色々と見つけたのよ。」
信子がそう言って歳三に見せたのは、白梅の模様が施された、紅い櫛だった。
「これも、曽祖母さんの?」
「いいえ、違うわよ。」

その紅い櫛に、歳三は何処か懐かしさを感じた。


―トシ、寝癖を直してやろう。
―いいって。
―トシの髪は綺麗だなぁ

朧気でありながらも、懐かしさと愛しさに溢れた記憶が、洪水のように歳三の脳裏に押し寄せてきた。

「トシ、大丈夫?」
「あ、あぁ・・」
「さ、行きましょうか。」

歳三は、家族総出でお宮参りをした。

「それにしても、勇ちゃんは何だか不思議な瞳をしているわね。」
「えぇ、本当に。顔は歳三さんにそっくりなのにね。」
「隔世遺伝ってやつですよ。」
「ねぇ、勇ちゃんを何処の幼稚園に入れるのかは決まったよ。」
「いいえ。それに、保育園もまだ・・」
「駄目よ、早く決めないと幼稚園に入れなくなるわよ!」
「もう、皆そんなにトシを脅さないでよ。それに、勇太はわたし達が面倒を見るから、心配要らないわよ。」
「そうねぇ。それよりも歳三さん、これからどうするの?」
「どうするって・・」
「もうあの家とは完全に縁が切れたんでしょう?自分の幸せを・・」
「実は、芹沢さんから風間家の縁談が持ち込まれましてねぇ・・」
「まぁ、それはめでたい事ねぇ。」

勇太が生後半年を迎えた頃、歳三と風間は結納を交わした。

その日の夜、二人の結納を祝うパーティーが風間邸で開かれた。

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歳三は電車が病院の最寄駅に着くなり、むずがりそうになっている勇太を抱えて、駅の多目的トイレへと駆け込んだ。
便座の上に腰を下ろし、ネクタイを外してワイシャツの胸元を寛がせた歳三は、勇太に母乳を与えた。
彼を出産してから、何だか自分の身体が変わってしまっている事に歳三は気づいた。
授乳を終えた彼は、マザーズバッグからワイシャツを取り出した。
ワイシャツを着る前に晒しをきつく胸に巻き、勇太を抱いて多目的トイレから出た。
(この出口から左へ曲がればいいんだな・・)
そんな事を思いながら歳三がスマートフォンで病院までの道を確めていると、彼は誰かとぶつかりそうになった。
「済まない、怪我は無かったか?」
「あぁ・・こっちこそ、よそ見してて・・」
そう言って自分にぶつかってきた赤髪の男の顔を見た歳三は、彼が学生時代の友人・原田左之助である事に気づいた。
「左之、久しぶりだな?」
「土方さん、その子は?」
「あぁ・・こいつは・・」
原田にどう勇太の事を説明しようかと歳三が考えていると、原田は気を利かせて歳三にこう言った。
「こんな所で立ち話も何だから、後で落ち着いた所で話そうぜ。」
「あ、あぁ・・」
気まずい空気の後原田と互いの連絡先を交換した歳三は、そのまま病院へと向かった。
病院のロビーは、朝早い時間帯だというのに沢山の人で溢れていた。
「すいません、乳児健診に来たのですが・・」
「小児科は4階になります。」
「ありがとうございます。」
受付で小児科の場所を聞いた歳三がエレベーターに乗って4階に向かうと、扉が開いた瞬間、乳幼児特有の甲高い泣き声と、母親達の怒鳴り声が歳三の耳朶に突き刺さった。
何とか長椅子の空いているスペースに腰を下ろすと、見慣れないスーツ姿の彼に、母親達はヒソヒソと何かを囁き合っていた。

(面倒臭ぇな・・)

そんな事を思いながら歳三が健診の順番を待っていると、そこへ先程駅で別れた原田と赤ん坊を抱いた女性がやって来た。
「土方さん、また会ったな。」
「原田、何で・・」
「左之助さん、こちらの方はお知り合いなのですか?」
赤ん坊を抱いた女性はそう言うと、円らな黒い瞳で歳三を見た。
「土方さん、紹介するぜ。こいつは俺の嫁さんの紗奈と、息子の茂だ。」
「嫁って、お前結婚していたのか?」
「まぁな。それよりも土方さん、健診の後ランチでもどうだ?」
「わかった。」
歳三は急激に喉が渇いて来るのを感じた。
歳三が乳児健診の後に原田達に連れられて入ったのは、キッズカフェだった。
店内には子供が遊べるスペースがあり、授乳室もあった。
「駅で会った時、この子事俺が尋ねた時に、土方さん明らかに態度がおかしかったよな?何か事情があるんだろう?」
「左之、実は・・」
歳三が勇太の事を原田に話そうとした時、勇太が突然火をついたかのように泣き出した。
勇太のおむつが濡れているのかと歳三が彼の尻を触ったが、そこは濡れていなかった。
「済まねぇ、あの・・」
「話は後にしよう。」
歳三が授乳室に入ると、中に居た数人の母親達が彼に訝しげな視線を送って来た。
居たたまれない思いで歳三が勇太の授乳を終えると、一人の母親が突然彼に向かって話しかけて来た。
「ねぇ、もしかして土方君よね?」
「どちら様ですか?」
「やだぁ、あたしの事忘れちゃった?中学の時、クラスが一緒だった・・」
彼女の言葉を聞いた歳三の脳裏に、過去の忌まわしい記憶が甦った。
「この子、もしかして土方君の子?やだぁ、可愛い。」
「息子に触るな!」

歳三は勇太に触れようとする女の手を邪険に振り払うと、そのまま授乳室から出て行った。

「どうしたんだ土方さん、顔色悪いぜ?」
「ちょっと嫌な奴に会っちまった。」
「そうか。」
「左之、この子は・・勇太は俺が産んだ子なんだ。」
「父親は?」
「死んだ。」
「あんた、嘘吐く時はいつも目を合わそうとせずに頭を掻く癖があるよな?」
「ったく、お前ぇはいつも鋭いな・・」
歳三はそう言って苦笑した。
「それで、この子の父親は誰だ?」
「・・お前も知っている人だよ。」
「近藤さんには、この事は・・」
「知らせてねぇ。俺はあの人の家庭を壊すつもりはねぇ。」
「一度、近藤さんと話し合ったらどうだ?今は違うとしても、昔は愛し合っていた仲だろう?」
「俺の家族は、勇太だけだ。」
「何か困った事があったら、連絡してくれ。」
「あぁ、わかった。」
原田達とキッズカフェの前で別れ、歳三が帰宅すると、奥から仲居の鈴木理沙が何やら慌てた様子でやって来た。
「歳三様、良い所に帰って来ました。」
「どうした、何かあったのか?」
「芹沢様が歳三様にお会いしたいと・・」
「芹沢さんが?」
「はい。」
「わかった。」

スーツから着物に着替えた歳三が芹沢の待つ部屋に入ると、そこには高校の同窓会の夜にワンナイト・ラブを過ごした金髪紅眼の男が芹沢の隣に座っていた。

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