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JEWEL

全10件 (10件中 1-10件目)

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薄桜鬼腐向け転生刑事パラレル二次創作小説 :警視庁の姫!!~螺旋の輪廻~

Jul 7, 2021
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素材はコチラからお借りしました。

「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


「漸く、この日を迎えたな。」
「あぁ、そうだな。」
半年後、歳三と勇は警察学校卒業式の日を迎えた。
「長かったなぁ。」
「そうだな。なぁ勝っちゃん、希望している所はあるのか?」
「特にないな。トシはどうだ?」
「う~ん、強いて言うなら、“花の捜一”かなぁ。爺ちゃんも父さんも本庁の刑事だったから。」
「そうか。」
警察一家に生まれた宿命なのかどうかはわからないが、歳三が交番勤務を経て捜査一課の刑事となったのは、彼が二十五の時だった。
「トシ、また会ったな!」
「勝っちゃん!」
いつものように歳三が登庁後自分のデスクで書類仕事に追われていると、そこへ勇がやって来た。
「はい、これ。どうせお前、昼飯まだなんだろ?」
「あぁ、済まねぇ。」
勇から牛丼を受け取った歳三は、美味そうにそれを食べた。
「どんなに忙しくても、飯を食ったり、寝るのは忘れたら駄目だぞ。」
「わかったよ。それよりも、あんたいつから本庁へ来たんだ?」
「一月前かな。これからもよろしく頼む、トシ。」
「あぁ。」
「トシさ~ん!」
勇と歳三がそんな事を話していると、そこへ八郎がやって来た。
「八郎・・」
「トシさん、また会えたね!」
八郎はそう叫ぶと、歳三に抱きついた。
「ねぇ、今度一緒にランチしよう!」
「わかった・・」
「伊庭さんは、どちらの所属なのですか?」
「それは、職務上教えられないなぁ、ごめんね。」
「そうですか・・」
「トシさん、また来るね。」
「わかった。」
八郎が去った後、歳三は深い溜息を吐いた。
「また、あいつと毎日会うなんてな。」
「そう言うなよ。同期生達と会えるなんて、嬉しいじゃないか。」
「そうだな・・」
「トシ、今晩空いているか?駅前に美味い飯屋が・・」
「わかった。」
「まだ最後まで言ってないぞ?」
「昔からあんたが何かを言おうとしている事はわかるんだよ、俺には。」
「かなわねぇな、トシには。」
「なぁ、昔もこうして、二人で他愛のない話をしていたな。」
「あぁ、そうだったな。」
そんな二人の会話を近くで聴きながら、八郎は悔しそうに唇を噛み締めその場から去っていった。
「伊庭さん、こちらにいらっしゃったんですね?」
「あぁ。」
「お父様があなたをお呼びです。」
「は~、仕事帰りに飲むビールは美味ぇな!」
「そうだな・・」
「勝っちゃん、どうした?」
「いやぁ、昔は下戸だったお前が、酒飲みになるなんて思わなくてな。」
「そ、そうか?」
「まぁ、昔とは違うのかもしれんな。なぁトシ、他の皆とは会えているか?」
「あぁ。山南さんと斎藤は鑑識課で会ったし、原田達とは昨日生活安全課で会ったな。」
「生活安全課かぁ・・二人にはぴったりだな。」
「まぁな。」
勇はそう言いながら、フライドポテトにマヨネーズをつけた。
「そんな物ばかり食っていると、太るぜ?いつもどんなものを食べてんだ?」
「う~ん、いつもコンビニ弁当かカップ麺かなぁ。偶にファミレスへ食べに行くが・・」
「ったく、あんたって人は・・わかった、明日から俺があんたに弁当を作ってやるよ。」
「いいのか!?」
「あぁ。」
「そうか。いやぁ、一人暮らしだと中々自炊する機会がなくてな、助かるよ。」
「アレルギーはねぇか?」
「ないよ。」
「そうか。それにしても、今世でも俺があんたの女房役をするなんて、思いもしなかったな。」
「はは・・」
駅前の居酒屋で勇と別れた後、歳三が駅前のスーパーで勇の弁当の食材を選んでいると、お菓子売り場の方で人の怒鳴り声が聞こえて来た。
「だから、これはこの前買ったでしょう!」
「いやだ~!」
「もう、いい加減にして!あんたの世話で毎日疲れてるの!」
てっきり会話を聞いて、歳三は幼子を叱る母親の声なのかと思ってお菓子売り場の方を見ると、そこには六十代の母親と思しき女性をひたすら叱っている三十代前半の女性の姿があった。
「もう帰るよ!」
「お菓子~!」
「お菓子はなし!」
やがて母娘と思しき女性達は、レジで会計を済ませ店から出て行った。
「あの人達、いつも来るのよ。」
スーパーの店員が、歳三がレジで会計をしている時にこっそりとあの女性達の事を教えてくれた。
「あの人、六十代の方ね・・ここで前はバリバリと働いていたんだけれど、前の店長から酷いパワハラを受けてねぇ・・精神的におかしくなって、ここに買い物に行く以外は、殆んど家に引き籠もっているのよ。娘さんは、わざわざ仕事を辞めてあの人の世話をしているのよね・・」
「そうなんですか・・」
「まぁ、他人の家庭に口出ししている暇があったら、仕事しないとね。」

スーパーから出て帰宅しても、歳三はあの母娘の姿が頭から離れなかった。

特にあの、娘の方の思いつめた表情が。

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Last updated  Jul 7, 2021 05:25:31 PM
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Jul 3, 2021



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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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「まさか、“人違い”で誘拐されたなんて、とんだ笑い話だぜ!」
「あはは、そうだね!」

その日の夜、伊庭家の別荘の中庭で、歳三達はBBQの準備をしながら昼間の事を話していた。

すると、別荘の前に一台の黒塗りのリムジンが停まり、中から金髪紅眼の青年が、彼の秘書と思しき男と降りて来た。

「すいません、道が混んでいて遅れました。」
「いや、今始めようとした所だ。」
「何だ、あいつら?」
「さぁ・・」
「もしかして、大物か?」
歳三達がそんな事を話していると、件の青年が彼らの元にやって来た。
「何だ、てめぇ!?」
「俺達に何か用か?」
青年は無言で、高級肉の塊(大量)を差し出した。
「千景様、ちゃんとお肉は渡せましたか?」
「あぁ。」
「“彼”とは、話せましたか?」
「いや・・少ししか話せなかった。それよりも天霧、肉は何処で調達した?」
「知り合いの伝手で頼みました。」
「まさか、薄桜鬼が我々と違う世界に居るとはな。」
「ええ、わたしも驚きました。今世では、協力者同士となると思っていましたが、運命は残酷なものですね。」
「俺は、運命などというものは信じん。」
「貴方様は、昔からそうでしたね。」
天霧は、そう言うと溜息を吐いた。
「なぁ、あいつ一体誰なんだ?」
「さぁ・・」
「あ、どこかで見た顔だと思ったら、あいつ風間コンツェルンの社長だよ!」
「えぇっ!?」
「土方の人脈、一体どうなってんだ!?」

(ややこしい事になっちまったな・・)

「トシさ~ん、この世で一番好きなのは、誰だ?」
「おい、どうした急に?」
「ねぇ、僕だよね?僕だって言ってよ、トシさん!」

そう言った八郎の目は、笑っていなかった。

「もう僕、置いて逝かれるのは嫌なんだ!だから・・」
「うるさいぞ、黙れ。」
「何するのさ!」
「頭を冷やしただけだ。」

そう言った千景の手には、氷水が入ったグラスが握られていた。

「僕は・・」
「少し、向こうで話そうか?」
「わかったよ。」

(あいつ、大丈夫か?)

「ねぇ、僕と話したい事って何?」
「お前には、“昔”の記憶はあるのだろう?」
「うん、あるよ。それがどうかしたの?」
「貴様は、“昔”から変わっていないな。何故それまでにあやつに執着するのだ?」
「トシさんは、僕の全てだから。トシさんだけなんだ、僕をこんなに夢中にさせてくれるのは。昔から、僕はトシさんの事が好きなんだ。誰にも渡したくないんだ・・勇さんにも。」

(病んでいるな。)

「だから、僕の邪魔をしないでよね?」
「わかった。」

(こいつとは、余り関わらない方が良いな。)

八郎と対峙しながら、千景はそう思った。

「トシさん、別荘楽しかったね!」
「あぁ。」
「今度は二人“だけ”で行こうね!」
「わかった・・」

悪夢のような週末を伊庭家の別荘で過ごした歳三は、知らない内に疲労が溜まっている事に気づかなかった。

「どうした土方、顔色が悪いぞ?」
「大丈夫です・・」
「何かあったら、医務室に行くんだぞ。」
「はい・・」

午前中の教練は何の支障もなく受けられた歳三だったが、昼食を取ろうと食堂へ行こうとした時、急に寒気に襲われた。

「トシ、どうした?」
「ちょっと気分が悪いから、医務室に行って来る。」
「一緒に行こうか?」
「頼む・・」

勇に肩を貸して貰いながら、歳三は医務室へ向かった。

「風邪だね。風邪薬を飲んで暫く横になるといい。」
「わかりました。」
「トシ、付き添わなくても大丈夫か?」
「ガキじゃねぇんだから、大丈夫だよ。」
「そうか・・」
「もう戻った方がいいぜ。また教官に怒鳴られるのは嫌だろう?」
「わかった・・」

勇は暫く歳三の手を握っていたが、やがて名残惜しそうに彼の手を離し、医務室から出て行った。

「土方、どうだった?」
「風邪だったよ。」
「週末、色々とあったからなぁ。」
「色々?」
「後で話すよ。」
「わかった。」

そんな勇達の会話を、八郎は何処か恨めしそうな顔をしながら聞いていた。

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Last updated  Jul 3, 2021 09:48:03 PM
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Jun 27, 2021



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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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(何で、俊郎さんがここに?)

「全員、整列!」
「トシ?」
「いや、何でもない・・」
「・・久しぶりだね、歳三君。元気そうで良かった。」
「ト、トシ!?警視総監と知り合いなのか!?」
「ま、まぁ・・」
「な、なんだって!?」
「そこ、騒ぐな!」
「すいません!」
「いや、いい。土方君は、わたしの友人の子供でね。彼が子供の頃からの知り合いだ。」
「は、はぁ・・」

―おい、今の聞いたか?
―土方が、警視総監と知り合いだってよ!
―すげぇ人脈だな・・

この事で、歳三は暫くの間同期達の間で気まずくなった。

「やぁ、良く来てくれたね!」
「お、お邪魔しま~す。」
「何だここ、すごいな・・」

週末、歳三達は八郎に招待されて伊庭家の別荘に来ていた。

「今日は、ゆっくりしていってね!」
「は、はぁい・・」

(そんな事言われても、寛げるわけねぇだろ・・)

歳三は、勇とは本当は彼の実家に遊びに行きたかったのだが、伊庭家の別荘に招待された事を知った由紀子が、“そちらの方を優先しろ”と言ってきたので、仕方なく同期達と伊庭家の別荘へとやって来たのだった。

「おや八郎、来たのか?」
「パパ~!」
「け、警視総監!」
「お邪魔しております!」
「いや、そんなにかしこまらなくてもいいよ。ゆっくりしていきなさい。」

(いやいや、それは出来ねぇよ・・)

警察組織のキャリア“雲の上の存在”である伊庭父子相手に“ゆっくりしていけ”と言われても、己の一挙手一投足でその後の警察官としてのキャリアが決まるのだからゆっくり出来る訳がない。
悲しいかな、それが警察官というものなのだ。

「トシさん、みんなでバドミントンやろう!」
「わ、わかった・・」
「あ、俺もやります!」
「俺も!」

こうして歳三達は伊庭家の広大な別荘の庭でバドミントンをする事になったが、皆八郎に忖度して本気を出そうとしなかった。

「つまんないなぁ、もぅ。」

(まぁ、そうなるよなぁ・・)

「トシさん、行くよ~!」
「あ、おい、待て・・」

八郎が飛ばしたシャトルは、茂みの中へと消えていった。

「あ、ごめん~!
「俺が取って来るから、八郎達は先に別荘の中へ戻っていろよ。」
「うん、わかった。」

八郎達が別荘の中へ戻ると、俊郎の書斎から彼が好きなオペラのメドレーが聴こえて来た。

「何か飲む?」
「じゃぁ、俺アイスコーヒーで。」
「オッケー!」

八郎達は、別荘の居間でアイスコーヒーを飲みながら歳三が戻るのを待っていた。

「どうしたんだろう?トシさん、遅いねぇ。」
「俺があいつの携帯にかけてみようか?」
「勇さん、トシさんの携帯の番号、何で知っているの?」
「いや、警察学校に入学する前、連絡を取り合う為にお互いの連絡先を交換したんだ。」
「へぇ、そうなの・・」
「何だろう、さっきからかけているんだが繋がらないな。」
「ねぇ、もしかして何か大変な事に巻き込まれているんじゃないのか!」
「そうかもしれない!」

八郎達が別荘の中庭へ向かうと、そこにはバドミントンのシャトルと歳三の携帯電話が茂みの中に落ちていたが、歳三本人の姿はなかった。

「どうしよう、トシさんが・・」
「八郎、何かあったのか?」
「パパ、トシさんが居ないんだ!」
「慌てるな。すぐに近くの警察に通報しろ。おそらく、まだ彼と、彼を拉致した犯人は遠くには行っていない。」
「わかった!」

八郎達が地元警察と協力して歳三の消息を探している頃、その本人は見知らぬ車のトランクに閉じ込められていた。

(畜生、早くここから出ねぇと!)

歳三はトランクの蓋に手を掛けると、そこはロックされておらず難なく開いた。
 一か八か、彼はトランクから身を乗り出してそこから脱出した。
地面を転がり、何とか立ち上がった歳三は、全身傷だらけになりながらも伊庭家の別荘へと戻った。

「トシさん!」
「トシ、大丈夫か!?一体何があったんだ!?」
「それは後で話す。それよりも、救急車呼んでくれ。」

歳三はそう言った後、気を失った。

「トシさん、しっかりして!」
「トシ~!」

歳三が病院に運ばれた後、彼を拉致しようとした犯人二人組が警察に逮捕された。
彼らは、身代金欲しさに八郎を誘拐しようとしたが、“人違い”で歳三を誘拐してしまったのだった。

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Last updated  Jun 27, 2021 08:06:41 PM
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「トシさ~ん!」
「げっ」
警察学校に入学してから、一ヶ月が経った。
大型連休が終わり、歳三達が食堂で帰省話に花を咲かせていると、そこへ八郎がやって来た。
「トシさん、どうして軽井沢の別荘に来てくれなかったの?トシさんの誕生日を盛大に祝いたかったのにぃ!」
「済まねぇ、忘れていた。」
「ひどい~!」
八郎はそう言って嘘泣きすると、歳三にしなだれかかった。
「ねぇトシさん、今度の日曜、一緒に出かけたいなぁ。」
「悪い、その日は予定があるんだ。」
「え~!」
「八郎、うっとうしいからそろそろ離れてくれねぇか?」
「嫌だよ~!」
歳三は困惑したような顔で同期達に助けを求めたが、彼らは皆気まずそうに俯いていた。
「トシ、こんな所に居たのか、探したぞ!」
「勝っちゃん!」
「あ、トシさん!」
歳三は勇の姿に気づくと、八郎達が居るテーブルから離れた。
「あ、みんなも今度の日曜、うちに来てね。」
「は、はい・・」
「是非、行かせていただきます・・」
警察は完全なる縦社会。
その場に居た者達は皆、誰も断れなかった。
「なぁトシ、またノート見せてくれないか?」
「あぁ。それにしても勝っちゃん、目の下に黒い隈出来てるぜ?」
「あぁ、昨夜徹夜で勉強していてな。」
「余り無理するなよ。一夜漬けは身体に悪いぜ。」
「あぁ、わかった。」
勇はそう言うと、歳三からノートを受け取った。
「トシの字は、いつ見ても綺麗だなぁ。」
「そうか?」
歳三がそう言いながら自分を見つめているその姿は“昔”と変わっていなかった。
「どうした?」
「いや、何でもない。」
そんな二人の姿を、八郎は恨めしそうな目で見ていた。
「おい、どうしたんだ?」
「いいえ、何でもありません。」
「そうか。丁度良い、君に話がある。」
「わかりました。」
教官と共に廊下を歩いてゆく八郎の姿を見ながら、彼と同期の佐々木と宮本は、こんな話をしていた―
「また、あいつ教官に呼ばれているよ。」
「あいつ、父親が警視総監だからな。教官も色々と必死なんだろうよ。」
「そういや、土方も家が伊庭と同じ警察官僚だったよな?金持ちの家に生まれた奴は良いよなぁ。」
「本当、“上級国民”ってカンジ。」
二人の会話を、密かに聞いている者が居た。
「教官、お話というのは?」
「今朝、君の父上から電話があってね。何故警察大学校ではなく、警察学校へ来たんだ?」
「好きな人がここに居るからです。」
「それだけか?」
「はい。」
「君は大変優秀なのに、その能力を活かそうとは思わないのかい?」
「いいえ。」
「そうか。では下がりなさい。」
「はい、失礼致します。」
午後の授業は、体術と逮捕術の訓練だった。
「え、土方十人抜き?」
「マジで!?あの顔でやるなぁ!」
「やるって言ったら、伊庭もすげぇよなぁ。」
「二人共向かう所敵なしって感じだよな。」
「トシは相変わらず強いなぁ。」
「え、近藤さん二人の事を知っているんですか?」
「あぁ。トシとは、子供の頃から同じ剣道教室に通っていたからな。国体にも出た事があったなぁ。」
「へぇ~」
「それで、近藤はどうなんだ?」
「俺はまぁ・・二人程、強くないかなぁ。」
そう言って笑った勇は、歳三と同じ十人抜きだった。
「トシさん。」
「八郎、どうした?」
「ねぇトシさん、本当に僕と付き合ってくれないの?」
「済まねぇな、俺ぁもう・・」
「どうして、僕じゃ駄目なの?」
「俺は、昔から勝っちゃんの事が好きだった。でも、あの時は・・」
「あの時、トシさんは勇さんに未練があったから、その想いを叶えようとしている訳?」
「あぁ、そうだ。」
「そう・・じゃぁ、僕も遠慮しないからね。」
「八郎?」
「トシさんがそのつもりなら、僕もトシさんを諦めないからね。」

そう言った八郎の瞳は、昏い光を宿していた。

(一体八郎の奴、何だったんだ?あいつらしくもねぇ・・)

そんな事を思いながら、歳三は夢も見ずに眠った。

翌朝、歳三が目を開けてベッドの中で寝返りを打っていると、突然廊下が騒がしくなった。

(何だ?)

「トシ、起きろ!」
「どうしたんだ、勝っちゃん?」
「警視総監がいらっしゃったんだ!すぐに制服に着替えて整列しろってさ!」
「わ、わかった!」

何が起きたのかわからぬまま、歳三が勇と共に制服姿で校庭へと向かうと、そこには八郎の父・俊郎の姿があった。

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Last updated  Jun 27, 2021 08:04:25 PM
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May 26, 2021



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「え、ホームパーティー?」
「あぁ、今週の日曜日に、友達も誘っていいって、母さんが。」
「わかった。」
「じゃぁ勝っちゃん、またな!」
「あぁ!」
剣道教室が終わり、歳三は由紀子に、勇をホームパーティーに誘っていいのかどうかを尋ねると、彼女は誘っても良いと答えた。
「トシちゃんのお友達だから、パーティーに誘ってもいいに決まっているでしょう。トシちゃんのお友達にも一度会ってみたいし。」
「ありがとう、母さん!」
日曜日、土方家でささやかなホームパーティーが開かれた。
「うわぁ、すげぇ!ご馳走が沢山ある!」
「勇君、沢山食べてね。」
「はい!」
テーブルには、唐揚げやエビフライ、フライドポテトやオニオンリングなどが並べられていた。
「勝っちゃん、向こうに行って遊ぼうぜ!」
「あぁ!」
勇と歳三は、土方邸の中庭へと向かった。
そこには、美しい池があった。
「トシの家は凄いな!」
「大した事ねぇよ。」
「トシは小さい頃から俺と生きる世界が違うんだなぁ。」
「そんな事はねぇ!俺は、ずっと勝っちゃんを・・」
「トシ、危ない!」
歳三は池の辺りの雑草に足を取られ、そのまま池へ転落した。
必死に池から上がろうとしたが、振袖の所為で身体が動かない。
(畜生・・)
「トシ!」
激しい水音と共に、勇が歳三を抱え、池から上がった。
「トシちゃん、トシちゃん!」
「すいません、池に落ちちゃって!」
「トシちゃんを助けてくれてありがとう、勇さん。」
「いいえ、当然の事をしただけです。」
「ありがとう、本当にありがとう。」
病院に運ばれた歳三は、少し水を飲んだだけで、命に別条はなかった。
「今日はうちに泊まっていって。」
「え、でも・・」
「いいわよね、あなた?」
「あぁ、構わないさ。歳三の命の恩人だからな。」
歳三の父・隼人は、そう言って勇を歳三と同じ色の瞳で見た。
「勝っちゃん!今夜は一緒に寝ようぜ!」
「あぁ。」
その日の夜、歳三は勇と一晩中“昔”の話をして盛り上がった。
「おやすみ、八郎。」
「おやすみなさい、お母様・・」
(トシさんに、会いたかったなぁ・・)
熱を出して土方家のホームパーティーに行けなかった八郎は、そう思いながら眠った。
「おはよう、トシさん!」
「八郎、風邪はもう治ったのか?」
「うん。ホームパーティー、来られなくてごめんね。」
「別に気にすんなって!」
「ねぇトシさん、来週誕生日だよね?何か欲しい物はない?」
「ねぇな。」
「そう。」

五月五日。

その日は歳三の七歳の誕生日で、由紀子は朝から誕生会の準備をしていた。

「母さん、朝から張り切っているな。」
「まぁそうだろ、昔は七歳っていったら、神様にご報告をして、盛大に祝う日だからなぁ。」
「だから俺、今日も女装しているのか・・」
「もう女装しなくてもいいぞ、トシ。:
「ふぅん・・」
「トシさん、誕生日おめでとう!今日も綺麗だよ。」
「ありがとう。」
その日、歳三は真紅の振袖姿で、真紅のリボンで黒髪を飾っていた。
「トシちゃん、誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」
「これからも元気で居てくれよ?」
「うん、父さん!」
「トシさん、大人になったら、僕と結婚して下さい!」
「え・・」
「こら、歳三君は男だぞ?」
「僕達が大人になったら、男同士でも女同士でも結婚できる時代になるよ!」

それから、十五年の歳月が経った。

「勝っちゃん!」
「トシ!」

桜舞う季節、勇と歳三は警察学校の入学式で再会した。

「これから一緒に頑張ろうぜ!」
「あぁ!」

警察官の新しい制服に身を包んだ二人は、緊張した面持ちで校長の挨拶を聴いていた。

「総代、伊庭八郎!」

―え、あいつが・・
―そんな・・
―嘘だろ?

「はい!」

そう言って壇上にあがったのは、幼馴染の伊庭八郎だった。

彼は、歳三と目が合った瞬間、嬉しそうな顔をして笑った。

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Last updated  May 26, 2021 10:44:18 AM
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May 17, 2021



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「どうしたの、八郎?余り食べていないじゃない?」
「うん・・ちょっと疲れてて・・」
「受験が終わったから、疲れるのは当然よね。それにしても、八郎ちゃんは凄いわよね。一発合格なんて。」
「ありがとうございます、お義母様。」
姑から八郎の事を褒められ、和子は頬を紅く染めながら彼女に礼を言った。
「和子さんに、八郎ちゃんは似たのね。同じ血を分けた兄弟なのに、どうしてこうも頭の出来が違うのかしら?」
「母さんっ!」
「あら、ごめんなさいねぇ、折角のお祝いの席でこんな事を言うのは駄目よねぇ?」
「・・大丈夫です、わたしは気にしていませんから。」
そう言った和子が、ナプキンを強く握り締めている事に、八郎は気づいた。
「八郎ちゃん、もうお友達は出来たの?」
「はい。」
「まぁ、どんな子かしら?」
「トシちゃんはね、凄く賢くて強いんだ!」
「一度わたしも会ってみたいものだわ。今度その子をうちに連れて来なさい。わたしがクッキーを焼いてあげるわ。」
「わ~、やった~!」
「お義母様・・」
「さぁ、今夜はもう遅いから寝なさい。」
「は~い。」
八郎がそう言って自室へ向かうのを見送った後、和子は姑に、“トシちゃん”の事を話した。
「まぁ、土方さんのところの子なのね。だったら、八郎ちゃんの友達としては大丈夫ね。」
姑はそう言うと、もう下がるよう和子に命じた。
「和ちゃん、起きてる?」
「何だよ、うるせぇな。」
和子が和貴の部屋のドアをノックすると、中から不機嫌な表情を浮かべた和貴が出て来た。
「あのね、今週末うちでホームパーティーをする事になったの、だから・・」
「俺はいい。」
「でも・・」
「あの人達は、俺の事を“伊庭家の恥”だと思ってんだろ?お受験で失敗した出来損ないだって。」
「和貴・・」
「俺の事は放っておいてくれよ!」
和子の目の前で、和貴は乱暴にドアを閉めた。
「和子さん、何をしているの?早くお部屋にお戻りなさい。」
「はい・・」
和子はやり切れない思いで和貴の部屋の前から去った。
「トシちゃん、今週末伊庭さんの所でホームパーティーをするから、その日は空けておきなさいね!」
「わかった!」
「あ~もう、お風呂入った後はすぐに濡れた髪を乾かしなさいって言ったでしょう!」
「わかったよ~。」
「ドライヤー、そんなに当てないの!綺麗な髪が焦げちゃうでしょう!」
「うるさいなぁ、わかってるって!」
「トシさん、おはよう!」
「おはよう。」
「どうしたの、その髪?少し耳の辺りがはねているよ?」
「昨夜、ドライヤーで髪を乾かすのを忘れたらこうなった。」
「僕が直してあげるよ!」
「悪い、頼む。」
「任せて!」
八郎は歳三の髪を櫛で梳きながら、昔の事を思い出していた。
あれは、蝦夷共和国を樹立して間もない頃の事だった。
『トシさん、その髪・・』
『あぁ、ちょっとな。』
京に居た頃は腰下までの長さがあった歳三の髪は、洋装に合わせて短くなっていた。
『どうした?』
『何だか、綺麗な髪なのに勿体無いなぁって・・』
『うるせぇな。』
そう言った歳三の顔は、何処か照れているように見えた。
「終わったよ。」
「ありがとう。それにしても長い髪はうっとうしいったらありゃしねぇ。」
「僕は好きだよ、トシさんの髪。触ると心地良いんだもの。」
「そうか?」
「お前ら、本当に仲良いよな~」
「付き合っているのかよ~?」
「そうだよ~」
同じクラスの男子からそうからかわれ、八郎はとっさにそう言って歳三に抱きついた。
「おい、離れろって。」
「嫌だよ~。」

(こうして、トシさんを独り占めできるなんて嬉しいなぁ・・)

「トシさん、一緒に帰ろう!」
「悪ぃ、俺今日剣道教室があるから。」
「そう・・」
「じゃぁ、また明日な!」

校門の前で歳三と別れた八郎は、彼が乗った車が次第に学校から遠ざかってゆくのを、雨の中静かに見送った。

「勝っちゃん、久しぶりだな!」
「あぁ、久しぶりだな、トシ!」

二週間振りに勇と剣道教室で会った歳三は、喜びを爆発させるかのように彼に抱きついた。

「苦しい。」
「済まねぇ、嬉しくて、つい・・」
「そういう所は、昔から変わってないな。」

勇はそう言って歳三に向かって屈託の無い笑みを浮かべた。

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Last updated  May 17, 2021 07:11:19 PM
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Apr 29, 2021



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「もうそろそろ、トシちゃんも塾通いしないとね。」
「母さん、俺受験しないから。」
「まぁ、何ですって!?」
歳三が十歳の誕生日を迎えた日の朝の事、土方家に由紀子のヒステリックな叫び声が響いた。
「母さん、そんなに興奮しなくても・・」
「そうよ。」
「あんた達は黙っていなさい!いい事、トシちゃん、この家の跡を継ぐのはあなたなの!」
「何で俺にばっかり母さんはうるさいの?兄さんや姉さん達には何も言わないのに!」
「あなたの為なの!」
「俺は受験しないから!」
そう叫ぶと歳三は、ダイニングルームから出て、自室に引き籠もった。
「全く、あの強情さは誰に似たのやら・・」
「いや、気が強くて強情っぱりな所はこの家の血さ。」
「お父さん・・」
「どれ、俺があいつの様子を見て来るか。」
そう言った歳三の祖父・喜六は、末孫の部屋をノックした。
「トシ、居るか?」
「爺ちゃん、何で俺に母さんは厳しくするの?俺が嫌いだから?」
「そうじゃねぇ。トシに、立派な大人になって貰いてぇから、あえて厳しくしているのさ。」
「そうなのか?」
「あぁ。子供を嫌いな親なんか居ねぇよ。だから、機嫌を直してくれよ。」
「わかった。」
その後、歳三は喜六お手製の沢庵タルトに舌鼓を打った。
「なぁ爺ちゃん、俺将来警察官になって、悪い奴をやっつける!」
「はは、そうか、そりゃ頼もしいな。」
「爺ちゃん、その時まで俺とずっと一緒に居てくれる?」
「あぁ、お前ぇが刑事になるまで、傍に居るよ。」
「約束だぞ、爺ちゃん!」
「あぁ、約束だ。」
そう言って約束してくれた喜六は、半年後呆気なく病死した。
元警察官で、警察学校の教官だった喜六の告別式には、警察関係者の弔問客が数多く来ていた。
その中に、伊庭家の者達も来ていた。
「喜六さん、突然の事で驚いたわ。由紀ちゃん、大丈夫?」
「和ちゃん、来てくれてありがとう。」
由紀子と和子は同じ高校の同級生で、互いの事を今でも、“由紀ちゃん”、“和ちゃん”と呼んでいた。
「母さん、この人誰?」
「八郎、この人は母さんのお友達の、土方由紀子さん。由紀ちゃん、この子は息子の八郎。八郎、さぁご挨拶なさい。」
「はじめまして、八郎と申します。」
「こちらこそはじめまして、八郎君。今、いくつなの?」
「十歳です。」
「まぁ、うちのトシと同い年ね。丁度いい機会だから、紹介するわね。トシ、いらっしゃい!」
八郎の前に現れたのは、黒の喪服姿の少女だった。
あの時とは違い、桃割れに結い、華やかな簪で飾られていた黒髪は下ろされ、控え目に黒いレースのリボンがその頭頂部に飾られていた。
「トシちゃん、こちらは八郎君。八郎君、こちらはうちの可愛い末っ子の、トシちゃんよ。仲良くしてね。」
「はい!」
八郎がそう言って歳三を見ると、彼は仏頂面を浮かべていた。
喜六の告別式が終わり、土方家の男達が広間で故人を偲ぶ宴会を開いている間、八郎と歳三は彼の部屋でポーカーに興じていた。
「うわぁ、また負けた!強いね、トシちゃんは!」
「おい、その“トシちゃん”ていうの、やめろ。こんななりをしているが、俺は男だ。」
「え~!」
「疑うなら、その証拠を見せようか?」
歳三がそう言って喪服の裾を捲り上げようとすると、八郎が慌てて止めた。
「じゃぁ何て呼べばいいの?」
「普通に呼べ。」
「え~と、じゃぁ、“トシさん”?」
「それでいい。」
「トシさん、僕と結婚して下さい!」
「おい、俺は男だぞ?」
「結婚は、好きな人同士がするものだよ!僕、トシさんが好きだよ!」
「そうか。」
「ねぇトシさん、大人になったら僕と結婚してくれる?」
「あ、あぁ・・」
それは、子供の頃に交わした、些細な約束だった。
だが、歳三はそんなものを成長するにつれてすっかりと忘れてしまった。
「あ~、疲れた!」
「トシちゃん、駄目でしょう、帰ってすぐソファに寝転がらないの!」
「は~い!」
「トシちゃん、今晩はトシちゃんの好きなカレーだから、手を洗って来なさい。」
「は~い。」
八郎とあんな“約束”を交わした後、歳三は塾の模試の成績を下げない事を条件に、剣術道場と塾、学校と自宅を往復する生活を送っていた。
その上、由紀子の方針で歳三は水泳や乗馬、外国語のレッスンなどのスケジュールで一週間習い事だけで埋まり、ゆっくりと休んでいる暇などなかった。
「もうすぐね、入学試験の日。」
「うん。」
「大丈夫、あなたなら合格するわ。」
年が明け、歳三は八郎が通っている名門校を受験し、首席で合格した。
「やったじゃない、おめでとう!」
「ありがとう・・」
合格を知ってはしゃぐ由紀子を横で見ながら、歳三は勇と一緒に公立の中学に行きたかったと思っていたが、言えなかった。
そして季節は巡り、春を迎えた。
「トシさん、これからよろしくね。」
「あぁ・・」

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「トシ、髪に桜の花弁がついているぞ。」
「あぁ、悪い。」
あれは、京に来てもうすぐ一年目を迎えようとしている時だった。
突然勇が、“花見をしよう!”と言い出し、監察方の山崎烝が京の花見に最適な場所を見つけ、急遽花見をする事になったのだった。
「トシは桜が似合うなぁ。」
「そんな事言うなよ、恥ずかしい。」
「あ~あ、土方さんばかりずるい。」
総司がまるで拗ねた子供のように頬を膨らませながらそう言うと、勇に抱きついた。
「はは、総司はいくつになっても甘えん坊だなぁ~!」
「でしょ~!」
まるで自分に張り合うかのように総司は勇に抱きつき、そのまま離れようとしなかった。
「こうしてみんなと花見をするのは、今度いつになるかわからないなぁ。」
「いつでも出来るじゃねぇか。」
「はは、そうだな。」
勇はそう言うと、豪快に笑った。
幸せな、とても幸せな時間だった。
ずっとこのままでいいと思っていた。
だが時の流れは残酷だった。
一人、また一人と、仲間達が歳三の前から居なくなってしまった。
“土方さん・・”
愛する女も、居なくなってしまった。
それなのに、まだ自分は生きている。
生きている・・
はっと、また夜中に歳三は目を覚ました。

(またあの夢か・・)

この時期―四月下旬から五月上旬まで、毎日のように“あの夢”を見ている。
それは、前世が原因であると、わかっている。
幕末の事を引き摺る程、自分は女々しくないと思っていたのに、それなのに―
「トシちゃん、どうしたの?何処か身体の調子でも悪いの?」
「ううん・・」
「嘘吐いちゃ駄目!」
歳三の母・由紀子は、そう言うなり歳三の額に手を当てた。
「熱があるじゃないの!」
「こんなの、大した事じゃ・・」
「駄目よ!」
由紀子はヒステリックにそう叫んだ後、運転手の大田にすぐさま車を出すよう命じた。
病院に運ばれた歳三は、医師から“ただの風邪”と言われた。
だが心配性な由紀子は、彼を入院させる事にした。
(入院なんて、大げさなんだよなぁ・・)
「ゴホッ、ゴホッ・・」
唯の風邪だったのだが、歳三は入院してから高熱と咳に苦しめられた。
(総司も、こんなに苦しかったのか・・)
ベッドで寝返りを打ちながら、歳三はかつての仲間でもあり、弟分であった沖田総司の事を思い出していた。
『僕も連れて行って下さい、僕はまだ、戦える!』
そう言いながら、病を抱えた身でありながらも最期まで戦おうとしていた。
『どうして、近藤さんを守ってくれなかったんだ!あなたなら出来た筈だ!』
―俺は、あの人を守りたかった!でも、出来なかったんだ!
『トシ、もうそろそろ楽にさせてくれ・・俺はもう、充分に生きた。』
 流山で勇と別れた時、彼はこれから新政府軍に投降するというのに、晴れやかな笑みを浮かべていた。
―何で、俺は何も守れねぇんだ?一番大切なもんを見捨てて、てめぇだけ生き残って!

ずっと、仲間を見送って来た。

山南、平助、近藤、総司、野村、そして・・

“トシさん・・”
“土方さん。”

自分が最も愛した女と、魂で結ばれた友。

二人は今、どうしているのだろうか。

会いたい―歳三がそう思っていた時、病室に誰かが入って来る気配がした。
誰だと思いながら歳三が身構えていると、突然カーテンが勢いよく開けられ、白衣姿の青年が翡翠の瞳で自分を見つめていた。
「やっと会えたね。“はじめまして”かな?それとも、“お久しぶりです”の方が合っているのかな、土方さん?」
「総司、お前、総司なのか?」
「そうですよ。」
青年―沖田総司はそう言うと、歳三に微笑んだ。
「まさか、てめぇが医者になるなんてな・・」
「それはこっちの台詞ですよ。まさかあの鬼副長が、ランドセル背負った小学生なんて・・一瞬嫌らしい想像をしてしまいましたよ。」
「他の奴らとは、会ったのか?」
「えぇ。千鶴ちゃんは、この病院で医師として働いていますよ。」
「そうか・・」
「まぁ、彼女は僕の妻になりましたから、残念でしたね。」
「くそ、てめぇ・・」
歳三は自分に向かって得意気な様子で左手薬指にはめられている結婚指輪を見せつけている総司を睨んだ。
「ねぇ土方さん、もしかして労咳とかじゃないですよね?」
「ただの風邪だ、気にするな。」
「そうですか、それは良かった。」

総司はそう言うと破顔した。

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Apr 24, 2021

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「一体どうしちゃったのかしら?」
「一度、精神科に診て貰った方がいいんじゃないのか?」
「そんなの、ご近所さんに知られたらどうするの?ただでさえ・・」
自分の事で両親が言い争っている声が廊下越しに聞こえ、八郎はリビングのドアを開けずに、自室へと戻った。
ベッドの中に入って眠ると、また“昔”の夢を見た。
それは、江戸に居た頃の幸せな日々のものだった。
“トシさんはモテるなぁ。”
“はは、よせやい。”
そう言って照れ臭そうに笑いながら、雪のように白く肌理が細かい肌が仄かに赤く染まるさまが、八郎は好きだった。
多摩の豪農の家に生まれた歳三は、十一の時に江戸へ初めて奉公へ行ったが、上手くゆかず、十七の時に再び奉公へ出たが、女中を孕ませた事で奉公先を追い出され、こうして八郎と夜な夜な悪所通いをしては、朝まで酒を酌み交わす日々を送っていた。
“ねぇトシさん、僕はトシさんみたいに綺麗な人は今まで見た事がないんだ・・”
“おいおい、勘弁してくれ。男に向かって綺麗とか言うな。”
”トシさんは本当に綺麗なんだもの。“
“酔ってんのか、てめぇ?”
“うん、酔っているよ、トシさんの美しさに。”
“ったく、しょうがねぇなぁ。”
そう言いながら自分を見つめる歳三の、美しい紫の瞳が好きだった。
ずっと、その瞳を見つめたいと思っていた。
それなのに。
そんな、儚くて小さな願いすら、叶えられなかった。
夢から覚めると、自分の頬は涙で濡れていた。
(トシさん・・)
いつか、戦がない世で生まれ変わったら、必ず歳三を幸せにすると誓った。
そして、漸く彼に会った。
(トシさん、今度こそ僕がトシさんを幸せにしてあげるからね!)
「坊ちゃま、おはようございます。」
「おはよう。」
軽いノックの音と共に、燕尾服姿の青年―伊庭家の執事・斎藤一が八郎の部屋に入って来た。
「お召し替えの時間です。」
「わかった。」
「失礼致します。」
斎藤は、そう言うと八郎に靴下を履かせた。
「この前、僕“トシ”さんに会ったんだ。」
「ご友人が、出来たのですか?」
そう自分に尋ねる斎藤は、少し動転しているかのように見えた。
「うん・・まぁ、これから友達になるつもりだけど。」
「そうですか。」
自分にそう言って優しく微笑んでいる執事が、前世を憶えているのかはわからないが、先程の様子を見る限り、彼は“憶えている”。
「八郎、昨夜は酷くうなされていたようだけれど、大丈夫なの?」
「はい。」
「そう、良かった。」
伊庭家は、江戸時代には旗本で、名家である事は平成の今でも変わらない。
八郎には、両親と兄が一人居る。
その兄―和貴は、この家の中では“居ない者”とされている。
それは―
「八郎、この前の塾の模試の結果、見たわよ。順調に成績が上がっているじゃない。」
八郎の母・和子は、そう言って彼に優しく微笑んだ。
「ありがとうございます。」
「これなら、東大に行けるわね。」
「おいおい、そうプレッシャーをかけるものではないよ。まだ八郎は東大に行くと決まった訳じゃないんだから。」
「まぁ、そうね。」
「ごちそう様。じゃぁ、行って来ます!」
「気を付けてね。」
黒塗りのリムジンに乗った八郎が窓の外をふと見ていると、丁度黒いランドセルを背負った歳三が通りの向こうを走っていくのを見た。
「坊ちゃま?」
「少し、止めて。」
「かしこまりました。」
「ありがとう。」
運転手に礼を言った八郎は、車から降り、息を弾ませながら歳三の元へと駆けていこうとした。
その時、歳三が誰かに向かって駆けてゆくのを見た。
「勝っちゃん!」
「トシ、おはよう。」
「勝っちゃん、今日は一緒に帰ろうぜ!」
「あぁ!」
歳三が楽しく話す視線の先には、近藤勇の姿があった。
―どうして、また・・
前世でも、歳三と勇は親友同士だった。
―どうして、僕じゃないの?
涙を堪えながら八郎は、二人に背を向けて車の中へと戻っていった。
「出して。」
「はい・・」
八郎が通う学校は、元々幕臣の子弟達が通う開成所であったが、明治となってからは主に華族の子弟達が通う、所謂“華族学校”となり、名門校として知られている幼稚園から大学までのエスカレーター式の進学校でもあった。
対して歳三が通っているのは、公立の小学校だった。
教育熱心な母親が八郎が通う学校を歳三に受験させようとしたが、歳三は頑として拒否した。
そして彼は、入学した小学校で勇と“会った”。
「なぁ勝っちゃん、今度うちでゲームやろうぜ?」
「あぁ、それよりもトシ、今日は道場に来るのか?」
「来るに決まっているだろ!」
今世に於いても、歳三と勇は親友である。
同じ剣術道場に通い、互いの家を行き来したりして他愛のない話をしていた。
「勝っちゃん、“今度こそ”、ずっと一緒にいような!」
「あぁ。」

二人を繋ぐもの―それはあの激動の時代を駆け抜けた、“記憶”だった。

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つまらない。

華やかなシャンデリアも、沢山並んだご馳走も、少年の目には全てがつまらなく見えた。
親の“仕事”の都合で、誰かの結婚式に出席したのだが、そこは大人の社交場。
子供である歳三にとっては退屈この上なかった。
両親は新郎新婦やその親族への挨拶回りに忙しく、歳三は披露宴の会場の隅で、只管箸を動かしながら鶏の唐揚げと沢庵を交互に頬張っていた。
「まぁ、見て・・」
「可愛らしい事。」
時折椅子に座り沢庵を頬張っている歳三の姿を、チラチラとドレスや色留袖姿のご婦人達がそんな事を言いながら見ては通り過ぎていった。
それもその筈、彼は加賀友禅の振袖姿に、西陣織の帯を締めていた。
披露宴の会場には何人か子供の姿があったが、皆洋装姿で、振袖姿なのは歳三だけだった。
(あ~、早く脱ぎたい・・)
歳三は長い黒髪を桃割れに結われて華やかに着飾ってはいるが、れっきとした男児である。
“トシちゃんの髪は、簪が映えていいわね。”
“本当。”
警察官一家で、六人兄弟の末っ子として生まれた歳三は、二人の姉達に大層可愛がられていた。
しかし彼女達は困った事に、時折歳三を等身大の着せ替え人形のように色々と彼の髪と顔を弄る癖があった。
その所為なのかどうかはわからないが、正月や盆などの親族が集まる年中行事には、必ず仏頂面を浮かべている歳三の姿が写真や映像に残っていた。
そして今日も、結婚披露宴というめでたい席であるというのに彼は仏頂面を浮かべていた。
新郎新婦のお色直しや彼らの友人達の余興、そして新婦の両親への手紙朗読など、全てが歳三にとっては退屈で、早くホテルの部屋に戻りたくて仕方がなかった。
漸く披露宴が終わり、招待客達が三々五々それぞれ自宅やホテルの部屋に戻っていく中、歳三達は新郎の親族と話し込んでいた。
「ねぇ、もう帰ろうよ~」
「あと少しだから、ね?」
「嫌だ、もう帰るっ!」
「待ちなさい、トシ!」
自分を優しく宥める母の手を乱暴に振り払うと、歳三はそのまま会場から飛び出していった。
背後で母親が自分を追い掛ける声を聞きながら、彼はパタパタと軽やかな足音を大理石の床に響かせ、闇雲にホテルの中を走っていった。
「もう、あの子ったら一体何処に行ったのよ・・」
「部屋に帰ろう。」
「えぇ。」
肩で息をしながら何とか自分を追い掛けて来た両親を撒いた歳三は、靴擦れで痛む足を擦りながら、近くのベンチの上に腰を下ろした。
「君、草履の鼻緒が切れているよ?」
「え?」
俯いていた顔を歳三が上げると、そこには翡翠の瞳を煌めかせながら、一人の少年が自分を見ていた。
“トシさん。”
突然何処からか聞こえた、誰かの懐かしい声。
「君、どうしたの?何処か痛いの?」
少年からそう尋ねられ、歳三はその時自分が泣いている事に気づいた。
(何で、涙なんか・・)
「大丈夫だよ、トシさん。“今度は”独りになんかさせないから。」
ふわり、と春風が吹いたかのように薄茶の髪を揺らしながら、少年はそう言うと歳三を抱き締めた。
「トシ~!」
「歳三、何処だ~!」
「あ、ごめん俺もう行かねぇと!」
「待って!」
慌てて歳三を引き留めようとした少年に非情にも歳三は背を向け、そのまま彼の元から去ってしまった。
「やっと会えたと思ったのになぁ・・」
そう呟いた少年は、何処か寂しそうに笑った。
両親から逃げ回っていた歳三は、着物を泥だらけにしてしまい、母親から大目玉を食らっていた。
「もう、こんなに立派な振袖を汚して!」
「ごめんなさい・・」
「もういいだろ。トシ、今日は色々と済まなかったな。先に休んでいなさい。」
「お休みなさい。」
「全く、あなたはあの子に甘いんだから!」
「そんなに怒らなくても・・」
両親が言い争う声を扉越しに聞きながら、歳三はゆっくりとベッドの中で眠った。
「うあぁ~!」
「八郎坊ちゃま、どうされたのですか!?」

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