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JEWEL

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薄桜鬼腐向け西洋風ファンタジーパラレル二次創作小説:瓦礫の聖母

Aug 22, 2021
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。


 美しい夏が来た。

「ふぅ・・」
「全く、こう忙しいと過労死しちまいますよ。」
「そう言うな。社交期あっての俺達だろう?」
「まぁ、そうですよね・・」
社交期を迎え、ユリシス達の工房は猫の手も借りたい程、忙しくなった。
そんな中、ユリシスの工房に一人の客が来た。
「娘の為に新しい靴を作って欲しいんだ。」
「娘さんはおいくつですか?」
「実は、まだ生まれていないんだ。」
「おや、それは・・」
「妻とわたしが、産まれてくる子に初めての靴をプレゼントしたいんだ。」
「わかりました。」
ユリシスはそう言うと、客と共に彼の妻が居る家へと向かった。
「ただいま!」
「お帰りなさい、あなた。」
家の奥から、産み月を迎えた客の妻がやって来た。
「ソフィー、この方がわたし達の赤ちゃんの靴を作って下さる方だよ。」
「まぁ、嬉しい。」
「奥様、どうかおかけになってくださいませ。」
ユリシスはそう言うと、客の妻・ソフィーをソファに座らせた。
「申し訳ありません、客人にお茶ひとつもお出ししないなんて・・」
「いいえ。わしも年を取ってしまいましたので、今から身体を鍛えておこうと思ってのう。」
「まぁ・・」
ユリシスの言葉に笑ったソフィーの顔が、痛みで大きく歪んだ。
「産まれそう・・」
「な、なんだって~!」
「落ち着きなされ。近所の産婆を呼んできなさい。」
「は、はい!」
「そこの娘さん方は、清潔なシーツと温かい湯を用意するのじゃ。」
「わかりました!」
ユリシスの適切な指示の下、ソフィーは元気な男児を出産した。
「ありがとうございます!」
「子供の足は大きくなるから、一歳の誕生日が来たら毎日こちらへはかりに伺いましょう。」
「ありがとうございます、ユリシスさん。」
「そなたらの子は、健やかに育つだろう。」
ユリシスがソフィー達に祝福の言葉を贈っていた頃、歳三は神学校でストラを作っていた。
ストラとは、司教、司祭、助祭が礼拝の際に使用する、首から掛ける帯の事で、形状や文様は宗派ごとに異なる。
歳三はストラの白い布地に、金糸で白百合の紋章を刺繍していた。

「珍しいですね、君が王家の紋章を刺繍しているとは。何故、それを刺繍されているのですか?」
「いえ、ただなんとなく・・」
「そうですか。それよりも、君は毎晩遊び歩いているようだと噂に聞きましたが・・」
「そんなものは、デマですよ。修練長様も、所詮人の子なのですね。」
「まぁ・・」
「では、俺はこれで失礼致します。」

歳三は時折自分に嫌味を言って来るアントニオを、最近適当にあしらえるようになった。

「歳三様!」
「おうグスタフ、朝から頼みごとをして済まなかったな。」
「いいえ。」

グスタフは人気がない歳三の自室で、ユリウスの事件の詳細を彼に報告した。

「どうやらユリウス様の事件は、ある人物が関わっているようなのです。」
「ある人物?」
「えぇ・・」

グスタフは、歳三の耳元でその人物の名を囁いた。

「それは、確かなのか?」
「はい。」
「色々と、調べる事があるな。」
「ええ。それよりも、ヨハネス様がお呼びですよ。」
「わかった。」

歳三がヨハネスの書斎へと向かうと、ガブリエルと廊下で擦れ違った。
彼は、何処か暗い表情を浮かべていた。

(何だ?)

「ヨハネス様、歳三です。」
「歳三か、入れ。」
「失礼致します。」

歳三がヨハネスの書斎に入ると、彼は歳三に一枚の書類を見せた。

「これは?」
「お前の配属先が決まったぞ。お前は来月から、宮廷付司祭として働く事になったぞ!」
「それは・・」
「もう決まった事なのですか?」
「あぁ。」
「ありがとうございます。」
「お前なら、向こうでもやっていけるだろう。」

(あの魔物がはびこる王宮でも、な・・)

「よろしかったのですか?」
「何がだ?」
「あの者を、王宮へ配属させるなど・・正気の沙汰ではありませんよ。」
ガブリエルはそう言うと、ヨハネスを見た。
「王妃様たっての願いなのだ。」
「あそこは、生き馬の目を抜くような、欲に塗れた所ですよ。そのような所に・・」
「あの者ならば、大丈夫だろう。」
「随分と無責任な事をおっしゃるのですね。」
「わたしは彼の親でも何でもない、無責任で結構。」
「あなた様という方は・・」
「ガブリエルよ、わたしの守護天使・・いつまでもわたしの傍に居ておくれ。」
「えぇ、わかっておりますよ・・父上。」

一月後、歳三は長く暮らしていた神学校を離れ、王宮に隣接している修道院に移り住んだ。

「あなたが、土方さんですね?はじめまして、わたしはロキ、ここではあなたと同じ司祭となりますね。」

修道院で、そう歳三に話し掛けて来たのは、薄紅色の髪をした若い司祭だった。

「ど、どうも・・」
「ふふ、そんなに緊張しなくてもいいのですよ。」

(何か、変な人に絡まれたなぁ・・)

「トシ、さっそくだが君に聖体拝領式に参列して貰う。」
「はい・・」
「王族の方々も参列するから、失礼のないようにな。」

宮廷付司祭として、歳三は聖体拝領式に参列した。

「きゃ~」
「あの司祭様、すてき~!」

歳三が他の司祭達と共に聖堂の中へと入ると、参列していた女性達の間から黄色い悲鳴が上がった。

(何だ?)

歳三が彼女達に微笑むと、彼女達は悲鳴を上げながら次々と倒れていった。

「トシ、少しいいかな?」
「はい・・」
「君は神に仕える身だ。故に、異性を惑わせてはなりませんよ。」
「はい・・」
「わかればよろしい。」

主任司教・ヨーゼフは、四角四面な男だった。

ヨハネスとは全く違った性格で、“厄介な奴に絡まれたな”と歳三は思ってしまった。

その日の夜、歳三はこっそりと修道院のベッドを抜け出して、王宮へと向かった。

(確か、宝物庫は・・)

「おい貴様、こんな所で何をしている!?」
「申し訳ありません・・わたくし、こちらで働き始めたばかりなので、宝物庫への道がわからなくて・・」
「そうか、俺が案内してやろう。」

そう言った兵士は、歳三の尻をさり気なく触ろうとしたが、その前に一本の矢が兵士の顔の近くにあった木に刺さった。

「あらぁ、ごめんなさい。新しい弓の試し撃ちをしようとしたら、手元が狂ってしまったみたい。」

夜風に美しいハニーブロンドの髪をなびかせながら歳三達の前に現れたのは、男装の王女・フェリシティだった。

「ひ、ひぃぃ~!」
「あなた、こちらにいらっしゃい。」
「は、はい・・」

フェリシティと共に歳三が向かったのは、リリアの部屋だった。

「リリア、あなたの女神様を連れて来たわよ。」
「わぁ~い!」

(こいつ、あの時俺を追い回していたガキ・・)

「あなた、お名前は?」
「ヴァイオレット、と申します・・」

ひょんなことから歳三は、“夜限定”のメイドとして王宮で働く事になった。

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Last updated  Aug 23, 2021 05:16:07 PM
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Jul 10, 2021
「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

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土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。


「この靴は、誰の物なの?」
「実は、わたし達が探している女神様のものなのです。」
「この刺繍の模様には見覚えがあるわ。わたくしの知り合いに職人が居るから、その方に色々と聞いてみるわね。」
「ありがとうございます、母上。」
「お礼なんていいわ。早く女神様と会えるといいわね。」
エリスはそう言うと、グレゴリーに優しく微笑んだ。
「王妃様、失礼いたします。」
そう言って部屋に入って来たのは、王国随一の靴の名職人・ユリシスだった。
「ユリシス、忙しいのにわざわざ来て下さってありがとう。早速だけれど、この靴を作った人を知っているかしら?」
「あぁ、この靴ならわしの弟子の、アンセルムが作ったものです。」
「アンセルム・・」
エリスはその靴職人の名を知っていた。
何故なら、婚礼の日に自分の為に靴を作ってくれた人だからだ。
「彼は今も、靴を作っているのかしら?」
「アンセルムは、数年前に病で亡くなりました。素晴らしい腕を持っておりましたので、残念です。」
「まぁ・・」
「ですが、アンセルムの息子が彼の跡を継いでおります。彼ならば、何か知っていると思います。」
「ありがとう。」
ユリシスは王妃の私室から出た後、ある人物と会った。
「王妃様とはお会い出来ましたか?」
「はい。ガブリエル様、少しお聞きしたい事がございます。」
「何だい?」
「あの者は・・」
「それは、あなたが知らなくていい事です。」
「は、はぁ・・」
「もうさがりなさい。」
「はい・・」
(あの方は、美しい方だが、何だか恐ろしいお方だ・・)
「親方、どうかしましたか?」
「いや、何でもない。それよりも、S子爵様の靴は出来たのか?」
「はい、こちらに。」
「ありがとうございます。」
初めて師に褒められた弟子は、笑顔を浮かべた後仕事場へと戻っていった。
「お邪魔するよ。」
「これはT男爵様、ようこそいらっしゃいました。」
「わたしが以前頼んだ靴は何処かね?」
「こちらにございます。」
「おぉ、足によくなじむ。やはり、君に頼んでおいて正解だったようだ。」
「ありがとうございます。」
「今後とも、よろしく頼むよ。」
満足気に自分が仕上げた“作品”を履いて店から出ていく貴族の客を見送ったユリシスは、作業場へと戻り、また新しい靴を作り始めた。
靴作りは、根気のいる作業だ。
人の足の形は、それぞれ違う、
だからこそ、心を込めて靴を作るのだ。
作業が一段落し、ユリシスが昼食を取りに工房の近くにあるカフェへと向かうと、そこにはランチを楽しむ客で賑わっていた。
「ユリシス、久しぶりだな。」
「ガリウス。」
ユリシスがカウンター席でコーヒーを飲んでいると、そこへ宝石職人のガリウスがやって来た、
「さっきお前の工房を覗いてみたが、忙しそうじゃないか?」
「あぁ。これから社交期に入るから、休める内に休まないとね。」
「それは言えているな。うちもこれから忙しくなりそうだ。」
春が去り、初夏が訪れる頃、王都は本格的な社交期に入る。
社交期に入ると、国中の貴族が王都に集まり、女達は新しいドレスや帽子、宝石、靴などを注文するのだ。
それ故に、ユリシスとガリウスの工房は毎年夏になると目が回るような忙しさに見舞われるのだ。
「最近、変わった事はないか?」
「あぁ。王妃様が、アンセルムの作品をわしに見せて下さったんだ。」
「アンセルムの作品を、王妃様が?」
「靴は、王妃様がお探しになられている女神様の物らしい。」
「女神様、ねぇ・・」
「女神様の事を知っているのか?」
「知っているのかどうかはわからないが・・この世には稀に、夜にだけ女の姿となる者が生まれるらしい。」
「それは、本当か?」
「あぁ。」

(夜になると女に身体が変わる女神様、ねぇ・・確か、この国の伝説にあったな。)

工房の作業場に戻ったユリシスは、朝王宮でエリスから聞いた話を思い出していた。

「その女神様とは、どのようなお方なのですか?」
「そうね。黒髪に紫の瞳をした、とても美しい方だと言っていたわ。でも、その方に会えるのは夜だけだと言っていたわ。」
「そうですか・・」
「まぁ、あの“伝説”が存在するのなら、もしかしたら・・」
「“伝説”ですか?」
「えぇ。その“伝説”によれば、その女神様が現れると、国に大きな災厄が起きた後、救世主が現れるそうよ。」
「救世主、ですか?」
「まぁ、あくまで“伝説”だから、本当かどうかはわからないけれど。」
「そうですか・・」
「ユリシス、靴の持ち主探しは、余り急がなくていいわ。あなたは忙しいのだから、今は仕事を優先して。」
ユリシスは、“伝説”の真偽を確かめる為、仕事の終わりに王立図書館へと向かった。
(これじゃな。)
ユリシスは探していた本を本棚から引き抜くと、そこには美しい女神の表紙が描かれていた。
“伝説”の事が書かれているページは、すぐに見つかった。

『ごく稀に、男が夜の間だけ女になる体質の者が生まれた。その男が生まれた日、この国に大きな災厄が起きた。世界は崩壊寸前となり、混沌に陥った。しかし、その時―』

(ページが、誰かに破られている。一体何が・・)

「すいません、この本のページが誰かに破られているんじゃが・・」
「まぁ、すいません!」

職員はユリシスから本を受け取ると、そのまま奥へと消えていった。
ユリシスはそのまま王立図書館から出て行った。

(あの本のページを破ったのは、一体誰なんじゃ?)

「親方、どうかされたのですか?」
「いや、少し気がかりな事があってな・・」
ユリシスは弟子の一人に、本の事を話した。
「ページを破るなんて、酷い輩ですね。一体、誰がそんな・・」
「わたしにもわからん。それにしても、わたしが留守にしている間、ここを訪ねて来る者は居なかったか?」
「アンセルム様のお弟子さんの一人が、昼前に来られましたよ。必ず親方に渡して欲しいと、この手紙を僕に・・」
「ありがとう。」

弟子から手紙を受け取ったユリシスは、すぐさまそれに目を通した後、深い溜息を吐いた。

(どうやら、不味い事になったのう・・)

「親方?」
「この手紙を、王妃様に必ず渡してくれ。いいか、必ず渡すのじゃぞ。」
「はい!」
弟子がユリシスの工房から飛び出していくのを、建物の陰から数人の男達が見ていた。
「王妃様にお会いしたいのです。」
「あなたは?」
「ユリシス工房の者です。親方から頼まれていた件の事で・・」
「わたくしと共に来なさい。」
王妃はアンセルムの弟子の手紙を受け取ると、そのまま椅子の上に倒れるようにして座った。
「まぁ、大丈夫ですか!?」
「すぐにお医者様を!」
「少し立ち眩みがしただけよ。」
 エリスはそう言うと、ユリシスの弟子にある伝言を頼んだ。
「親方、王妃様からの伝言です。“例の男達には、気をつけな”と。」
「わかった。王妃様の言葉遣いが急に変わってしまって、戸惑ったわい。」
「すいません、それは僕が勝手に言い換えました。」
「そうか、それにしても、“例の男達”とは・・」
「工房の様子を探っている男達の姿を、僕帰り際に見たんですよ。声を掛けようとしたら、慌てて逃げて行ってしまいましたよ。」
「しうか。戸締りには注意しなければならんのう。」
「親方の身辺警護も引き受けますよ、僕。」
「頼もしい弟子に、わしは恵まれたのう。」

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Last updated  Jul 10, 2021 04:15:17 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。


 一夜明け、神学校内ではユリウスの事件について様々な憶測が飛び交った。

「ユリウス様は、色々と周りから恨みを買っているから、犯人が誰なのかわからないな。」
「あぁ。」
「まあ、前から碌な死に方をしないと思っていたが、やはり・・」
「そこ、うるさいですよ。今度騒いだら、ラテン語のレポートを三つずつ書いて貰いますからね?」
「す、すいません!」
「わかればよろしい。」
そう言って天使のような笑顔を騒いでいる学生達に浮かべたのは、ラテン語講師・ガブリエルだった。
ガブリエルという大天使の名を持っている彼は、金色の髪をなびかせ、宝石のように美しいエメラルドグリーンの瞳を持つ麗人であった。
「今日の授業はここまで。皆さん、課題は明日の朝までに提出して下さいね。」
え~、という周囲の声を無視して、ガブリエルは教室から出て行った。
「あの人、厳しいよなぁ。」
「でも、ユリウス様と違ってわからない所はこっちが理解するまで教えてくれるからいいかもな。」
「厳しいけどね。」
「ガブリエル先生は、確かグスタフと同じ地方の出身だよな?」
「あぁ・・そうだが、噂によると王家の遠縁らしい。」
「へぇ。なら、これからガブリエル様に媚を売っても損はなさそうだな?」
「確かに。」
そんな学生達の会話を、歳三は木の上で聞いていた。
(神学校といっても、みんな考えている事は一緒か。)
聖職者の世界は、金が物を言う―以前何処かの書物でそんな事が書かれていたような気がした。
“学校は社会の縮図”だと良く言うが、まさに神学校はそういう場所だった。
ここには権力に縋る者、媚びる者―そんな汚い野望を抱いた者しか居ない。

(あと三年、か・・)

三年後の自分がどうなっているのかわからないが、自分は彼らのようにはなりたくないと歳三は思った。
「歳三様。」
歳三が木から降りると、彼の元へグスタフが駆け寄って来た。
「歳三様、どうしてもお教えしたい事があるのです・・ユリウス様の事件のことで。」
「わかった。」
「ここは人目につきますので、わたしの小屋へどうぞ。」
「ああ。」

グスタフと共に歳三が中庭を去ってゆく姿を、窓からガブリエルが見ていた。

「“例の計画”は無くなったようですね?」
「あぁ。」
「あのユリウスが居なくなり、この学校に巣食っていた蛇が居なくなりましたね。」
「彼は厄介な存在だった。犯人は誰であれ、邪魔者を始末してくれて感謝するよ。」
「同感です。」
「そうか。君とガブリエルは仲が良かったと思ったんだが・・」
「“振り”ですよ、あんなの。わたしは、彼を心の底から嫌っていました。わたしは、犯人がこの学校の為にユリウスを殺してくれた、そう思っていますよ。」
ガブリエルはそう言うと、口端を歪めて笑った。
(彼を、敵に回してはいけないな。)
ユリウスは蛇―この学校に巣食う“悪”そのものであったが、“聖人”の仮面を被った“悪”が居るという事を、“彼”はこの時思い知った。
「さてと、次はどうしますか?」
「それは、君次第だな。」
「そうですか。」
「もう下がっていい。」
「失礼致します。」

美しいプラチナブロンドの髪をなびかせながら、“聖人”は去っていった。

「おい、居るか?」
「はい。」
すぅっと、影のように現れたのは、顔を珍妙な仮面で隠した男だった。
「これを、例の所へ届けろ。」
「かしこまりました。」

仮面の男は、現れた時と同じように、影のように消えていった。
 そして、彼はヴェネチア通りにある娼館へと向かった。
「お届け物です。」
「ご苦労様。」
「ねぇ、あの人どなたなの?」
「さぁね。」
「ふぅん・・」
一人の娼婦は、仮面の男が娼館から去ってゆくのをじっと眺めた。
「ちゃんと、届けたか?」
「はい。」
「そうか、では下がりなさい。」
「マスター、“あの件”はどうなっていますか?」
「心配しなくても良い。あいつは、大金を受け取って隠して貰っている。何か気になる事があるのか?」
「いいえ。」
「では、下がれ。」
「はい。」
仮面の男は主の部屋からであると、神学校の地下にある自室へと戻った。
「ただいま。」
男が部屋に入ると、一匹の白ネズミが嬉しそうな声で鳴いた後、彼の肩へと飛び乗って来た。
「今日も良い子にしていたかい?待ってて、今お前が好きなクッキーをあげるからね。」
男はそう言うと、ジャムの空き瓶の中から白ネズミの好物であるクッキーを一個手に取り、それを白ネズミに手渡した。
すると白ネズミは、嬉しそうな声を出しながらそのクッキーを男から受け取り、頬張った。
「俺の友達はお前だけだよ、トト。」
男はそう言うと、顔を覆っている仮面を外し、鏡を見た。
そこには、右頬に大きな火傷痕がある男の姿が映っていた。
「おい、居るか?」
「はい、マスター。」
「今夜王宮で舞踏会が開かれる。お前も出席しろ。」
「ですが、わたしは・・」
「これは、もう決まった事だ。」
「わかりました。」
(華やかな場所は、苦手なのにな・・)
男は、生まれてこの年になるまで、この神学校の地下室で外の世界を一切知らずに育った。
何故なら、彼は―
「準備は出来たか?」
「はい、マスター。」
「化けているな、行くぞ。」
「はい・・」
右頬の火傷痕を上手く化粧で隠した男は、主と共に王室の舞踏会へと向かった。
ここは、沢山人が居て嫌いだ。
早く帰りたい―男がそう思いながらシャンパンをつまらなさそうに飲んでいると、彼は一人の女とぶつかった。
「すいません、大丈夫ですか?」
「えぇ・・こちらこそ、ぶつかってしまってごめんなさい。お怪我はありませんか?」
「はい・・」
そう言って振り向いた男の前には、美しい女神が立っていた。
彼女は絹糸のような美しく艶やかな黒髪に真珠の髪飾りをつけ、美しい紫のドレスを着ていた。
「では、わたくしはこれで・・」
「あ、待って!」
男は女神を慌てて追おうとしたが、彼女はまるで魔法にかけられたかのようにその姿を消してしまった。
(素敵な方だったな・・)
「こんな所に居たのか。もう出るぞ。」
「はい、マスター。」
男が主と共に王宮の大広間から出た後、美しい女神こと歳三は、謎の少女と青年に追い掛けられていた。
「待ってください、話をするだけでも・・」
「待って~!」
(一体何なんだ、こいつら!?)
紫のドレスの裾を摘まみながら、歳三は靴が途中で脱げるのも構わず、王宮の裏口から外へと出て行った。
「また、女神様に逃げられてしまったわ。」
「どうやら、彼女はわたし達の事を避けているらしい。」
グレゴリーはそう言うと、女神が落としていった靴を拾った。
それは、美しい模様が刺繍された紫の靴だった。
「グレゴリー、女神様とは会えたの?」
「会えましたが、逃げられました。」
「まぁ、それは残念ね。」
「母上、この靴に見覚えがありますか?」
グレゴリーはそう言うと、女神様が落としていった靴をエリスに見せた。
「ごめんなさい、わたしにはわからないわ。」
「そうですか・・」

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Last updated  Jul 10, 2021 04:13:58 PM
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Jul 3, 2021
「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

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土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。


「そうですか・・」
「おい、どうした?この王都へ戻って来たそうですよ。」
「嬉しくなさそうな顔をしているな?」
「まぁね。折角考えた“計画”が、台無しになってしまいましたよ。」
「そうか。」
「とにかく、邪魔者二人を一気に始末できたのですから、良いとしましょうか。」
ユリウスはそう言うと、枕元に置かれているワインを一気に飲み干した。
「何だか恐ろしい奴だな、お前だって。」
「そう?」
「つくづく、お前を敵に回さなくて良かったと思ったよ。」
「まぁ、嬉しい・・」
ユリウスはそう言って笑うと、恋人にしなだれかかった。
「それで、その“計画”とやらはどうするんだ?」
「練り直すさ。あなたにも色々と協力して貰いますよ。」
「わかった・・」

(あの歳三とかいう青年を早く始末しなければね。王家の血をひく者は、私達二人にとって邪魔者以外の何物でもない。)

「王妃様、起きていらっしゃいますか?」
「えぇ。」
「失礼致します。」
「どうしたの、そんな顔をして?」
「実は、王妃様の郵便物の中から、こんな物が・・」

王妃付の女官・アゼリアがそう言ってエリスに差し出した物は、エリス宛の怪文書だった。

『お前を必ず、殺してやる。』
「気味が悪いですわね。捨てましょうか?」
「えぇ、そうして。」
「お休みなさいませ、王妃様。」
「お休みなさい。」
アゼリアが去った後、エリスは怪文書を無言で破り捨てた。
「おはよう。」
「おはようございます、グレゴリー様。」
「母上は?」
「王妃様は、今朝酷い頭痛がするとおっしゃって、お部屋で休まれています。」
「そうか。」
「それよりも、グレゴリー様にお伝えしたい事がございます。」
「わたしに伝えたい事だと?」
「はい。」
アゼリアは、昨夜エリスの元に怪文書が届いた事をグレゴリーに話すと、彼は顔を曇らせた。
「母上は、心労で色々と疲れていらっしゃると思うから、君達が色々と気を遣ってやってくれ。」
「はい。」
「グレゴリー様、リリア様が・・」
「わかった、すぐに行く。」

グレゴリーが従妹であるリリアの元へと向かうと、彼女は少し拗ねて侍女を困らせていた。

「本当に、わたしは見たの!」
「リリア様・・」
「どうした、リリア?何をそんなに拗ねているんだ?」
「グレゴリー兄様、わたし女神様を見たの!」
「女神様?」
「申し訳ございません、グレゴリー様。」
「済まないが、暫く彼女と二人きりにさせてくれないか?」
「かしこまりました。」
侍女が部屋から出て行った後、リリアは“女神様”の事をグレゴリーに話し始めた。
「“女神様”は、どんな人だったんだい?」
「黒髪で、アメジストのような綺麗な紫の瞳をしていたわ!」
「そうか。」
「みんな、わたしの話を聞いてくれないの。まるで、わたしは嘘を吐いているって・・」
「それは違うよ、リリア。君だけが、“女神様”を見たのは、本当の事だろう?」
「えぇ、本当よ!」
「ならばもう一度、その“女神様”に会いたいかい?」
「会いたいわ!」
「そうか。じゃぁ、わたしがその“女神様”を探し出してやろう。」
「ありがとう、グレゴリー兄様!」
リリアは、グレゴリーと話し終えた後、早速彼女が会ったという、“女神様”探しに奔走した。
だが、名もわからぬ“女神様”は、中々見つからなかった。

(困ったな・・)

「あらグレゴリー、どうしたの?溜息なんか吐いて?」
「母上、もう頭痛は良くなったのですか?」
「ええ。リリアからさっき、“女神様”の話を聞いたわ。わたくしも、“女神様”探しに協力するわ。」
「ありがとうございます、母上!」
「そんな他人行儀な事を言わないで頂戴。親子じゃないの。」

エリスはそう言うと、息子に優しく微笑んだ。

その“女神様”こと、歳三は一ヶ月の入院生活から漸く解放された。

「退院おめでとうございます。」
「ありがとうございます。先生のお陰です。」
「いえいえ、あなたがこうしてこの日を迎えたのは、あなた自身の生命力の強さのお陰ですよ。」
「はい・・」
「あの奴隷船で生き延びたのは、あなたが生きたいと思ったからです。どうか、お元気で。」

病院から出た歳三は、その足で神学校へと戻った。

「おや、もう体調の方は大丈夫だったのですか?」
「ユリウス様・・」
「お帰りなさいませ。」

そう言って歳三を出迎えたのは、神学校の使用人・グスタフだった。

「お荷物をお預かり致します。」
「済まねぇ・・」

彼と共に自室に入った歳三は、突然脱力したかのように寝台の上に倒れ込んだ。

「そのご様子だと、随分お疲れのようですね。お風呂に入ってからゆっくりしていって下さい。」
「あぁ・・」
「では、今からお風呂の湯を沸かして参りますね。」
「頼む・・」

グスタフが風呂の湯を沸かしている間、歳三はいつの間にか寝台の上で眠ってしまった。

「あれ・・」

彼が目を覚ますと、部屋にグスタフの姿はなく、浴室からは白い湯気が立っていった。

「はぁ、生き返る。」

湯舟に浸かった歳三は、そう言って溜息を吐いた。

「失礼致します、歳三様。」

ドアの向こうから、控え目なノックの音とグスタフの声が聞こえて来た。

「着替えとタオルを外に置いておきますね。」
「ありがとう。」
「では、わたしはもう失礼致します。」

部屋からグスタフが出て行く気配がした後、歳三はそっとドアを開けた。
今は昼なので自分は“女性化”していないが、自分の身体の秘密を知っている彼は、気を遣って部屋に入ったが、浴室の中には入ろうとはしなかったけれど。

(何だか、神学校ではグスタフだけだな、自分を気遣ってくれるのは。)

今までは、孤児院のシスター達や子供達―仲間達に囲まれていたから、寂しくなどなかった。
しかし、ここでは誰一人知り合いも友人もおらず、周りは敵だらけであった。
そんな中で、グスタフだけが自分に優しくしてくれた。
彼が何処の出身なのかは知らないが、“山間部の集落出身”だと噂に聞いている。
彼は何故、自分の“秘密”を知っているのだろうか―そう思いながら、歳三は静かに目を閉じて眠った。

神学校の夜の静寂を破ったのは、絹を切り裂くかのような女の悲鳴だった。

「何だ!?」
「一体、何があった!?」

寝室から夜着姿の神学生達が眠い目を擦りながら廊下へと出て来ると、ユリウスの寝室から蒼褪めた顔をした女が飛び出して来た。

「おい、一体何があった!?」
「ユリウス様が、寝室でお亡くなりになられて・・」
「退いて下さい!」

半狂乱となり泣き喚く女を押し退けたグスタフは、寝室の中で絶命しているユリウスの姿を発見した。

「これは、一体・・」

ユリウスは、夕食用のステーキナイフで己の喉を切り裂いていた。
だが彼が左利きである事を知っているグスタフは、少し違和感を抱いた。

「なぁ、昨夜ユリウス様が・・」
「自殺!?」
「いや、それがそうじゃないらしい。」

ユリウスの死は“自殺”ではなく、“病死”として処理された。

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Last updated  Aug 8, 2021 07:30:04 PM
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Jun 29, 2021
「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。


「海賊ですって!?」
「わたし達、どうなるの?」
「殺されてしまうわ!」

海賊が船に乗り込んで来た事を知った娘達は皆半狂乱となり、海へと次々に飛び込んだ。

「おい、あれを見ろ!」
「畜生、遅かったか!」

海へと次々に飛び込んでゆく娘達の姿を望遠鏡で見ていた海賊の一人がそう言って呻いた。

「どうした?」
「お頭、起きて下さい!あの娘達が・・」
「こいつはひでぇな。よし、娘達を俺達で救い出すぞ!」
「アイサー!」

船長・ジェラルドの指示で、海賊達は奴隷船から海へと飛び込んでゆく娘達を救出した。

「救出した娘達はこれで全部か!?」
「はい。」
「よし、ずらかるぞ!」
「アイサー!」

(チッ、遅かったか!)

海賊船が遠ざかってゆくのを、歳三は奴隷船の甲板から見た。

この船から降りた所で、待っているのは地獄だ。

「探したよ。さぁ、大人しく船倉に戻りな!」
「わかったよ!」
「今度おかしな真似をしてごらん、こいつでお前の頭に風穴を開けてやるからね。」

女はそう言うと、歳三のこめかみに拳銃を押し当てた。

「おい、これからどうする?」
「どうするもこうするも、娘達はあいつらに奪われちまったんだから、引き返すしかねぇよ。」
「上玉揃いだったのに、とんだ大損だよ!」

歳三達を乗せた奴隷船は、時折近くの港に寄っては、金になる若い娘達を奴隷船に乗せた。

「まぁ、これで大丈夫だね。」
「そうだね。」
「酷い船旅だったよ。」

娼館の経営者夫婦はそう言いながら、ワインを一気に飲み干すと、眠ってしまった。
彼らは二度と、目覚める事はなかった。

「一体、これはどういう状況なんだ?」
「こんなに遺体の損傷が激しいんじゃ、身元の特定に時間がかかるな・・」
「あぁ。」

奴隷船の中を捜索した王宮警察官達は、船倉に転がっている若い娘達の遺体を外へと運び出していった。

「おい、ちょっと来てくれ!」
「どうした?」
「この娘、生きているぞ!」

奥の方に、毛布にくるまれて蹲っている黒髪の娘は、まだ息をしていた。

彼らはすぐさま、病院へとその娘を運んだ。
娘は、軽い脱水と栄養失調状態だった。

「この娘の身元が判るものは?」
「ありませんね。」
「そうか・・」
「この刺繍は、確か王家の・・」
「まさか・・」
「王妃様、一大事でございます!」
「何ですか、騒々しい。」
「申し訳ございません、実は・・」

息を切らしながら王妃の私室へとやって来た女官達の一人が、彼女の耳元で何かを囁いた。

「すぐにそこへ案内なさい!」
「は、はい!」

王妃を乗せた馬車は、例の娘が入院している病院へと向かった。

「ん・・」
「気が付いたのかい?」
「あの、ここは・・」
「君は、酷い目に遭ったんだ。暫くここで、心身を休めなさい。」
「はい・・」

娘―歳三がそう言って目を閉じると、安堵の表情を浮かべた医師は、白衣の裾を翻しながら病室から出て行った。

「先生、あの子に会えますか?」
「王妃様、彼女には暫く静養が必要です。」
「そうですか・・」
「奴隷船の中に一月も監禁され、水も食料も与えられていなかったのですから、衰弱している彼女の身体の回復には相当時間がかかります。」
「先生、ありがとうございます。」
「いいえ。彼女のケアと治療は我々が全力を尽くして参ります。」
「どうか、よろしくお願いいたします。」

エリスは医師に一礼すると、女官達を従えて病院から去っていった。

「エリス様、あの娘はあなた様のお知り合いなのですか?」
「いいえ。」
「では、あの娘は・・」
「あなた、それ以上聞くのは野暮ですよ。」
「すいません。」
「申し訳ございません、王妃様。この者には、わたくしの方から厳しく言い聞かせておきますので・・」
「いいのよ。それよりもみんな、忙しいのにわたくしに付き合って貰って悪かったわね。そうだ、みんなでお昼に行きましょう!」
「はい!」
「まぁ、嬉しいですわ!」
「ありがとうございます!」

病院への帰り道、エリスは女官達と共にカスクートが美味しいと評判のカフェへとランチに出かけた。

「いらっしゃいませ~!」
「五名だけれど、空いているかしら?」
「はい、御二階席へどうぞ!」
「ありがとう。」

エリスたちが二階席でランチを食べていると、広場の方から鐘の音が聞こえて来た。

「何かしら?」
「さぁ・・」
「そろそろ、行きましょうか?」
「はい。」

エリス達が王宮に戻ると、グレゴリーが血相を変えた様子でエリス達の元へと駆け寄って来た。

「母上、大変です!」
「どうしたの、何があったの?」
「アリシアが・・彼女が、姿を消しました!」
「それは一体、どういう事なの!?」
「実は・・」

グレゴリーは、エリスにアリシアがアレクシアの死後、精神的に不安定な状態だったという事を話した。

「手分けして、彼女を捜しましょう!」
「はい!」

女官達とエリスが消えたアリシアを捜していると、エリスは王宮の裏にある崖に彼女が居るのを見つけた。

「アリシア!」
「王妃様、わたしは・・」
「気づいてあげられなくて、ごめんなさいね。」
「うっ・・」

アリシアは、エリスの顔を見て安堵の笑みを浮かべた後、彼女の言葉を聞いて堪えていた涙を流した。

「姉は、何故殺されなければならなかったのでしょう。幸せな結婚生活を送っているとばかり思っていたのに、それなのに・・」
「わかるわ、その気持ち。あなたとお姉様は、とても仲の良い姉妹だったと周りから聞いていたから。」
「姉とわたしは、姉がガレリアへ嫁ぐその日まで一緒でした。子供の頃からずっと、片時も姉と離れた事はありませんでした。それなのに・・」
「実は、わたくしにも仲が良い兄が居たの。子供の頃からずっと、わたしと兄は一緒だったわ。でも、“あの日”、わたし達は永遠に引き離されてしまったのよ。」
「“あの日”?」
「それは、後で話すわ・・ここは冷えるから、戻りましょうか?」
「はい・・」

エリスとアリシアが崖から立ち去ろうとした時、一羽の鳥が大きな弧を描きながら、二人の頭上を飛んでいった。

「王妃様?」
「いいえ、何でもないわ、行きましょう。」

(お兄様、きっといつか会いましょう・・)

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Last updated  Jun 29, 2021 05:03:57 PM
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Apr 26, 2021
「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。

一年の大半を雪と氷で覆われたこの国にとって、春の訪れは喜ばしい事であり、毎年雪解けの季節を迎えると、国中が盛大に春の訪れを祝うのが、春祭りの起源とされている。
祭りの広場には、この国の花でもある水仙を象ったブローチや、美しい刺繍が施されたドレスを売る店などが軒を連ねていた。

「あの、どうしてここへ俺・・わたしを連れて来たのですか?」
「あなたと、もっと仲良くなりたくて・・」
「まぁ。」
「あ、あの店を見ていきましょう!」
勇はそう言うと、歳三の手をひいてある店の中へと入った。
その店は、西洋と東洋の髪飾りや装身具などを扱っており、リボンや櫛などが店内のランプの仄かな灯りに照らされて美しく輝いていた。
「うわぁ・・」
今までこんなに華やかで美しい物は見た事がなかったので、歳三は時間を忘れて商品を見ていた。
「あ、あ、あの、気に入った物があれば、わたしが買って差し上げましょうか?」
「え、いいんですか?」
「はい。そんなに、高い物は買えませんが・・あなたが喜ぶ顔を見たいので・・」
「まぁ・・」
初対面だというのに、勇は歳三への贈り物を真剣に選んでくれた。
彼が選んでくれたのは、歳三と同じ色の瞳の色をしたリボンだった。
「あなたの髪に、良く似合う。」
「ありがとう、ございます・・」
春風に揺れる紫のリボンを見ながら、勇は歳三にリボンを贈って良かったと思った。
「今夜は、会えて楽しかったです。」
「えぇ、わたしも・・」
「また、会いましょう。」
「はい・・」
広場の前で勇と別れた歳三は、そっと自分の髪を飾るリボンに触れた。
(女になるってのも、悪くねぇな・・)
そう思いながら歳三が神学校への道を歩いていると、ヴェネチア通りに何やら人だかりが出来ていた。
また娼婦が殺されたのか―そう思いながら歳三がヴェネチア通りの様子を横目で眺めていると、突然闇の中からまるで気味の悪い触手のように複数本の手が歳三の四肢を雁字搦めにした。

「へへっ、今夜の女は上玉だな。」
「殺すには惜しいから、ガレリアへ売り飛ばそう。」

頭から麻袋を被せられ視界を奪われた歳三は、時折闇の中から聞こえる男達の会話に耳を澄ませながら、彼らが最近ヴェネチア通りで頻発している娼婦殺しと人攫いに関わっている事に気づいた。

(畜生、何とかしねぇと・・)

手足を荒縄で縛られ、身動きが取れないまま、歳三は男達に馬車である場所へと連れて行かれた。

「あら、随分遅かったわね?」
「道が混んでいてな。」
「ま、酒でも一杯やりなよ。それで、今日入った娘は何処だい?」
「こいつさ。」

そう言うと男達の一人が、歳三の顔を覆っていた麻袋を取った。

「へぇ、中々の美人じゃないか。何処で見つけたんだい?」
「ヴェネチア通りに決まっているだろ。あそこしか良い女は居ないからな!」
「この娘なら、売れっ子になれそうだねぇ。」

半ば脂肪で埋もれ、顔と首の区別がつかない太った女は、そう言うとなめるような目で歳三を見た。

「さてと、この娘を色々と“検査”しないとね。」
「中へ連れておゆき。」
「わかったよ。ったく、人使いの荒いババアだぜ!」
「何しやがる、離せ!」
「騒いだら殺すからね。」

女は歳三を睨むと、彼の首筋にナイフを押し当てた。
彼女に連れられて娼館の中へ入った歳三は、目の前に広がる光景を見て言葉を失った。
そこには、十代の少女達が鎖で手足を繋がれた状態で、大きな檻に入れられていた。
彼女達の目は虚ろで生気がなく、全身には不気味なかさぶたのようなものが広がっていた。

「この子は駄目だね、外へ捨てて来な。」
「へいえ。」

檻から出されたのは、まだ幼い少女だった。
美しいブロンドの巻き毛を持ったその少女は、まるで眠っているかのように金色のまつ毛を固く閉ざしていた。
女に命じられ、男がその少女を檻の中から出すと、彼女の華奢な首はグラリと大きく揺れた。
「あの子は何処へ?」
「あんたが知らなくていい事さ。」
「はい・・」
その後、歳三は裸にされ、身体の隅々まで調べられた。
「処女かい。高く売れそうだ。」
「そうだねぇ。」
何とか、ここから逃げなければ―そう思った歳三は、女の手から短剣を奪い、その女の喉元に深々とその刃を突き立てた。
がぁっ、という叫びとも呻きともつかぬ声と共に、女は血泡を吹きながら巨体を大きく揺らした後、汚い床の上に倒れた。
「このアマ、ふざけやがって!」
女の近くに居た男がそう叫んで歳三の頬を殴った。
気絶した歳三が目を覚ますと、彼は天井から両手首を鎖で繋がれ、そこから吊り下げられていた。
「目ぇ覚めたか?」
錆びついた扉が開き、昨晩あの女と共に居た男が部屋に入って来た。
「まさか、お前が男だったとはな。まぁいい、こんな上玉はいくら探しても見つからねぇ。」
持っていた鞭で男はそう言いながら歳三の頬を軽く叩くと、口端を歪めて笑った。
「これから俺を何処へ連れて行くんだ?」
「それは、わからないな。まぁ、ここよりマシな所だというのは確かだな。」
「おい、そろそろ出発の時間だぞ!」
「わかった!」

男は歳三を天井からおろすと、彼と共に娼館の地下室から出た。

「乗れ。」

男がそう言って指した先には、あの少女達が乗せられている粗末な馬車の荷台だった。

「全員乗せたな、出発だ!」

御者台に乗っていた男がそう叫んで馬に鞭をくれてやると、馬は軽く嘶いてぬかるんだ道を走り始めた。
激しく揺れる馬車の中で少女達は悲鳴すら上げる事もなく、皆俯いていた。

馬車はやがて、大きな港に着いた。

「さぁ、乗れ!」
「嫌だ~、母さん!」

船に乗せられそうになった時、一人の娘が突然暴れ出した。

「この野郎、暴れるな!」
「母さ~ん!」

監視役の男の手から逃れ、一人の娘が船から飛び降りた。
その姿は、瞬く間に波に呑まれて見えなくなった。

「こいつらを全員、鎖で繋げ!」
「嫌~!」
「誰か助けて~!」

娘達は一斉に騒ぎ出したが、男達から鞭打たれ、暗い船底に閉じ込められた。

(一体、何処に・・)

娘達を乗せた船は、静かに港を離れた。

「ったく、あいつらはうるさくて堪らねぇ。」
「まぁそう言うなよ。港に着いたらあいつらとはおさらばだ。」
「そうだな。」

甲板で男達がそんな話をしていると、遠くから砲声が聞こえた。

「何だ、今のは?」
「さぁな。」

男達が霧に包まれた水平線の向こうを見てみると、やがて彼らの前にドクロの旗を掲げた海賊船が姿を現した。

「か、海賊だ~!」
「女と金を奪え!」
「アイサー!」

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Last updated  Apr 26, 2021 10:37:42 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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それからというもの、歳三の元には何故か下級生達からの恋文が山程届いた。
(男にモテてもなぁ・・)
そんな事を思いながら歳三が部屋でギリシャ語の作文を仕上げていると、窓の外から何かが当たるような音がした。
(何だ?)
歳三がそう思いながら窓の方へと近づくと、中庭には若い音が立っていた。
年の頃は二十代後半といったところか、身なりからして貴族階級に属する者だと歳三は一目でわかった。
冬の陽光に照らされた髪は白銀で、瞳は目が醒めるかのような美しいアイス・ブルーだった。
その瞳に見つめられ、歳三は何だか気味が悪かった。
(あいつ、何だったんだ?)

歳三はそう思いながら寝台の中に入ると、目を閉じて眠った。

遠くで、橙色の空が見える。
はじめ、歳三は日が暮れたのかと思ったが、空が橙色に染まっているのは、街が燃えているからだった。
空から巨大な怪鳥が次々と口から“何か”を吐き出してゆき、たちまち街は炎に包まれた。

―川の方へ逃げるんだ!
―父さん、母さん!
―あなただけでも、生き延びなさい!

少年は両親の元へ行こうとしたが、彼らは混乱の只中離れ離れになってしまった。

―父さん、母さぁん!

少年の悲痛な叫び声で、歳三は夢から覚めた。

(何だったんだ、今のは?)

歳三がそう思いながら食堂へと向かうと、そこにはあの日の夜酒場で会った青年が居た。

(何でこいつがここに?)

歳三がそんな事を思いながら食堂でトレイを取り、配膳の列に並んでいると、青年と目が合った。
「あなたは・・」
「どちら様ですか?」
歳三はそう言って素早くその場から離れたが、暫く心臓の鼓動が速くなり、苦しかった。
「どうかなさったのですか、顔色が悪そうですが?」
「え・・」
振り向くと、そこには何処か自分を探るような目で見ているユリウスが立っていた。
「少し、眠れなくて・・」
「まぁ、それはいけませんね。後でわたしの部屋にいらっしゃい、不眠に効くハーブティーを淹れてあげましょう。」
「はい・・」
何だか、歳三は余りユリウスと関わり合いたくなかった。
「失礼します。」
(あの人と話していると、変な感じになるんだよなぁ。)
上手く説明出来ないのだが、時折歳三はユリウスが得体の知れない闇を抱えているような気がしてならなかった。
「あのぉ・・」
「あ?」
「これ、落ちましたよ?」
歳三が振り向くと、そこには床に落ちたロザリオを拾ったあの青年が立っていた。
「あ、ありがとう・・」
「あの、もしよければ、後でお話ししませんか?」
「え・・」
「じゃ、じゃぁっ!」

(何だ、あいつ?)

青年から突然デートに誘われ、歳三は戸惑った。

“今夜六時頃、噴水広場で待っています。”

(まぁ、一度だけなら、会ってみるか。)

そんな事を思いながら歳三がユリウスの部屋へと向かうと、中からくぐもったような呻き声が聞こえて来た。

(どうしたんだ?)

ドア越しに中の様子を歳三が覗くと、そこではユリウスが背後から男に貫かれていた。

「濡れているぞ、そんなにいいのか?」
「顔、見せて・・」
「しょうがないな。」

相手の男の顔は見えないが、男と抱き合う形で貫かれたユリウスと歳三は目が合った。
彼のエメラルド・グリーンの瞳は熱を孕んで妖しく煌めいていた。

「どうした?」
「いいえ・・どうやら、ネズミが・・」
「そうか。」

歳三はなるべく足音を立てずにその場を後にした。

「あいつは誰だ?」
「わたしの教え子ですよ。間男だと思いますか?」
「自惚れが強いな。あいつとは、どんな関係だ?」
「だから、教え子だと言っているでしょう。本当に、嫉妬深いお方だ、あなたは・・」

ユリウスはそう呟くと、恋人にしなだれかかった。

「王妃様の隠し子捜しは、どうなっているの?」
「それが・・中々見つからないんだ。一体何処へ消えたのやら・・」
「探し物は、案外近くで見つかるかもしれないよ。」
「それにしても、朝っぱらから男と盛るなんざ、聖職者失格だな。」
「それを言うなら、マリウス様も同じ事ではありませんか?妻子ある身でありながら聖職者との情事に耽るなど・・」
「はは、それもそうだな・・」

ユリウスの恋人・マリウスはそう言って笑った。

「勇、少し落ち着きがないようだな?」
「すいません、師匠。」
「もしかして、好きな人でも出来たか?」
「そ、それは・・」
「隠さなくてもいいぞ。どんな人なんだ?」
「一度だけ、会った人なんですが・・」

パン屋の厨房で、勇は調理場の清掃をしながら、酒場で一度だけ会った女の事を忘れられずにいた。
主人にその女の事を話したら、彼はニヤニヤした後こう言った。

「それは恋だな。」
「恋?」
「あぁ。その人は、とても素敵な人なんだろうな?」
「えぇ・・」
「それで、溜息ばかり吐いているのは、どうしてだ?」
「実は、彼女と良く似た顔の人を、昼間神学校の食堂で見かけたのです。もしかしてと思って声を掛けたのですが、人違いだったようで・・」
「でも、お前はその人だと思っているんだろう?それで、溜息ばかり吐いているんだな?」
「えぇ。実は、その人にメモを渡したんです。」
「そうか。まぁ俺にはわからんが、上手くいくといいな。」
「ありがとうございます。」

勇はそう言うと、頬を赤く染めた。

その日の夕方、勇は店の主人と共に店の閉店作業を終えて一息ついていると、時計の針は五時半を指していた。

「すいません、あの・・」
「あの人と約束があるんだろう?後は俺がしておくから、行って来い。」
「ありがとうございます。」

店を出た勇が一旦帰宅して着替えをして噴水広場へと向かったら、広場の時計は丁度六時を指していた。
周囲を見渡した彼は、待ち人の姿がない事に気づき、少し落胆してしまった。
だが、彼が帰ろうと広場を後にしようとした時、彼は誰かの手で両目を覆われた。

「誰だ~?」

耳元で響く、心地よい声。
それは、あの酒場で聞いた、あの人の声だった。

「来て下さったのですね?」
「えぇ・・」

自分の前に立っている女は、真紅のディアンドル姿で、彼女の美しい身体の線を強調していた。

「おかしいですか?」
「いいえ。良く似合っていますよ。」
「ありがとうございます・・」

少し照れ臭そうに笑う女を見た勇は、少し胸が弾んだ。

「さぁ、行きましょうか?」
「はい。」

女―歳三は、そんな勇を見ながら、彼と共にある場所へと向かった。
そこは、祭りの広場だった。

(そういや、今日は春祭りだったな。)

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Last updated  Apr 26, 2021 10:36:11 PM
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「いつまでこんな茶番劇を続けているつもりなの!」
「しっ、声が大きい!」
「もう我慢の限界よ、お義母様の隠し子はまだ見つからないの!?」
「今、人を使って探し始めたばかりだ、すぐには見つからないさ。」
「そうね・・」
「アリシア、もし見つかったらどうする気なんだ?」
「それは見つかってから考えるわ。」
アリシアはそう言うと、恋人に微笑んだ。
「ねぇグレゴリー、わたし達、幸せになれるわよね?」
「あぁ、その為にも、母上と仲良くしてくれ。」
「わかったわ。」

(早くお義母様の隠し子を見つけ出して始末しないと・・)

「アリシア様、お手紙が届いております。」
「まぁ、誰から?」
「アレクシア様からですわ。」
「姉様から?」

侍女の言葉を聞いたアリシアの声は、心なしか弾んでいるかのように聞こえた。
アリシアの姉・アレクシアは二年前にガレリア王家に嫁いで以来、一度も文を寄越してくれなかったのだから、当然といえば当然であるが。
二年振りに来た姉からの手紙に喜びで胸を弾ませながらアリシアがそれに目を通していると、彼女の顔から笑顔が消えた。

「どうしたんだ?手紙には何て?」
「姉様が、亡くなられたそうよ・・」
「何だって、それは本当なのか!?」
「えぇ・・」
「こんな事が起きるなんて、信じられない!」

グレゴリーが手紙の内容を見ると、そこには衝撃的な内容が書かれていた。

二年前、アレクシアはガレリア王家に嫁いだ直後、ガレリアの隣国・トーガがガレリアに侵攻、その戦禍の混乱でアレクシアは突如消息を絶った。
だが数ヶ月前、ガレリアとトーガの国境付近の森の中から、数体分の遺骨が発掘され、調査した結果、それらは処刑されたガレリア王家の者達のものだと判明した。
トーガはガレリアに侵攻してすぐに王宮を占拠し、敵対勢力であるガレリア王家の者達を、三歳の幼子に至るまで一人残さず処刑したのだった。

「グレゴリー、わたくし明日にガレリアへ発つわ。お姉様を迎えに行かないと・・」

そう言って椅子から立ち上がったアリシアは覚束ない足取りで数歩歩き始めたものの、すぐに気を失って床に倒れ込んでしまった。

「アリシア!」
「アリシア様!」
「誰か、お医者様を呼んで頂戴、早く!」

アリシアはすぐさまグレゴリーによって寝室へと運ばれ、医師の診察を受けた。

「精神的ショックを受けたのでしょう。何か心当たりは?」
「先程、彼女の姉の訃報が届きました。」
「そうでしたか・・彼女をゆっくり休ませてあげて下さい。心の傷には、静養が一番です。」
「わかりました。」
「では、わたしはこれで。」
「ありがとうございました。」

医師が去った後、グレゴリーはそっと眠っているアリシアの手を握った。

「愛しい人、今は何もかも忘れてゆっくりとお休み。」

その日の夜、王宮では国王夫妻主催の舞踏会が開かれ、ドレスや宝石で着飾った貴婦人達や令嬢達が扇子の陰で社交界の醜聞に興じていた。

―ねぇ、アレクシア様がお亡くなりになったそうよ。
―まぁ・・
―アリシア様は、体調を崩されたそうよ。
―無理もないわよね。

そんな事を社交界デビューしたばかりの貴族の令嬢達が話をしていると、大広間に一人の令嬢が入って来た。
年の頃は十五、六といったところだろうか、その年の割には、彼女は大人びて見えた。
夜の闇を思わせるかのような美しく艶やかな黒髪に真珠を飾り、銀糸を織り込んだ銀色のドレスを纏った彼女は、一人の青年の手を取って静かにワルツを踊り出した。

―何て美しい方なのかしら・・

(俺、何でこんな所に居るんだ?)

話は舞踏会の数時間前まで遡る―

「トシゾウ、君は夜にだけ女性になる体質だそうだね?」
「ヨハネス様、何故それを・・」
「知っているのかって?親切な我が友人、ユリウスがわたしに教えてくれたのだよ。」
「あの、その事と今夜の用事とどんな関係が?」
「今夜、国王夫妻主催の舞踏会が王宮で開かれる。」
「それが一体、どうかしたのですか?」
「君は社交界デビューした令嬢としてその舞踏会に出て貰う。これは命令だ。」
「はい・・」

こうして、歳三はその日の夜、貴族の令嬢として王宮の舞踏会に出席した。

(あの狸親爺の狙いは一体、何なんだ?)

慣れないドレスとハイヒールの所為で疲れた身体を引き摺りながら、歳三は人気のない王宮の中庭にある噴水の前で休んでいた。

「いててて・・」

足を締め付けていたハイヒールを脱ぐと、両足の踵は靴擦れで赤くなっていた。
女というものは、こんなに歩きにくいものをいつも履いていなければならないのか。

(面倒臭ぇな・・)

そろそろ大広間へと戻ろうかと歳三が噴水の前から立ち上がった時、近くの茂みからガサガサという音がした後、一人の少女がそこから出て来た。
彼女は寝間着姿で、糖蜜色の美しい髪には緑の葉っぱがついていた。

「女神様・・」

少女はそう言うと、宝石のような美しい翠の瞳を美しく輝かせながら歳三を見た。

「何だ、てめぇ?」
「まぁリリア様、こちらにいらっしゃったのですか!さぁ、お部屋に戻りますよ。」
「え~」
「さぁ、戻りますよ!」

少女は乳母と思しき女性に抱きかかえられながら中庭を後にした。

(一体何だったんだ、あのガキ・・)

痛む足を引き摺りながら歳三が王宮の中から出ると、ヨハネスが用意した馬車が彼の前で停まった。

「どうだ、王妃様には会えたか?」
「いいえ。」
「そうか。トシゾウ、今夜の事はわたし達の秘密だぞ?」
「はい・・」

(気色悪いな・・)

歳三は神学校に着いた途端、神学校の前で馬車から降りて、自室に入ると着替えもせずにそのまま寝台の上に寝転がって朝まで眠ってしまった。

―まぁ、こんな所にいらしたのですね。・・様

何処からか、誰かが自分を呼んでいるような声が聞こえた後、歳三は目を覚ました。

「ん・・」

ドレスを着たまま寝てしまったので、それには少し皺が寄っていた。

(さてと、さっさと着替えて朝飯でも・・)

歳三がそんな事を考えながら脱いだドレスをクローゼットの中にしまっていると、突然ノックもなしに部屋のドアが開き、ユリウスが入って来た。

「あ、あの・・」
「もうすぐ朝食の時間ですよ、急いで支度なさい。」
「は、はい・・」

(一体何考えてんのかわからねぇ人だな・・)

そんな事を思いながら歳三が朝食のパンを頬張っていると、そこへ一人の神学生がやって来た。

「あの、これ・・」
「あ?」
「読んで下さいっ!」

そう叫んだ神学生は、歳三に恋文を渡すと去っていった。

(男から恋文貰ってもなぁ・・)

「おやおや、青春ですねぇ。」

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Last updated  Apr 26, 2021 10:34:31 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

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この日、近藤勇は山奥の貧しい山村から家族や友人達に盛大に見送られながら、汽車に揺られて王都へと向かった。
そこはまさに、“新世界”そのものだった。

(おっかねぇ、ここが王都か・・)

生まれてから十五年間、長閑な山村の風景しか見ていなかった勇にとってそれはまさに、“未知との遭遇”そのものであった。
道に迷いながら彼が漸く下宿先に辿り着いたのは、その日の夕方の事だった。
朝食を済ませてからは何も食べていなかった彼は、下宿屋の主人から飯が美味しいと評判の酒場を紹介して貰い、そこで美味い飯を食べた後、あの美女と出会ったのだった。

「姉さん、こんな所に居たのか、探したよ!」

男と何やら言い争っている彼女にそう声を掛けると、男は舌打ちして去っていった。

「大丈夫ですか?」
「あぁ・・」

そう言って苦しそうに息を吐いた美女は、勇にしなだれかかって来た。

「え、えぇ!」

彼女が倒れそうだったので、勇は彼女を慌てて抱き留めたが、今まで女性に免疫がなかった彼はそれだけでドキドキしてしまった。
勇は店員に二階の部屋へと案内され、部屋に入って彼女をベッドに寝かせた後、安堵の溜息を吐いた。

(一体これからどうすれば・・)

「う~ん・・」

眉間に深い皺を寄せながら、美女は低く呻いて寝返りを打った。
勇はその夜は一睡も出来なかった。

「ん・・」

カーテンの隙間から射し込む朝日の光を感じて歳三が目を覚ますと、彼は見知らぬ青年が自分の手を握って眠っていた―全裸で。

「うわぁぁ~!」

突然の事で驚いた歳三はそう叫びながら青年の頬を平手で打ったが、彼は一向に起きる気配がなかった。
彼を起こさぬよう、そっと部屋から出た歳三は、そのまま酒場を後にした。
誰にも気づかれぬよう彼が足早に神学校の裏口から中へと入ると、丁度朝を告げる鐘の音が遠くから聞こえた。

(ヤベェ、急がねぇと!)

歳三は自分の部屋に入ると、素早く外套を脱いでそれをクローゼットの中にしまった後、洗面所で顔を洗った。

「トシゾウ、トシゾウ!」
「は~い、ただいま!」

ドアが激しくノックされ、歳三が慌てて部屋から出ると、廊下には少し慌てた様子のユリウスの姿があった。

「修練士長様、どうかなさいましたか?」
「トシゾウ、今から院長室へ行きなさい!」
「は、はい・・」

訳がわからぬまま、歳三がユリウスと共に院長室へと向かうと、そこには渋面を浮かべた院長・ヨハネスの姿があった。

「院長様、トシゾウを連れて参りました。」
「そうか。ご苦労、君はもう下がっても良い。」
「はい・・」
「あの・・」
「トシゾウ、今朝ユリウスが君の部屋でこんな物を見つけたそうだ。」
「はぁ・・」

ヨハネスがそう言って歳三に見せたものは、あの白貂のケープだった。

「君はこの紋章が何なのか知っているな?」
「いいえ。聖母マリア様の白百合の紋章だと・・」
「これは、我が国の紋章なのだ・・」
「そんな・・」

歳三はケープに刺繍された紋章の意味を知っていたが、ヨハネスの前では敢えて知らない振りをした。

「そうか・・」
「あの、それが何か?」
「急な話だが、今夜君はわたしと王宮へ行く事になった。」
「それは、どうして・・」
「理由は後で話す。」

(一体、どういう事なんだ?)

図書館でラテン語の復習をしながら、歳三は朝の院長室でのやり取りを思い出していたら、ある重要な事に気づいた。

“今夜、君はわたしと王宮に・・”

(待て、今かなりヤバいんじゃないか、俺?昨夜、“女”になっただろ?ってことは、“それ”が今夜も・・)

「かなり、不味いな・・」
「何が、不味いのですか?」
「うわぁ!」
「図書館では静粛に。」
「すいません。」
「君は確か、ヨハネス様の秘蔵っ子だね?」
「は?」

歳三がそう言って振り向くと、そこには修練士のアントニオが立っていた。

温厚な性格のユリウスとは対照的に、アントニオは陰険で貴族出身の者達を贔屓するので、余り生徒達からは好かれていなかった。
そんな彼が自分に声を掛けて来たので、歳三は思わず身構えてしまった。

「な、なんでしょうか?」
「ふふ、そんなに怯えないでくれ。取って食ったりはしないから。」

アントニオは何処か湿り気のある口調でそう言うと、そっと歳三の肩に触れた。

「あの、俺に何か?」
「余りヨハネス様から気に入られているからって、調子に乗ってはいけないよ。」

(おっかねぇ人だな・・)

歳三はそう思いながら、黙々と羽根ペンを動かした。

「なぁ、聞いたか・・」
「あぁ・・」
「ヴェネチア通りでまた殺しがあったんだろう?」
「娼婦か・・」
「どうせ痴情のもつれか何かだろう?」
「まぁ、俺達には関係のない事さ。」
「そうだな。」

(ヴェネチア通りか・・そういや、あいつは今どうしているんだろうな?)

「勇さん、何してんだい!」
「す、すいません!」
「ボーッとして貰っちゃ困るよ、忙しいんだから!」
「はい!」

勇は厨房で忙しくパンを焼きながらも、昨夜酒場で会った美女の事が忘れられずにいた。

正午を告げる鐘の音が聞こえ、アリシアは刺繍をする手を止めた。

「アリシア様、お食事をお持ち致しました。」
「ありがとう。」
アリシアはそう言うと、昼食のカスクートを頬張った。
「美味しいわね!どこの店のものなのかしら?」
「何でも、“ルイージの店”のカスクートだそうですよ。あそこは王都で一番人気の店だとか。」
「へぇ、そうなの。一度、行ってみたいものだわ。」
「えぇ、そうですわね。」
「まぁ、何やら楽しそうな声が聞こえて来たと思ったら、こんな所に居たのね、アリシア。」
「王妃様。侍女が王都で一番美味しいカスクートを差し入れて下さったのです。ご一緒にいかがです?」
「えぇ、そうね。頂くわ。」
エリスはそう言うと、アリシアと共に朝食を取った。
「美味しいわね、このカスクート。」
「“ルイージの店”のカスクートですって。一度、皆さんをお誘いしてお腹一杯カスクートを頂きたいですわね。」
「えぇ、そうですわね。」
「アリシア、あなたは時折面白い事を言うのね?」
「あら、そうですか?」
「さてと、おしゃべりはこれ位にして、作業を再開しましょうか?」
「はい。」

アリシア達が楽しくおしゃべりしながら刺繍を楽しんでいると、そこへグレゴリーがやって来た。

「あらグレゴリー、珍しいわね、こちらにいらっしゃるなんて。」
「おや、君達の優雅なランチタイムを邪魔してしまったかな?」
「いいえ、そんな事ないわ。」
「一体何を作っているんだい?」
「タペストリーよ。わたくし達の新居に飾るものなの。王妃様も手伝って下さって・・」
「完成が楽しみだな。」
「でしょう?」
「まぁ、お二人の仲の良さに嫉妬してしまいますわ。」
「あんなご様子だと、家族がもう一人増えるのも時間の問題かもしれませんわね、王妃様?」
「えぇ、そうね・・」

エリスは、今この上なく幸せだった。

「王妃様、陛下がお呼びです。」
「わかったわ。ではアリシア、また後で。」
「はい、王妃様。」

アリシアはそう言って笑顔でエリスを見送ったが、彼女の姿が見えなくなった途端舌打ちして婚約者の方を見た。

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Last updated  Apr 26, 2021 10:33:27 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。

土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。

アムステア王国王妃・エリスは、先程大聖堂の前で擦れ違った我が子の事を想った。

エリスは、長い間国王との間に子宝が授からず、その所為で周囲から心無い言葉を掛けられ、傷ついていた。
何でも医者に診て貰ったが、“異常なし”と言われた。
精神的に追い詰められ、彼女が自殺を考えようとした時、一人の青年がエリスに声を掛けた。
彼は隼人と名乗り、遥か東の島国から来たと、エリスに話してくれた。
“わたしには、帰る場所がないのです。全てを捨て、この国に来ました。”
“そうなの、わたくしも同じようなものよ。”
小国の王女として生まれ、政略結婚でこの大国に嫁いだ。
周りは誰も彼も敵だらけで、味方といえば愛する夫だけ。
そんな孤独な彼女の前に現れた隼人と彼女が恋に落ちるのには、さほど時間がかからなかった。
夫の目を盗んで彼と密会を重ねたエリスは、月のものが来ていない事に気づいた。
王妃の懐妊を、国王は大層喜んでいたが、彼の母である王太后の反応は違った。

「エリス、あなたのその腹に宿る子は不義の子なのでしょう?」
「お義母様・・」
「命が助かりたければ、その子を捨てなさい。そうれば、あなたの秘密を決して口外しないと、約束してあげるわ。」
「そんな・・」
「選ぶのは、あなたよ。」

月満ちてエリスがこの世に産み出したのは、隼人に瓜二つの顔をした男児だった。

エリスは泣く赤子を大聖堂の前に捨てた。

「優しい人に、育てて貰ってね・・」

あれから十五年もの歳月が経ち、愛しい我が子が目の前に現れた。
彼は、あの人に瓜二つだった。
隼人が、まるで自分と出会った頃の姿となって自分に会いに来てくれたかのようだった。

(あの子は生きていた・・)

あの時、産まれてすぐに手放してしまった。


出来る事なら、もう一度会いたい――そう思いながら、エリスは王宮の前で馬車を降りた。

「お帰りなさい、母上。」
「グレゴリー、わざわざ出迎えてくれなくてもいいのに。」

エリスが王宮に入ると、そこには王太子・グレゴリーが彼女を出迎えた。

「どうしても、アリシアが母上にご挨拶したいと・・」
「まぁ・・あんなに小さかったあなたも、もうすぐ結婚するのね。何だか、複雑な気分だわ。」

グレゴリーは、もうすぐ美しい花嫁を妻として迎える事になっている。
成人を迎えるまでまだ早いのだが、王太后の容態が芳しくないので、“出来るだけ早い内に王太子様の結婚を早めませんと”という周囲からの声もあり、グレゴリーは婚約者であるアリシア=レーゲンヴェルク伯爵令嬢と来月結婚する事になっており、アリシアは半年前から行儀見習い、“花嫁修業”の一環として王宮で女官として働いている。

「王妃様、お帰りなさいませ。」
「アリシア、忙しいのにごめんなさいね。」
「いいえ。」
「お茶でも一緒にどうかしら?」
「はい、喜んで。」

アリシアは賢いし優しい。

グレゴリーとの相性も良くて、二人ならば未来の国王と王妃としてこの国を良い方へと導いてくれる事だろう。
あの子は――隼人の忘れ形見の存在は、自分の心の片隅にしまっておこう。
エリスはそう決意して、アリシア達と楽しい時間を過ごした。

「では王妃様、わたくしはこれで。」
「えぇ。」

息子の婚約者を温室で見送ると、エリスは大きな溜息を吐いた後、少し冷めた紅茶を飲んだ。

アリシアとは、上手くやっていけそうな気がする。

それに、王太后と上手くいかなかった自分の事を思い出す度、アリシアにはあんな悲しい思いをさせたくない。

「王妃様、こちらにいらっしゃったのですか!至急王宮へお戻り下さい!王太后様がご危篤です!」
「何ですって、それは本当なの!?」

エリスが姑の寝室へと向かうと、彼女は荒い呼吸を繰り返しながら嫁を睨みつけていた。

「・・た」
「お義母様、何かわたくしに言い残したい事は・・」
「お前が産んだ不義の子は、この国に災厄をもたらす!」

王太后は大きく目を見開きそう叫ぶと、息を引き取った。

「エリス、母上は?」
「先程、亡くなられました。」
「そうか。」

狩りから帰って来た夫は、愛する母の臨終に間に合わず、悲嘆に暮れた。

(もしかして、お義母様はあの子が生きている事を知っていたのかしら?)

王太后の葬儀の日は、大雪に見舞われた。

「まぁ、こんな日に大雪なんて・・」
「何か災いでも起きるのかしら?」

王太后の葬儀の後、大雪は何日も降り続いていた。

その所為で生活が苦しい庶民は石炭や薪を買う金が工面できず、次々と凍死していたった。
交通機能が麻痺し、凍結した路面では馬車同士の衝突事故が相次いだ。
王宮でも市場でも、皆国民は雪掻きに追われていた。
それは、神学校と修道院も同じだった。

「いつまでこんなのやればいいんだ、畜生!」

歳三はそう呟きながら、シャベルで中庭の雪掻きをしていた。

「おい新人、まだ終わらないのか?」
「はい、すいません・・」

歳三がせっせと雪掻きをしていると、そこへ上級生達がやって来た。

彼らは皆貴族の子弟で、孤児で新入りの歳三を何かと見下していた。
歳三は彼らに尻尾を振るふりをして、内心彼らを見下していた。

「そうか。雪掻きが終わったら、俺達の部屋の掃除を・・」
「やなこった。」
「てめぇ・・」
「言っとくが俺ぁてめぇらの使用人でも何でもねぇんだ。庶民をあごでこき使えると思ったら大間違いだぜ。」
「てめぇ・・」
「殴りたきゃ殴りな。」
「あなた達、そこで何をしているんですか!」

歳三達が揉み合っていると、そこへ修練士長のユリウスがやって来た。

「修練士長様、こいつが俺達に対して生意気な口を・・」
「黙りなさい!今まであなた方の問題行動には目とつぶって来ましたが、今回ばかりは見逃せません!」
「そ、そんな・・」
「俺達は・・」
「雪掻きを終わりましたので、俺はこれで失礼致します。」
「寒い中、ご苦労様でしたね。部屋に戻って身体を温めなさい。」
「はい。」
「あなた達はこれからサボっていた分の仕事をするように、いいですね?」

黙り込んで雪掻きを始める上級生達を見ながら、歳三は部屋へと戻った。
漸く雪掻きから解放された彼は、机に座ってラテン語の溜まっていた宿題をやり始めた。
少し疲れが溜まっていたのか、歳三はそのまま机の上に突っ伏して眠ってしまった。

「ん・・」

目を覚ますと、もう夜になっていた。

妙に胸に違和感があると思った歳三が、そっとそこを触ると、そこには膨らみがあった。

(これが、シスターが言っていた、俺の“体質”ってやつか?)

歳三が鏡の前に立つと、そこには黒髪の美女が映っていた。

(上がこうなっているって事は、下は・・)

そっと服の上から陰部を触ると、そこにはいつもぶら下がっているモノがなかった。

(どうすんだ、これ・・)

女人禁制の神学校で歳三がこんな“体質”である事が露見すれば、退学処分だけでは済まない。
この姿のままここで一晩過ごすのは気がひけるので、歳三は薄手のシャツの上に黒い外套を羽織り、そのまま神学校から、夜の街へと繰り出した。
今まで夜の盛り場とは全く無縁の世界で生きていたので、歳三はやたら男達から声を掛けられている事に全く気付かなかったが、ジロジロと自分の胸元に男達の視線が集まっている事に気づいた。

(男ってやつは、そんなに女の胸が好きなのかね?)

そんな事を思いながら歳三が夜の街を歩いていると、突然雨が降り出したので、彼は近くの酒場で雨宿りする事にした。
酒場の中へ入ると、中には賑やかな音楽と笑い声が満ちていた。

「いらっしゃいませ~」

歳三が空いているカウンター席の上に腰を下ろすと、彼の元に一杯のカクテルが置かれた。

「頼んでねぇが?」
「あちらのお客様からです。」

歳三がバーテンダーの指す方を見ると、そこには身なりが良い男が据わっていた。
タダ酒が飲めるのならば、ありがたい。
歳三はそんな軽い気持ちでカクテルを一口飲んだだけで身体が熱くなった。
そのカクテルには、媚薬が入れられていた。

「どうした、気分でも悪いのか?」
「いいえ・・」
「顔色が悪そうだな、二階で一緒に休もうか?」
「姉さん、こんな所に居たのか、探したよ!」

揉み合っている歳三と男の間に、突然一人の青年が割って入って来た。

「チッ、連れが居たのかよ。」

男は舌打ちすると、酒場から出て行った。

「大丈夫ですか?」
「あぁ・・」

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