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JEWEL

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薄桜鬼 二次創作小説:侍の娘

Jan 19, 2021
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画像はコチラからお借りしました。

「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


「どうやら、貴様は茶道の作法を知っているようだな?」
「父と母に、何処へ出しても恥ずかしくないよう、厳しく躾けられましたから・・」
「そうか。話を戻そう。何故、貴様の父親を俺が知っているのかという事を知りたいのだろう?」
「はい。」
「話せば長くなるが、まぁいい。実は俺と貴様の父親とは、前世からの因縁がある、良い意味でも悪い意味でもな。」
「あなたとの事は、父から聞きました。」
「そうか、ならば話が早い。今の貴様の父親は、貴様が知っている父親音は全くの別人だ。」
「でも・・」
「今のあやつには、家族など居らぬ。何故なら、あやつの家族は皆死んだからだ。」
「それは、確かなのですか?」
「あぁ。」
千歳は頭が混乱した。
病室で自分を睨みつけていた父の瞳は、何も映していなかった。
「あの・・父は、いつから目が見えなくなってしまったのですか?」
「事故の後だ。」
「事故?」
「風間、ここに居たのですか?」
突然和室の襖が開いて、スーツ姿の男が入って来た。
「天霧、今俺は客人と話を・・」
「緊急理事会が開かれました。そちらの方は?」
「薄桜鬼の娘だ。」
「はじめまして、わたしは天霧九寿と申します。」
「天霧、客人を病院のロビーまで送れ。」
「わかりました、ではこちらへ・・」
「あの・・」
「また会おう、薄桜鬼の娘よ。」
風間はそう言うと、和室から出て行った。
「あぁ君、やっと見つけたよ。」
「ではわたしはこれで。」
スーツ姿の男―天霧は、そう言って千歳達に一礼すると去っていった。
「腹、空いていないか?ちょうど昼時だし、何か食べたいものでも・・」
「何でもいいです。」
「そうか・・」
千歳は近藤と共に病院を出て、近くにある“ファミリーレストラン”という名の飯屋に入った。
「好きな物を頼んでいいぞ。」
「はい・・じゃぁこれを。」
千歳がそう言って色鮮やかなメニュー表から選んで指したものは、鮭の塩焼き定食だった。
「あの、近藤さんと父は、一体どういう関係なのですか?」
「俺とトシは、幼馴染でね。トシとは薄桜学園という学校で、教師をしているんだ。」
「父様も・・父も、寺子屋で子供達に読み書きと剣道を教えております。」
「そうか!」
「あの、先程父が階段から落ちた時、助けて下さってありがとうございました。」
「いや、いいんだ。」
「父は、あの時“俺は家族なんて居ねぇ!”と叫んでいましたが・・」
「トシは、半年前家族を・・奥さんと双子の娘さん達を事故で亡くしたんだ。」
勇は、そう言うと目を伏せた。
そして、彼は歳三が家族を失った凄惨な事故の事を千歳に話した。
その日、歳三は妻・千鶴と双子の娘達と共に遊園地へと向かっていた。
そこで一日中楽しく遊んだ後、帰宅途中に一家に悲劇が襲った。
「降って来たな。」
「酷くならない内に、帰りましょう。」
「あぁ。」
後部座席のチャイルドシートに座り眠っている双子達の寝顔を歳三がミラー越しに見つめていると、後方から一台の高級車が走って来た。
(何だ?)
歳三は高級車を追い抜こうとしたが、高級車はわざと車間距離を詰めて来た。
その後、高級車は歳三達の車を執拗に追いかけた。
「歳三さん・・」
「大丈夫だ!」
高級車の追跡をかわす余り、歳三は雨でスリップした道路でスピードを出してしまった。
そして、土方家の車は横転し、炎上した。
後部座席に座っていた娘達は焼死、千鶴は全身打撲と出血多量で搬送先の病院で死亡が確認された。
「その車・・事故を誘発した車の運転手は何処に?」
「その車の運転手は、別の場所で事故を起こして死んだ。」
「そんな・・」
「トシは幸い大きな怪我はしていなかったが・・目が見えなくなってしまったんだ。」
勇の言葉を聞いた千歳は、歳三がマンションの非常階段から落ちた時の事を思い出した。
あの時、歳三は自分が居た場所とは正反対の場所へと向かい、足を踏み外してしまったのだった。
「あの、じゃぁ父は、今一人で暮らしているんですか?」
「あぁ。」
「そうですか。父の目は、治るのでしょうか?」
「それは、誰にもわからない。医者が言うには、トシの目が見えなくなったのは、心因性・・強いストレスが原因だそうだ。」
歳三は、ゆっくりと目を開けた。
相変わらず、その瞳には何も映していない。
「土方さん、点滴の時間ですよ~」
ストレッチャーの音と、看護師が履いているナースサンダルが床を擦る音、カーテンが開けられる音が聞えて来た。
「ご飯、完食していますね。」
「あぁ・・」
看護師から栄養剤の点滴を受けている間、カーテンで仕切られている隣のベッドから楽しそうな声が聞えて来た。
「パパ、退院したら一緒に遊ぼうね。」
「あぁ。」
「あなた、お仕事を頑張るのもいいですけれど、余り無理しないで下さいね?」
幸せな家族の会話をそれ以上聞きたくなくて、歳三は点滴スタンドを杖代わりにしながら、病院内の喫煙所へと向かった。
何とか手指の感触だけで歳三が煙草を吸っていると、そこへ風間がやって来た。
「またこんな所でやさぐれているのか、薄桜鬼よ。」
「うるせぇ、放っておけ。」
「貴様の娘と、先程会ったぞ。」
「俺には娘なんか・・」
「瓜二つの顔をしていたぞ。それに、一筋縄ではいかぬ所が貴様に良く似ている。」
風間はそう言うと、精彩を欠いている歳三の顔を見た。
「貴様の娘は貴様を心配していたぞ?」
「そんなの、知らねぇ。」
「そうか。」
喫煙所で歳三がそんな話を風間としている頃、千歳は近藤が運転する車である場所へと向かっていた。
「あの、ここは?」
「あぁ、ここは俺の親父が経営している道場で、試衛館というんだ。」
「試衛館・・」
その名は、何度か父の口から聞いた事がある。
『父様の大切な仲間達は、みんなあの世に逝っちまったが、その志だけはまだここにある。』
そう言って己の胸を叩いていた父の姿を、千歳は忘れる事が出来ない。
「足元に気を付けてくれ。」
「はい・・」
「近藤さん、遅かったじゃん!あれ、その子は?」
試衛館道場の門下生・藤堂平助はそう言うと、勇の背後に立っている和服姿の少女の存在に気づいた。
「みんな、この子はうちで暫く暮らす事になった、土方千歳君だ。」
「はじめまして、土方千歳と申します。これから、宜しくお願い致します。」

こうして、千歳の“平成”での新たな生活が始まった。

一方、“明治”の土方家では、歳三は自室である書物を手に取っていた。

それは、生前山南が書き残した羅刹と変若水についての研究記録を纏めたものだった。
『山南さん、これは?』
『これは、わたしが長年の研究を纏めたものです。いつか、役に立つ日が来るかもしれません。』
京都での屯所時代、山南はそう言って誇らしげにその書物を歳三に見せた。
それには、羅刹と変若水について詳しく記されていた。
変若水の原料や、羅刹となった者の副作用―吸血衝動や短命など、それらを防ぐ為に改良して研究を進めようとしている山南の姿が、書物を読んでいる内に浮かんだ。
歳三が溜息を吐きながら書物を閉じると、襖の向こうから妻の声がした。
「歳三さん、お昼が出来ましたよ。」
「わかった。」
昼食時の時間は、千歳が居ないだけでさびしいものだった。
「ねぇ父さん、姉様も東京の女学校に行かせてあげて。」
「誠・・」
「僕が東京の学校に行けるのは、姉さんがつきっきりで勉強を教えてくれたからだよ。」
「そうか・・」
「歳三さん、千歳は賢い子です。家事も出来ますが、あの子はこんなに狭い村の中で燻らせるには勿体ない子です。」
「縁談の件は、わたしが引き受けるから、だから父様、お願い・・」
「わかった。」
 妻子からそう懇願され、歳三は千歳の女学校進学を認めた。
「姉様、早く帰って来ないかなぁ・・」
「えぇ・・」
「なぁ桜、“鬼隠し”に遭った娘さん達に、何か共通点はあるか?」
「ええっと、一人目の千津さんは室蘭の銀行家の所へお嫁に行く事になっていて、二人目の鞠千子さんは札幌の農家の所へ、三人目の美千絵さんは函館の資産家の所へそれぞれお嫁に行く事になっていたの。姉様の嫁ぎ先は、旭川の資産家の所だったわ。」
「そうか。」
“鬼隠し”の被害者―千歳も含め、全員嫁に行く予定があり、名前に一文字“千”が入っている。
(もしかして、あいつが関わっているのか?)
「父さん、お客様だよ。」
「お客様?」
「うん。天霧さんっておっしゃる方。」
「わかった。」
歳三が書斎から出て母屋へと向かうと、そこには天霧九寿の姿があった。
「お久しぶりです、土方さん。」
「天霧・・」
「わたしがあなたをこうして訪ねて来た理由は、あなたもおわかりでしょう?」
「お茶を淹れて来ます。」
「ご子息ですか?はじめまして、わたしはお父上の古いご友人で、天霧九寿と申します。」
「土方誠と申します。」
「あなたの姉上様にも深く関係する話がありますので、あなたもこちらにお座りなさい。」
「はい・・」
誠が父の隣に腰を下ろすと、天霧は軽く咳払いした後、静かに口を開いた。
「まずはじめに言っておきますが、一連の失踪事件には我々鬼は一切関与しておりません。」
「それは、確かなのか?」
「はい。」
「だが・・」
「被害者には、“千”が名前の一字に入っている事、そして嫁入り前だと言う事で、あなたならばすぐに我々の関与を疑っていた筈。しかし・・」
「あの、天霧さんが言う、“我々”というのは?」
「君はまだ、ご両親から真実を聞かされていないのですね?」
「あの・・」
天霧の碧い瞳に捉えられ、誠はまるで金縛りに遭ったかのように動けなくなった。
「今からわたしの話を落ち着いてお聞きなさい。あなたのお母上、土方千鶴様は東の最大の鬼の一族・雪村家の娘。そしてあなたの父親は、かつては人間でしたが、千鶴様から血を与えられ、“薄桜鬼”となられました。」
「じゃぁ、あの“鬼隠し”は・・」
「俺が昔、京に居た頃、俺達は“ある研究”に携わっていた。」
「“ある研究”?」
「あぁ。それは、ある液体を使って、その薬で人工的に人間を鬼にする実験だ。」
「そんな・・」
「今回の事件は、人工的に鬼となった化物“羅刹”が絡んでいる事は、間違いありません。」
「一体誰が・・」
「過去にあなたと敵対していた者でしょうか。」
天霧がそう言葉を切った時、外から娘の悲鳴が聞こえた。
「血ヲ寄越セ~!」
「とうとう現れやがったな!」
歳三はそう言うと、堀川国広の鯉口を切り、羅刹の首を切り落とした。
「桜、無事か!?」
「はい。」
「そやつが、今回の事件の下手人です。だが、黒幕は別にいます。」
「その黒幕は、一体誰なんだ?」
「もう見当がついています。」
蝦夷地から遠く離れた東京と名を変えた江戸の街の一角にある邸宅の一室で、一人の男が部下からある報告を受けていた。
「例の件はどうなっている?」
「娘達は、人目のつかない所に閉じ込めておきました。」
「そうか。」
「“実験”は今の所うまくいっているようです。」
「あとは、“薄桜鬼”の娘を捕えるだけだ。」
東京の自宅の地下室に、その男の“研究室”があった。
その“研究室”の中には、“鬼隠し”に遭った娘達が狭い牢の中に閉じ込められていた。
(助けて、誰か・・)
娘達は糞便に塗れながら、必死に鉄格子を爪で引っ掻いた。
「何故、そこまでして“薄桜鬼”の娘に拘るのですか?」
「“薄桜鬼”・・いや、新選組元副長・土方歳三には散々戊辰の戦で煮え湯を飲まされて来た。てっきり五稜郭で戦死したと思ったが、まさか生きていたとはな。京で新選組に殺された仲間達の仇を取らねば意味がない。」
そう言った男―槙野信之介は、季節外れの桜を見て拳を固めた。
「旦那様、大久保利通様がお見えです。」
「わかった、すぐ行く。」
信之介はそう言うと、書斎から出て行った。
(これからだ・・これからがわたし達の復讐劇の始まりだ。)

千歳が近藤家で暮らし始めてから、一月が経った。

はじめは現代での生活に戸惑っていたが、明治の頃よりも家事にかかる時間が減って楽になり、その分千歳は空いた時間を利用して近所の図書館に通っては、勉強に打ち込むようになっていった。
そんなある日の事、彼女は勇と共に歳三の部屋を掃除しに行った。
「これは・・」
「信じられない・・」
土方家の鍵をマンションの管理人から借りて部屋の中へと二人が入ると、そこにはコンビニ弁当の容器やカップ麺の容器などのゴミが散乱し、足の踏み場がなかった。
それを見た千歳は、激しく動揺した。
「どうして、こんな・・」
「セルフ・ネグレクトだ・・トシは家族を喪った事で、生きる為の行動を放棄したんだ。専門の清掃業者に依頼して少しは良くなったんだが、また元の木阿弥に戻ったんだな・・」
「そんな・・」
歳三の寝室とリビングはゴミで散乱していたが、家族の遺品と位牌がある仏間と、妻・千鶴の部屋だけは綺麗で、こまめに掃除や換気をされていた形跡があった。

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Last updated  Jan 19, 2021 10:38:16 PM
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


「父様なんて大嫌い!」
「待ちなさい、千歳!」
「放っておけ!」
背後から聞こえる両親の声を振り切るように、土方千歳は自宅を飛び出した。
父・歳三と口論になったのは、土方家の末っ子で自分達の弟である誠が東京へ行く事になり、自分も行きたいと言い出したら、父が勝手に自分の縁談を決めてしまったのだ。
「どうして、そんな・・」
「お前ぇには、女としての幸せを・・」
「女だから、嫁に行くなんて嫌よ!わたしは、もっと広い世界を知りたいの!」
「俺はお前ぇに・・」
「侍の娘だから、わたしは外に出ては行けないの!?天子様に弓引いた逆賊の・・」
「口を慎め!」
頬を張られ、その時初めて千歳は歳三に打たれたのだとわかった。
「父様なんて大嫌い!」
涙を流しながら、千歳は家から飛び出した。
父が、かつて新選組の“鬼の副長”としてその名を轟かせた“土方歳三”だと知ったのは、千歳と双子の妹・桜が『小学校』に入学した時だった。
父は土方家にとって偉大な存在だったが、世間様から見れば“逆賊”でしかなかった。
父は幕府や、仲間の為に戦ったのに。
会津だって、必死に戦ったのに、あの“錦の御旗”を薩長軍が掲げたから“逆賊”になるなんて、酷いし理不尽過ぎる。
だから、もっと広い世界を知りたい―それが千歳の願いだった。
それなのに―
(父様は、どうしてわたしの気持ちをわかってくれないの!?)
千歳はひとしきり走った後、両親が営んでいる寺子屋の前に来ていた。
(帰ろう・・)
父に暴言を吐いた事を謝ろう―そう思いながら千歳が家へと戻ろうとした時、茂みの奥で、“何か”が光ったような気がした。
「え・・」
「・・ヨコセ・・」
茂みの中から得体のしれない化物が現れ、千歳は必死にそれから逃げようとする余り、足を踏み外して崖下へと転落した。
(ごめんなさい、父様・・)
崖下に渦巻く“時空のひずみ”の中へ、徐々に千歳の身体は呑み込まれ、消えていった。
「姉様?」

姉が愛用していた茶碗が割れ、妹の桜は嫌な予感がした。

「降って来たな・・」
「酷くならない内に、帰りましょう。」
それが、歳三が妻・千鶴と交わした最後の会話だった。
全身を襲った激痛と、空気を切り裂くかのような衝撃音。
そして、紅蓮の炎に包まれる我が子達。
「千鶴!」
「歳三・・さん・・」
必死に自分へと手を伸ばそうとした妻の手は、瞬く間に炎に包まれた。
その日を境に、歳三は光を失った。
 ガタンと大きな音が外から聞こえ、歳三はベッドから飛び起きた。
ゆっくりと両足を床に下ろし、壁伝いに彼は玄関まで歩き、ドアを開けた。
「誰か、居るのか?」
恐る恐る彼がドアを開けると、そこには一人の少女が倒れていた。
「おい・・」
歳三がそっと少女の頬を指先で触れると、彼女は微かに身じろぎすると、ゆっくりと歳三の手を握った。
「父・・様・・?」
千歳が紫の瞳で自分の前に立つ男の顔を見ると、彼は自分と同じ色の瞳を持った父だった。
「お前、誰だ?」
「え・・」
「俺は、お前なんか知らねぇ。」
「父様、わたしの顔を見て!わたしは土方千歳、あなたの娘よ!」
「やめろ、俺にはもう家族なんて居ねぇ!」
父に似た男は、そう叫ぶと千歳を突き飛ばそうとしたが、その弾みで外の非常階段から転落してしまった。
「誰か、誰か来て下さい!」
「トシ!」
慌てふためく千歳の前に、一人の男が現れた。
そこには、父が持っていた一枚の『ふぉとがら』に写っていた“あの人”と瓜二つの顔をした男が立っていた。
「君は・・」
「どうしよう、父が・・」
「救急車を呼ぶから、落ち着いてくれ!」
数分後、千歳の前に白くて奇妙な形をした乗り物が現れた。
「トシ、大丈夫だからな!」
「う・・」
「あの、あの子は・・」
「君も早く乗りなさい!」
「は、はい!」
目の前で何が起きているのかがわからずに、千歳は変な格好をした男達と共にその乗り物の中に乗り込んだ。

(わたし、これからどうなってしまうのかしら?)

「まだ千歳、帰っていないな・・」
「ねぇ、もしかして姉様、“鬼隠し”に遭ったんじゃ・・」
「“鬼隠し”?」
「最近、この辺りで白髪の化物が出没して、若い娘を攫うそうよ。」
「白髪の化物・・羅刹か?」
「父様、羅刹を知っているの?」
「あぁ・・」
歳三は意を決して、子供達に自分の“過去”―羅刹について話した。
「そう、母様のお祖父様が・・」
「まさか、まだ生き残りがいるなんてな。」
「歳三さん・・」
「大丈夫だ、千鶴、千歳は必ず俺達の元へ帰って来る。」
「そうですね・・」
(姉様、早く帰って来て・・)
桜は、不安な思いで夜を過ごした。
「土方さん、居るか!?」
「どうした?」
「これ、あんたの娘さんのだろ!?」
真夜中過ぎ、土方家の戸を叩いたのは、この村の警察署長・成田だった。
成田が歳三達に見せたものは、千歳が愛用している薄紅色の“りぼん”だった。
「これを、何処で・・」
「崖下だよ。」
「そんな・・嘘だわ!」
千鶴はそう叫んだ後、倒れた。
「千鶴、しっかりしろ!」
「母様!」
「わたしの所為よ・・わたしが、鬼だからこんな事に!」
「母様、しっかりして、きっと姉様はわたし達の所へ戻って来る・・帰って来るわ!」
「桜・・」
「大丈夫よ、大丈夫だから・・」
桜が千鶴の手を握った時、突然彼女の脳裏に次々と映像が流れ込んできた。
母に似た女性と、父に似た男性が西洋の教会で祝言を挙げている姿。
そして、双子をそれぞれ二人が腕に抱いている姿。
(何だったの、あれは?)
「桜?」
「ごめんなさい、少しボーっとして・・朝餉の支度をしてくるわね。」
「わかったわ。」
あの“映像”は、一体何だったのだろうか?
勝手場で歳三と共に桜が朝餉を作っていると、再び土方家の戸を何者かが叩く音がした。
「土方さん、居るか!?」
「・・お前は千鶴の所へ行け。」
「はい。」
歳三が戸を開けると、そこには村の自警団の青年達の姿があった。
「どうした?」
「土方さん、“鬼隠し”だ、“鬼隠し”がまた起きた!」
「何だって!?」
「街の近くだ!」
「わかった!」
歳三達が“鬼隠し”が起きた所へと向かうと、そこは函館の街の近くだった。
「おい、これ・・」
自警団の青年が見つけたものは、失踪した娘がつけていた簪だった。
「一体、何が起きているんだ?」
「祟りじゃ!鬼神様の祟りじゃ!」
そう声高に叫んでいるのは、“村の変わり者”と呼ばれているタカだった。
「誰だあの婆さんを呼んだのは?」
「知らねぇよ、勝手についてきたんだろ・・」
村人達がそんな事を話しながら遠巻きにタカを見つめていると、彼女は歳三をじっと見つめた。
「・・そなた、人間ではないな?」
「おい誰か、この人を家まで・・」
「そなた、若い娘を攫った鬼の事を知っておろう。」
「俺は何も知らねぇ!」
「陰の気・・そなたには・・」
「タカさん、ぼけているんじゃねぇのか?」
「土方さん、あんなの気にする事はねぇぜ。」
「あ、あぁ・・」
失踪した娘は、見つからなかった。
「お帰りなさい、父様。」
「失踪した娘さんは見つかったの、父さん?」
「いいや・・それよりも、千鶴の様子は?」
「母様なら、お部屋で眠っていらっしゃるわ。」
「そうか・・」
「父様、話したい事があるの。」
「あぁ、わかった。」
朝餉を食べた後、桜は千鶴の手を握った時脳裏に流れて来た光景の事を歳三に話した。
「そうか、そんな事が・・」
「あのね、その光景はもしかしたら、父様と母様の未来の姿だと思うのよ。」
「待て、桜。お前の話を聞く限り、俺と千鶴はまだ夫婦になるって事だな。」
「えぇ。でも、わたし達と母様は、父様を置いて逝ってしまうの。」
「何だと!?」
「詳しくはわからないけれど、父様は・・未来の父様は目が見えなくなってしまうの。もしたしたら、信じられないけれど、姉様はきっと、未来の父様を救いに行ったのだと思うわ。」
桜の言葉を聞いた歳三は、菫色の瞳を驚いたように大きく見開いた。
一方、土方家が暮らしている時代から百年以上経った“平成”の世に飛ばされた千歳は、“救急車”と呼ばれる乗り物で、“病院”という建物へと入った。
そこは昼間のように明るくて、今まで自分が一度も見た事がないような物で溢れていた。
「あの、父は・・」
「軽い打撲と捻挫で済みましたが、貧血と栄養失調が酷いので、一ヶ月程入院する事になるでしょうね。」
「そうですか・・父に、会えますか?」
「えぇ。今は薬で眠っていますが、暫く経ったら起きますよ。」
「ありがとう・・ございます。」
 千歳は医師に礼を言うと、歳三の病室へと入った。
変な浴衣姿の歳三は、時折苦しそうに呻きながら眉間に皺を寄せた。
「父様・・」
「千鶴、千鶴、あぁっ!」
歳三は苦しそうに喘ぐと、自分の手を握っている千歳の顔を見た。
「てめぇ、まだ居たのか・・」
「父様、こんなに痩せて・・」
「俺に触るな!」
歳三はそう叫ぶと、自分の頬に触れようとする千歳の手を邪険に振り払った。
「出ていけ!」
「わかりました・・」
歳三の病室を出た千歳は、父に拒絶され涙を流した。
(父様、どうして・・)
「おい、何を泣いている?」
頭上から突然声がして千歳が俯いている顔を上げると、そこには金髪紅眼の医師が立っていた。
「すいません・・」
「謝るな。俺は貴様に何故泣いているのかを尋ねただけだ。」
「あなたは、どなたですか?」
「相手に名を尋ねる時は、己の方から名乗るのが礼儀であろう?」
「わたしは土方千歳・・土方歳三の娘です。」
「ほぅ・・薄桜鬼の娘か。」
「父を、ご存知なのですか?」
「ここは人目がつく。茶でも飲みながら話すとしよう。」
「は、はい・・」
千歳がその医師に案内されて入った所は、近代的な建物から少し離れた伝統的な日本家屋だった。
「あの、ここは・・」
「俺の茶室兼私邸だ。自己紹介が遅れたな、俺は風間千景、この病院の理事長だ。」
そう言った医師―風間千景は、千歳に茶を点てると、それが入った茶碗を彼女の前に置いた。
「お点前、頂戴致します。」

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