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薄桜鬼 腐向け二次創作小説:団地妻トシ

Jan 19, 2021
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画像はコチラからお借りしました。

「薄桜鬼」の二次創作小説です。

制作会社様とは関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。


ここは、東京都内から少し離れた郊外にある、ニュータウン。

かつて日本が空前絶後の好景気に湧いていた頃、このニュータウンに建てられた団地は、今や往時の華やかさを思わせるかのような、過去の遺物と化してしまっている。
そんな団地の中で、一人の男が煙草を吸いながらパソコンのキーボードを叩いていた。
(余り、収穫ねぇなぁ・・)
男は、煙草の吸い殻を灰皿に乱暴に押し付けると、パソコンの電源を切った。
腹が減ったので、袋麺でも作って食べようかと彼が思っていた時、玄関のチャイムが鳴った。
「いらっしゃい、待ってたわよぉ。」
チェーンロックを解除し、客が待つ玄関先に立った。
「今日は、色々と部長に怒られてさぁ。」
「大変だったわねぇ。あ、お昼どうする?」
「簡単なのでいいよ。」
「じゃぁあたしが決めてもいい?」
「お、袋麺かぁ。俺、醤油味がいいなぁ。」
「じゃぁ、あたし味噌味作るね。」
男はそう言うと、台所に立って袋麺を作った。
「あぁ、美味い!一人暮らしだと、誰かに作って貰った飯を食う機会って、中々ないもんなぁ。」
「食事ってさぁ、毎日しないといけないし、誰にも迷惑かけてないのにさぁ、支度してないと文句言われてぇ、面倒臭いものよねぇ。」
「マジそう思う。ねぇ、インスタに君の写真上げていい?」
「ヤダぁ~、恥ずかしい。」
「え~、いいじゃん!」
「あたし、今の関係を大切にしたいの。」
「もう、わかったよ。」
客はそう言ってスマートフォンを鞄の中にしまった。
「ねぇ、また来てくれる?」
「うん。」
「じゃぁ、お仕事頑張ってねぇ~」
客を玄関先で見送ると、男は派手な化粧を落として、胸元が大きく開いたワンピースから紫の着物へと着替えた。
下ろしていた黒髪を“奥様風”の夜会巻きにして、仕上げに珊瑚の簪を挿した。
(これで良し、と・・)
男は財布が入ったバッグを持ち、スーパーへと向かった。
今夜は、大切な客が来る。
だから、彼が大好きなハンバーグを作る為に、買い物に来たのだった。
「あら、このミンチ安いわねぇ。パン粉も。」
レジで男が会計を待っていると、店の窓ガラスが急に光った。
男がそれに気にも留めずにスーパーから出て団地へと急いでいると、そこへ一人の男がやって来た。
「すいません、あなたもしかして・・」
「主人を待たせておりますの。」
週刊誌記者・鳴沢はそう言って足早に自分に背を向けて去っていく男を見てこう呟いた。
「やっぱり、あの人は土方さんだよなぁ。」
鳴沢は、かつて芸能界の寵児であった人気俳優の事を思い出した。
彼―土方歳三と出会ったのは、彼主演のドラマの記者会見の時だった。

その日、鳴沢は放送前から何かと話題だった人気ドラマ「薄桜鬼」の制作発表記者会見に来ていた。
このドラマは、行方不明の父親を捜す為、京で新選組に保護される事になった主人公が、己の出生の秘密を追う、というストーリーである。
主演を務めるのは、「抱かれたい男」、「出来る男」で六年連続ナンバーワンの人気俳優・土方歳三である。
元歌舞伎町ナンバーワンホストという異例の経歴を持つ彼は、今の所属事務所社長からスカウトされ、モデルとして芸能界デビューすると同時に、“女よりも美し過ぎる男”、“まさしく天女”と話題となり、その美貌と才覚で瞬く間に芸能界の寵児となった。
漆黒の髪をポニーテールにし、ドラマの衣装を纏った彼の姿は、まさしく現代に甦ったサムライそのものだった。
「いいねぇ、彼。きっと売れる事間違いなしだよ。」
「でも、彼女癖が悪いって噂ですよ?」
「そりゃぁ、そういう業界出身だから、そんなのあって当然じゃん。それにあいつは、いやあいつのファンは、そういう所を全てひっくるめて好きな訳よ。」
「へぇ・・」
「ま、ホストなんてさ、女の夢叶えてなんぼの世界じゃん。夢を売るのはこっちと大した違いはないっしょ?」
「そうっすね。」
鳴沢が知り合いのテレビ局のプロデューサーとそんな話をしていると、そこへ土方がやって来た。
「皆さん、忙しいのにわざわざこちらまでご足労頂き、ありがとうございます。」
土方はそう言うと、プロデューサーに紙袋を手渡した。
「これ、よろしかったら。」
「え~、これ有名なロールケーキ店のやつじゃん!」
「お口に合うといいのですが・・」
「うわ、ありがとうね土方ちゃん。」
「いいえ、プロデューサーにはいつもお世話になっているので・・」
そう言って笑った土方の顔は、まさしく“抱かれたい男”のそれだった。
「鳴沢さん、良い記事書いて宣伝して下さいね?」
「はい・・」
「じゃぁ、俺はこれで失礼しますね。」
土方が去った後、鳴沢は暫くボーッとしていた。
「あ、今あいつに抱かれたいって思ったっしょ?」
「はい。」
鳴沢は、「薄桜鬼」を毎週録画して観たが、主演の土方歳三とその相手役である雪村千鶴の演技が光っていたし、最終回を観た後は涙腺が崩壊してしまうのではないかと思う程泣いた。
ドラマは最高視聴率70%という数字を叩き出し、大ヒットし、その上映画まで制作され、ハリウッドでもヒットした。
作品のヒットと比例して、それまでなりを潜めていた、過激派ファン達、“土方会”が、SNSを中心に姿を現した。
彼らが標的にしたのは、土方の妻となった雪村千鶴だった。

“何、あのブス調子乗ってね?”
“大体、うちらのトシと結婚とかありえない。”
“しかも出来婚とか。可愛い顔して悪知恵働くよね。”

「うわ、ヒデェな。」
「ファンなら、素直に喜べはいいのに。」
「いやぁ、こいつらはさぁ、土方君はわたしの物とか勝手に思い込んでいるんだよ。」

SNS上での千鶴に対する中傷は過激の一途を辿り、遂にはネットで殺害予告までする者まで現れた。
そんな中、千鶴が帰宅途中に歩道橋から何者かに突き落とされ、流産してそのまま亡くなってしまったのだ。
一瞬にして妻子を喪った土方は精神的に不安定な状態となり、鳴沢は生ける屍と化した彼を見て絶句した。
あの溌溂としていた彼の面影は何処にもなく、虚ろな瞳で誰かを探しているかのような彼の姿を間近で見た鳴沢は、彼をあんな姿になるまで追い込んだ者達を憎んだ。

“トシ、早く元気になってくれないかな?”
“もう邪魔者居なくなったし・・”

(てめぇら、それでもファンか!?)

「あいつらはさ、自分なりの下らないクソみたいな正義感振りかざしてる頭のおかしい連中なんだよ、相手にするな。」

土方は、ドラマの撮影中に事故に遭い、意識不明の重体となった。
そして、そのまま芸能界から姿を消した。
スターがいなくなり、人々はやがて彼の存在を次第に忘れていった。

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Last updated  Jan 19, 2021 08:29:18 PM
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