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JEWEL

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連載小説:その瞳にうつるものは

2021年09月17日
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画像は十五夜様からお借りしました。

暗闇の中、男は血を流しながら“ある場所”へと向かっていた。
そこは、古の悪魔を封じ込めた石碑があった。
男はブツブツと呪文を唱えると、石碑に向かって手をかざした。
すると、石碑がかすかに動き出したかと思うと、その中から白い手が出て来た。
(成功だ!)
男が暫くその石碑の方を見ていると、その白い手が己の首に巻きついている事に気づいた。
「ひ、ひぃぃ!」
“逃がさないわ。”
悪魔はそう言って口端を上げて笑うと、男の首に鋭い牙を突き立てた。
男は泡を吹いて、死んだ。
“ふん、つまらない男。”
悪魔はそう言った後、石碑の中へと戻っていった。
「起きなさいってば。」
ベッドで寝ていたスヨンは、シーツを同居人のリアンに奪われた。
「早くしなさい!」
「はぁ~い。」
スヨンは鏡台の前に座ると、寝癖がついた髪を櫛で整えた。
「おはようございます、お嬢様。」
「モラン、おはよう。」
「今日は学校ですか?」
「ええ。」
今年で十三歳となったスヨンは、都の中心部にある学校へ通う事になった。
その学校は、男子には政治学や社会学、数学、ラテン語をはじめとする外国語を学ばせていた。
だが、女子に対しては華道、書画、裁縫、音曲などを学ばせており、まるで男子のそれとは違っていた。
「学校なんて行かなくても、裁縫は家でも出来るわ。」
「そんな事をおっしゃらずに、行きましょう。」
「はいはい、わかったわよ。」
モランと共に自宅から出て、スヨンは学校へと向かった。
「今日は暑いわね。」
「えぇ。」
二人がそんな話をしながら日傘をさして大通りを歩いていると、向こうの通りから二人の少女達がやって来るのが見えた。
「あら、誰かと思ったらスヨンの家の下女じゃないの。」
二人組の内の一人、スヨンと同じクラスのミジュはそう言ってモランを見た後、彼女が持っていた日傘を奪い取った。
「下女の分際で、日傘なんて生意気よ!」
「あら、あなたにそんな事言われる筋合いはないわ!」
モランはそう言うと、ミジュから日傘を奪い返した。
そのはずみでミジュのチマが泥水で汚れてしまった。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
「ミジュ、あんな子放っておきなさいって。」
「モラン、大丈夫だった?」
「別にあんなの、気にしていませんよ。」
「そう。」
モランとスヨンが教室に入ると、何やら数人の級友達が楽しそうに話をして盛り上がっていた。
「どうしたの?」
「スヨンさん、今日新しい先生がいらっしゃるのですって!」
「へぇ、どんな方なのかしら?」
「男の先生みたいよ!」
「楽しみだわ!」
そんな事をスヨン達が話していると、教室に一人の男がやって来た。
長身で、艶やかな黒髪を左側に垂らしており、黒絹を思わせるかのようなその隙間からは、宝石のような美しい碧い瞳が光っていた。
(この方を、わたしは知っている。)
「はじめまして。わたしは吉田秀人、今日からこの教室で皆さんと一緒に学ぶ事になりました。これから、よろしくお願い致しますね。」
男の挨拶が終わると、教室中に温かい拍手が満ちた。
「吉田先生は、何処のご出身なのですか?」
「会津だよ。色々あって、こんな所まで来てしまったけれどね。」
「会津って、どんな所かしら?」
「桜がとても綺麗な所だよ。冬の鶴ヶ城は雪化粧が施されて綺麗だったよ。」
「まぁ、一度行ってみたいわ。」
「その時は皆さんと一緒に行きましょう。」
「えぇ、必ずですよ!」
秀人は、学校に赴任して一時間も経たぬ内に生徒達の人気者となった。
「どうしたの、スヨン?吉田先生の事が気になるの?」
「そ、そんなんじゃないわ!」
「隠してもバレバレよ!まぁ、吉田先生は女子生徒だけでなく、男子生徒にも人気だそうよ。」
「へぇ、そうなの。」
昼休み、スヨンが学校の中庭で級友達と昼食を囲っていると、スヨンは、ミジュ達に何処かへと連れて行かれるモランの姿を見かけた。
「スヨン、どうしたの?」
「ちょっと行って来る!」
スヨンがミジャ達を追い掛けると、彼女達は使われていない焼却炉に居た。
「あんた、生意気なのよ!」
「そうよ、卑しい身分の分際で!」
「あら、わたしが気に入らなければ無視すればいいのに、何故そうしないの?」
「うるさい!」
ミジュがそう叫んで火掻き棒を振り上げた時、彼女の背後にいつの間にか立っていた秀人が、ミジュの腕をねじり上げた。
「何するのよ、離して!」
「弱い者虐めはよくないよ?」
「あんたには関係ないでしょう!」
激昂したミジュの腰巾着・ユリがそう言って秀人に殴りかかろうとしたが、彼女はその腹を秀人に蹴られ、呻いた。
「これ以上怪我をしたくなければ、去れ。」
「何なのよあんた、おかしいわ!」
「言っておくが、俺はこの世で弱い者虐めをする奴が一番許せねぇんだ!」
「ひぃっ!」
「行きましょう!」
ミジュ達が立ち去った後、秀人はモランを助け起こした。
「大丈夫か?」
「はい。助けてくださって、ありがとうございます。」
「礼は不要だ。今度あいつに何かされそうになったら、俺を呼べ。」
その時、強風が吹いて秀人の隠されていた左側の大きな傷痕があらわになった。
「先生、その傷は・・」
「あぁ、これか?ガキの頃、事故に遭ってな。」
「あの先生、変な事をお尋ね致しますが、わたくし達、何処かでお会いした事がありませんでしたか?」
「さぁな。まぁ、お前ぇみてぇな別嬪と一度でも会ったら忘れはしねぇけどな。」
「まぁ、先生ったら!」
放課後、スヨン達が学校を出て街を歩いていると、彼女達は美しい女性を連れた秀人の姿を見かけた。
「吉田先生、あの方とは一体どういう関係なのかしら?」
「さぁね。それよりも、甘味処に行きましょう!」
「えぇ、いいわね!」
スヨン達が甘味処へと入って他愛のない話をしている頃、秀人はスヨン達が見かけた女性―エマとある所へと向かっていた。
そこは、美しいドレスが売られている店だった。
「本当に、わたしがこのような店に入ってもよろしいのでしょうか?」
「いいに決まっているだろう。俺はお前の恋人なんだから。」
「歳三さん・・」

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最終更新日  2021年10月01日 09時01分35秒
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