2014.12.13

金襴の蝶 第61話


やがて手術室のランプが消え、中から担架に載せられた千尋が出てきた。

「千尋、しっかりしろ!」
「荻野千尋さんのご家族ですね?」
「婚約者です。先生、千尋は一体どうして・・」
「詳しいお話は診察室で致しますので、こちらへどうぞ。」
歳三達は診察室で、千尋が肺高血圧症に罹っていることを知った。
「千尋は助かるのですか?」
「それはわかりません。一番効果的な治療法は、生体肺移植しかありませんが、それには千尋さんの身体に大きな負担がかかります。」
「そんな・・」

病院から出た歳三達は、近くにあるファミリーレストランで昼食を取った。

「トシ、これからどうするつもりなの?」
「千尋が助かる方法があるのなら、それに賭けてみようと思う。」
「あなたがそう言うのならいいけれど、生体肺移植手術は簡単じゃないのよ?」
「わかっているさ、そんなことは・・」

歳三はそう言って溜息を吐くと、コーヒーを一口飲んだ。

「姉貴、今日は有難う。」
「家に帰ったらゆっくり休みなさい。」
「わかった。」

ファミリーレストランの前で信子達と別れた歳三は、車に乗り込んでも暫くエンジンを掛けずに千尋の事を考えていた。
千尋は倒れた日の朝、いつものように華道教室に行った。
それなのに、何故こんなことになったのだろうか。
車のクラクションで我に返った歳三は、エンジンを掛けてファミリーレストランの駐車場から大通りへと出た。
「お帰りなさいませ、歳三坊ちゃま。」
「誰か来ているのか?」
「ええ。琴子さまが来ております。」
「そうか・・」
千尋のことを冷静に受け止められないまま、歳三は琴子と客間で会った。
「久しぶりね、トシ。」
「お前今更俺に何の用で会いに来た?」
「美砂のことで話に来たの。わたし、近々再婚することになったの。」
「へぇ・・相手はさぞや俺よりも金を持っている男なんだろうな?」
歳三は琴子が着ている高級ブランドデザインのワンピースを見ながらそんな嫌味を彼女に言うと、彼女は少し苛立った様子で爪を弄り始めた。
「ええ、まぁね。」
「それで、再婚するから美砂を寄越せって言うのか?俺が親権をお前に譲る訳がないだろう?」
「違うの。わたし、新しい彼との子を妊娠しているの。だから、美砂とはもう会わないことにしたの。」
「簡単に自分が腹を痛めた子を捨てられるんだな、お前は。どうせ新しい男と上手くいかなかったらまたその子を捨てるんだろう?」
「どうしてそんな酷いこと言うの?わたし、あなたに祝福して貰いたくて来ているのに・・」
「俺は今、忙しいんだ。お前に構っている暇なんてないんだよ。」

今にも泣き出しそうな顔をしている琴子を客間に残した歳三は、そのまま二階の部屋に入った。

「歳三坊ちゃま、千尋様は?」
「あいつは今、病院だ。」

歳三は宮田に、千尋の病気の事を話した。

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Last updated  2014.12.14 22:59:24
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