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じゃんす的北京好日子 東京編

原宿フィールドワーク

原宿ストリートキッズ

~個性派と呼ばれる原宿の若者を例に挙げ、個性について考える。~

これは私が大学2年次に行ったフィールドワークです。
1998年11月~2月頃。


1.はじめに

東京原宿、現在この街はストリートファッションの発信地として現在日本はもちろんだが、それ以上に海外から注目を集めている。日本ではストリートファッション誌が相次いで創刊され売上を伸ばしている。「FRUiTS(フルーツ)」「KEROUAC(ケラ!)」「SAMPLING(サンプリング)」など、どれも原宿を歩く奇抜なファッションをした若者たちのスナップ写真を売りにした雑誌だ。

海外では、廃油まみれの水鳥や、家族に臨終を看取られるエイズ患者など毎回過激な広告を出すことで有名なイタリアの衣料メーカー「ベネトン」が今春の広告のモデルに原宿の若者を選んでいる。原宿の若者たちは実に奇抜なファッションをしている。ピンクや黄色や緑などの奇抜な配色を楽しむ人、お母さんやおばあちゃんの古着をうまく取り込んでいる人、ランドセルをしょっている人、背中に羽根をつけている人、全身タイツの人、番傘をさしている人までいる。

原宿の若者たちはどうして奇抜なファッションをするのか、どうして流行を追わないのか。私は以前から原宿の若者のこのようなところに疑問を感じていた。彼等のことを例外的な存在として片づけてしまうことは早計すぎる。ゆえに、この疑問を解決すべく、私はテープレコーダーを片手に約3ヶ月間原宿をフィールドワークした。

 

2.どうして原宿の若者たちは奇抜なファッションをするのか?

彼等の奇抜なファッションの内容は1節で述べた通りである。ただ目立ちたいだけなのか、雑誌に載りたいのか、本当にかっこいいと思って自分の洋服を選んでいるのか等、この節では彼等が奇抜なファッションに走る理由について考えたい。

最初は理解不能なファッションをしているため、近寄りがたい雰囲気を醸し出す原宿の若者たちを前に、私は声をかけることができずにいた。しかし、勇気をだして声をかけてみると、ほとんどの人が気軽に取材に応じてくれた。何人かと話していくうちに私は、彼等は非常に取材慣れしているな、と感じた。「お話聞かせてもらってよろしいですか?」と声をかけると「どこの雑誌の取材ですか?」と聞き返してくるし、写真を撮る時はポーズを決めてくれる。

原宿の若者たちが取材慣れしている理由は簡単である。彼等は取材をたくさん受けているのである。原宿ラフォーレ前やフリーマーケットが行われているキャットストリートとよばれる小道には常に雑誌のカメラマンや、ライターがたくさんいる。このような状況だから取材慣れしているのも当然といえる。

私は「どうして奇抜なファッションをするのか?」と尋ねてみた。「個性的でありたいから」と彼等は答える。彼等は自分の個性を表現する手段としてファッションを選んでいるのだ。理由は「人に見てもらえる個性だから」である。他人が一見して自分のことを個性的だと認めてくれるもの、それはファッションなのである。

彼等は個性的になろうとして個性派と呼ばれるブランドの服を着る。個性派ブランドの例を挙げると、ヴィヴィアン・ウエストウッドやMILK,そしてUNDERCOVERなどである。ヴィヴィアン・ウエストウッド(ブランド名とデザイナー名おなじ)は、パンクの女王と呼ばれているパンクファッションの生みの親である。原宿のデザイナーや若者たちに強い影響を与えている。MILKのデザイナーは大川ひとみという人物で、日本のパンク界のゴッドマザーと言える存在である。彼女も原宿の若者たちには多大な影響を与えている。UNDERCOVERのデザイナーは高橋盾という人物で、ヴィヴィアンや大川の影響をうけてパンク色の濃いデザインを展開している。

以上、例を挙げたようなブランドの服を着た原宿の若者たちは「個性派ブランドの服を着ている自分は個性的なのだ」という自信を持つようになる。だから周囲の目もまったく気にしていない。実際、「自分が周りと違うと感じた時不安を感じるか?」という質問に対し、9割以上の人が「感じない」と答えている。ちなみに「個性的でありたいか?」という質問にたいしてもほとんどすべての若者が即座に「はい」と答えている。原宿の若者たちは個性的になりたいから個性派ブランドの奇抜なファッションをするのである。

 

3.渋谷系VS原宿系

原宿の若者たちは渋谷ファッション(特にギャルファッション)をみんな同じで個性が無いと批判する。雑誌やテレビなどのメディアが今年の流行色はグレー、と言うとみんな一斉にグレーのコートを着ることや女子大生のグッチやプラダのバッグ、女子高生のルーズソックスなどを批判の対象に挙げる。確かに渋谷を中心とする日本の若者たちは画一的かもしれない。

しかし、そのように渋谷ファッションを批判する原宿の若者たちにしても女子高生が安室奈美恵を模倣するように、タレントの千秋や人気バンドのJUDY&MARYのボーカル、ユキなどをモデルにしているところがあるし、「CUTIE」や「Zipper」などのストリート雑誌の影響を受けている。そして渋谷の女子高生と同じように、なんとなくみんな似ている。原宿のテント村で5年間アルバイトをしていたという小松さん(仮名)は次のように原宿の若者と渋谷の若者を比較する。

「個性派といわれる原宿の若者も、みんな同じで個性が無いといわれる渋谷の若者たちもたいして変わらない。原宿の若者の多くは個性を履き違えている人が多い。個性派ブランドの洋服を着ているから自分は個性的なのだ、というように勘違いしているのである。原宿の若者の中には渋谷の女子高生ファッションをみんな同じで個性が無いと批判するアンチコギャルが大勢いるが、影響を受けている雑誌や芸能人が違うだけで、やっていることはまったく同じ」

原宿を5年間見てきている人だけに発言に重みがある。確かに、個性派と言われる原宿の若者たちがラフォーレ原宿のセールに長蛇の列を作っているのをみると「何か違う」と感じてしまう。

 

4.個性的とは何か?

個性的とはいったい何なのだろうか。個性とは他の人と違ったその人特有の性質・特性である。このように考えると、個性派ブランドの服を着ることによって個性的になるという考えは明らかに間違っている。私はこのように考える若者たちに、ある共通点をみつけたので、まずそれを述べたい。

彼等は奇抜なファッションをしていても話してみると、思いのほか普通である場合が多い。学校のクラスでは元気グループよりもおとなしいグループに属しているという。そのような彼等が奇抜なファッションに走る動機がみな共通しているのである。

クラスの中には勉強ができる人、サッカーが上手い人、かっこいい人、かわいい人、というようにみんななんらかの個性を持っている。しかし、自分は持っていない。そして、自分も個性的でありたいという思いが強くなってくる。その結果として奇抜ファッションに目覚めるというわけである。

断っておくが、ここで述べたのは個性派ブランドの洋服を着ている自分は個性的なのだ、と考えている若者についてであり、原宿の若者たちの全員がこのような考えを持っているわけではない。5節では原宿で出会った様々な人の例を挙げながら「個性とは何か」について述べてみたい。

 

5.個性とは何か?その2.

原宿を取材した3ヶ月の間に、私は様々な人に出会った。前節までに述べたように個性という意味を勘違いしている人も多かったが、自分だけのオーラを持っている人、つまり個性的な人もいた。その人々の発言は個性ということを考えるうえで非常に重要なヒントになったので、以下に紹介していきたい。

まず、田村りかさん(仮名、18)について述べたい。りかさんはストリート雑誌にいつも登場する常連で、表紙になったこともある。香港で発売されているストリート雑誌の表紙も飾ったという。原宿の若者たちに与える影響も大きく、いわばファッションリーダーである。しかし、本人は「自分は自分の好きな服を着ているだけ、みんなも自分の好きな服をきれば楽しいよ。」と至って自然体だ。

同じくストリート雑誌の常連の村上ヒロキ(20、仮名)さんも「自分は自分がいいなと思う服をきているだけ。」と言う。個性について聞いてみると、「個性なんて言うものは自分が自分の好きなことをしていれば自然にでてくるもので、意識して出すものではない。」という。

プロのデザイナーを目指して活動中の芹沢たいさん(19、仮名)は次のように言う。

「自分のデザインした服は本当に自分のデザインを好きになってくれた人の着てほしい。しかし、流行になってしまうのは嫌だ。多くの人が集団で自分の服を着てしまうと、本当に自分の服が好きで着てくれているのか、わからなくなってしまうから。」個性ということを意識して服を作っているかと聞いてみると、「自分にしか作れない服を作っているつもりだけど、自分の服を着ることによって個性的になってほしいとは全然思わない。外見的なことで個性を判断する人が多いけれど、それは馬鹿げている。本当の個性とは、何を見てどのように感じるか、というその人だけの感性で、中身なのだから。」という。

「外見ではなく中身」。これは基本的なことである。実際にその人に会って話してみなければその人の個性などわかるはずもない。原宿の若者たちのなかにはファッションで個性を表現しようと意識しすぎて、この基本的なことを忘れている人も多かったように思える。ただ、この節で例に挙げた人々は個性ということを意識している様子も無く、自然体であった。しかし、彼等からは他の人には無いその人だけのオーラのようなものを感じた。つまり、彼等は個性的であった。

次に、「音楽をやっていることが自分の個性」と言った女の子を紹介する。彼女は以前[CUTiE]などストリートファッション雑誌の影響を受けていたが、奇抜な格好をすることが個性的なのかということに疑問を感じはじめ、「個性とは何か」について悩むようになった。そして、「大好きな音楽をやることが自分の個性」という結論に至ったという。「自分の本当に好きなことを一生懸命することは、最高におしゃれでかっこいいことだと思う。そうすることによって自分の内面のものは自然に外面にでてくるのだと思います。」と彼女は言う。

「自分の好きなことをする」。これは個性を考えるうえで大事なことである。なぜなら、好きなことをすることによってこそ、その人の個性は表面に表われるからである。現代の若者たちは本当に自分の好きなことをしているのだろうか。


原宿の若者は奇抜なファッションをしているために個性的であるといわれているが、実際は、自分は個性的なのだと思い込んでいる若者が多いだけだということが取材の結果明らかになった。しかし、本当の個性を持っている人もいた。その人たちは自分が個性的かどうかなどということは全然気にせず、常にマイペースであった。自分が、かっこいいと思ったものは流行っていようがいまいが、周りの人が何と言おうがかっこいいのだ、というように自分の考えを持っていた。さらに、自分は自分の好きなことをやっているのだ、ということに自信を持っていた。


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