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沖縄自治研究会

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ブックレットの理解のために

ブックレット「沖縄自治州 あなたはどう考える?―沖縄自治州基本法試案―」の理解のために
【文責:濱里正史】


■ 基本となる考え方とポイント
・沖縄の歴史的経緯や地理的特性、それに由来して形成された沖縄文化圏を見れば、沖縄という地域は、本来、独立も可能と思えるほどの独自性を持ち、沖縄住民は、その帰属も含め決定することができる沖縄の自己決定権(沖縄のことを沖縄の住民が決める権利)を持っている。
・ただし、だからといって必ずしも独立する必要はなく、むしろ、日本の中で、日本の他地域よりもはるかに「高度な自治」を獲得する方が賢明な選択である。
・「高度な自治」の獲得は、それ自体が目的ではなく、効率的な地域運営や沖縄に関する重要なことを沖縄の頭越しに決めている今の現状を変え、沖 縄に関することに沖縄住民とその代表が関われるようにするための手段であり、仕組みである。
・そのための具体的な提案が「憲法第95条に基づく沖縄自治州基本法試案」である。


■ 第1部 「憲法第95条に基づく沖縄自治州基本法試案」について
・その枠組みは、地方自治法の枠を大きく超え、日本国憲法の枠内(ぎりぎり)にある。
・「真の民主主義」「主権在民」「沖縄住民の自己決定権」を大事にし、住民に身近な順番、すなわち、「市町村」→「自治州」→「国」の優先順位で、役割と権限を住民から付 託するという考え方(補完性の原理)を基本とする。
・できるだけ、中央政府の関与が少なくなるような仕組み、中央政府と自治州政府が対等に議論し、沖縄住民の声が沖縄に関する国の施策(国策)に反映される仕組みを構築する。
※条文案は別に掲載


■ 第2部 入門・解説編
1.自治制度改革・構造改革と沖縄の自治喪失の危機
・中央における道州制の導入とは、早い話が都道府県合併である。
・中央では現在、経済や行財政の合理化という視点からの都道府県合併が議論されている。
・その論理で行けば、沖縄は九州などの一部となる可能性が高い。
・沖縄から何も対案を出さず、黙っていれば中央主導型で決着してしまう。
・沖縄住民の政府は、沖縄の社会に立脚した政府であってこそ力を発揮でき、沖縄住民のための地域づくり・施策展開ができる。
・道州の区割りを考えるときに重要なのは、経済や行財政の効率化だけでなく、地域的なアイデンティティの結晶点としての州である。
→スコットランドなど、まさしくその例。
→経済開発政策も実際には、このアイデンティティのまとまりの方が、実  行力が高まるという発想がある。
・昭和38年の最高裁判例では、憲法上、自治体というのは、「単に法律で地方公共団体として取り扱っているということだけでは足りず、事実上、住民が経済的、文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し、沿革的に見ても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等、地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とするもの」と断言している。
→沖縄の歴史、経済、社会、文化をこの考え方からみれば、沖縄は単独洲が相応しく、九州など、どことくっつくのも相応しくない、と言えるのではないか。
・自治体再編には本音と建て前がある。
建て前:地方公共団体を、地方政府として中央政府と対等・協力の関係にし、地方分権を推進する。そのためのそれに見合う自治体にするための自治体再編
本 音:単なる国の財政難、地方への負担転嫁、予算や人員の削減といった財政リストラ。
・建て前も使い方によっては大きな力になる。
→正論に立脚した具体的な提案を地方から中央に向けて行うことが重要であり可能。
→沖縄の場合は「沖縄自治州」による「高度な自治」の確立が具体的提案として有力では?
・九州にくっついても沖縄単独でも、沖縄に回ってくるお金は同じように減ると考えた方がよい。
→「であれば、お金を効率よく使える権限、仕組みがある方が良いのでは?」ということも、沖縄自治州を提案する理由の1つである。
  

◆今後の動き
道州制導入のタイムテーブルの一例(西尾勝案)
主要テーマ                   おおよその時期    
第1次分権改革「自治法の改正」       96年~2000年     
第2次分権改革「中央地方間の財政改革」 2001から3・4年で   
第3次分権改革「道州制」           2005・6から10年以上

構造改革のタイムテーブル
ポイントは、プライマリー・バランス(政府の収入と支出をほぼ同じにし、均衡を図ること)の回復を、2010年代の早い時期に達成するとの閣議決定がなされていること。かりに2012年達成とし、60兆円で収支バランスの回復を図るとすると、毎年約3.6兆円の増税と、約3兆円の歳出カットとなる。
※先の小泉自民党圧勝でスケジュールが前倒しになる可能性大。
※※三位一体の改革の最終年度は2006年度の予定であったが、それで終わらず、より厳しい第二次三位一体の改革が来る可能性大。
※※※07/08/09年に、奨励的な国庫補助の廃止と交付金改革
→虚弱財政自治体の破産続出か。

沖縄のタイムテーブルのポイント
2011年度で現在の沖縄の振興体制は終了。
2012年度からは新しい体制と新たな沖縄振興計画
2010年度からは新たな沖縄振興計画の策定に着手する必要がある。
そのためには、2009年度までに新たな体制が確立されていなければならない。

2.沖縄自治州の系譜
・沖縄の歴史的経緯や地理的特性、それに由来して形成された沖縄文化圏を見れば、沖縄という地域は、本来、独立も可能と思えるほどの独自性を持ち、沖縄住民は、その帰属も含め決定することができる沖縄の自己決定権(沖縄のことを沖縄の住民が決める権利)を持っている。
・しかし、だからといって必ずしも独立する必要はない。
・世界には、独立してもおかしくない地域、独立可能な地域でも、ある国の一地域になることを自ら選択している事例がある。
・「憲法第95条による沖縄自治州基本法試案」は、沖縄住民自らの意志で、独立でもなく、他の都道府県と同列でもない、日本の中で高度な自治を有する地域を実現しようという提案である。
・ただし、沖縄もしくは琉球を特別な自治権を有した自治州にしようという提案は、これまでもなされてきた。
・本章では、これまでになされた、自治州的提案の主要なものについて概観する。
◎平恒次「『琉球人』は訴える」(『中央公論』1970年11月)
◎久場政彦「なぜ『沖縄方式』か」(『中央公論』1971年9月)
◎久場政彦「五月十五日・沖縄の経済」(『中央公論』1972年6月)
◎比嘉幹朗「沖縄自治州構想論」(『中央公論』1971年12月)
◎野口雄一郎「復帰一年 沖縄自治州のすすめ」(『中央公論』1973年6月)
・自治州的構想や提案がこれまであまり県民世論に上らなかったのはなぜか?

3.多様な自治のあり方と「独立」:外国の例から   
・従来の議論では、「独立」か現状維持かの二元論で議論の枠組みが作られることが多かった。
・沖縄の自治のあり方は、完全な独立か、現状維持か、の二元論でしかありえないのだろうか。
・自治には様々な段階があり、種々の様相があることが諸外国の例から明らかである。
◆アメリカ
多様な州のあり方、アメリカにも自治地域がある。
◎プエルト・リコ
米国の州になれる立場にありながら、その道を選択せず、完全な独立も選ばない地域。
◎グアム、米領ヴァージン諸島、米領サモア、北マリアナ諸島
これらの島嶼地域は、完全な州ではないにも関わらず、自前の公選政府を持ち、住民は合衆国市民権を有し、様々な形で、アメリカ合衆国の政治過程に参加する保証を得ている。

◎自由連合協定国
独立国でありながら、外交・防衛をアメリカ合衆国に委ねる自由連合協定( compact)を結んだ小規模島嶼国が幾つかある。マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、ミクロネシア連邦など。
◆ヨーロッパ諸国の自治州と高度な自治権
◎スペインの歴史的自治州:カタロニア、バスク、ガリシアの三州。歴史的、文化的、言語的独自性を維持してきたこれらの地域は、他とは異なる形で自治州の地位を先んじて獲得。
◎イタリアの特別州(島嶼地域、山岳地域の5州):。シチリア、サルディニチア、ヴァッレ・ダオスタ、トレンティーノ=アルト・アーディジェ、フリウリ=ヴェネツィア・ジューリアの5州。イタリアには他に15の普通洲があるが、これら5つの特別州は、島嶼部と山岳地帯に置かれ、政治、民族、言語、および経済的条件から、憲法により高度な自治権を認められている。
◎マルタ共和国:自治と自律で経済的に成功した地中海の小規模独立国家
◎マン島:内政について高度な自治権を持つイギリス政府保護領
◎オーランド諸島:フィンランドに属しながら、独自の言語、民族の権利を維持し続けてきたスウェーデン人が住む島々
・総括
 世界の事例から、読み取れるのは、(1)沖縄には、歴史、文化、地理等の条件から、ここで取り上げた多くの地域と同等か、それを上回る「自治州(=高度な自治権を持つ地域=)」を作る要件を満たしており、また(2)経済的にも、沖縄よりも遥かに小さく弱い地域が、様々な方式によって、自治州の地位を維持していることの2点。
 少なくとも、国際的に見ると、沖縄が単独で自治州を構成するのは、至極当たり前のことであり、これまで日本で考えられてきたような見果てぬ夢でも、高望みでもない。


4.沖縄の自己決定権と沖縄の選択肢
・キーワードは「人民の自己決定権」
「自分のことは自分で決める権利」「自分たちのことは自分たちで決める権利」「地域のことは地域住民が決めるという権利」を認めるのが世界の常識
・第2次世界大戦後の世界的潮流は、「人民の自己決定権」という国際的に主流の考え方(国際正義)に基づき、植民地解放の進展や先住民族の自治が認める方向にある。
→沖縄の歴史と社会的・文化的・地理的特性を、「人民の自己決定権」という国際的に主流の考え方に照らせば、沖縄には「沖縄の自己決定権」があり、沖縄のことは沖縄の住民が決める、というのが自然な考え方ではないか。
・欧米で高度な自治を確立している地域の背景にも、地域のことは地域住民が決めるという考え方がある。
・沖縄が日本の植民地であったかどうかはともかく、沖縄が日本の他地域と比べて特別な扱い、大胆な言い方をするなら植民地的な扱いをされてきたことはほぼ間違いなく、他地域より高度な自治を要求する資格は十分にある。
 さしあたって、現在進行している国の道州制議論の中で、他地域と異なる特別な扱いで、高度な自治とそれに見合う制度を要求する資格は十分ある。
→少なくとも、スコットランドや韓国の済州島が目指しているものと同等かそれ以上の自治を獲得する資格は十分ある。


5.沖縄自治州基本法制定にむけた取り組みとタイムテーブル
<プロセスA>通常の方法
1 政権公約への沖縄自治州案の折り込み
2 政権公約の政府施政方針への落とし込み
3 官僚制機構による立法化(沖縄担当部局)
4 閣議決定→国会提出
5 委員会審議及び議決、国会審議、衆議院議決、参議院議決
6 住民投票 過半数により承認
<プロセスB>議員立法
1 沖縄選出国会議員による法案準備
2 法案の国会提出
3 委員会審議及び議決 国会審議、衆議院議決及び参議院議決
4 住民投票 過半数により承認
<プロセスC>議員立法の前にやりたいこと
1 沖縄自治州基本法制定会議結成、自治権利宣言採択
2 沖縄縄自治州基本法制定会議案の作成と合意形成      
3 制定会議案の沖縄選出国会議員による議員立法へ

<ごく近い将来のタイムテーブル>
・第28次地方制度調査会の最終答申は2006年2月
この中で道州制の基本的な枠組みが決定されていく公算がある。
ここで最も危惧する点は、「歴史的文化的社会的な一体性にもとづいて、民主主義の深化の点から、新しい広域自治政府」を作るという基本的な哲学(建て前)の部分が抜け落ちていくこと。
・沖縄からのアクションが必要
今すぐ取り組みたいこと
  2006年1月までに、国会議員、県議会議員を中心とする基本法制定会結成大会を開催、沖縄住民の自治の基本的権利を確認する項目を採択し、沖縄の意思を表明する。
(スコットランドの権利宣言のようなもの)、例えば
『沖縄自治権利請願(宣言文の一例)』
「我々は、沖縄自治州基本法制定会議としてここに集まり、沖縄の人々の暮らしの課題と希望に応えられる沖縄の政府の形態を、沖縄の人々が自ら決定する主権を有することをここに確認し、沖縄の人々の利益の最大化を目指してこの会議の活動と審議を進めることをここに宣誓する。我々の活動と審議は次の目的を目指すことを誓う。」
<プロセスD>
1 新しい沖縄の政府の枠組みに対する合意形成を行う。
2 沖縄の世論を喚起し、新しい沖縄の政府について人々の賛同を得る。
3 新しい沖縄の政府の実現根拠となる沖縄の人々の自治の権利を強く主張する。


◆ポイント整理
・どんなに遅くとも、2009年度末には、現在の新振興計画及び体制に代 わる2012年度以降の新しい沖縄の総合計画の策定手続とその後の実施 体制の大枠を発案する必要がある。
・その時の前提条件が、沖縄単独自治州か九州への統合かでは、内容が大きく異なる。
・したがって、沖縄単独自治州を軌道に乗せるためには、2009年の前に、住民を中心とした沖縄全体の合意形成と具体的準備が整っていなければならない。
・この意味から、2006年度末に選出される知事は、今後の沖縄の自治制度にとって非常に重要な存在となる。
→知事選挙自体で、沖縄の新たな自治制度を沖縄の人々に問うべきではないか。
→全ての政党及び知事候補者は、沖縄の新しい自治の仕組みについて、自治州及び道州制について、具体的にどうするかを公約化、マニュフェスト化すべきではないか。
※そこを逃すとスケジュール的に厳しい。


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