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セロトニン呼吸法 と 釈尊の呼吸法

  セロトニン呼吸法(東邦大学医学部生理学 有田秀穂教授)

○爽快ウオーク呼吸法(お気に入り「爽快ウオーク呼吸法」参照)というのがある。
 東邦大学で生理学を教えている有田秀穂教授が推薦される呼吸法だ。
 これは歩くリズムに合わせて呼吸するものだ。
足を一歩前に出す時に息を吐き、次の足を出すときに吸い、その次も吸う。足を出すタイミングに合わせて息を「吐く→吐く→吸う→吸う」と繰り返していくものだ。
この呼吸法だと疲労感や息切れが激減する。
これだけでなぜ疲れにくくなるのか。
「疲労感が減るのは、脳内の『セロトニン』という物質が増えるためです。」と有田教授は話す。
 セロトニンが脳内に放出されると、心が落ち着いて爽やかな気分になり、集中力が高まる。また、セロトニンには、痛みや疲労、ストレスなどを感じにくくする働きがある。
 有田教授によると、脳内のセロトニン量を増やすには、
「筋肉を意識的に、規則正しく収縮させること」だという。
ウオーキングも規則的な運動なので、セロトニン量を増やすのに有効だ。
ただし、何気なく歩いても筋肉を意識的に動かさないため、セロトニン量を増やす効果が少ない。
爽快ウオーク呼吸法は「歩く動作と呼吸のリズムを合わせるので、足と呼吸に使う筋肉の両方に意識が向き、セロトニン量を増やす効果が高い。」という。
有田教授が行った実験では、二十分間のこの呼吸法でセロトニン量が二倍近く増えた。(「日経ヘルス」より)

 この呼吸法を知ってから、坂道は吐く、吐く、吸う、吸うのリズムで歩く。
尾瀬に行った折、鳩待峠に戻る坂道でもこの呼吸法で歩いたら三十分ほど早く到着した。
その途中だ。
「吐く」のとき、「ありがとう」と言ってもいいなと思い「ありがとう、ありがとう、吸う、吸う」と呼吸した。
ふふ、そしてこれを「ありがとう」呼吸法と名付けた。
日光のいろは坂もこの呼吸法で一度も休まず登りきったのだった。

○セロトニン神経は、脳の真ん中に居を構える。
基本的に脳は左右対称の構造だが、セロトニン神経は左右の縫い合わされた部位、縫線核という場所に位置する。縫線核は最も古い脳である脳幹にある。
セロトニン神経の数はせいぜい数万個で、そこから脳全体の広い領域に、軸索というケーブルを使って情報を送る。その対象は、大脳をはじめ、本能や情動の中枢、小脳、脊髄などで、その細胞数は数十億以上になる。一つのセロトニン神経が数万個の神経に情報を送る。
オーケストラの指揮者がタクトを振ると、各演奏者が曲を奏でるのと似ている。個々の細かな指示を出すのではなく、全体の雰囲気を作る。具体的には、意識レベルや元気の状態などに関わる指示をセロトニン神経が送る。

セロトニン神経は、睡眠中にはほとんど活動しない。起きて動き始める直前から、活動を開始する。このセロトニン神経の活動は、車のエンジンをかけると、規則的な低速の回転運動が起こり、アイドリング状態になる状態によく対応している。セロトニン神経は、朝目が覚めると、規則的な低頻度の発射をする。覚醒中には一定の発射頻度を維持し、アクティブな活動の準備状態を作りだす。覚醒時の安静状態を作るだけで、激しく活動する興奮状態とは違う。このアイドリング状態ではアクセルを踏めばすぐに動けるように、いつでも動き出せる準備状態にある。

心の面では平常心のある状態といえる。平常心というものは、何にでも即座に対応できる準備状態ということになる。このように、セロトニン神経は、体と心の平常状態を作る役目を果たしている。

お釈迦様は、体験によってセロトニン神経の存在を知り、その働きを縦横に駆使する方法を心得ていたようだ。お経には、釈迦は6年の歳月をかけて荒行を行ったとされる。あらゆる種類の心理的、肉体的ストレスを自らに課し、人間がどのように反応し、どこまで耐えられ、その結果、何が心身にもたらされるか、を徹底的に追求した。過酷な肉体的ストレスや狂わんばかりの精神的ストレスも課した。自らを被験者にして、自らが実験者になって、人体実験に挑んだ出来事と言える。ストレスに関連する神経系には、視床下部-下垂体-副腎系やノルアドレナリン神経などが神経科学的に明らかとなっているが、釈迦はそれらの働きを荒行によって検証したものと考えられる。
そして、釈迦は荒行によっては自らの求めた境地(悟り)を得られない、と結論する。
「苦行の森を出て、川をわたり、菩提樹のもとに草を敷き、足を結跏趺坐に組み、静かに座り、禅定に入った」とされる。
アナパーナ・サチの呼吸法の発見だ。この呼吸法こそがセロトニン神経の働きを活性化させる。釈迦が創始したアナパーナ・サチ呼吸法は、日本では坐禅の呼吸法、欧米やインドではヨガの呼吸法として、今日でも多くの人々によって実践されている。この呼吸法は、自律機能としての呼吸(寝ているときも休むことなく続く呼吸)とは全く違う。自律機能としての呼吸は吸息が中心だが、丹田呼吸法は逆で、腹筋による呼息が中心だ。

大森曹玄師は、「下腹部の圧力で胸底から上腹部までがカラッポになるまで、十分に息を吐き出します。吐き尽くしたら下腹部の筋肉の緊張をゆるめると、吸う努力をしなくとも、自然に鼻から空気が入ってきます」と言う。
セロトニン神経が活性化されると、どういう心身の変化が現れるか。釈迦は「弟子たちよ、入息出息法を念ずることを実習するがよい。かくするならば、身体は疲れず、眼も患まず、観へるままに楽しみて住み、あだなる楽しみに染まぬことを覚えるであろう。かように入息出息法を修めるならば、大いなる果と、大いなる福利を得るであろう。かくて深く禅定に進みて、慈悲の心を得、迷いを絶ち、悟りに入るであろう」と述べた。

お坊さんは、背筋がしゃんと伸び、顔にも締まりがあり、溌剌としている。これはセロトニン神経の活性化とよく対応する。筋肉が動くには、大脳皮質の運動野などからの指令が脊髄の運動ニューロンに伝達される必要がある。脳幹にあるセロトニン神経の働きは、大脳からの指令で筋収縮が起こる際に、それを脇から増強させる。これを促通作用と呼ぶ。このセロトニン神経による促通作用が現れるのは主に姿勢筋や抗重力筋であり、丹田呼吸法でセロトニン神経が鍛えられると、自然に背筋が伸び、顔に締まりがでてくる。
セロトニン神経が弱ると、ちょっとしたことで興奮し、それを制御できなくなる。大人のパニック障害と共通のメカニズムがある。摂食障害もセロトニン神経の障害が疑われている。また、セロトニン神経が覚醒状態をうまく演出できないと、朝の寝起きが悪くなる。起きてもなかなか調子が出ない。また、姿勢筋や抗重力筋への促通効果も弱まり、姿勢が悪く、すぐにしゃがみこんでしまう。更に、痛みに対する反応が過剰で、コントロールがきかない。ちょっとした痛みで大騒ぎする。切れる子供にあらわれる現象に当てはまる。

これらとちょうど反対の現象が、セロトニン神経を鍛えた人々に認められる。平常心が養われ、ストレスを受け流すことができる、早朝からの修行を淡々とこなし、姿勢がしゃんとして、顔に締まりがあり、溌剌としている。また、セロトニン神経が活性化されると、無理なく、本能的欲望である食欲や性欲を調節できる。

○図書館に行ったら東邦大学の有田秀穂教授の「セロトニン生活のすすめ」があった。

セロトニン神経の働き

1 大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調整する。

  セロトニン神経の働きとして最初に挙げられたのが、大脳皮質への影響です。
  セロトニン神経が作り出しているのは、朝起きたときの覚醒したスッキリとした爽快感です。

2 自律神経を調整する。

  心臓、血圧、代謝、呼吸などを管理しているのが自律神経です。
  自律神経は交感神経と副交感神経の二つによって成り立っています。
  副交感神経は眠っているときの神経で。交感神経は起きて活動しているときの神経です。
  セロトニン神経は自律神経に対し、このシフトがうまくいくように働きかけます。

3 筋肉へ働きかける

  まっすぐな姿勢や活き活きとした表情はセロトニンが活性化した状態です。
  反対にセロトニン神経の働きが弱まると、背中が丸まったり、表情にも覇気がなくなります。

4 痛みの感覚を抑制する。

  セロトニン神経が活性化さていると、鎮痛効果が現れる。

5 心のバランスを保つ。

  セロトニン神経には、心のバランスを保ってくれる作用があります。


◎ セロトニン神経をきたえる

1 お日さまの光をあびる

 セロトニン神経をきたえるためのお日さまのあび方は、体全体で「あびる」というよりも、
お日さまの光を「見る」ということです。

(1) セロトニン神経を活性化させるために最適な時間は、20~30分が目安です。
  それ以上あびるとかえってセロトニン神経の活動レベルが下ってしまいます。
  セロトニン神経は目の網膜に光の刺激を与えることで活性化します。

(2) セロトニン神経をきたえるのに、最もいいタイミングは朝です。
  朝目を覚ましたら、部屋のカーテンを開け、お日さまの光を取り込みましょう。
  そしてしっかり朝食をとってください。
  通勤・通学などの際も、できるだけお日さまの光をあびるようにしましょう。

2 リズム運動をする

 リズム運動は、筋肉の収縮と弛緩を周期的に繰り返す動作のことをいいます。
 私たちは日常の中でリズム運動を行っています。
 歩行・そしゃく・呼吸、生命活動の基本といえる運動は、セロトニン神経を活性化させるのです。
 そのほか、ウオーキング、ジョギング、自転車こぎなどがあります。

(1) リズム運動は15分ぐらい続けて行うことが効果的です。
  セロトニン神経が活性化されたという目安は、意識の「スッキリ爽快」感です。

(2) 軽く負荷をかけて、疲れない運動をするよう工夫しましょう。

(3) リズム運動に大切なことは、運動していることに意識を集中させることです。
  「ながら運動」では、セロトニン神経をきたえる効果は弱まってしまいます。

(4) とりあえず3ヶ月は継続する。

3 腹筋を使った呼吸をする

 セロトニン神経をきたえるための呼吸法には特別なやり方がありです。
 腹筋を使った呼吸法です。
 坐禅や武道、ヨガや太極拳なども動きの中に腹筋呼吸法が入っています。

(1)リズム運動と同様に、腹筋呼吸する際には「意識してやる」ことが必要です。

(2)腹筋呼吸を続けると、5分程度でセロトニン神経の活性が化が始まります。
   その兆候は脳波に現れるα(アルファ)波です。
   α(アルファ)波は10~15分でピークを迎えます。
   セロトニン神経を活性化する呼吸法の目安は5~30分です。

(3)腹筋呼吸の最大のポイントは、吐くことにあります。
   腹筋呼吸は腹筋を収縮させて息を吐き出す意識的な呼吸です。

(4)吐くことを中心に、ゆっくりと腹筋呼吸を続けていると、だんだん呼吸の回数が減っていきます。
普段の呼吸は一分間に12回くらいですが、腹筋呼吸の場合は1分間に3~4回です。

 大切なのは、毎日継続して行うことです、3ヶ月は続けてください。
 その次には3年を目標にしてください。そうすればそれが習慣に変わります。

    釈尊の呼吸法
○「釈尊の呼吸法」という本がある。
 著者は村木弘昌という東大で医学博士を授与され、平成三年に逝去された方だ。この中で「大安般守意経」を紹介している。
 このお経は漢の初期に中国に招来されたもので、仏口つまりお釈迦様の直々の教えだというのである。
『釈迦がある時、祇園精舎で多くの弟子を集めて正しい呼吸の重要さについて話された。出息入息を念じつつ行なうならば、おのずと下腹部の充実した丹田呼吸になっている。この呼吸法は眼も疲れず病まず、そしてものの観方、考え方が深まるままに楽しい生活ができ、後で悔を残すような楽しみに染まらないことを覚えるであろうと。かように出入息法を修行するならば大いなる果と大いなる福利を得るであろうと。かような呼吸によって深く禅定に進み行けば慈悲の心を得、迷いを断ち、證に入るであろう。』
 禅をやるとき、初心者は数息法を教わる、ひとーつ、ふたーつと呼吸特に吐く息を細く長く数える。心を臍の下にある丹田におく。このところ、その感覚が分かってきた。
 これは一つには塩谷先生の正心調息法を実践してみた結果でもある。
 そしてくしくもそれは、「大安般守意経」に説くところと一致する。
 アナパーナ・サチ(安般守意)とは、「心をこめた(サチ)、呼吸(アナパーナ)」の意味で、丹田呼吸法の原型と云えるもだという。その内容は、出る息を長くする、つまり調息を中心とした呼吸法である。

 釈尊は、若い頃、当時の求道者の例にならって、様々な荒行をした、その中には息を止める、つまり「断息」も入っていた。
苦行六年の後、釈尊は苦行のみでは悟りが得られないことに気がつかれた。
そして、新たに始められたのが新しい呼吸法だった。
最初は、吸う息(吸気)も、吐く息(呼気)も目いっぱいに長く呼吸していた。それがやがて長く吸うことの無駄を知り、吐く息だけを長くする、呼主吸従の呼吸法に変わっていった。
 釈尊の呼吸法は、やがて数息、相随、止、観、還、淨の六段階に発展していった。身体の不浄を取り除く方法として、釈尊の呼吸法が一段と深まった段階が数息という。「数息」は文字通り、ヒトーツ、フターツ、ミーッツ、と云う具合に、数を数えながら息を吐く。これにより次第に長息に馴れていく。この方法は、現在でも非常に役に立つ精神集中方法だ。
 明治大学の斎藤孝教授によって、深い呼吸が動物の脳内細胞の「セロトニン系神経系」に及ぼす影響についての研究が発表されている。この研究発表によれば、深く長い呼吸が脳内のセロトニンと云う物質が発生するのを助長し、人間の精神を鎮静させる効果が顕著だという。実験台に臨んだ能楽の観世流シテ方能楽師「梅若猶彦」師が、能を舞う際の深い呼吸をした。すると脳内血流と脳波測定の結果、その際の覚醒作用が発生する状況が、科学的に検証された。
斎藤孝教授によると、
丹田呼吸法は、
(1)3秒間空気を吸う。
(2)2秒間空気を吸った状態を保つ。
(3)15秒以上に時間を掛けて、その空気を細く長い息を使って吐き出す。一度これを行った後に一旦休憩する。しばらくして、これを5回繰り返す、これだけのことで、人間の脳内思考力が大いに活性化されて思考力が高まる。

 高校生を対象に丹田呼吸法を数回行った後に、クレペリンテストを行った結果、普通の呼吸を行っていた時点で行ったテストよりも、テスト結果の正解率が飛躍的に向上したとの報告がありました。また、生徒の反応も「気分が良くなった」「気持ちが落ち着いた」などのレポートが寄せられています。



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