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2009年01月05日
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若いS君から
本日(2009.1.5)発売の「日経ビジネス」に「二宮尊徳の報徳思想に学ぶ」特集が掲載されておりましたので、別紙のとおりお送りします。」
とコピーをいただいた。中国で報徳思想の研究が盛んに行われているということはこのブログにも何回かとりあげたが、この特集も北京大学の劉教授の話から始まる。一部抜粋してみよう。

第3章 温古知新 「実利」と「道徳」二兎を追う

 北京大学の西門をくぐると、左手に「外文楼」という建物がある。極彩色で装飾され、朱塗りの柱に中華風の飾り窓が印象的なこの建物の大きな扉をひとたび閉じれば、外を歩く学生たちの喧騒がが遮断される。静謐で、薄暗く、どこかかび臭い。
 階段で2階に上がり、217号室の横、廊下の壁に掲げられた古い金属板にはこう刻印されている。
「日本文化研究所」
日本語の書籍や辞典が並ぶその研究室で、日本語言文化系教授、博士指導教官・劉
金才は、10年以上、1人の日本人について研究を続けている。
 二宮尊徳、通称・金次郎。江戸時代の農政改革者だ。劉だけではない。彼の下で多くの若い研究者たちが二宮尊徳について研究を進め、中国全土に研究の輪が広がっている。2008年11月には上海で4回目となる「国際二宮尊徳思想会学術大会」が開催され、日中の研究者100人超が研究成果を発表し合った。大盛況と言っていい。
二宮尊徳(金次郎)が薪を背負って働きながら書物を読んでいたという逸話が、戦前、現在の「道徳」に当たる「修身」の教科書に登場した。銅像も全国各地の小学校に設置された。しかし戦後、銅像の多くは撤去され、教科書から名前が消えた。
来るべき「アジアの世紀」に盟主と目される超大国・中国で、多くの日本人が忘れ去って久しい二宮尊徳がなぜ注目されているのか。
「下海(シャーハイ)」という言葉がある。
1992年、中国の事実上の最高権力者だったトウ小平は「社会主義市場経済」の導入を断行。国有企業の民営化や官僚の起業が相次いだ。「下海」とは、官僚機構などを辞してビジネスの「海」へ身を投じることを意味する。その年だけで「下海者」は数万人を超えた。
この急激な変化が、中国社会にひずみをもたらしたと劉は見る。
正月の挨拶として「恭喜発財」という言葉が交わされるようになった。「発財」は財を成す、という意味なので、大意は「(今年1年)儲かり増すように。」東南アジアなどで華僑が交わしていた挨拶だが、中国本土でも「新年好」に代わって多用されるようになった。拝金主義的な機運が浸透していることを示している。
「経済や利益が最優先されるようになって、倫理が置き去りにされてしまった」と劉は言う。

中国人だから見える価値
劉は歴史学者だ。が、象牙の塔にこもり、いたずらに資料を弄することをよしとしない。「歴史を学ぶと言うことは、過去を掘り返すこと出はない。私たちの足場は『今』にあり、今を知り、今を生かすためにこそ私たちは歴史を学ぶ」。彼が二宮尊徳を研究対象としたのは、現代中国が抱える経済格差、拝金主義で荒廃する人心、失われた倫理や道徳などの深刻な問題に対する解答が、尊徳という人物の足跡に隠されているのではないか、と考えたからに他ならない。
市場経済の導入は中国社会にひずみを引き起こした。米国発の金融危機と世界同時不況もまた、市場経済のメカニズムを過信し、暴走させてしまったことで引き起こされた。
では市場経済を捨てればいいのか。現実的に、成長をもたらす市場経済めかにずむと決別するのは不可能だろう。必要なのは、利益への欲望の暴走を制御することだ。おのれを律する内なる道徳律を求めているのは何も中国だけではない。
日本が世界に今こそ問うべき者、これまで見たように、技術やサービスを生かし主導権を取りに行くことはもちろんそうだろう。加えてもう1つ、日本には世界に問うべき価値観があり、世界がそれを必要としているのである。
中国人の歴史学者による二宮尊徳の研究は、それを私たちに教えてくれた。日本人が忘れてしまった尺度、自らには見えづらい価値観を、外国の研究者ならではの透徹した眼差しは看破していたー。

(報徳に根ざした幸之助の理念 略)

劉はこう分析する。「ある時代まで、中国が『兄』で日本が『弟』だった。日本は中国から文物を学んだ。ところが20世紀にはそれが逆転した。」
劉はその逆転の理由を知りたかった。明治期に欧米列強による外圧で近代化に踏み切ると、日中2国間の経済力に大きな差が生まれた。この差は一体、なぜ生まれたのか。
19世紀のドイツ人社会学者、マックス・ウエーバーの問題意識に近い。イタリア・スペインなどのカトリック国、ルター主義の強いドイツと比べて、英米はなぜ資本主義への移行と経済発展が早かったのか。後進資本主義国のドイツに生まれたウエーバーは、英米の「強さ」を支えるものの正体を知りたいと願った。『プロテェスタンティズムと資本主義の精神』では、その解答として、プロテスタント信仰に由来する合理性と、その合理精神に支えられた職業倫理が、英米の経済成長を支えていると結論づけた。
ウエーバーが「プロテェスタンティズム」という無形の精神に経済的な強さの原動力を求めたと同様、劉もまた日本の強さを支える日本人の心性について強い関心を持っていた。経済を支え、経済と強く結びつく日本人の心の原動力とは何か。なぜ日本人は、勤勉に働き続けられるのか。
そこで行き当たったのが、二宮尊徳という人物だった。・・・
1966年松下幸之助は1冊の冊子を作成して広く無償で配布している。「暮らし向きは徐々に良くなってゆくが、それと反対に人びとの精神生活というか、良識の面は徐々に貧困になっていっている・・・このまま進んでゆっくならば、日本は近い将来において必ずや行きづまってくるに違いない。」同冊子の表紙にはこう書かれていた。
「道徳は実利に結びつく」
経済的な利益と道徳を不可分のものとするこの思想の原点の1つが、二宮尊徳の教えと言われる。
(略)
経済と道徳は矛盾しない。なぜならば経済活動を盛んにすることで、社会に貢献(推譲)でき、起業は道徳的にも完成に近づく体―。日本の近代資本主義の黎明に合って、この報徳の思想の考えは静かに普及していった。
創業間もない頃に幸之助が定めた松下電器産業の「綱領」にもこうある。「営利と社会正義の調和に念慮し、国家産業の発達を図り、社会生活の改善と向上を期す」。営利と社会正義の調和を重視するこの綱領は、営利と道徳が一致した、まさに報徳思想に根ざした経営理念だといえる。

(トヨタの事例・・・略)
「豊田佐吉伝」にはこうある。
「豊田佐吉翁の思想的背景は、日蓮主義と報徳宗である。」
「成金には理想がない。佐吉翁には日本民族精神に根ざした高邁な理想があった。・・・翁が衷心から望んだことは、発明によって郷里の貧乏を救いたい。国家を富ましめたいという理想の実現で合った。」
佐吉の没後6年目、1935年に豊田綱領」が定められた。・・・その第1項にはこうある。
「上下一致、至誠業務に服し産業報国の実を挙ぐべし」
全社を挙げて至誠をもって勤労し、利益を上げることで社会に報いる。その経営が、報徳思想に色濃く彩られていることをよく示している。

(伊藤忠の原点は「三方よし」  (略))

宗教学者で、前国際日本文化研究センター所長の山折哲雄はその両立を「ダブル・バリュー・システム」と表現する。
「他者に与えたものは最小化して考え、逆に他者から与えられたものは最大化して考える。報徳思想や近江商人の考えには『恩と感謝』という日本的なエートス(行動規範)がある。その一方で、資本主義は捨てられない。2つの価値感がせめぎあいながら両立するのが理想だ」。山折は分析する。

(略)
根底に必要なのは、日本流経営の見えざる道徳律だ。それさえあれば、新しい「ジャパンイニシチアチブ」の地平が拓かれる。その価値観こそ、歴史の転換期、経済の混迷期に、世界が必死に探している者だから。





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最終更新日  2009年01月05日 21時33分14秒



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