鈴木藤三郎「米欧旅行日記」１１　７月３１日、８月１日　サンフランシスコ

七月三十一日　晴　着米 　本日午前十一時桑港(サンフランシスコ)ヲクスデンタルホテルに投(とう)ず。桑港(サンフランシスコ)ミッションストリート十番地のローレンチヱン商店え藤山君と同行す。主人不在に付(つき)、明朝参店を約して去る。是(これ)より同街千百十六番地星野(ほしの)清(せい)左(ざ)衛門(えもん)氏宅へ行(いき)、面会談話す。亦(また)同氏方にて本田(ほんだ)輝(てる)雄(お)氏に始めて面会せり。同氏は先年当地有名の砂糖王と通称するスルスクトツプルス氏(し)の精糖所に出勤したる由に付(つき)、星野(ほしの)氏より同氏に依頼して、右工場之(の)一覧せられんことを頼む。明日(あす)を約して去る。是(これ)より帰宿。亦(また)同日(どうじつ)投宿(とうしゅく)するや直(ただち)に当地新聞記者数名来り、藤山(ふじやま)君に乞(こ)ふて面会及び日本事情を請(こ)ひ問ふ。亦(また)夕方同記者画工一人を連れ来り、藤山(ふじやま)君(くん)の肖像写して帰る。 八月一日　晴 　午前九時馬車にてミッシヨンストリート十番地ロ　ーレンチエン商店へ行(いき)、主人に面会す。而(しか)して藤(ふじ)山(やま)君よりモスレ商会の添書(てんしょ)〔紹介状〕を出す。当主人は先年我が日本横浜に居(お)りたる旨(むね)種々談話あり。是(これ)より主人案内にて同所ヒンツ及びブラゲアン商会（独乙(ドイツ)人(じん)）に行(いき)、主人に面会す。而(しか)して主(しゅ)人(じん)案内(あんない)して工場を廻覧(かいらん)せり。同工場は雑穀を精製及び製粉精米を兼(か)ね、去今(いまをさる)二十年前より連綿営業せりと云(い)ふ。主人甚(はなは)だ該事業に熱心家なり。是(これ)より亦(また)ローレンチヱン氏案内にて同地ワグネル商会（独乙(ドイツ)人(じん)）器械製造工場に行(いき)、製粉機械を見る。亦(また)同工場を廻覧(かいらん)して、同器械の見積書を請求して帰る。是(これ)より（ケーブアー）（運搬器(うんぱんき)）に乗(の)り込(こみ)、ヲクスデンタルホテルに帰り中(ちゅう)飯(はん)〔昼食〕す。於是(ここにおいて)本田(ほんだ)輝(てる)雄(お)氏より書状着(つき)、明後(みょうご)月曜日を約して、（スクリツプルス）精製糖工場縦覧(じゅうらん)の承諾を得しと云(い)ふ。亦(また)同氏へ返報を発す。此(この)夜、チボイヲペラハウスにて（ハウスト）を見物す。