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2019年12月25日
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・カーライルの精神はすべて彼のクロムウェル伝にこもれり。

・カーライルの精神はすべて彼のクロムウェル伝いこもれり。彼の崇敬せし人、彼が真誠に崇拝せし人はオリバー・クロムウェルその人なりし。彼をしてこの書をなさしめし動機は彼の母より受けしものなり。

・クロムウェルの政策とは何ぞ。他なし。イギリスを以て地上における天国となし、終にイギリスをとおして全世界を天国と成さんとするにありき。彼はもしキギリス人にしてことごとく彼の信仰を懐きなば、イギリスを以て真正の聖人国となし得べしと確信せり。

・「正しかれ、そしておそれるなかれ」。正義によりて進む、大国何かおそれるに足らん。

・平民は平民を迫害す。これ隠語のごとく見えて実は明白なる事実なり。英国がついにクロムウェルを嫌悪するに至りしは、彼クロムウェルは余りにまじめなる平民なりしが故なり。

・「クロムウェル再び出でよ」とは今は英国人の声となれり。英国永久の光栄はクロムウェルの理想を実行するにありとはその多数の政治家の所信となれり。
「クロムウェル出でよ」。




余が学びし二大政治書

   カーライルのクロムウエル伝
「雑誌の雑誌」記者ステッド氏曰く「余を補益せし書は第一にキリスト教の聖書なり、第二にカーライルの著コロムウエル伝なり、第三に米国詩人ローエルの詩集なり」と。而してステッド氏と同一の経験を持ちしものは他にも多からん。
 今日まで地上に顕れし最も大なる国家は英国なり。しかして英国の二大政治家とは一はエリザベス女王にして、他の者はオリバー・コロムウェルなり。二者共に政治を学ばざる天然的政治家なり。政治の術、豈これを政治書においてのみ学ぶべきものならんや。
 カーライルの「コロムウェル伝」は彼の五十歳の時の作なり。これ実に彼の著述中最も大なるものなり。「フランス革命史」はそのドラマ的修飾において、「フレデリック大王伝」はその歴史的考証においてこれに優る所あらん。然れどもカーライルの精神はすべて彼のコロムウェル伝にこもれりといわざるべからず。彼の崇敬を呈せし人、彼が真誠に崇拝せし人はオリバー・コロムウェルその人なりし。
 二百五十年間大逆無道の臣として英国人の脳裏に存在せしこの人を恥辱の墓の底より発掘し来り、彼を英国第一の愛国者として、再び世界に紹介せし歴史家カーライルの功は偉大なるかな。余はおもう、もしカーライルがコロムウェル伝を以て彼の著述事業を中止せしならば、彼は益のみを後世に遺して害を伝えざりしならんと。彼のフレデリック伝はあらずもがな。彼の「末世の冊子」は彼の公にすべからざりしものならん。彼の英雄崇拝論は多くの不健全なる思想を青年に供し、ことにその我が日本に伝わりてより以来、この書により生涯を誤りし青年少なしとせず。これカーライルの不平時代に成りし書にして、これを読んで多少不平病に侵されざる者なし。
 然れどもコロムウェル伝に至りては全く然らず。これカーライル氏の「愛の著述」なりという。彼をしてこの書をなさしめし動機は彼の母より受けしものなりという。彼女の深き宗教心と強健なる常識とはこの誤解されし偉人において真正のキリスト教的ヒーローを発見せり。而して彼の幼時において彼女より注入されしこの思想はこの大著述となりて世に現れしなり。カーライルのコロムウェル伝は実に一平民が一大平民を弁護せし書なり。
 オリバー・コロムウェル、彼は英国セントアイブスの一農夫なりし。家は富めりとは称すべからざりしも、さりとて貧しからざりき。畜類の飼育を以て業とし、大いにその道に熟達せりという。歳二十にして結婚し、清き幸福なるホームを作るを以て彼の唯一の目的となせり。かくて彼は政治家に成るの必要なく、またその野心もなかりしなり。彼は心に神を拝し、手に正業を取り、以てこの曲がれる世にあって罪なき生涯を送らんとせり。
 彼が政治に入りしは四十歳の時なりし。しかも彼は大政治家となりて名誉を天下に博せんとて政治に入らざりしなり。彼は時の圧制を憤慨せり。ことに彼と同郷の人なるジョン・ブラインなる者が治安妨害的文書を頒布せりとて獄に投ぜられしを憤り、彼のために弁ぜんとて国会に入りしという。茅屋(ぼうおく)の下にて在て静かなる生涯を送らんと企だてし彼コロムウェルは人類的観念に迫られて止むを得ず国会議員と成れり。
 然れども彼に政略なるもの一つもあらざりしなり。ありのままなる実に彼の如きはあらざりし。彼に丈夫の勇気ありて、また処女のそれの如き涙と愛情とありし。敵と戦いてかつて敗を取りし事なき彼は友人の反逆に会しては悲歎痛哭に憂き日月を送れり。朝にダンバーに敵の大軍を敗(やぶ)って夕に家郷の妻女に送るに心情溢るるばかりの恋文を以てせり。人は彼を以て大偽善者なりとみなせり。然れども彼は偽善者にはあらざりしなり。彼は余りに感情の人なりしなり。故に彼は偽善者の如くに見えしのみ。
 彼の政策とは何ぞ。他なし。英国を以て地上における天国となし、終に英国をとおして全世界を天国と成さんとするにありき。故に俗人の眼を以て評すれば彼の行為は狂的なりしなり。彼はなし得べからざる事をなさんとせり。しかも彼はこれをなし得べからずとは信ぜざりしなり。彼はもし英国人にしてことごとく彼の信仰を懐きなば、英国を以て真正の聖人国となし得べしと確信せり。しかしてミルトンは彼の書記官として彼のこの偉想を賛し、ブレークは彼の海軍を指揮して海上に彼のこの理想を実にせんとせり。世の智者はいう「幸福なるは無学なり」と。特別に政治学を究めざりしコロムウェルと彼の補助者とはこのイムポスビリチーを実行せんとせり。政治家の手を束(たば)ね彼の足を縛るものにして実に彼の政治学の如きはあらざるなり。
「正しかれ、而して懼るるなかれ」。正義に因りて進む、大国何か懼るるに足らん。コロムウェル時代の英国はヨーロッパ第三等国に上らざりし。第一等国はスペインにして、フランスとオーストリアとはこれに次ぎ、オランダ、また新たに勢力を得たり。イギリスと対比すべき国とては、北欧のスウェーデンかドイツ連邦の一二に止まりしなり。然れどもコロムウェルその主権を握りてより、イギリスは一躍してヨーロッパ大強国の一として算(かぞ)えらるるに至れり。意志と信仰とに富める一偉人の勢力もまた大ならずや。
 時の大強国はすべてカトリック国なりし。しかして英国は新教国にしてコロムウェルは新教徒中の新教徒たりし。しかして彼は強国に媚びんために彼の信仰を曲げんとはなさざりし。否、彼は彼の信仰に基きて、弱き新教国を統一して強きカトリック国を挫(くじ)かんとせり。彼の外交政略なるものは、ただこの一事に存せり。彼が提督ブレークをして海上にスペインの船舶を捕獲せしめ、西インドにその領土をもとめ、テスリフ島にその海軍を殲(ほろぼ)さしめしは皆「大教敵スペイン」を挫かんとの方法に外ならざりし。彼がサボイ山中にある新教徒の虐殺を聞くや、直にフランスに通牒してむこの血を償わせしも、また彼のこの信仰に基づけり。彼は小にして新教国なるスウェーデンと同盟して大にして旧教国なるスペインに当らんとせり。彼の宗教的信仰は吾人の問うべきところにあらず。然れども彼の勇気と大胆とに至りては、実に余輩の嘆賞して措(お)くあたわざる所なり。
 進歩的保守家、ハンガリーの愛国者ルイ・コスートの如き人、米国のワシントンの如き人、然りリンカーンの如き、グラッドストンの如き人、彼らは皆はなはだしく国人に誤解された人なり。しかしてコロムウェルはその最もはなはだしき者なり。彼の情性に貴族的分子ありたると同時にまた平民的分子ありたり。彼は天稟(てんぴん)の貴族が平民として生まれ来たりし者なり。彼の同情は平民にありし。然れども彼の平民なるものは凡俗の謂(いい)にはあらざりし。彼の平民とは彼並びに彼の書記生たりしジョン・ミルトンの如き者なりし。すなわち人たるの品性を具え、位階と勲章によらずして高貴なる人なりし。彼がついに彼の国人の棄つる所となりしはまた故なきにあらず。
世の平民は多数者にして貴族は少数者なりと思う者は誤れり。貴族は実に多数者にして、平民は実に少数者なり。世にいわゆる平民なる者は実は貴族にして、彼らが平民的運動なるものを起こすゆえんのものは彼らが現在の貴族に代わりて自ら貴族と成らんがためなり。近くは東洋日本国の維新歴史においてこの事実を目撃するを得ん。薩長の族(やから)にして名なく位なき者、民の声なればとて四民平等を主張し、時の政府を倒し、而して自身権威の位置に立つや、直ちに新華族の制度を定め、己れ自ら貴族となりて天下に臨む。彼らは昨日の平民にして今日の貴族なり。四十年前の伊藤博文侯は渺(びょう)たる一平民にしてまた平民主義を唱え、時の貴族制度を憤りし者なり。今の平民主義者また然らざらんや。今の民間の政治家なる者も、一朝勢力の人となれば、直に貴族の中に列せん事を願う。彼らは貴族を嫌うにあらず。彼らは貴族を嫌うと称するのみ。彼らは実は生来の貴族にして、貴族たらんと欲して政海に乗り出せし者なり。言を休めよ。日本国の貴族は三千人にしてその平民は四千万人なりと。その平民四千万人の最大多数は貴族根性を以て生まれ来たりし者にして、彼らは機会あれば貴族たるを辞せざる者なり。吾人少しく歴史をひもときし者は彼らの平民主義なるものに欺かるべきにあらず。
平民は平民を迫害す。これ隠語のごとく見えて実は明白なる事実なり。英国がついにコロムウェルを嫌悪するに至りしは、彼コロムウェルは余りにまじめなる平民なりしが故なり。彼らは彼が少しく殿様然として天下に臨み、少しく国民の弱点に乗じ、その名誉心を充たし、その利欲心を満足せんことを求めたり。然れどもコロムウェルは厳として彼の平民的態度を守りたり。故に彼らはついに大偽善者として彼を記憶の外に葬り去らんとせり。彼らは再び彼の如き政治家をもたざらん事を望めり。彼らはコロムウェルに勝り、暗主チャーレス第二世を愛したり。然れども少数なりといえどもこの宇宙は平民の属(もの)なり。コロムウェルは死後三百年の今日英国人の理想的政治家となれり。彼の肖像は、今は英国国会議場の前に建てられたり。「コロムウェル再び出でよ」とは今は英国人の声となれり。英国永久の光栄はコロムウェルの理想を実行するにありとはその多数の政治家の所信となれり。
「コロムウェル出でよ」。英国においてのみならず、支那においても、朝鮮においても、ビルマにおいても、ベトナムにおいても、すべて腐敗せる政治家の横行する国はコロムウェルの現出を要す。上、貴族を挫き、下、衆愚を抑え、少数者なる平民の勢力を地上に扶植せんためには、コロムウェルは幾回かこの世に来たらざるべからず。
カーライルのコロムウェル伝はかくのごとき事を教うる書なり。





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最終更新日  2019年12月25日 18時47分26秒
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