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カテゴリ:ネイチャー
イギリスで日本の「カツカレー」が“国民食”になっている驚きの理由
カツカレーを含めて、日本食人気はここ30年の間に、徐々にイギリス国内で定着してきた。 第一の波は、1992年にロンドンで創業したカジュアル店「Wagamama」の急速なチェーン展開だ。ポップですっきりとしたデザイン、おしゃれなストリートフード風のメニューが若い層に俄然アピールし、瞬く間に人気者に。 続いて1990年代後半に誕生したのが回転寿司の「YO! Sushi」。回転寿司をイギリスに初導入して全国展開したことで「ポップで近未来的な日本食」のイメージが広まることになった。 両ブランドともに創業者が日本人ではなく、香港系イギリス人のアラン・ヤウ氏や生粋イギリス人のサイモン・ウッドロフ氏だった。 90年代末から2000年代にかけて頭角を現したNobuやZuma、Rokaといったモダン・ジャパニーズを、日本食ブーム第二波と呼ぶこともできる。 第三の波は、2010年代にやってきた。 先鞭をつけたのは2012年創業の「昇龍」。同時期にいくつかの本格ラーメン専門店がぽんぽんと勢いよく誕生し、その後も「一風堂」や「金田屋」などが後続。 これらのラーメン・ブランドのほとんどは日本人が立ち上げた。 日本食は寿司などのイメージから健康志向の意識の高い人々に人気だった。一方、ガツンと胃に収まるカツカレーは、特に学生や若い男性を中心に不動の大衆食となっていった。 豚肉を食べられないイスラム教徒が多いこと、また鶏肉が大好きなカリブ系移民が多いことから、イギリスではポークよりもチキンが好まれ、カツカレーと言えばチキン・カツカレーを指すのが一般的だ。 カツカレー人気に火付け役がいるとすれば、それは現在のところ英国全土に135店舗を展開する92年創業のWagamamaをおいてほかにない。 英国内では1日に1万食のWagamamaチキン・カツカレーが食べられており、押しも押されもせぬナンバーワン・メニューである。 Photo: A mini chicken katsu curry of Wagamama イギリス人のカツカレー巡礼は青年時代にWagamamaから始まり、ここでファンになった客層が他店へと味の冒険を広げていく、そんな流れがある。 チキン・カツカレーは、なぜこうまでイギリス人のお気に入りになったのだろうか。 筆者(江國 まゆ)はソースとPanko(パン粉)に秘密があるのではないかと思っている。 イギリスには伝統のロースト料理があり、肉には必ず肉汁を利用したトロミのあるグレービー・ソースをかけていただく。 焼き具合をウェルダンにしがちなイギリス人には、 肉に汁気を加えるためにソースが不可欠なのだが、これはイギリスの国民食と言われて久しいインド・カレー「チキンティカ・マサラ」の誕生秘話にも繋がっていく。 マイルドなマサラ・ソースはタンドーリで焼いただけのチキンにしっとり感を与え、口の中で食べ物をまとめるのに最適な役割を果たしているところが、イギリス人の好みに合致しているのは間違いない。まさにカラリと揚がったカツに寄り添うカレー・ソースのように。 イギリス人のソウルフードでもある「フィッシュ&チップス」の伝統店に行くと、オプションとしてトロミのついたカレー・ソースを置いている。これがインド・カレーというよりも、かなり日本のカレー味に近い。 イギリス人がカツカレーの味に親近感を覚えるのは、こんなところにも理由がある。もっともカレー・ソース自体が明治時代にイギリスから輸入されたものなので、このリンクは必然なのだが。 カリカリのチキンカツと、マイルドなカレー・ソース。これはイギリス人が愛してやまないからりと揚がったフライドポテトとカレー・ソースの組み合わせと同等のもの。エキゾチックだけど懐かしい味。イギリス人がチキン・カツカレーを愛してやまない理由は、そんなところにある気がしてならない。 イギリス人はノスタルジーを感じる好ましい食べ物を表現するとき「comfort food」(ホッとする味)と言う。チキン・カツカレーは、堂々とそのカテゴリーに入っていると言えるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年07月11日 02時20分55秒
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