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2021/09/09(木)20:44

新型コロナ感染症の患者に早い段階でモノクローナル抗体を投与することで、重症化率や死亡率を大幅に低下させることができる

ネイチャー(4210)

<最新研究>モノクローナル抗体で重症化率と死亡率が大幅に低下 9/9(木) 米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)がホワイトハウスの新型コロナウイルス対策チームと協力して実施した研究で、新型コロナ感染症の患者に早い段階でモノクローナル抗体を投与することで、重症化率や死亡率を大幅に低下させることができるという結果が出た。この結果、UPMCの臨床試験でこの治療を受けられる患者は7.5倍に増えたと、UPMCの感染症専門薬剤師エリン・マクリーリーは9月8日のプレスリリースで発表した。 モノクローナル抗体は、通常の抗体と同じようにウイルスと結合することで効果を発揮するが、ウイルスの特定の部分(今回の場合は新型コロナウイルスのスパイクタンパク質)を認識して結合する。ウイルスを覆うこのスパイクタンパク質を標的にすることで、ウイルスがヒトの細胞に結合して侵入し、感染させるのを防ぐ仕組みだ。 <「現時点での最善策」> 研究では3月10日~6月25日、UPMCの患者5000人超に対してモノクローナル抗体治療薬を投与。分析の結果、米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可を得ている製薬大手イーライリリーのモノクローナル抗体製剤――バムラニビマブ/エテセビマブ併用剤とカシリビマブ/イムデビマブ併用剤(いわゆる抗体カクテル)――が安全で、有効性もほぼ同等であるという結果が示された。 FDAの緊急使用許可が下りた当初は、モノクローナル抗体の投与を受けられる患者はごく一部に限られていたが、研究では投与対象を広げて、この治療における人種格差を埋めることができたという。 研究報告の共著者でUPMCの最高革新責任者であるデレク・アンガス博士は、「今は世界中がなんとか新型コロナウイルスを抑制しようと闘っている」と述べ、さらにこう続けた。「新型コロナ感染症にかかった場合、重症化や死亡を防ぐ上で、現時点での最善策がモノクローナル抗体の投与だ」 「私たちには治療法で複数の選択肢があるが、『自分の患者にはどの治療が最適なのか』という疑問は常にある。今回の研究結果から言えるのは、最速で投与できる薬が最善の選択肢だということだ」 アメリカ政府の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士も8月、モノクローナル抗体の使用を推奨。「効果的」なのに、感染初期の患者を治療する多くの医師たちに「十分に活用されていない」と述べていた。 新型コロナ、次の革命的療法は人工抗体「モノクローナル抗体」か 2020年8月7日(金 新型コロナウイルスを特定して攻撃する「モノクローナル抗体」(特殊な細胞の複製から作り出す抗体医薬品)の開発は有力科学者らからお墨付きを得ており、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長も、新型コロナに対する「確実性がかなり高い手法」と評価している。 ウイルスがヒトの体内に入って最初の防御を通過すると、もっと特殊な抗体反応が開始、侵入ウイルスを標的にする細胞が作られる。そうした細胞には、ウイルスを認識して封じ込め、感染の広がりを防ぐ抗体が含まれる。 リジェネロン・ファーマシューティカルズのクリストス・キラトソウス最高経営責任者(CEO)はロイターの取材に「抗体は感染を防ぐことができる」と語った。同社は2種類の抗体から成る「抗体カクテル」を実験中。2種類を使うのは、1種類だけよりもウイルスがすり抜けるのを止めやすいだろうという考え方だ。 体内の独自の免疫システムを活性化させるワクチンと異なり、モノクローナル抗体は効果がいずれ消える。それでも製薬メーカーは、医療従事者や高齢者など高リスクな人々への感染を一時的に防ぐには有効ではないかとしている。ワクチンが広く入手されるようになるまでのつなぎ的な療法としても使えるかもしれない。ビル・バイオテクノロジーの主任メディカル責任者、フィル・パング氏は「予防的な意味合いとしては、我々は最大半年間、有効かもしれないとみている」と語った。

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