2021/09/22(水)01:49
睡眠中に神経細胞間の隙間が大きく拡がり、脳内リンパ液が流れやすくなる。睡眠時間が短いことが認知症の発症リスクと関連する
脳内リンパ系の研究が示す「睡眠時間の短さは認知症のリスク」 40代前後から気をつけて
9/21(火)
・最近になって、脳にもリンパ系があることが発見されました。
・体内には膨大な数の細胞や組織があり、そこでは日々さまざまなたんぱく質や脂質などが作られ、生体機能を維持しています。その後、不要になったたんぱく質や脂肪、その断片などの老廃物は細胞外に排出されます。老廃物は当初、細胞と細胞の間を満たしている体液(細胞間質液)の中に漂い出ます。細胞間質液はもともと血管からしみ出した血液成分(血漿 )なので、次から次へと供給されます。そのため老廃物を含んだ細胞間質液は徐々に押し流され、体中に張り巡らされたリンパ管を通って最終的には血管に戻され、腎臓を経て尿や便の中へと排出されます。
脳内にも神経細胞をはじめとする多数の細胞が存在します。そのため、毎日かなりの量の老廃物が生じます。では、脳の老廃物はどのようにして洗い出されているのでしょうか? 多くの研究者は、脳の中でもリンパ液に乗せて排出しているのだろうと考えてきましたが、長い間、脳内でそれらしきリンパ管は見つかりませんでした。体のリンパ系は300年以上も前の西暦1600年代にはすでに見つかっているのに対して、脳のリンパ系が発見されたのは2010年代に入ってからのことでした。
・脳には大きく分けて「神経細胞」と「グリア細胞」の2種類の細胞があります。そのうちグリア細胞が脳内の動脈の周囲を包み込み、血管の外側に狭い隙間を作っていたのです。血管の周囲をさらに太い管で取り囲んだイメージです。脳を包む液体(脳脊髄液)がこの隙間を伝って脳の細部に入り込み、神経細胞の周囲にリンパ液としてしみ出して、老廃物を洗い流していたのです。老廃物を含んだリンパ液は、今度はやはりグリア細胞によって静脈の周囲に作られた隙間に沿って脳外へと流れ出るのです。
・ 発見者の米国ロチェスター大学・メディカル・センターの研究チームは、この脳内リンパ系が主にグリア細胞で形作られているため、「グリンパティック・システム(Glymphatic System)」と命名しました。グリンパティックとは、グリア細胞「Glial cell」とリンパ系「Lymphatic System」を合わせた造語です。
・脳は神経細胞やグリア細胞、その他の組織などでみっちりと埋め尽くされているため、なかなかリンパ液が流れにくいのですが、驚くべき事に睡眠中に神経細胞間の隙間が大きく拡がり、脳内リンパ液が流れやすくなることが分かった。
・深く眠った時に脳波活動が遅くなることや心拍数が低下することが、脳内リンパ液の流れを活発にすることも分かりました。また、認知症の患者さんを対象にした臨床研究で、脳の老廃物の一つ「アミロイドβ(ベータ)」の濃度が、睡眠時間が長いほど高くなることも分かりました。アミロイドβは、アルツハイマー病の原因物質の一つと考えられています。睡眠時間が長くなることによって脳脊髄液中のアミロイドβ濃度が高くなるということは、それだけ効率よく老廃物を洗い流せていることを意味しています。
・睡眠時間が短いことが認知症の発症リスクと関連することが数多くの疫学研究で明らかにされています。
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