大正13年1月26日公布、即日施行された勅令による恩赦では、刑期の短縮などが機械的に定められていた。
有期刑は、
既に刑の執行を始めて刑期の半分以上に到っている場合、 残りの刑期を半分に短縮する。
未だ刑の執行を始めていないか、または、既に刑の執行を始めているが刑期の半分に到っていない場合、 刑期の全体を3/4に短縮する。
例1 懲役4年で1年服役した者は、刑期が3年になるので、残りは2年。
例2 懲役3年で3ヶ月服役した者は、刑期が2年3ヶ月(=27ヶ月)になり、残りは2年。
例3 懲役2年8ヶ月で未だ服役していない者の刑期は2年(=24ヶ月) 。
したがって、
例1 刑期4年で1923年1月に収監・服役した者は、1924年1月の恩赦により、1926年に刑期満了
例2 刑期3年で1923年10月に収監・服役した場合、1924年1月の恩赦により、1926年に刑期満了
例3 刑期2年8ヶ月で、1924年1月の恩赦の後に服役した場合、1926年に刑期満了
よって、1926年に釈放された者は、1924年1月に恩赦を受けている限りにおいて、減刑前の本来の刑期が2年しかなかったということはない。
1924年1月に恩赦を受けられなかった者は、未だ判決を受けていなかった者か、恩赦の対象にはならない特殊な罪に限られる。
なお、3・1運動で投獄された指導者はせいぜい3年程度の刑期で1919年秋に服役したから、大正13年の皇太子殿下(裕仁親王)御成婚ではなく、1920年の王世子(李垠)殿下御成婚のときの恩赦であった。
文龍明少年の数え年7~8歳で釈放されたという文潤國「牧師」は、何時の事件のときに何の罪で服役したのだろうか。
減刑令(大正13年勅令第10号)
第一条 大正十三年一月二十六日前刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニシテ其ノ刑ノ執行前ニ係ルモノ、刑ノ執行猶予中、執行中若ハ執行停止中ノモノ又ハ仮出獄中ノモノハ本令ニ依リ其ノ刑ヲ減軽ス但シ其ノ執行ヲ遁ルル者ハ此ノ限ニ在ラス
第二条 死刑ハ之ヲ無期懲役トス
第三条 無期懲役ハ之ヲ有期懲役二十年、無期禁錮ハ之ヲ有期禁錮二十年トス但シ本令施行ノ際七十歳以上ノ者ニ付テハ刑期ヲ十五年トス
第四条 有期ノ懲役又ハ禁錮ハ左ノ例ニ依ル
一 刑ノ執行ヲ始メサル者ニ付テハ刑期ノ四分ノ一ヲ減シタルモノトス
二 刑ノ執行ヲ始メタル者ニ付テハ残刑期ノ二分ノ一ヲ減シタルモノトス但シ刑ノ執行刑期ノ二分ノ一ニ至ラサルトキハ前号ノ例ニ依ル
三 本令施行ノ際七十歳以上ノ者ニ付テハ前二号ノ例ニ依ラス刑期ノ二分ノ一ヲ減ス
2 前項ノ計算ヲ為スニ当リ年、月又ハ日ノ端数ヲ生スルトキハ一年ハ之ヲ十二月、一月ハ之ヲ三十日トシ日ノ端数ハ之ヲ除棄ス
第五条 旧法ノ刑ハ之ニ相当スル刑法ノ刑ノ例ニ依リ之ヲ減軽ス
2 旧法ノ刑ヲ減軽シタルトキハ其ノ刑名ハ之ニ相当スル刑法ノ刑名ニ変更ス
第六条 左ニ掲クル罪ニ付テハ其ノ刑ヲ減軽セス
一 刑法第七十三条及第七十五条ノ罪
二 刑法第百三十一条第二項ノ罪及其ノ未遂罪
三 刑法第百八十一条ノ罪ノ中人ヲ死ニ致シタル罪
四 刑法第二百条ノ罪及其ノ未遂罪
五 刑法第二百五条第二項ノ罪
六 刑法第二百十八条第二項ノ罪及其ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪
七 刑法第二百二十条第二項ノ罪及其ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル罪
八 刑法第二百四十条ノ罪ノ中人ヲ死ニ致シタル罪及第二百四十一条ノ罪並其ノ未遂罪
九 軍機保護法第一条乃至第三条ノ罪及其ノ未遂罪
十 朝鮮、台湾、関東州又ハ南洋群島ニ行ハルル法令ノ罪ニシテ前各号ニ掲クル罪ト性質ヲ同クスルモノ
十一 前各号ニ掲クル罪ト性質ヲ同クスル旧法ノ罪
第七条 大赦、特赦、減刑又ハ復権ヲ得タル後再ヒ罪ヲ犯シ禁錮以上ノ刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ付テハ減刑ヲ為サス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス