Alloraの詩集 1いっしょ 生まれてくるときは一人 死んでいくときも一人 でも生きているあいだは 君といっしょ みんなといっしょ それがうれしい 夢(1) 君を想うと 夜も眠れない 夜も眠れないといいながらも 自堕落な僕は すっかり眠っちまって 夢の中で君に会う 夢(2) 現実の君には 会えないから 夢の中で 君に会う 夢の中で 君にキスをする この現実も 夢にすぎないのだけれど 口紅 鏡の前に座り 唇にルージュをおく きれいだな 僕は前世 女だったのか やめる 仕事もやめる 人間もやめる 何もかもをやめる それでも 僕は君が好きだ 飲み屋 飲み屋で 君と飲む 君を抱きたくなる 酔っぱらってしまって きつい キスして 君とわかれて 一人でタクシーにのる きついなと ふと つぶやいてしまう 君と僕 君は太陽で 僕は月で 君は金で 僕は銀で 君はルビーで 僕はラピスで 君はライオンで 僕はサイで そして 君は女で 僕は男だ 夜中 夜中に目がさめてしまい カーテンをあけて窓の外をみれば ベランダには赤いチューリップ 空には白い月 そして ベッドには透明な魂 逝く時 逝く時は何も持っていけない 本棚の本たちも このカバンも 服も 家も 君も 何も持っていけない この自分の体でさえ 休日 休日 昼下がり 裸になって パンツもとってベッドに寝そべる 自分の腕にあとがつくほど キスをした 透明 君のことを 愛して 愛して 愛して 透明になる僕 空には白い月 家族 夜更けに一人台所で お茶を飲んでいたら Mが帰ってきた おかえり ただいま Mは僕の家族です 酔っぱらって 酔っぱらって帰り 息子を相手に わーっと はしゃぎたおす 息子からひんしゅくをかい 自分の部屋にもどって 谷川俊太郎を朗読して ねる 死ぬのなら あした死ぬのなら きょう何もかもすてても 君を抱くだろう でも まだしばらくは生きているみたいだから それが悲しい 突然 河原を歩いていて キスをしたら 突然くるのねって 君は言った 僕は答えて 突然だけが人生さ ガンジス ガンジスの砂の数ほど 生まれかわり 死にかわり そのたびごとに きみを愛してきた このぼく キス キスして キスしてと きみの魂が ぼくの魂に よびかけてくる ぼくはたまらなく きみが愛おしくなって きみの魂にキスをした 乳房 生まれてはじめてキスをしたのは 母の乳房 それから四十年たってキスをしているのは 君の乳房 |