Camera di Allora.

2018/05/19(土)22:37

トルストイ「戦争と平和」

読書(191)

トルストイの「戦争と平和」を読んでみました。 岩波文庫2006年発行の新訳全6巻。1巻から3巻までは19世紀の帝政ロシアの貴族階級の暮らしぶりが描かれていて、多くの人名が出てきて分からへん。少々退屈しながら読んで。 4巻目からはナポレオンのロシア侵攻の具体的な話となって、ようやく面白くなってきました。 5巻目冒頭は話の流れから少しだけ離れて、もちろん関連はしているけどトルストイの歴史観がさらっと書かれて。最終6巻はエピローグ第1篇で物語としては終わっていると思うけど、第2編で80ページほど使って、更に付録としてトルストイのまた歴史観というか哲学が書かれ、少々難しく感じました。 6巻全体としては、毎巻登場人物の名前と相関図、歴上実在の人物名が載っており、まぁこれはよくある形。ナポレオンの仏軍とロシア軍の戦闘地や行軍経路を示す地図もあり。そして各巻に翻訳者藤沼貴氏の19世紀当時のロシアについてのコラムで「ロシアの暦」「ロシア人とフランス語」「貴族の荘園」等々、本編の程よいところに、一番多い4巻で9項目、6巻が少なく3項目が載っていて、長編を読み進めるのに丁度よい息抜きができました。 6巻最終には読者と訳者やりとりの形をとった「戦争と平和Q&A」という部分が25ページにわたって、トルストイの生まれと育ち・戦争と文学・トルストイの言葉と表現・トルストイ主義等々について載っており、その後に、[アルバム・トルストイの生涯 1828~1910] 27葉の写真と挿絵があります。 「戦争と平和」という小説だけでなくトルストイについて理解を深めてほしいといった、訳者・出版の岩波の熱意が感じられ、そういった部分も含め良い出版物と思います。 実際の戦争を考えれば、ここに描かれている19世は銃も大砲もあるけれど騎馬兵や歩兵中心の戦争、そして現代は核・ミサイルの時代。比べようがない。 19世紀には絶対的貧困はあったけど、核兵器はなかった。どちらが平和と言えるんでしょうかね。

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