今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞
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平成30年5月15日(火)
詩集「測量船」:三好達治(76)
私と雪と(6)
そして、しかし今一度意識が私に帰ってきた。私は力
めて、ただ眼を強く見開いた。視覚の最後の印象に、恰(あたか)
もそこに私自身を見るやうに、暮色の曇り空を凝視(ぎょうし)した。
その凝視を続けようとした。しかし間もなく瞼は落ちた。
私は傷ついて私の獲物の上に折り重なってゐた。(あの
狙撃者が、私に近づいて来るだらう。彼は、あらゆる点
で私と一致してゐたから。)そして私の下の野獣が、もは
やその刺(とげ)に満ちた死屍(しし)が、麻酔(ますゐ)に入らうとする私にとっ
ての、優しい魅力であった。その時私は聴いたのである。
私の下の死屍、寧(むし)ろ私と同じい静物から、それの中に囁(ささや)
く声を、「私と雪と……」
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