ジルコニアの気まま日記

　夏休みもある程度日数がすぎたとある日の朝。
　「ん、うん。えっと・・・わ、私はえと、その・・・金剛君と同じクラスの高木といいます。金剛君はいらっしゃいますでしょうか？」
　金剛邸の前で緊張した様子でそう練習をしているのは、みつあみヘア＋眼鏡、清楚という言葉が似合いそうな格好をしたクラス委員の高木恵那。
　「う、うん。だ、大丈夫・・・だよね？」
　彼女は大きく深呼吸をしてからインターホンを押した。
　「はいはい、どなたですか？」
　玄関から出て来たのは龍也の母親である蛍。
　「あ、あのあのあの！！わ、わわわわわわ、わたひゅ！こ、金剛くんと同じクラシュのた、たたたたたたた高木恵那っていいます」
　「あぁ、貴女が恵那ちゃんね。ジェードからよく話は聞いてるよ。それで、こんな時間にどうしたの？」
　「あ、あの・・・え～っと・・・そのぉ・・・」
　どうしたの？って言われるなんて聞かれると思ってなかったんだろう。彼女は酷く狼狽した様子を見せていたが、蛍は１人納得したのか、ポン！と手を打った。
　「すまないね、ジェードちゃんと何か約束でもしてたんだね？ジェードちゃん。お友達が来てるよ」
　「こんな朝早くから誰ですかね？瑠璃ですか？」
　奥から這い出てきたジェードは視界の奥に恵那の姿を見ると何かを察したんだろう。
　「恵那じゃないですか、おはようございます。待ってましたよ」
　「え、あ、あ、うん。おはようジェードさん」
　「すみません、蛍さん。今日恵那と一緒に勉強をするという約束をしていたのすっかり忘れていました」
　「あら、そうだったんだね。そうそう、せっかくだから龍也も一緒に混ぜてやってくれないかい？アイツは絶対宿題とかやってないだろうから。２人で監視してやらしてやって」
　「あ、はい！わかりました」
　「それでは恵那？どうぞあがってください」
　「お、お邪魔しま～す」
　「それでは２階に行きますか、恵那」
　恵那を連れて２階に上がり、部屋に入った２人。
　「それで恵那？今日は急にどうされたんですか？」
　「あ、うん。えっと、夏休み入る前に抜き打ちで生活態度のチェックするって言ってたよね？それでお邪魔したんだけど、やっぱり、急にお邪魔したのはまずかったかな？事前にジェードさんには一言断っておいたほうが良かったかな？」
　「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ？それに、抜き打ちなのですから」
　「ありがと。それで、金剛君は？」
　「まだ部屋で寝てると思いますよ？」
　「そういえば、コーラルさんは・・・・」
　違う部屋なのかな？部屋を見回してそう言おうとして言葉をとめた。
　「あ、まだ寝てるんだね」
　「えぇ、コーラルも夏休みに入ってからというもの、深夜アニメ祭りだ！とか訳のわからないことを言って夜遅くまで起きてますからね」
　「あ、あはは・・・」
　「龍矢の部屋に行く前に先にコーラルも起こしておきますか」
　そう言うと、ジェードはノートの１ページを破り切り離すと、それを折ってコーラルの耳元へと持ってくると・・・
　パーン！！！
　「ふ、ふにゃぁあああああああああああああああ！？」
　うん、よく子供の頃にやった紙で作るクラッカーとでもいうのだろうか。振って音を出すアレ。
　突然耳元で聞こえたその音にコーラルは悲鳴をあげつつ飛び起きた。
　「うぅ～・・・ジェード酷いよぉ・・・」
　「おはようございます。良い朝ですねコーラル」
　「おはよう」
　いきなりこんな風に起こされたんじゃ、機嫌が良いはずがないｗ
　頬を膨らませ不機嫌そうに朝の挨拶をしたコーラルだったが、ジェードの横に恵那の姿を見ると、照れた様子を見せた。
　「あ、おはよう恵那」
　「おはよう、コーラルさん」
　「今日は恵那による生活リズムが崩れてないかの抜き打ち検査ですよ。コーラル」
　「うぅ～・・・だからってあんな起こし方しなくたっていいじゃん」
　「あ、あはは・・・」
　「コーラルは普通に起こしても起きないじゃないですか。これくらい当然でしょう。それで、コーラルも起きましたし、早速龍也の部屋行きますか？」
　「あ、そういう？それならあたいも行くよ。楽しそうだし」
　クスクスと意地悪そうな笑みを浮かべるコーラル。
　「それでは行きましょう」

　第３９話　抜き打ち訪問　その１．終わり
　　　　　　　　　　　　　その２．へ続く