2016/10/09(日)00:11
最終話 そして伝説へ その1.
ゾーマの城から脱出し、勇者の洞窟を急いで駆け抜けてきたあたし達。
大きな音を立て地響きを起こしながらあたし達がこっちの世界、アレフガルドへ来る時に使ったギアガの大穴が塞がっていってるのが見える。
「なるほど・・・この地鳴りはこういうことだったんですね」
「どういうこった?ゾーマを倒したことと関係あるのか?この今の現象は」
「うん、ミラ。僕とカリストにもわかるように説明プリーズ」
「こちらの世界だけでなく私達のいた世界にも干渉しようとしたゾーマがこのギアガの大穴はあけたものだと思われます。それならその開けた本人であるゾーマが倒れたことによって、世界を元の形に戻そうとする力が働いているのでしょう」
「なるほど、だからこの穴が塞がった、ってわけか」
「なるほどなるほど、確かに言われて見れば納得いくね」
「でも、ギアガの大穴が塞がってアレフガルドが1つの世界として元の形に戻ったはずなのに光が戻ってこないね・・・・」
「ねぇエリス?なんか袋がすんごく光り輝いてるんだけど」
「ん、俺の袋は・・・・・・げふっ」
「はいはい、今はそういう冗談はいいからね?カリスト」
袋からその光っている何かを取り出してみたんだけど、それはゾーマの闇の衣をはがした光の玉だったんだよ。
「この光、上空に向かって一直線に伸びてませんか?」
光の登る先を見てみると、そこはさっき穴が閉じた辺りっぽい?
もしかして、これがこの世界に光を・・・?
とめどなく光の玉から放たれ続ける光の筋。それはある程度の高度まであがると、今度は地上に降り注いできたんだよ。
「ふわ・・・幻想的な感じですね」
「うん、夢見たい・・・」
どれくらいの時間が経ったんだろうか。暫くすると光の玉から光が伸びることはなくなり、空から降り注いでいた光が収まると闇の世界だったここアレフガルドに光が戻っていた。
「おぉ・・・光だ。世界に光が戻ったぞ」
「これで僕達の長かった旅の目的も終わったんだね」
「はい、それではアリアハンへ戻りましょうか」
「うん、そうだね!」
やっと長い旅が終わりアリアハンへ戻って平和な日々を過ごせる。そう思ってたんだけど・・・・・・
「あれ?」
「どしたん?エリス」
「あ、うん。えっと・・・アリアハンに飛べないんだよ」
「は?マジで?」
「う、うん・・・」
「本当ですね・・・アリアハンどころか私達がもといた上の世界そのものに飛ぶことが出来ないみたいですよ」
「つまり、僕達はこっちの世界に閉じ込められたってこと?」
「そう、なるね・・・」
「マジか」
自分達の居た世界に戻れないなんて・・・そんなこと、そんなこと・・・
「ま、どうせ俺やアルナはもう心配してくれる肉親もいねぇし、旅が終わったら2人で一緒に世界をブラブラしようって話だったから、こっちの世界でも問題ないわけだがな」
「ん、そうだね。僕もカリストさえ居てくれればそれだけで十分だし」
「はいはい、熱いですね。まぁ、かくいう私もレーベの村に帰ったところで両親はいないですし、それならここでゆっくりと暮らすのもいいのですが」
そこまで言ってミラはあたしの方へと心配そうな瞳を向けてきてくれた。
「エリス・・・」
「あ、そっか・・・エリスはもう」
「あぁ、お袋さんともう会えないんだな」
お父さんを亡くして、そしてそのお父さんの成しえなかったことを成そうと旅にでた娘も帰れなくなって・・・
「お母さん・・・」
ごめんね、お母さん・・・
エリスの頬を伝い地面に流れ落ちる一筋の熱い涙。
だが、彼女は自身が涙を流していることに気付いていない。
でも、きっと。お母さんならわかってくれるよね。それに、ゾーマを倒したことであっちの世界にも平和が訪れるだろうし・・・それで私はちゃんと目的を果たしたって、わかってくれるよね‥‥
「エリス・・・」
色々と頭の中に浮かんでは消え、それらがまた浮かび上がって消えていく。
どれくらいの時間が経ったんだろう。きっと短くない時間あたしは頭に浮かんでくることについて考えをめぐらせ続けていたに違いない。
そして、それを何も言わずにじっと待っててくれた皆には本当申し訳なく思う。
っと、とりあえずこのままずっとここに居るのもあれだし、まずはラダトームに行ってゾーマを倒したことを報告しにいかなきゃね。
「さて、それじゃラダトームに行って王様に報告しよっか」
「んだな」
と、いうわけで。あたしは気持ちを切り替えてラダトームの王様へゾーマを倒したことの報告をするため移動した。
最終話 そして伝説へ その1.終わり
その2.へ続く