2017/12/02(土)00:03
最終話 妹勇者冒険譚 その1.
「よくぞ無事に戻ってきてくれた。そして、何よりもあのアシュタロトと魔族・天上人・地上人が互いに手を取り合い共存するという誓いをさせたことに、ただただワシも感服するばかりだ」
イブリース城を後にした私達は、その足で天上界はゼウス達が待つゴッド・キャッスルへと戻っていた。
「もったいないお言葉です。そして、これがアシュタロトとセラが誓約を結んだ誓約書です」
ゲティンから誓約書を受け取ったゼウスはそれに軽く目を通してから再び口を開いてきたよ。
「うむ、確かに預かったぞ。セラフィム=ライト。そして皆の者。この度は本当にご苦労であった。サタナエルから始まった一連の魔族との争いもこれで全て終わったのだ。本当に心から感謝しているぞ」
「セラ・ミハイル・クレッシル・アセト。今まで本当にお疲れ様でした。皆の活躍は地上世界だけでなく、天上界・魔界でも今後広く語り継がれる事でしょう」
「そして、ゲティンよ。今回の件では本当にお前には迷惑をかけてしまった。ゲティンが動いてくれなければ、絶対にこのような結果はなかったと思っている」
「わたしは自分が正しいと思った道を進んだだけです」
「迷惑ついでにもう1つだけゲティンに話があるのだが・・・」
「なんです?どのような話です?ゼウス」
「うむ、今回このような事があり、ワシはその責任をとり最高神の座から降りようかと思っているのだが・・・」
「はぁ?」
「そのワシの後釜、最高神の座をゲティン、そなたに譲りたいと思っている」
「わたしがです?」
「他のものもゲティンであるなら文句はないであろう。どうだ、やってはくれないか」
ゲティンがめんどくさそうな表情を浮かべながらチラッと辺りを見回すと、その場にいたマスティマ・ペネム・アルマロスは良い笑顔でゲティンの方を見ながら、コクリと頷いたんだよ。
「はぁ、別にやるのは構わないですけど、そうなると神秘の泉の管理はどうするのです?」
「神秘の泉の管理はわしの方から後任のモノを任命してもよいのだが、もしゲティンに後任を任せたいと思うモノがいるのであれば、その任命も一任してもよい」
「・・・・・・」
ゼウスの言葉にゲティンはたっぷり時間をかけて考えてから口を開いた。
「わかりました。その話、謹んでお受けしましょう」
「そうか、ありがとうゲティン」
「ふふ、おめでとうゲティン♪」
「大出世じゃないですかゲティン」
「へへ、おめでとさんだ」
「最高神ということは上に上がってしまうんですのよね、そうなるともうゲティンとも杯を交わすことが出来なくなってしまいますのね」
私たちは素直にゲティンが最高神に任命された事を祝福したんだけど、アセトだけはちょっと寂しそうな表情を浮かべてたよ。
そして、その後私たちはゼウスの計らいによりゴッド・キャッスルで大きな宴を開いて貰ってそれに参加し、美味しい料理やお酒に舌鼓を打っていた。
「う~ん、美味しい~♪ねぇねぇミハイル。これもすっごく美味しいよ!」
「はいはい料理は逃げていきませんからもう少し落ち着いてください」
「んむがぐ、むぐぐぐぐぐ、むがががが~」
「ねぇクレッシル。口に入れながら喋るのはマナー違反だよ?」
「なぁ、アセトとゲティンはどこいったんだ?」
「あれ?そういえば2人の姿がみえませんね」
私たちが美味しいご飯に夢中になってる間にアセトとゲティンの2人がどこかに消えてたよ。
「あ、いた!!」
皆の輪からかな~り離れた場所に影2つ。
遠目に見る限り、手に何か持ってるように見えるし、もしかしたら2人で最後のお酒を楽しんでるのかな?そうだったら邪魔しちゃ悪いよね。
その後、宴は夜が明けるまで続き、私たちはその宴を思いっきり楽しんだのだった。
最終話 妹勇者冒険譚 その1.終わり
その2.へ続く