2009/01/15(木)21:16
「ブラインドネス」(2008 日、ブラジル、カナダ)
(-ω-;)う~ん
仕方ないと思う反面、あまりにも的外れな感想の多さにがっかり。
ってことで今回は全力で擁護することに決めた。
(`へ´)b
この作品にはその価値があると思う
それはこの映画(^-^)b
「ブラインドネス Blindness」(2008 日、ブラジル、カナダ)
PG-12
『全世界、失明』
とんでもなく面白い一気呵成本「白の闇」の映画化作品
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:「白の闇」ジョゼ・サラマーゴ著、NHK出版刊
脚本:ドン・マッケラー
出演:ジュリアン・ムーア マーク・ラファロ アリシー・ブラガ ダニー・グローヴァー 伊勢谷友介 ドン・マッケラー 木村佳乃 ガエル・ガルシア・ベルナル
「どんな話?」は割愛
あらすじは映画も小説も同じなので、私の過去記事でも参照して下さい。
(^_^)
(「白の闇」)
原作小説と映画化作品は別物。
それを身にしみて理解した上での応援記事です。
SFパニックに形を借りた寓話、思索映画。
もの凄く想像力を刺激するシリアスなSFドラマだ。
観て驚いた。
(°o°)
非常に鋭い着眼点と想像力豊かな原作を見事に映像化。それもかなりハイレベルだ。
まず、121分にまとめきった脚本がスゴい。さすがに駆け足の部分も所々見受けられるけど、問題にならないレベル。
「目が見えない」表現は、ぼんやりとした白い映像は観ての通りだけど、音の使い方も特徴的。画面に映っている人物とは別人の声や映像とは無関係の背景音が頻繁に聞こえるのには感心した。
(^-^)b
それに、メジャーなスタジオ制作ではないし、予算もそこそこなのに街のスケール感が大きいのも立派。
「シティー・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」で力量を見せたメイレレス監督の才能が開花したと言える。
\(^o^)/
通行料の多い交差点で突然一人の男が見えなくなってしまうオープニングは衝撃的。
そして感染が始まる。
事態と原因を突き止められない政府がとるのは隔離。
感染を恐れて遠巻きに警備する軍は必要以上に厳しい。。
精神病棟で感染者たちが地獄の生活を続けるころ、外の世界でも感染が拡大。
人類社会が瞬く間に崩壊していく様子を、感染者たちが縮図として繰り広げる。
比較的初期の食事のシーンで、飲み物の匂いを嗅いで顔をしかめる木村さんのカットが象徴するように、食事や排泄もままならない。
(>_<)
文化・文明的な生活を送ることを人間らしいと呼ぶとすると、そのらしさを支えているのが「目が見えること」だけだという事実に慄然とする。
単に視力を失うだけで、個人・集団・種としての人間らしさを失ってしまうなんて、今の人間社会はなんと脆いことか。
それをメイレレス監督は気負い過ぎず淡々とも言える映像で綴っていく。
もちろん人間らしさを失って逆に、より人間らしいとも言えるエゴが噴出すのは予想通り。
でも、暴力描写は普通でも食料に関する脅しが意味するものはかなり凶悪だ。
「目が見えない」ただそれだけで人間でなくなっていく恐ろしさ。そして雨が象徴するのは水の大切さ、ではなく触覚が代表する世界だ。
そして自力での水浴び・入浴=人間らしさの再生に繋がっていく。
人間が視力を失うことによるパニック描写に加えて、人間「らしさ」の崩壊と再生を、安易な残酷描写に頼らずに見事に描き出した傑作映画だと思った。
ジュリアンさん演じる眼科医の妻は主演だけど主役じゃない。この映画では観客と同一視点を持つ語り部だ。言うなれば裏方。
主役はあくまで感染者たち。
イヤでも地獄の光景を見、聞き、体験せざるを得ない大変損な役回りだ。
一見彼女が主役っぽいので感情移入しようとしてしまいがちだけど、それは多分失敗してしまう。観客とほぼ同一視点の語り部なんだから、本作を観ている自分自身に感情移入しようとするのと同じことで、したくても出来なくてイライラするのは当たり前だ。
その語り部が物語りに積極的に関与するのはたった1箇所。
神の代わりに罰を与える宗教めいたことなら、そこだけは良く分からない。
蛇足だがスーパーのシーンは、精神病棟のシーンの間に街でどんなことが起きていたのかを、説明代わりに描写しただけだと思う。
難点は2つ。
(´ε`)v
最初に失明するのはもう少し年上の印象があったから少々違和感があったけど、それは始めだけ。日本人は2人とも好演している。
逆にミスキャストなのは大柄なグローヴァーさんだけだ。理性的でリーダーシップを取れるだけの経験と知性があるけれど、実は肉体的には弱い方がグループへの依存度を表現できるし、街に出てからのシーンが効果的なので小柄な役者さんが良いと思った。
それと、音楽が邪魔。背景音の一つにしてしまえば、皆でラジオの音楽に聴き入る素晴らしいシーンと逆の意味で効果的だったかも。
あとどうしようもないことなんだけど、教会での目隠しが象徴する宗教上衝撃的なシーンは、大部分の日本人には意味を成さないだろう。
(´ε`)
それに、原作で醸し出されている共産主義シンパシーからくる資本主義批判が、映画でも感じられるのは居心地が悪く感じた。
映画化を知り、単純なパニック・エンターテイメントにしないと一般ウケが悪いだろうと思っていたんだけど、残念ながらその危惧が的中。
/(x_x)\
単なるパニックものか単純な勧善懲悪・因果応報のヒーローものを観て楽しみたかった人や、映るもの全てに説明を求めるナンセンスな人には非常にウケが悪い本作だけど、本年度公開作品ではかなり完成度の高い映画だ。
もちろん原作の力によるところが大きいんだけど、制作スタッフ全員、特に脚本のマッケラーさんとメイレレス監督には大きな拍手を送りたい。
Jホラーがハリウッドでも人気との話を聞くけれど、それは日本向けの宣伝。あくまでもその他大勢のネタ一つに過ぎない。
日本人しか怖がれない特殊なホラーであると言える。
他国のホラーだと怖がらせてもらうだけの人でも、Jホラーだと結構な駄作でも自分で怖がって楽しんでいるのが常々不思議。
それはともかくそれ同様、設定に、物語に、展開に、映画そのものに乗っかっればかなり楽しい時間を過ごせること請け合いだ。
興味のある人はぜひ。
(`へ´)b
超オススメです。
オススメできる○:想像力の持ち主
オススメしない×:感受性が貧しい人、想像力に乏しい人、身の周り半径1mにしか興味がない人、SFが嫌いな人
余談
ギャガがまたやっちゃった。
(^_^;)
原作を読まず映画も観る前にあらすじだけで付けたキャッチコピーなんだろうけど、よりにもよって「失明」って!
本作は、失明=暗黒の世界を描いてるんじゃない。白い光以外何も見えないのと光を失うことは、結果は同じでも全く意味が違う。
それを少しでも考えないと、スタートラインにも立てない作品なのに鑑賞前からのミス・リードとは…
売る気が感じられませ~ん。
(`▽´)
余談2
真っ白で何も見えない=ありとあらゆるものが見え過ぎている、のかも知れないって哲学的なことについてはご自分で。
(o ̄▽ ̄o)
余談3
普段は、バカをメインに埋もれそうな映画のサルベーシにいそしんでいる私の感想なんかあてにならないかも知れないけれど、皆が言うほど悪くないし、それどころか非常に楽しめた人間もいるのは事実なので、ぜひご自分の目で確認して欲しいと思います。
m(_ _)m