希望の牧場
作:森 絵都
絵:吉田 尚令
岩崎書店
この絵本の文章を書かれたのは「カラフル」などで注目されている森絵都さん
本棚を見ていたら、その名前が目に飛び込んできました
その森絵都さんの言葉をそのまま転記します
「この絵本は、福島原発の警戒区域内に取り残された「希望の牧場・ふくしまのことをもとにつくられた絵本です。「希望の牧場・ふくしま」では、餌不足の問題が深刻化していくなか、今も牛たちを生かすための取り組みが続いています。東日本大震災のあと発生した原発事故によって「立ち入り禁止区域」になった牧場にとどまり、そこに取り残された牛たちを、何が何でも守りつづけようと決めた、牛飼いのすがたを描き出します。
闘いつづける「希望の牧場」のすがたを、「悲しみ」ではなく「強さ」をこめて絵本に残せたらと考えました。」
―森 絵都
希望の牧場・ふくしまとは?
福島第一原発から約14キロしか離れていない警戒区域に指定されている福島県双葉郡浪江町にある実在の牧場です
この土地は、今の牧場主のお父さまが開拓し、330頭の和牛の繁殖・肥育を一貫して行っていました
原発事故発生以降は、約440頭の保護した被ばく牛を殺処分せず、飼育しています
原発事故の前、警戒区域内では牛約3500頭、豚約3万頭、鶏約44万羽が飼育されていました
ところが事故後は、鶏はほぼ全滅、牛や豚は過半数が餓死、生き残った家畜は国の指示で地元自治体が殺処分を進めています
2012年6月時点で、豚や鶏はほぼ殺処分が終了し、牛については約20軒の農家が、売り物にはならない被ばく牛、約700頭の飼育を続けています
これは報告書を読んでまとめたものですが、本当はこんな一言で言えるようなものではないのです
報告書は、この後、目を耳を塞ぎたくなるような、胸を大きな槌ひと突きで潰されるような悲惨な現状が報告されています
ここまでを知って、売り物にならない牛にお金をかけて、手間をかけて育てることの大変さは想像に難くありません
しかし、問題はそれだけに留まらず、被災者同士のいがみ合いと言った更に辛い精神的な問題があったのです
「(エサが十分ではなかったため)希望の牧場の牛たちが周囲の民家を荒らしていた。 一軒の農家に五十頭くらいの希望 の牧場の牛が殺到し, ビニールハウスを破って乾草を食べていた」
「一時帰宅をしたら、自宅の灯篭や農機具を倒されたり、糞尿がいたるところに落ちていた」
と言った県や自治体への苦情もありました
また、近所の農家から 「おれたちは家畜を見捨てたわけじゃない。 近所迷惑になるからと、涙ながらにつないだまま避難したんだ。 それをおまえたちは、まわりの迷惑も考えずに 牛を放して、いまでも生かし続けているとは何事だ。 弁償しろ」 と厳しい口調で言わ れたこともあったそうです
吉沢さんという主人公とその仲間たちは、こうした被災者た ちともきっちりと向い合い、対処していくために、2012年に牧場の敷地をすべて電気柵で囲い込みました
費用はすべて自腹でしたし、被ばくをしながら長時間にわたって作業することにも覚悟しなければなりませんでした
......囲い込んだ以上は、ちゃんとエサを与えなくては死んでしまう。 ......
ところが、肝心のエサの量が、頭数に対して十分ではない.....
≪希望の牧場≫の牛舎の裏側には、牛たちの墓場があります
ここには“いのち”を落と した百頭以上の牛が山のように積まれているのです
誰の選択が正しくて、誰の選択が間違っているのか
立場が違えば答えは変わってくると思います
でも、どういう選択肢があるのか、は知るべきだし、一度は相手の立場に立って考えてみること、その上で譲歩し合えるところはないのか、を考えたいと思います
その意見はたとえ少数であっても軽んじられることなく、大多数の意見と同様、丁寧に真摯に受け止められるべきだと思います
一度、ぜひ、希望の牧場の皆さんの声に耳を傾けてみてください
#絵本 #希望の牧場 #福島第一原発事故 #牛