かぎりなくやさしい花々(星野富弘)私の首のように茎が簡単に折れてしまった しかし菜の花は そこから芽を出し 花を咲かせた 私もこの花と 同じ水を 飲んでいる 同じ光を 受けている 強い茎になろう なのはな(1975) 作者の星野富弘さんは、横向きになったまま口にペンをくわえて、詩を書いたり花を描いている。 中学校の体育教諭だった星野さんは、1970年6月17日、部活動の模範演技で空中回転をした際、あやまって頭部から落下し、肩から下がすべて麻痺状態となった。それから2年後、あることがキッカケでペンを握る(くわえること)となった。9年間の闘病生活を送り、現在は群馬県赤城山の故郷で自宅療養中のかたわら、作品の創作を続けている。多くの人の支持の元で創立された星野富弘美術館も開館以来、大変な盛況である。 「かぎりなくやさしい花々」は、星野さんが、退院後にその道程を振り返り、静かに生命の素晴らしさを語った、感動的な手記だ。彼の創作作品を観ていると、日常の中で忘れられがちな「大切な何か」に気づかされる。それは普段見慣れているものであり、また最も大切なものだと思う。心に染み入る素朴な言葉と、永遠に枯れることのない花々の画。手にとるたびに心が洗われ、目にするたびに癒される。 星野富弘さん、大切なメッセージをありがとうございます。これからも多くの人々の心を静かに鼓舞してください。 いつだったか きみたちが 空をとんで行くのを 見たよ 風に吹かれて ただ一つのものを持って 旅する姿が うれしくてならなかったよ 人間だって どうしても必要なものは ただ一つ 私も余分なものを捨てれば 空がとべるような気がしたよ たんぽぽ(1980) |