ジョナサンズ・ウェイク

2011/12/15(木)13:49

饅頭怖い、道具屋(要約)

作品集(9)

夏に依頼を受けていた中1向けの「古典落語」の選定と要約。ようやく完成。二編選んだ。 600字以内で、落語の面白さを伝えるのは難しい。セリフの面白みを、そのまま活かすようにした。 以下、要約。 「饅頭怖い」 だらしがない話だが、人間なら必ず苦手なものはあるということで皆に聞いていくと、クモ、アリ、トカゲ、なめくじなど、出てくる出てくる。しかし、その中でひとりニヤニヤして何も言わないのが松公だ。 「おい、松の字(※1) 。ニヤニヤしてるけどお前も何か怖いものがあるんだろ」 「ふん、俺にはそんなもんねえな」 威勢のいい松っつぁん。しかし、ふとしたことで怖いものが頭に浮かんだのか、急に様子がおかしくなり、帰ると言い出した。すかさず皆で問いつめると、なんと饅頭が怖いという……。 「松っつぁん、大丈夫かい。気付け薬を買って来たよ。枕もとに置いておくからな」 「ああ、すまねえ。薬ィ飲んで落ち着くかな…。うわっ、なんだこりゃ、饅頭じゃねえか。ひでぇことするな…。あぁ、こりゃこしあんだ。あわわ、こっちはつぶあんだ。これは食い出があるぞ。うーん、この栗饅頭はとくに怖い…、ムニャムニャ」 「やられた! 饅頭をタダで食わせちゃった。オイ、食うのをやめろ! この野郎、本当はいったい何が怖いんだ」 「ここらで渋いお茶が一杯怖い」 ※註1 名前の最初の一文字に「~の字」をつけて呼ぶ、江戸っ子言葉の一種。 ____________________ 「道具屋」 「いい大人になっても定職につかない与太郎。心配する叔父さんが、露天の道具屋(※2)をやらせようと荷物を持たせる。 しかし、首がすぐ抜けるお雛様とか、本物の短刀そっくりの木刀とか、俗に「クズ」と呼ばれている代物ばかり。 「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。できたての道具屋。ホカホカの道具屋だよ!」 「おい、そこにある『のこ』を見せな」 「へ? のこ? のこにあります?」 「くだらねえシャレを言うな。のこぎりだよ。むむ…。こりゃ少し甘いな」 「えーっ? 甘い? ちょっと貸してください。うわっ、こりゃ渋いよ!」 「バカ、味じゃないよ。刃の焼きが甘いんだよ」 「あ、焼きのことですか。それなら甘くありませんよ。叔父さんが火事場で拾ったんだから」 「ひどいもん売るな、バカ!」 怒って帰る客。次の客は短刀を見せろといって抜きにかかるが、なかなか抜けない。 「うーん、よいしょ、なかなか抜けんな」 「うーん、こらしょ、そりゃ木刀ですから」 「早く言わんか、この大バカもの! ちゃんと抜けるやつはないのか」 「へぇ、お雛様の首が抜けます」 ※註2 古物商のこと。上は高級な骨董品を扱う大店から、下は露天で商っているうさん臭い店まで、さまざまな形態があった。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る