あさのあつこ著「バッテリー(3)」
そういえばここ半年ばかり10代が主人公の小説を多く読んでいるような気がします。先日たまたま、あさのあつこさんのインタビュー記事を目にしました。その中で、この作品生まれた背景として「10代に思いを残しているから」というような表現をされていました。ああ、私もそうかもしれないと思いました。昨年の夏、書店店頭でなんとなく惹かれて出会った「バッテリー」。恥ずかしながらそれまで「あさのあつこ」といえば女優さんしか知らなかった私です。野球が大好きな少年たちの話です。「バッテリー」は小学校を卒業して、中学入学前の春休み。ピッチャー・巧とキャッチャー・豪の出会い。「バッテリー(2)」は中学入学後、野球部入部と、先輩たちとの関係が描かれていました。そして、この「バッテリー(3)」では、先輩たちだけでなく学校の大人たちとの視点の違いが描かれています。自分の気持ちのままに生きることはどんなに難しいことだろう。自分の気持ちが何より大事で、周りから見れば生意気な巧にも、だんだん仲間たちのことが見えるようになってきます。こうして、とんがって傷つけあいながら、ゆっくり自分を成長させていく巧をみていると、自分は周囲の期待にこたえるべく自分を曲げてきたのではないか、迎合してきたのではないかと悲しくなってきます。そしてこれが「10代に思いを残している」ということなのかなあと。10代の娘にこの感想を伝えても???という顔をしていました。一生懸命真剣に生きている彼らの姿はそれぞれの年代の心に沁みると思います。単行本では、このほど(6)で完結したそうです。文庫版はやっと(3)が出たところ。単行本で一気に読んでしまいたい気もするのですが、すこし間をおいて、じっくり巧と豪の青春を味わっていこうと思います。「バッテリー2」のリンクしか探せなかったのでここから入って探してください。