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ちょっと本を作っています

ちょっと本を作っています

第七話 退職、そして創業

第七話 退職、そして創業




「チューンナップ」と名付けてしまった

「スキーの修理と調整」

「スキーの点検と整備」

このころまでのスキー用具の本の名前です。

何かダサいのです。

三浦敬三さんたちには申し訳ないのですが、そのように感じていました。


「海外でどのように呼んでいるか調べて下さい」

ところがこれもピンと来ません。

「スキー・スープアップ」でした。

「オレ、決めたよ。チューンナップ・スキーで行こう」

英語に弱い私ならではの命名です。

イメージだけで決めちゃいました。


私の勤めていた出版社でモーターレース雑誌も出していました。

クルマの雑誌にチューンナップの文字があったのを持ってきただけです。

「おかしいよ、それ。クルマは法規制があるから「調整」なんだよ」

「スキーは性能向上だから、やっぱりスープアップだよ」

「いいから、いいから。オレ、決めたんだもん。チューンナップ・スキー」



本場ヨーロッパまで「チューンナップ・スキー」と呼ぶようになった

この本は売れました。

定価も高く付けたのに次々重版です。

同時に「チューンナップ」という言葉が広がっていきました。

スキー用品店にも「チューンナップ引き受けます」の看板が立ち並びました。


杉山進さんに、せめて「スキーチューンナップ」にすべきだと指摘されました。

それでも、「いえ、チューンナップのほうを強調しましょうよ」と押し切りました。

他の人には「本場ではチューンナップって言うんだよ」とウソの報告です。


このころ、世界のスキー市場の中での日本の購買量は群を抜いていました。

今度は言葉が一人歩きです。

海外でもチューンナップと呼ぶようになりました。

元々は楽器の音を合わせるという意味だと後で聞きました。


独立して出版社を起こした後の資金稼ぎが、スキー雑誌の編集請負です。

チューンナップの特集や別冊を次々と作りました。

まあそれは後の話です。

今では「スキーの点検と整備」なんていう人はいません。



さらば昔の仲間たち

そこでまた、昨日も書いた印税の支払い問題です。

スキーの本が次々とまとまるに連れ、またもや会社と著者の板ばさみです。

それも今度は著者といつも一緒なのです。

スキー場じゃ逃げられません。


ちょうどそのような時のことです。

「今晩ヒマか? ちょっと一杯どう?」

ある会社役員が声をかけてきました。

「○クン、今度○さん(会社役員)が辞めることは聞いているよね」

「欠員ができるんだよ。キミを役員に推薦したいんだけど、いいよね」

「良くないですよ。オレ、いやですからね、役員なんて。冗談じゃない」


理由は二つです。

一つは著者との板ばさみです。

解決出来ないくらい印税の未払いが溜まっていました。

それに私は元とはいえ労働組合の委員長です。

やはりスッキリしません。


この話、女房にはナイショにしました。

言えば、給料が上がるってだけで、引き受けろって言われてしまいます。

その代わりに、「そろそろ会社を辞めるよ」と言いました。



退職、そして創業

私を「役員に」って言ってきた役員は真っ青です。

そりゃそうですね。

その翌日に辞表が出されたのですから。

「いやー、そのこととは関係ないですよ。前から考えていたんです」

一応はそのように言っておきました。

その役員も、自分の立場があるので、私との話は黙っていました。


学生時代に入社して、17年間勤めた会社を飛び出したのです。

とにもかくにも、出版社を一つ立ち上げました。

急ぐ必要があったのです。

今まで出版点数だけは毎月多かったので、フリーの人を使っていました。

女性が多かったのですが、彼女たちの仕事もなくなります。


事務所を借りて、以前働いていた会社の机や椅子を借りてきました。

前の会社の役員さんたちは最大限の便宜を図ってくれました。

出版取次の口座も必要です。

前の会社の専務が同行してくれました。



出版取次に口座を開設

社歴100年の老舗の出版社の専務で営業本部長です。

その人物が「ぜひ彼のために口座を開設してやってくれ」と頭を下げるのです。

出版取次も軽々には扱えません。

それでも話はなかなか進みません。


「実績が……」

「キミね。彼の実績は、ボクの会社の本を見ればハッキリしているだろう」

「いえ、出版社としての実績が……」

「おかしいんじゃない。キミね、新しい会社に過去の実績があるわけないだろう」

「でも、実績が……」


押し問答の末に口座開設は先延ばしです。

そこで一計を案じました。

例によって超ウルトラCです。

新しい会社の実績を作ってしまったのです。



第八話 行け行けドンドンの始まり


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