懐かしい指揮者~ドラティ
青春時代によく聴いた指揮者の音楽は、幾つになっても聴く度に懐かしさが甦ってきます。皆さまにもそんな指揮者がひとりやふたりはいると思います。私にとっては学生時代によく聴いていたFM放送をテープに録音していた音楽がとても懐かしいです。そんな音楽の代表格がアンタル・ドラティでした。チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」、シベリウス交響詩「伝説」、メンデルスゾーン「スコットランド交響曲」。これらが長い間私の愛聴曲でした。それこそテープが擦り切れるほど聴いたものです。(全てロンドン交響楽団)ドラティはハンガリーで生まれ、バルトークの下で作曲と指揮を学んだのち、1940年にアメリカに移住してダラス交響楽団、ミネアポリス交響楽団などの指揮者を勤めてきました。LP初期から、マーキュリーレコードで多くの録音をしています。輸入盤のマーキュリーはともかく、国内盤では、フィリップスの廉価盤「フォンタナ」レーベルでロンドン交響楽団との演奏が多く発売されていました。彼の音楽の特徴として、一種さめた客観的でドライな響きがあります。このように抒情に流されない無骨な表現は一見無愛想に聴こえますが聴けば聴くほど味が出てくるのです。そして、何よりも彼のリズム感の良さは音楽に生命感を与え、永遠の若ささえ感じます。ハンガリー出身の指揮者ライナー、セル、ショルティ、オーマンディなどに共通するのはそのリズム感の良さと抒情に流されないドライな感覚でしょうか。ドラティの最高傑作は史上初のハイドンの交響曲全集の完成でしょう。ハンガリーの亡命者たちが集まって出来たフィルハーモニア・フンガリカとの共演はハイドンの交響曲録音の最高傑作でしょう。未だにこれ以上の演奏はないと信じています。また、晩年に録音したストラヴィンスキーの春の祭典などは、高齢にもかかわらず生命感にあふれた鮮やかな演奏も珍しいものでした。録音も飛び切りよく春の祭典の代表作と言えるほどの名演奏だと思います。私は、先に書きましたチャイコフスキー第1番、シベリウス伝説、などのCDを昨年発見してテープやレコードのように音の劣化を気にせずに聴いています。聴く度にドラティの素晴らしさが実感されとても充足した気分に浸っています。今はハイドンの交響曲第93番を聴きながらこれを書いています。ほんとうに気分がすっきりする演奏ですね。ハイドン:交響曲全集★大砲、鐘の音のすごさ、驚異の録音です!1812年~チャイコフスキー:管弦楽曲集ドラティ/ストラヴィンスキー:春の祭典シベリウス:管弦楽曲集~波の娘&伝説(古譚)《北欧の抒情シリーズ》