電車の中、
知らないもの同士が居合わせる、
異質な空間。
そこに、やつはいた。
人は、どこまで大胆になれるのだろう。
例えば、水着になったグラビアアイドル。
例えば、素肌をさらした杉田かおる。
例えば、メガネを外したタモリ。
人は、どこまでさらけだせるんだろう。
人は、どんな時に正義を訴えるんだろう。
例えば、券売機に残されたパスネット。
例えば、前行く人が落とした財布。
例えば、証券取引法に違反した○リえもん。
人は、いつ正義感を燃やせるんだろう。
中央線に揺られて東京駅に向かうその道中、
わたしはやつに会った。
やつを見た瞬間、背中を何かが駆け抜けるのを感じた。
この感じはなんだろう。
このキモチはなんだろう。
中央線の車両の座席は7人がけ。
大人のオトコが座ると、非常に狭い。
しかし、それでも7人がけ。
少しでも多くのお客様にお座りいただけるように座席は譲り合うべきだ。
少々ムリしてでも、
7人で座るべきだ。
そこに、わたしは自分の正義を振りかざす。
「ちょっとおじさん、足閉じてよ」
「ちょっとおばさん、鞄はヒザの上」
「ちょっとガキンチョ、ちょこまか動かない」
それが、わたしの正義。
それが、わたしの道徳。
しかし、わたしの正義は見事に散った。
わたしの正義は、やつに負けた。
わたしの正義は、
やつの大胆さの前に手も足も出なかった。
大胆さが正義に勝った瞬間。
人間の正義は、
それを超える大胆な振る舞いの前では、
とたんに感動へとかわりゆく。
感嘆の溜め息。
中央線の7人がけの座席で、
うつぶせに寝転がり右手をダラリと床にたらして、
白昼堂々まるで死んだように眠っていたやつの大胆さに、
わたしの正義は負けた。
車内は混んでいて、
7人がけの座席に7人腰掛、吊り革は満員御礼、ホームで見送る人さえいる中、
半径50センチ以上をゆったりと確保しながら熟睡するやつの後頭部に、
不本意ながら感嘆の溜め息がもれた。
人の大胆さ、人の正義感、人の常識、人の道徳。
様々な感情が飛び交う、平日午後の中央線。
やつは間違いなく、注目の真骨頂を味わえる位置にいたのである。
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