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こころのオアシス

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July 30, 2007
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テーマ:怪談十夜(19)
カテゴリ:カテゴリ未分類
  ***

こんな噺を聴いた・・・。

  ***

私が大学1年のときのこと。
 
バイトが夜の10時頃に終わり、
アパートに帰ろうと、
いつものように
バイクで一杯森の前を通った。

そこは慈照寺という
お寺とお墓があり、
鬱蒼とした木々が茂る小高い丘で、
外灯ひとつなかった。

そんな真っ暗い夜道を
ヘッドライトを頼りに走っていると、
一人のお爺さんが
ヨロヨロ、ヨロヨロと、
なにやら風呂敷包みを
もって歩いてきた。

(こんな遅く、暗い道を、
一人でどうしたんだろ・・・)
と、
私はちょっと
不思議に思った。

そして、お爺さんのすぐわきに
バイクをつけて、
「どちらまで、行かれるんですか?
よかったら、僕が乗っけて行きましょうか・・・」
と申し出てみた。

お爺さんは、
「ああ・・・。すみませんねぇ・・・。
今夜、知り合いの葬式があったもんで・・・。
これから、駅まで行くところなんですわ・・・」
と言うので、私は
「じゃ、駅までお送りしますから、
どうぞ後ろに乗って下さい・・・」
と再度申し出た。

「ああ、そうですか・・・。
それじゃ、お言葉に甘えて、
そうさせてもらいますかね。
すみませんねぇ・・・」
そう言うと、
お爺さんはバイクの後部席に
ゆっくりとまたがった。

「しっかり、つかまってて下さいね。
落ちないように・・・」
そう注意して、
私はそろりとバイクを発進させた。

ゆっくりと
バイクを走らせながら私は
「どちらから、おいでになったんですか?」
と尋ねてみた。

お爺さんは低い声で
「二本松からですわ・・・」
とゆったりした調子で応えた。

「ああ・・・。そうすると、終電ですね・・・」
「ええ・・・」
そんなやりとりの後は
しばらく無言のまま
バイクを走らせた。

5分ほどして
「どなたがお亡くなりだったんですか?」
と少々立ち入ったことを
訊いてみた。
「・・・・・・」
すると、
即答がなかった。

私は余計なことを訊いたことに
少し後悔して
「すみません。
プライベートなことをお訊きして・・・」
と詫びた。

それに対しても
何の返答もなかったので、
星を見て
「明日もお天気よさそうですね・・・」
と他愛もない話題に
振り替えた。

それでも
ウンともスンともなかった。

(葬式で疲れて、ウトウトしてるのかな・・・)
と、ふと振り返ってみると、
お爺さんの姿がない。

(ウソッ!!)
私は一瞬
キツネにでも
騙された気分になった。

そして、
(エーッ!!
ひょっとして途中、
落っことしたのか!!)
とドキリとして
バイクをUターンさせた。

しかし、行けども行けども
お爺さんの姿は見あたらなかった。

その道を3度ほど
行ったり来たりしてみたが、
その晩、とうとうお爺さんを
夜道に見つけることは出来なかった。

私は仕方なく、
後ろめたい気分を抱えながらも帰途につき、
その晩はなかなか寝付けなかった。

翌日、事故らしきニュースは
何もなかったので、
ひとまず私は安心した。

 ******

そして、次の晩だった。

また、バイトが遅くなり、
11時近くに仕事を終えて
バイクで帰ると、
真っ暗な一杯森にさしかかった。

(ああ・・・。
ゆうべ、お爺さんを
ここで乗せたんだっけ・・・)
と私は
ふと思い浮かべた。

その時だ。

トントンと
右肩をたたかれ
「ここで、おろしてくれ・・・」
という
声がした。




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Last updated  July 30, 2007 07:53:19 AM



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