怪談十六夜 『天才・枝雀のSR 1 』
若くして鬱病で自殺した 平成の天才落語家・桂 枝雀は オリジナルのショート・ラクゴ(自らはSRと呼んだ) の佳作をいくつか遺してくれた。 その中から、いくつか怪談めいた 傑作をご紹介しよう。 ************* 流れ星 「あっ! おかーちゃん、流れ星や!」 「さ、今のうちに、願いことをしましょう・・・」 「一日も早く、おとーちゃんに会えますよーに・・・」 「そんなこと、言うもんじゃありません。 お父さんには、私たちの分も、 長生きしていただかなくっちゃ・・・」 ******** 犬 「おい、そこどいてんかッ!」 「ワーッ! この犬、今もの言うた!」 「そこに立たれたら、日ぃささへんのや・・・」 「うわーっ! 犬がもの言うたーッ!」 「オトーチャンッ! さっきから、なにワンワン言うてるの?!」 ************** 万年筆/電球 「この万年筆、なんぼでもインク入るなぁ・・・。 これでインク壜3本目やで・・・」 「見てみいッ! あいつ・・・ 真っ青になってる・・・」 「おかしいなぁ・・・この電球、 切れてないのに、ちっともつかへんなぁ・・・」 「見てみいッ! あいつ・・・ ソケット持って、光ってる・・・」 *********** おでん 「おっちゃんとこのオデン美味いなぁ・・・」 「そうでっしゃろ。 ウチのは出汁が古おますからな・・・」 「そーかぁ」 「へぇ・・・。 なんなら、豊臣秀吉はんの頃のコンニャク 出してみまひょか? この長ぁ~い箸で・・・」 -------------------------------------------- 物理学科の親友が、 大学時代のギター部合宿で この『おでん』の噺は 「怖いなぁ・・・」 と言ったことがあるが 私には、いまだに その怖さが解らない。 時空を超越した 感覚的な怖さなのだろうか・・・。 --------------------------------------------