pp.514 ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990-2000年代 単行本 – 2019/8/14 伊藤 昌亮 (著)
1※いまお悩みがあれば、こちら、からどうぞ。【無料相談×診断】2※KillerCoil無料メルマガ登録はいますぐこちらへ。【キラーコイルの秘密】pp.514【ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990-2000年代 単行本 – 2019/8/14伊藤 昌亮 (著)】2000年代本が少ないなと思っていると上記書に遭遇。右派の系譜について力作。歴史教科書を作る会の西尾幹二はニーチェ研究者としてはかなり著名であったが、当時、まさかの登場であった。ヨオロッパのいまは右からの巻き返しが激しい。日本政治はまさに漫画的状況であり、小選挙区制度になってから政治家の小粒化の進行が著しい。まぁ、これはというのが皆無であり、政治偏差値は低下の一途である。政治家育成機関のようなものとして松下政経塾などが往昔はあったが、いまはない。多分、政治家になりたがる人もいまはほとんどいないのではないかとさえ思われる。いるのは小粒な政治家デマゴーグがごろごろしている感はあるけど。まぁ、当分、今後30年は日本政治は劣化の一途をたどるであろう。期待するものはないし。以下、概要。------------------------------- 保守的・愛国的な信条を背景に、その言動でしばしば他者を排撃する「ネット右派」。彼らはどのように生まれ、いかに日本社会を侵食していったのか。その真の意図とは何だったのか。前史にあたる1990年代の雑誌論壇と草創期のネット論壇、55年体制の崩壊から現政権の成立までの政治状況、マンガ・アニメや「2ちゃんねる」などの文化状況、歴史教科書問題や外国人労働者問題、日本会議・在特会・極右組織などの団体の動向――。日本社会に全面展開するネット右派の2000年代までを、嫌韓・反リベラル市民・歴史修正主義・排外主義・反マスメディアという5つのアジェンダ(論題)と、サブカル保守・バックラッシュ保守・ネオナチ極右・ビジネス保守という4つのクラスタ(担い手)からあざやかに分析する。圧巻の情報量で「ネット右派の現代史」と「平成のアンダーグラウンド」を描き出す「ネット/右翼」研究の決定版。◆書評情報◆2019年10月27日「読売新聞」朝刊 評者:森健(専修大学非常勤講師、ジャーナリスト)2019年10月12日「朝日新聞」朝刊 評者:宇野重規(東京大学教授・政治思想史)目次はじめに第1章 新保守論壇と嫌韓アジェンダ――一九九〇年代前半まで1 既成保守論壇から新保守論壇へ2 『SAPIO』の登場とその後の右傾化3 嫌韓アジェンダと反日アジェンダ4 『SAPIO』の反日国家スキームの変遷5 ジャパンバッシングの嵐のなかから6 日本版反ユダヤ主義と陰謀論7 「日韓論争」の展開8 反日嫌韓スキームの成立9 『醜い韓国人』をめぐる動き10 歴史認識をめぐる神学論争11 リベラル派対保守派の代理戦争12 嫌韓アジェンダをめぐるいくつかの通説第2章 サブカル保守クラスタと反リベラル市民アジェンダ――一九九〇年代半ばまで1 リベラル市民主義の盛り上がり2 日本型市民社会論と戦後民主主義3 市民主義への自己批判という問題意識4 ユーフォリアのなかのリベラル市民主義ブーム5 小林よしのりによる市民運動批判6 市民主義批判から戦後民主主義批判へ7 リベラル市民主義の擁護者としての『朝日新聞』8 大月隆寛による市民主義批判9 サブカル保守クラスタの形成10 「市民」対「庶民」の階級対立11 サブカル保守クラスタとオタク文化との親和性12 戦後民主主義と戦闘サブカルチャー13 「上から目線」へのアンチテーゼとして第3章 バックラッシュ保守クラスタと歴史修正主義アジェンダ――一九九〇年代後半まで1 東京裁判史観と歴史教科書問題2 バックラッシュ保守クラスタの台頭3 自由主義史観研究会から「つくる会」へ4 サブカル保守クラスタからの流れ5 権威主義と反権威主義との野合6 戦前エスタブリッシュメントと戦後エスタブリッシュメント7 右からの引力と左からの斥力8 ホロコースト否定論と日本型歴史修正主義9 サブカル保守クラスタと歴史修正主義アジェンダとの親和性10 善悪二元論批判と歴史的物語観11 三つのアジェンダの統合と新保守論壇の完成第4章 ネット右派論壇と保守系・右翼系の二つのセクター――一九九〇年代後半まで1 ネット右派論壇の形成2 密教を真に受けた人々3 掲示板文化とメーリングリスト文化4 ネット右派論壇を構成するサイト5 新保守論壇の流れを汲む保守系セクター6 右翼・民族派の流れを汲む右翼系セクター7 保守と右翼との位置付けをめぐって8 右翼・民族派をめぐる当時の状況9 日本ちゃちゃちゃ倶楽部(日本茶掲示板)――保守系セクターを代表する存在10 鐵扇會――既成右翼系クラスタを代表する存在11 右翼共和派――新右翼系クラスタを代表する存在第5章 ネオナチ極右クラスタと排外主義アジェンダ――二〇〇〇年前後まで1 ヨーロッパ極右の流れを汲むネオナチ極右クラスタ2 外国人労働者問題と外国人犯罪問題3 ヨーロッパ極右をめぐる当時の状況4 瀬戸弘幸と世界戦略研究所5 篠原節と民族思想研究会6 農本主義とエコロジー7 「血と土」のイデオロギー8 民族主義とディープエコロジー9 反ユダヤ主義から外国人労働者排斥へ10 山田一成と国家社会主義日本労働者党11 ネオナチ極右クラスタの形成12 ナチサブカルチャーへの強い志向13 「三国人発言」と外国人参政権問題14 日本茶掲示板と民団掲示板との論戦15 嫌韓アジェンダと排外主義アジェンダとの結合16 ネット右派論壇内部のカルチュラルポリティクス17 サブカル保守クラスタとナチサブカルチャーとの親和性18 民族主義の構造転換19 差別主義への志向とカルト宗教20 ナショナリズム・ナチュラリズム・スピリチュアリズム第6章 2ちゃんねる文化と反マスメディアアジェンダ――二〇〇〇年代前半まで1 ネット常民としての2ちゃんねらー2 「ニホンちゃん」と観客民主主義3 2ちゃんねる初の大規模な炎上騒ぎ4 屈折した反権威主義の精神5 プロ市民概念の発明6 「悪い子」的キャラクターと「ダメな子」的キャラクター7 ネトウヨ底辺説をめぐる誤解8 反リベラル市民から反マスメディアへ9 マスメディアのインチキを暴く10 女性国際戦犯法廷とNHKの番組改変11 朝日新聞叩きの系譜12 明示的な偏向批判と暗黙的な特権批判13 アングラネット論壇での朝日新聞不買運動14 フジテレビ叩きに至る経緯15 日韓共催ワールドカップサッカーをめぐって16 韓流ゴリ押し姿勢をめぐる誤解17 親殺しとしてのフジテレビ叩き18 新旧メディアの階級対立19 反日マスコミ批判の動き第7章 ネット右派の顕在化――二〇〇〇年代後半まで1 反知性主義の構造転換2 エンジョイコリアでの日韓論争3 ネイバー総督府とバファリン作戦4 反知性主義対主知主義という構図5 専門知対集合知という構図6 集団思考と決断主義7 嫌韓厨から嫌韓流へ8 桜井誠と嫌韓コミュニティ9 『マンガ嫌韓流』以降の嫌韓本ブーム10 『WiLL』の創刊と「大人目線」の右傾化路線11 チャンネル桜の開局と右翼・民族派への眼差し12 動画共有サイトの普及とチャンネル桜による啓蒙13 バックラッシュ保守クラスタの再興とその背景14 権威主義と反権威主義との結び付き15 決断主義とポピュリズム16 シンボルとしての田母神俊雄17 在日特権という発想18 瀬戸弘幸のその後と西村修平19 「行動する保守」の成立第8章 ネット右派の広がりとビジネス保守クラスタ――二〇一〇年前後まで1 ビジネス保守クラスタの形成2 三橋貴明とビジネス保守クラスタの思想3 日本青年会議所(JC)の右傾化4 ビジネス保守クラスタのリアルな支え手5 リベラル市民主義への復讐6 ネット右派論壇のバージョンアップ7 その後のネット右派の成熟と停滞8 響きと怒り、そして語り9 大衆の原像と幻像あとがき人名索引 ---------------------------https://10mtv.jp/pc/column/article.php?column_article_id=2645 2000年代の日本とは、いったいどういう時代だったのでしょうか。今回は、記録や記憶に残る出来事や流行となった人物やフレーズなどを手がかりに、2000年代を振り返ってみたいと思います。2000年代前半を振り返る 20世紀最後の年、1000年期の節目としての「ミレニアム」とも称された2000年。コンピュータの2000年問題を最小限の影響で新年を迎えることができたと同時に、「IT革命」が本格化されました。盛り上がりをみせたシドニーオリンピック関連では、マラソン金メダリスト高橋尚子氏の愛称「Qちゃん」、水泳銀メダリスト田島寧子氏の「めっちゃ悔し~い」、柔道金メダリスト田村亮子氏の「最高で金 最低でも金」などが多数の流行語も誕生。また、SMAPの香取慎吾扮するキャラクター「慎吾ママ」の「おっはー」が若年層を中心に大流行し、「慎吾ママのおはロック」の大ヒットを記録しました。他方、「ひきこもり」や「パラサイト・シングル」が顕在化し始めた年でもあり、世田谷一家殺害事件が発生した年でもあります。 中央省庁再編がなされ、1府12省庁制がスタートした2001年。小泉純一郎内閣が発足し「小泉ブーム」が巻き起こるとともに、「米百俵」「聖域なき改革」「恐れず怯まず捉われず」「骨太の方針」「ワイドショー内閣」などの「小泉語録」が流行語となりました。敬宮愛子内親王殿下がご生誕、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのオープン、東京ディズニーシーの開園、アニメ映画「千と千尋の神隠し」の大ヒットなど明るい話題も多い一方で、大阪教育大学附属池田小学校での小学生無差別殺傷事件、明石花火大会歩道橋事故、そして9・11アメリカ同時多発テロなど、凄惨な事件や事故も多数発生しました。さらに、ドメスティック・バイオレンス、狂牛病、新しい歴史教科書などの課題も認識され始めました。 2002年は、沖縄返還30周年の年でした。また同年は、FIFAワールドカップ・日韓大共同大会が開催される一方で、小泉首相の北朝鮮訪問と初の日朝首脳会談が行われ、拉致被害者5名の日本への帰国がかないました。またノーベル賞の物理学賞を小柴昌俊東京大学名誉教授が、化学賞を田中耕一島津製作所ライフサイエンス研究所フェローが受賞され、「ダブル受賞」が「新語・流行語大賞」のトップテン入りとなりました。他方、鈴木宗男元北海道沖縄開発庁長官の汚職事件が取りざたされ「ムネオハウス」「疑惑のデパート」などが騒がれ、学習指導要領改正にともない完全学校週5日制となり、いわゆるゆとり教育の完全実施が行われるといった年でもありました。 地方分権の改革として、国からの補助金の削減・地方交付税の見直し・国から地方への税源移譲という三つの改革を同時に行うという意味の「三位一体の改革」が具体的に動き始めた2003年。六本木ヒルズがオープンする一方で、年収300万円などの格差の拡大が問題となりました。政治は自由民主党議席を減らし、民主党が躍進。イラク戦争開戦が開戦し、イラクで日本人外交官射殺事件が発生。また、最初の新型コロナウイルス・SARSが流行した年でもあります。SMAPのシングル「世界に一つだけの花」が257万枚の大ヒットを記録。そして、お笑い芸人テツandトモ「なんでだろう~」や、通常は「政権公約」と訳される「マニフェスト」が「新語・流行語大賞」の大賞を受賞しました。そして、阪神タイガースが18年ぶりセ・リーグの優勝決め、今年の漢字も「虎」となりました。 自己責任論が叫ばれ、ニート問題が顕在化してきた2004年。韓国の人気ドラマ「冬のソナタ」をきっかけに主婦層で韓流ブームが起こり、ペ・ヨンジュン氏演じる「ヨン様」が大人気となる一方、コラムニスト酒井順子氏が『負け犬の遠吠え』で未婚・子ナシ・30代以上を「負け犬」と定義し流行語となり、作家片山恭一氏『世界の中心で愛をさけぶ』メディアミックスで大ヒットし、「セカチュー」ブームが起こりました。そして、アテネで開催されたオリンピック・アテネパラリンピックでは日本選手が大活躍。特に、平泳ぎで金メダルを獲得した北島康介選手の「チョー気持ちいい」が話題となりました。また、千円札・野口英世、五千円札・樋口一葉、一万円札・新デザインの福澤諭吉の新札が発行されました。しかしながら、日本では新潟県中越地震が、世界単位ではスマトラ島沖地震が発生するなど、「災」の目立つ年でもありました。2000年代後半を振り返る 京都議定書が発効され、「愛・地球博」が開催された2005年。クール・ビズが推進され、「もったいない」が推奨されるなど、地球規模の環境問題が話題となりました。また政治では、「郵政民営化」「小泉劇場」などの小泉首相演出の政策や政治手法が話題を集めました。他方、野口聡一宇宙飛行士がスペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙へ行き、プロゴルファーの宮里藍氏が17年日本女子オープンゴルフ選手権競技で公式戦初優勝に輝くなど、大きな話題となりました。しかしながら、日本ではJR福知山線脱線事故が、世界単位ではロンドン地下鉄と路線バスを標的とした同時爆破テロが、バリ島でも爆弾テロ事件が発生するといった、悲劇も引き起こされました。 ライブドア事件や村上ファンド事件が勃発する一方で、格差社会、ワーキング・プアが露呈し、自殺予防元年が提唱された2006年。トリノオリンピック開催され、フィギュアスケートで日本人初の金メダリストとなった荒川静香氏の「イナバウアー」が「新語・流行語大賞」の大賞となり、同じくスポーツ界では夏の甲子園で早稲田実業を優勝に導いた斎藤佑樹投手が「ハンカチ王子」と呼ばれ注目を集め、以降「○○王子」という言葉が流行るようになりました。また「○○の品格」の元祖ともいえる、数学者・藤原正彦著『国家の品格』がベストセラーに。そして、秋篠宮家に悠仁親王殿下がご生誕されました。 食品偽装、ネットカフェ難民、消えた年金、安倍内閣総辞職、モンスターペアレンツなど、不穏な言葉が流行した2007年。特に食品偽装は老舗や大手などさまざまな食品関係会社で発覚し、「今年の漢字」も「偽」が選ばれました。一方、宮崎県知事の出直し選挙で元タレントの東国原英夫氏が当選し、「(宮崎を)どげんかせんといかん」が流行語に。また、石川遼氏がゴルフのメジャー大会で世界最年少優勝を果たし、「ハニカミ王子」として人気となりました。東京ミッドタウンが開業したのもこの年です。他方、能登半島地震・新潟県中越沖地震が発生しました。 世界中がリーマン・ショックの打撃を受け、日本も大きな影響を被った2008年。中国製ギョーザによる中毒が相次いで発生し、大きな社会問題となります。また、秋葉原無差別殺傷事件が発生して列島を震撼させました。大阪府知事選で橋下徹が当選し、後期高齢者医療制度スタート。アップルのiPhoneが日本でも発売され大人気となり、北京オリンピックが開幕し、麻生太郎内閣が発足しました。慶事としては、南部陽一郎シカゴ大学名誉教授(アメリカ国籍)、小林誠高エネルギー加速機構名誉教授、益川敏英京都産業大学教授がノーベル物理学賞を受賞し、下村脩ボストン大学名誉教授がノーベル化学賞を受賞。また、バラク・オバマ氏が黒人初のアメリカ合衆国大統領となりました。 2009年は、第45回衆議院議員総選挙において民主党が単独過半数を得て、戦後初めて政権交代を実現し、事業仕分けなど積極的に行いました。「今年の漢字」に選ばれたさまざまな新しいことを期待した「新」にふさわしく、メジャーリーグ・マリナーズ所属のイチロー選手の新記録など喜ばしいこともあれば、残念ながら新型インフルエンザの流行など招かざる新も流行しました。派遣切り、裁判員裁判、普天間飛行場移設問題など、2020年代にも引き継がれたままの大きな課題があらためて顕在化したのもこの年です。一方で、テレビアニメ「けいおん!」がヒットしたほか、村上春樹の小説『1Q84』ベストセラーとなり、アカデミー賞で「おくりびと」が日本映画では54年ぶりとなるアカデミー外国語映画賞を受賞しました。 いかがでしたでしょうか。夢中になった出来事、すでになつかしいフレーズ、今では大切になっている思い出などありましたでしょうか。こうして流行のトピックスとともに駆け足で振り返ってみると、2000年代とは、パラダイムシフトの調節を始めた年代であったように思えます。アナログとデジタル、ローカルとグローバル、個人と世界、利益とリスク、安全とコストなど、ますます今日的な課題とされる問題が、関係性の中に顕在化してきた時代であったように見えてきます。<参考文献・参考サイト>・『誰でも読める 日本史年表』(吉川弘文館編集部編、吉川弘文館)・2000年代の日本 - Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/2000%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC・「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞https://www.jiyu.co.jp/singo/・「新語・流行語大賞全記録」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)・「ことばでたどる平成」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)・「今年の漢字」一覧 | 事業・活動情報 | 公益財団法人 日本漢字能力検定協会https://www.kanken.or.jp/project/edification/years_kanji/history.html--------------------------------https://www.jstage.jst.go.jp/article/ksr/20/0/20_43/_article/-char/ja/特集 2010年代の政治と権力―何が破壊され、何が生まれたのか?2010年代の政治をめぐる言説空間―イデオロギー変容と政治コミュニケーション―倉橋 耕平著者情報キーワード: 言説政治, 政治コミュニケーション, イデオロギー, 右派, ポピュリズム ジャーナル フリー2021 年 20 巻 p. 43-51DOI https://doi.org/10.20791/ksr.20.0_43 抄録2010年代の政治研究の1つの特徴は右派ポピュリズムへの注目である。2010年代の政治において「何が破壊され、何が生まれたのか?」。本稿は、まず日本社会のイデオロギー変容を調査研究から確認し、その後で2010年代の政治コミュニケーションの特徴を検討する。90年代以降有権者のイデオロギー理解に保守-革新の差異が目立たなくなった。その結果、反エスタブリッシュメントのポピュリズム政党が登場することとなった。その象徴的な出来事の1つが、40代以下の世代では「日本維新の会」が最も「革新」であると調査に回答していることである。これはアカデミズムが定義する「革新」と一般社会の理解が異なることを意味している。この状況は「私たち/彼ら」の線を作り出すことを主流な方法とする(右派)ポピュリズムと非常に親和的である。実際、(ネット)右翼の用いる言葉は、しばしば「私たち」研究者が用いる意味とは異なり、特定の言葉の持つ従来の意味や歴史、文脈を無視して用いられている。しかし、「彼ら」は特定の言葉の使い方を共有する人たちとともに意味の節合と脱節合を繰り返し、党派(=新しい政治主体)を作り上げる。その結果、両党派の間の対話は著しく困難となり、「トライバリズム」が深まることになった。最終的に本稿では、対話や議論が不可能になり、党派や敵対性が重視されるとき、権力が前景化すると論じた。引用文献 (26) 遠藤晶久・ウィリー・ジョウ,2019,『イデオロギーと日本政治―世代で異なる「保守」と「革新」』新泉社. Del Vicario, M., Bessi, A., Zollo, F., Petroni, F., Scala, A., Caldarelli, G., Stanley, H. E. and W. Quattrociocchi, 2016, The spreading of misinformation online, Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(3), 554–9. Hall, S., 1982, “The Rediscovery of Ideology: Return of the Repressed in Media Studies,” Gurevitch, M. Bennet, J. Currna, and J. Woollacott (Eds.), Culture, Society and the Media, Methuen(藤田真文訳,2002,「『イデオロギー』の再発見」谷藤悦史・大石裕編『リーディングス政治コミュニケーション』一藝社,215–48.) 樋口直人,2014,『日本型排外主義 在特会・外国人参政権・東アジア地政学』名古屋大学出版. 秦正樹,2020,「「右でも左でもない普通の日本人」を自認する人ほど、陰謀論を信じやすかった…!研究が示す驚きの事実」現代ビジネス2020年12月3日https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77698?fbclid=IwAR3vr9MKDAo6hitLXuzuLNZfpEbJD5w4HwNnXpH46zqeb6D7Be_jreZMvD0(最終閲覧日2020/12/06) 樋口直人・永吉希久子・松谷満・倉橋耕平・ファビアン・シェーファー・山口智美,2019,『ネット右翼とは何か』青弓社. Hochschild, A., 2016, Strangers in Their Own Land: Anger and Mourning on the American Right, New York: The New Press.(布施由紀子訳,2018,『壁の向こうの住人たち』岩波書店.) Weiß, V., 2017, Die autoritäre Revolte: Die Neue Rechte und der Untergang des Abendlandes, Klett-Cotta Verlag.(長谷川晴生訳,2019,『ドイツの新右翼』新泉社.) 伊藤昌亮,2019,『ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990–2000年代』青弓社. 倉橋耕平,2018,『歴史修正主義とサブカルチャー 90年代保守言説のメディア文化』青弓社. Laclau, E., 1996, “Deconstruction, Pragmatism, Hegemony” Simon Critchley & Chantal Mouffe (eds.), Deconstruction and Pragmatism. Routledge. 47–68(青木隆嘉訳,2002,「脱構築・プラグマティズム・ヘゲモニー」『脱構築とプラグマティズム―来るべき民主主義』法政大学出版局,91–130.) Laclau, E. and C. Mouffe, 1985, Hegemony & Socialist Strategy: Towards a Radical Democratic Politics, Verso.(西永亮・千葉眞訳,2012,『民主主義の革命―ヘゲモニーとポスト・マルクス主義』ちくま学芸文庫.) 永吉希久子,2019,「ネット右翼とは誰か―ネット右翼の規定要因」樋口直人・永吉希久子・松谷満・倉橋耕平・ファビアン・シェーファー・山口智美,2019,『ネット右翼とは何か』青弓社,13–43. 中野晃一,2015,『右傾化する日本政治』岩波新書. Nichols, T., 2017, The Death of Expertise: The Campaign against Established Knowledge and Why It Matters. Oxford Univ Press.(高里ひろ訳,2019,『専門知は、もういらないのか:無知礼賛と民主主義』みすず書房) 西村幸祐,2007,「その先のネット社会は、自壊する『旧メディア』を呑み込むのか」『撃論ムック ネットvsマスコミ!大戦争の真実』オークラ出版. 小熊英二・樋口直人編,2020,『日本は「右傾化」したのか』慶應義塾大学出版. Ranciére, J., 1995, La mésentente: Politique et Philosophie, Galilée(松葉祥一・大森秀臣・藤江成夫訳,2005,『不和あるいは了解なき了解 政治の哲学は可能か』インスクリプト) 鈴木彩加,2019,『女性たちの保守運動 右傾化する日本社会のジェンダー』人文書院. 田辺俊介編,2019,『日本人は右傾化したのか データ分析で実像を読み解く』勁草書房. 辻大介,2017,「インターネット利用は人びとの排外意識を高めるのか―操作変数法を用いた因果効果の推定」『ソシオロジ』63(1): 3–20. 塚田穂高編,2017,『徹底検証 日本の右傾化』筑摩書房. Wodak, R., 2015, The Politics of Fear: What Right-wing Populist Discourses Mean, SAGE.(石部尚登・野呂香代子・神田靖子編訳『右翼ポピュリズムのディスコース』明石書店) 渡辺靖,2020,『白人ナショナリズム』中公新書. 山腰修三,2012,『コミュニケーションの政治社会学』ミネルヴァ書房. 善教将大,2018,『維新支持の分析 ポピュリズムか、有権者の合理性か』有斐閣.ダ=ヴィーン∀!!★足腰に問題のある方新メルマガいますぐご登録!!★