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カテゴリ:徒然草
私は高校まで路線バスで片道1時間、往復2時間かけて通った。
その通学時間に何をしていたのかというと『試験に出る英単語』(時代がばれますが)を見ていた。覚えていたというよりは見ていた、という方が正確である。毎日、朝夕、ページを行っては戻りを繰り返しているので、見ているだけであっても、さすがに自然と覚えてしまうものである。 なぜ、英単語集なのかというと、当時の八千代、千代川あたりの畑道は曲がりくねっているうえにデコボコの悪路続き、バスもポンコツで本格的に本を読むには揺れがひどく、単語集くらいしか時間潰しができなかったからである。 そんな中、一緒に通学していたT君は毎日厚い文庫本を読み耽っていた。「いやー、山口瞳はいいね。深い。」というようなことを言っていたのを覚えているが、当時の私は、山口瞳(やまぐち ひとみ)という人が何者なのか、男か女なのか、何歳なのか、全く知らなかったし、興味もなかった。 山口瞳(1926〜1995)は高名な作家、エッセイストで長く直木賞選考委員を務めた。現在も中学生の国語の問題に多く使われる向田邦子推しの人としても有名である。 私が山口瞳の世界にはまり、週刊新潮に長期にわたり連載されていた「男性自身」シリーズをはじめ、将棋エッセイ、競馬エッセイ、旅行記などほとんど全ての著作を読むことになるのはT君に遅れること15年以上、30代のはじめから半ばあたりである。 T君は国立大学の数学へ進んだ人である。当時の我々の年齢と作家の年齢差を考えると、現在の高校生が伊集院静の『男の流儀』シリーズを読んでいるような感じになるのだろうか。 文系・理系の選択が高3に上がるときで、あまり勉強に追い立てられなかったせいか、音楽や映画も専門誌を読見込んでいるような生徒も多く、「へー、凄いなあ。」と感心しながら、私自身は毎朝3時半に起きてはシコシコと受験勉強に勤しんでいたのである。 なんだか、とてももったいない時間の使い方をしたような気がしてならない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.11.12 16:32:46
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