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![]() 「ヒナがいるよ」 母が言った。一瞬耳を疑った。「ヒナがかえった!ヒナがかえった!」 地獄から天国に上った気分になった。すっかり落ち込んでしまっていたからだ。 と言うのも、昨日庭に出て鳩の巣をよくよく見たら、ヒナなんてどこにもいないように見えたし、親バトも目がおちくぼんですっかりやせて、死ぬ一歩手前に見えたからだ。 何とかエサをやりたくて、あんぱんをちぎって棒の先に刺して巣になるべく近い枝にひっかけてやった。あんぱんが近づくと、親バトは、バタッ、バタッと大きく羽を羽ばたかせて威嚇した。でも家の中からじーっと見ていたら、あんぱんをつついている。「良かった」と思った。 それより下から見たら、巣なんてボロボロのすけすけで、ヒナがいるようにはとても見えなかった。なのにベランダから見てみると、もうかなり大きくなった、灰色のモコモコした毛のヒナがいるではないか! 感激しすぎて、母にいかに心配していたかを話すと、「こういうもんは心配するんじゃなくて観察するもんなんだよ」と言ってゲタゲタ笑われた。 とにかくハトとの約束は果たしたのだ。しかし私の心配は底をつかない。ネコにやられる場合もある。ヒナはかえしたけど、次の目標は巣立つまで見守っていることだ。今日は親バトが珍しく巣を離れていた。きっとエサを探しに行ったに違いない。 そういえば昨日庭に鳩の巣を見ているネコがいた。戸をあけて追っ払ってやった。その後、夜中コンビニの帰りにそのネコと遭遇した。こっちを見ている。私は目を合わせながら、「いいかい、あのハトをねらったら私が承知しないよ」と心の中で2回言い聞かせた。通じたかどうかは別として。 あぁ私って全く! ちょっとここまでハトに入れ込む私って、何か違ってる?とか思いながら、嬉しくてたまらない。だって何十分の一かの確率にかけ、親バトさんとの約束を果たしたのだから。 野生って強いんだな、と思った一連の出来事だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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