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2018年07月09日
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■特徴は画期的な「静電型トゥイーター」を用いたBA型とのハイブリッド構成



EST最大の特徴は「バランスドアーマチュア型ドライバーと静電型トゥイーターユニットによるハイブリッド構成」。前述の画期的というのは特に「静電型トゥイーター」の部分だ。



既存の本格的な静電型ドライバーは、繊細で正確な振動を生み出すという大きな優位の反面、使い勝手の面では大きな不利を抱えている。その駆動のために専用の高電圧アンプが必要で、ポータブルプレーヤー単体での駆動も他方式のドライバーと共存させてのハイブリッド構成も不可能なのだ。



対して、ESTが搭載する静電型トゥイーターユニットは一般的なイヤホンアンプ回路で動作する。駆動に高電圧が必要なこと自体は同様なのだが、コイルを用いた電磁誘導で電圧をパッシブに引き上げる昇圧トランスとユニット化することでそれを実現。ポータブルプレーヤー等のイヤホン端子に普通に挿して利用できる。



その静電型ユニット。当初はドライバーメーカーが、直近の製品化ではなく、技術的な挑戦を目的として試作したものだったという。なのでその時点では、トランスのサイズがイヤホンの筐体に収まるものではない等、製品化できる代物ではなかったようだ。



しかしそのドライバーのテストに参加したFitEarは、その音、特に中高域にこれまでにない魅力を感じた。そこで両社はさらなる協力態勢での数々の試作に突入。そして完成されたのがESTに搭載されている「静電型トゥイーターユニット」なのだ。トランスを含めた小型化の他、中高域再生用トゥイーターとしての最適化といったところがポイントだろうと推測する。



その静電型トゥイーターをフルレンジのバランスドアーマチュアと組み合わせる、というのがESTのハイブリッド構成。バランスドアーマチュア側を、ネットワークによる電気的なハイカットは行わずフルレンジとして動作させているところもポイントだ。アコースティックフィルターのみによる調整で、バランスドアーマチュアのフルレンジ再生に静電型トゥイーターの中高域をなじませ、その魅力を上乗せしてある。



なお公開されている仕様表記は、以下のとおり。

「ハイブリッドタイプ/構成非公開

(バランスドアーマチュア型ドライバー/静電型トゥイーターユニット)」

ドライバーの基数については非公開。



技術面ではもう一つ、FitEar Universalにて初採用された「オーバルホーンステム」をベースにしたステムにも注目だ。



■サウンドの特筆点は中高域。高度な次元でクリアながら豊かさも両立



それではサウンドをチェックしていこう。

なお、実は僕、春先にESTカスタム版のサンプルも試聴させていただいており、そちらを初めて聴いたときの衝撃も織り交ぜてお届けします。



「……え!?なにこの中高域!?」

女性ボーカルのサ行の鋭さや息遣いの描き込み、シンバルの金属感や薄刃さ、ギターの歪みのエッジ感といったシャープネスの要素が抜群に良い!その上で、それらに刺さりだとか尖り、荒れといったネガティブな要素がほとんど全く付帯しない。それどころか上質なほぐれを感じさせる。



ひとつひとつの音がきめ細かな粒子によって表現されていて、そしてその粒子によって音の響きも豊かに表現される。それでいて、フィルム的粒子感やレンズのボケ味を生かしたような美しさに偏るわけではなく、フォーカスの決まった鋭い描写でもあるのだ。



「シャープさとソフトさ」「キレとボケ」「明確さと粒子感」など、相反しがちな要素が異様なまで高度に兼ね備えられている。もちろん、それらを兼ね備えた方向性のイヤホンがこれまで他になかったわけではない。



…のだが、ESTはその方向性でのレベルが、僕がこれまでに体験してきた範疇にないどころか、想像の範疇すら超えてきた。「理想として思い描いていた音」を超えて、「これが理想だったのかと呆気に取られる音」だ。



ご本人の声とピアノのみで歌い上げられる早見沙織さん「琥珀糖」では、その中高域の魅力が特に発揮される。ピアノの響きの濃さを余さず表現し、空間をそのしっとりとした響きの粒子で満たす。しかし視界がぼやけるような濃さではなく、すっとした空気感もある。



音の自然な広がりは最上級ではないが、イヤモニとしての密閉度を最大限に確保した上で、そちらも十分に確保されている。ヘッドホンにおける「開放型ではなく密閉型のヘッドホンとしては上々の空間表現」といった感じを想像してもらえればと思う。



同時録音ではないが、そのピアノを弾いた後にそのままピアノの前で録音したというボーカルの表現も絶品。この歌ではフレーズの合間での息遣いも、曲の雰囲気に合わせて様々な柔らかさにコントロールされ、それによって曲の雰囲気がさらに強められている。そのそれぞれのニュアンスの届け方が素晴らしい。



例えばシャープさに偏ったイヤホンで聴くと、どのブレスも鋭めに聴こえてしまい、「柔らかさの中にも速さがある」といった絶妙なところが埋もれがち。対して、ESTの中高域は固有の魅力を備えつつも、音への反応は実に素直で鋭敏だ。それでいて速さや鋭さを描き出す時、そこが行き過ぎることもなく耳心地が良い。



でも低域は弱いんでしょ?と思われるかもしれないが、こちらにも不足は感じない。Robert Glasper Experiment「Human」のようなクラブ系のディープなローエンドとなると、さすがにその全てを捉え切ることはできないが、本当に超ディープな帯域より上、一般的な低音の再現は十分だ。相対性理論やペトロールズといったバンドサウンドでのベースやドラムスには普通に対応する。



タイトで速いタイプではなく、程良いボリューム感やナチュラルな立ち上がりが持ち味。また特にドラムスは、ESTならではの中高域で空気感、鳴りや抜けのニュアンスがしっかり引き出されるおかげか、全体としてかなり良質な印象だ。



低域についてはイヤーチップでのチューニングも効きやすい印象。

例えば僕の場合、

●標準L→低音の抜けは良いけど、軽やか過ぎるかも

●スパイラルドットL→低音はしっかり出るけど、膨らみ過ぎかも

●スパイラルドットML→低音も十分出るし膨らみ過ぎない

と、少しずつベターと思われるサウンドに調整していった。スパイラルドットには中間サイズも用意されており、L→MLでフィット感や遮音性を維持しつつ低域を調整できた。FitEar純正と傘の高さや開口の径がかけ離れたものではないおかげか、中高域側の感触はキープしながら調整できたことも幸いだった。



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Last updated  2018年07月09日 18時13分53秒
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