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2011年06月21日
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http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/ContentViewServlet?METAID=10015258&TYPE=HTML_FILE&POS=1&LANG=JA
支那事変の勃発以来日本政府は死力を尽して、物価の安定に努力し来った、殊に客年十月商工省が「臨時輸出入品措置法」を施行するに及び、日本政府の物価対策の動向が略々判然するに至ったのであるが、我満洲帝国に於いても日満一体の理念より、これに呼応し「暴利取締令」貿易統制法の改正等続々時局立法が制定せられ、最近に至り物価の統制は倍々強度化し、或種の商品に在りては、既に配給管理制度にまで推し進められつつあるは周知の如くである

如斯従来、専ら自由競争の基礎の上に放置されたる物価に対し、遽に統制ある一定の拘束が加えられるのであるから、其の過程に於てフリクションの起ることは、或る程度已むを得ない次第である、殊に日本の如く、満洲もそうであるが、遠く価格形成の源に溯って物価形成過程そのものに干渉するのではなく、既に出来上って仕舞った結果に対して、国家が干渉を加える現状においては、一層の矛盾と摩擦とが惹き起され勝であって、このフリクションを調整し、物価対策をスムーズに措置せんがなるに伴れ莫大なる取引高となり奉天を中心に綿系布のみにてもその取引尻が無慮一千五百万円を超えると見られて居るが、その他安東における人絹、大連及び哈爾浜における麻袋、全国的に亘るセメント、鉄鋼及び金塊に至るまで有りと凡ゆる重要商品が、這種の仕法により暗取引されて居るのとは驚くべき事実である

而して斯くの如き経紀人を媒介として為す清算取引は、去る大正八、九年の交、欧洲大戦の好影響を享け日本の財界好調に達するや大阪を中心として市内の綿系布業者間、直接解合又は間接解合なる取引の名目の下に為されたことがあり、又独り商品に限らず株式にもこれを応用し、兜町においてしかも天下の東株の向うを張って彼の大正天一坊が東京現株取引株式会社を創設株の清算取引を始めたことは今尚世人の記憶に新なることであろう。この種の事実に対し当時大番院は次の如く判決を下している
「仍て按ずるに各人が自由の意思を以て商品の売買を為し転売買戻其の他の方法に依り相互の関係を定むとも其の取引にして個別的に行わるる限りは何等取引所法違反の行為を構成することなきは勿論なりと雖も若し茲に此等私人間の売買取引を媒介する中心人物ありて多数の人に対し商品相場の報告其の他売買取引の締結に必要なる便宜を与え因て以て其の商品の売方と買方とを接合せしめ其の間に於て同種の定期売買取引を成立せしめたる上斯くして成立したる売買取引に付転売又は買戻を為して取引者間に相殺勘定の基礎を作り履行期に至り一面において最初の権利者若は義務者と最終の義務者若は権利者との間において商品の授受を為し又は解合その他の方法に依りその取引を終了すると同時に他面において転売又は買戻を為したる当事者が各売買代金の差額を授受して損益の計算を為すべき場合においては取引結了の方法が初めより一定すると、後日関係者の協議に依ってこれを定むるとに論なく又取引者が転売又は買戻に依りて最初の売買関係より離退すると否とを問わず、苟くもこれ等一切の取引行為が媒介者を中心として慣習又は契約に因り組織的に行わるるにおいてはその取引は取引所の定期取引に類似する取引なりと謂うべく、その媒介者が組織的に商品の売買取引を成立せしめ之を結了せしむる任務を処理すべき場所の存する以上はその場所の一個たると数個たるとに論なく之を包括的に観察して取引所法第二十六条に所謂市場に該当するものと謂うべし」

右の判例は、従来取引所内に行われおりしところの清算決済法の外に、これに類似する取引内容にも前掲の輪環性決済法なるものが包含する点を指摘し、この方法により、決済せらるべき条件の下に置かれたる一団の売買取引は大量の差金取引を迅速且つ簡易になし得る取引所内の取引とに対比し、その経済的実際機能わおいて殆ど何等の径庭なきことを言明し、取引所法の取締がこれを別個なる市場として取締の埒外に置くことの不可なるを説いたものとして見るべきであろう
(下)
四綿糸布を始めとし主要商品が奸商投機の対象となり、暗取引の方法により盛んに取引せられていることは以上に依り明かにしたが、金塊に就ては政府は産業統制法や産金買上法、集買人規則等種々の八釜しい規程を設け産金及金塊の集中を図って居るにも拘らず、中銀発表の買上数量を見ても余り芳しくない実績を示しているから、ことの真相を紹介して関係方面の注意を喚起したい

東洋に於ける金塊市場は事変前の上海を推さねばならない、満洲日鮮は勿論、印度海峡植民地方面より東洋に出廻る金塊は一度は上海に御目見得するのである、それで本年五月徐州陥落前、金円対法幣相場は一〇二三元であった。当時満洲に於ける中銀の金塊買入相場は、一匁につき十四円であったが、上海では法幣十八円で取引されておったから、満洲より金の密輸出は種々なる手段と方法とに依り盛行されたのであるが、徐州陥落後は国民政府の信用失墜を反映し、法幣相場は大暴落を演じ、対金円相場は一四〇円を上廻るに至るや、法幣で建てられた金塊相場は、金円に換算すると十二円六十銭に相当した、抜け目のない商人は直に上海において金塊を買付けて、満洲国に密輸入し、大連、奉天を中心に売却して巨利を博した当時上海金塊の満洲国流入は巨大なる数量に達したと謂われて居るこの現象は中支における日本金円の氾濫、その他の事情に因る上海における金円の対英、対米為替のアクチャルレートの悪化により、まぼろしの如く消え失せたが、之に代えるに新戦法による利鞘稼ぎが登場するに至った、夫れは日本に在住する外人又は日本人の物持が預金、利息、信託、株式配当に対する所得税が引上らるるや、之を差引くと利廻り極めて芳しからず、之が放資口に喘いだ結果、案出したのが日本よりの金円の現送による一種の鞘稼ぎと謂うことである

之は決してオーソドリックス的な送金の方法ではなく、飽迄アブノーマルな遣り方で、其の現送したる金円を以て、在上海の外国銀行に持参して輸入ビルを買い取り之を以て日本国内に於いて、歓迎さるべき見込のある舶来品を輸入すると、外国銀行の対英米為替の金円レートは相当叩かれても、之に依り日本に輸入した舶来品が五割乃至十割の利を見ても、羽が生えて飛ぶように売れるから、投資としての利廻りは相当なもので、しかも其の手続も以上の如く文章で書くと極めて廻りくどいことになるが、実際は極めて簡単で為替管理法の裏をかく、最も巧緻なる最新式のゲリラ戦術で、之も時局に因る経済上のフリクションを狙ったものである
五私は最近取引所類似市場が、地下的に横行していることを剔抉して、一般の参考に資したいと思って、本稿を草する気になったのであるが、意外の方面まで手を拡げ冗漫に失したことを愧ついものである、以上によって明かなる如く最近の如く国家は戦時重要施設を次ぎ次ぎと実施することに因り、財界に種々なる形に於いて波紋を描き起すその都度、為政者の予期せざる間隙に乗じ不義の利を貧らんとする徒輩の多きことを歎かわしく思う、と同時に、人間より射倖心の発動を全くチェックせんとすることを考えるのも、余りに現実と掛け離れた議論であることを誨えらるるような気もするのである

そこで、西洋に於る取引所発達の沿革を尋ねると、取引所は元来市井投機の跋扈の弊に悩みぬき之れを統制せんがため、投機の組織的仕法を考案し、これを取引所なる機関を介し行わしむるに至り、ここに取引所なるものが発達したこと、恰も私娼の取締に業を煮やし、公娼制度を制定したのとその軌を一にすると説いている、私はこの解説が経済上、取引所の必要性を強調する、理論的妥当性については、遽に左袒はしないが、世の一部の識者が言うが如く投機取引は取引所あるがために生ずる現象なりとし、投機取引より派生する弊害の全部を取引に嫁せんとする論者に対しては現下統制経済下に、投機取引が次第に抑制されて行く反面、既述の如く取引所市場類似の地下的私設取引所が最近到るところ横行する事象に対し如何に之を措置すべきや謙譲なる目で批判されんことを切望するものである(終り)





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最終更新日  2011年06月21日 10時53分32秒
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